【社労士が解説】有給休暇の付与日数と比例付与|正社員・パート別の計算方法と基準日管理

【社労士が解説】有給休暇の付与日数と比例付与|正社員・パート別の計算方法と基準日管理
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

有給休暇の付与日数と比例付与|正社員・パート別の計算方法と基準日管理

「パートに有給を何日付与すればいいかわからない」という人事担当者に向けて、付与日数の計算方法・比例付与の判定・基準日管理を完全ガイドします。この記事を読めば、雇用形態を問わず正確に付与日数を算定できるようになります。

🏆 結論:付与日数は「週所定労働日数×継続勤務年数」の2軸で早見表から決定する

有給休暇の付与日数は労働基準法第39条と同施行規則第24条の3で明確に定められており、①入社6か月経過で8割出勤、②週所定労働日数、③継続勤務年数の3要素で決定します。週5日以上(または週30時間以上)勤務なら正社員と同じ最大20日付与、週4日以下かつ週30時間未満は比例付与で日数が減ります。基準日は「付与日」であり、一斉方式か入社日方式かで管理方法が変わります。

有給休暇付与の3つの基本要件

労働基準法第39条第1項により、使用者は以下の3要件を満たした労働者に有給休暇を付与する義務を負います。雇用形態(正社員・契約社員・パート・アルバイト・派遣)を問わず、要件を満たせば必ず付与しなければなりません。

  1. 雇入れの日から6か月以上継続勤務していること
  2. その6か月間の全労働日の8割以上出勤していること
  3. 上記2要件を満たした時点で、最初の付与日数が決定される

「継続勤務」の判定基準

継続勤務とは、労働契約の存続期間を意味します。正社員への転換、有期契約の更新、定年後再雇用などで契約形態が変わっても、実質的に勤務が継続していれば通算されます。例えば「1年契約の有期雇用→更新して正社員」の場合、有期契約時代からの勤続年数が通算されます。

「8割出勤」の計算方法

出勤率は「出勤日数 ÷ 全労働日」で算定します。ここで重要なのが、以下の期間は「出勤扱い」としてカウントされる点です。

💡 実務のポイント

弊所が労務監査で発見する誤りで多いのが「産休・育休中の期間を欠勤としてカウントして8割出勤を満たさない」判定をしてしまうケースです。育休明けに有給休暇が付与されないと誤って処理している会社が、従業員20〜50人規模で意外と多く見られます。労働局指導の対象になりかねないため要注意です。

正社員(フルタイム)の付与日数早見表

週所定労働日数が5日以上、または週所定労働時間が30時間以上の労働者は、下表のとおり付与されます。厚生労働省リーフレットでも同じ日数が公表されています。

継続勤務年数 付与日数 年5日取得義務
6か月10日対象
1年6か月11日対象
2年6か月12日対象
3年6か月14日対象
4年6か月16日対象
5年6か月18日対象
6年6か月以降20日(上限)対象

増加ペースの特徴

付与日数の増加には特徴があります。6か月〜2年6か月までは年1日ずつ増え、3年6か月以降は年2日ずつ増加し、6年6か月で上限の20日に達します。前年からの繰越分(最大20日、時効2年)と合わせれば、理論上最大40日保有できますが、繰越分を使わずに5日義務を果たさない場合は法違反となる点に注意が必要です。

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比例付与の対象者判定【2つのどちらかに該当】

比例付与とは、所定労働日数が少ない労働者に対して、正社員より少ない日数の有給を付与する仕組みです。労働基準法施行規則第24条の3に規定されています。

比例付与の対象条件

以下のいずれかに該当する労働者が比例付与の対象です。逆にいうと、ここに該当しない労働者は正社員と同じ日数が付与されます。

  1. 週所定労働日数が4日以下、かつ週所定労働時間が30時間未満
  2. 週以外の期間で労働日数が定められている場合、1年間の所定労働日数が216日以下、かつ週所定労働時間が30時間未満

⚠️ 要注意:「週4日勤務だけど1日8時間」のパート

週4日勤務でも1日8時間働くと週所定労働時間は32時間となり、30時間以上のため比例付与の対象外です。この場合は正社員と同じ日数(6か月経過で10日)を付与しなければなりません。「週4日だから比例付与の7日でいい」と誤判定して労働局指導を受けるケースが中小企業で頻発しています。

比例付与の日数早見表

比例付与の対象者に付与する日数は、週所定労働日数別に定められています。労働基準法施行規則第24条の3第3項に規定されています。

週所定労働日数 年間所定労働日数 6か月 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年 5.5年 6.5年〜
4日169〜216日7日8日9日10日12日13日15日
3日121〜168日5日6日6日8日9日10日11日
2日73〜120日3日4日4日5日6日6日7日
1日48〜72日1日2日2日2日3日3日3日

※赤字=10日に達し年5日取得義務の対象になるタイミング

比例付与で年5日取得義務が発生するライン

上記表で赤字表示した箇所が、比例付与でも10日に達して年5日取得義務が発生するタイミングです。週4日勤務なら3年6か月経過、週3日勤務なら5年6か月経過で対象となります。長期勤続のパートは見落とされやすいため、基準日管理で特に注意が必要です。 詳しくは「有給休暇の年5日取得義務と時季指定」で解説しています。

基準日の管理方法【一斉方式 vs 入社日方式】

基準日とは、年次有給休暇が付与される日のことです。その管理方法は「一斉付与方式」と「入社日基準方式」の2つがあり、会社の規模や業態で選択します。

一斉付与方式の特徴

全従業員の基準日を4月1日や1月1日など特定の日に統一する方式です。人事管理は大幅にシンプルになりますが、入社直後の労働者には「6か月経過前に付与する」か「中途入社者の扱いを個別ルール化する」対応が必要になります。

入社日基準方式の特徴

労働者ごとの入社6か月後を基準日とする方式です。労働基準法の原則に近いですが、従業員100人を超えると管理が複雑になります。

方式 メリット デメリット 向く会社
一斉付与管理が簡単
計画的付与がやりやすい
一部従業員に有利な前倒し付与が必要従業員50人以上
入社日基準法定どおりの厳密運用
前倒し付与不要
基準日が分散し管理が複雑従業員50人未満

一斉付与で前倒しが必要になるケース

🧮 具体例:4月1日一斉付与の会社で10月入社した場合

10月1日入社の新入社員は、法定では翌年4月1日(6か月経過時点)に10日が付与されます。しかし4月1日を一斉付与日としている会社では、翌年4月1日にすでに全員へ11日(1年6か月経過相当)を付与する予定のため、この新入社員も同日に10日以上付与する取扱いが必要です。結果として「法定より4日早く」有給が発生する設計になります。この前倒し付与分のコストは、会社が一斉付与方式を選ぶ代償として受け入れることになります。

付与日数計算の実務5ステップ

パートや有期契約を含む従業員の付与日数を確定するには、以下の5ステップで判定します。

ステップ1: 雇入れ日と継続勤務期間を確認

入社日を起点とし、6か月経過しているかを判定します。有期契約更新や定年後再雇用は原則通算されます。

ステップ2: 出勤率が8割以上かを計算

「出勤日数 ÷ 全労働日」の計算式で8割(0.8)以上であることを確認します。労災休業・産休・育休・年休取得日は出勤扱いです。

ステップ3: 週所定労働時間を確認

週30時間以上なら、所定労働日数にかかわらず正社員扱い(週5日表の日数)で付与します。

ステップ4: 週30時間未満なら週所定労働日数を確認

週4日以下なら比例付与表を適用、週5日以上なら正社員表を適用します。

ステップ5: 継続勤務年数に応じた日数を早見表から決定

該当する行(週所定労働日数)と列(継続勤務年数)の交点が、その労働者に付与すべき日数です。

💡 実務のポイント

週所定労働日数が変動する契約(シフト制でバラつくケース)では、「過去6か月の実績平均」または「契約上の平均所定労働日数」で判定します。月によって週3日のときと週4日のときがあるパートは、平均して週3.5日なら「週3日の区分」で比例付与するのが実務です。ただし、顧問先でこの判定を誤って週4日区分にしてしまい、3年後の指導で遡及調整が必要になったケースがありました。判定の記録を残すことが重要です。

有期契約・派遣社員・定年後再雇用の扱い

有期契約労働者

契約更新を重ねて6か月以上継続勤務している場合、有給休暇の付与対象です。契約期間が6か月未満でも、更新により実質6か月を超えれば付与義務が発生します。付与日数は、週所定労働日数・労働時間に応じて正社員か比例付与のいずれかで判定します。

派遣社員

派遣社員の有給休暇付与義務は派遣元が負います。派遣先ではなく派遣元が継続勤務6か月・出勤率8割の要件を判定し、日数を決定・付与します。派遣先が変わっても派遣元との契約が継続していれば、勤続年数は通算されます。

定年後再雇用

定年退職後に同じ会社で再雇用された場合、有給休暇の勤続年数は通算されます。例えば60歳定年で20日保有していた社員が再雇用されると、再雇用後も継続勤務として扱われ、引き続き20日の付与を受けられます。「一旦リセット」は法違反です(昭63.3.14基発150号)。

⚠️ 定年後再雇用の見落とし

定年後再雇用を「新規契約」と解釈して有給を0日からリセットする処理は違法です。弊所の顧問先では、再雇用社員から「20日あった有給が突然0になった」とハローワークに相談され、労働基準監督署から是正勧告を受けたケースがあります。勤続年数も付与日数も通算が原則です。

年次有給休暇管理簿の作成

労働基準法施行規則第24条の7により、付与した有給休暇を管理するため「年次有給休暇管理簿」を作成し、3年間保存する義務があります。

管理簿に必須の3項目

  1. 取得時季:実際に取得した年月日
  2. 取得日数:日単位・半日単位・時間単位の内訳
  3. 基準日:年10日以上付与された日

紙管理・Excel管理・勤怠システムいずれの方法でも構いませんが、労基署調査時に「労働者ごと」に提示できる形式が必要です。

よくある見落としと実務ミス

1. 管理監督者への付与忘れ

労基法41条で労働時間規制の適用除外とされている管理監督者でも、有給休暇は付与義務ありです。「管理職だから有給なし」は違法です。

2. 週30時間の境界線の誤判定

週4日×8時間=32時間のパートを比例付与で処理する誤りが頻発します。週30時間以上なら正社員と同じ日数を付与しなければなりません。

3. 育休復帰直後の付与判断

育休期間は出勤扱いのため、復帰時点で基準日が到来していれば通常どおり付与します。「育休で出勤していないから付与しない」は違法です。

4. シフト変更による所定労働日数の認識ズレ

週3日契約から週5日契約に変わった場合、次の基準日からは週5日区分で付与する必要があります。契約変更のタイミングでの切替忘れに注意が必要です。

よくある質問

入社時に前倒しで有給休暇を付与することは法律上問題ありませんか?
法定を上回る付与は問題ありません。例えば入社日に5日付与、6か月後に法定の10日からその5日を差し引き、結果的に10日になるよう調整する運用も可能です。ただし、就業規則への明記と、全員への公平な適用が必須です。
欠勤が多くて8割出勤を満たさない年度は、有給休暇が付与されないのですか?
その年度は付与されません。ただし翌年度に出勤率が8割以上に戻れば、翌年度の付与日数が復活します。例えば3年6か月経過時点で欠勤により8割を満たさなかった場合、4年6か月経過時点で8割以上なら、「4年6か月経過時点の付与日数=16日」が付与されます。「0日になる→やり直し」ではありません。
シフト勤務で週所定労働日数が一定しないパートの判定方法は?
実績の平均所定労働日数で判定するのが実務的です。過去6か月〜1年の実働日数を集計し、週平均を算出して区分を決めます。判定の根拠資料(シフト表・勤怠記録)は必ず保存しておきます。労基署調査時に説明が必要です。
試用期間中は有給休暇を付与しなくていいのでは?
試用期間も勤続期間に含まれるため、試用期間を含めて6か月経過で付与義務が発生します。試用期間3か月の会社なら、入社から6か月後に試用期間終了後3か月で10日付与となります。「試用期間中は有給なし」は違法です。
退職時の有給消化を拒否できますか?
拒否できません。労働者の時季指定権は退職直前でも有効であり、使用者の時季変更権は「事業の正常な運営が妨げられる」場合にのみ認められます。しかも退職日以降に変更することはできないため、実質的に退職日までに取得させざるを得ません。就業規則で計画的付与を活用し、早期に取得させるのが現実的です。
パートに有給休暇を取得させた日の賃金はどう計算しますか?
以下3つのうち就業規則で定めた方法で計算します。①平均賃金、②通常の賃金(通常勤務なら得られた賃金)、③標準報酬月額の30分の1(健康保険)。②が最もシンプルで実務で多用されます。時給1,200円×1日5時間のパートが有給を取ると、1日6,000円を支給します。
年次有給休暇の繰越はどう扱いますか?
使い切れなかった有給は2年の時効で消滅します(労基法115条)。前年度付与分のうち未使用分は、次年度の新規付与分と合算して保有できます。例えば2025年に20日付与され10日使用→10日繰越→2026年に20日付与→合計30日保有、というパターンです。最大保有日数は40日(前年繰越20日+当年付与20日)となります。就業規則全般については「就業規則作成完全ガイド」も参考にしてください。

📋 この記事のポイント

  • 有給付与の3要件:継続勤務6か月・出勤率8割・付与日の到来
  • 週30時間以上なら所定日数にかかわらず正社員扱いで最大20日付与
  • 比例付与は週4日以下かつ30時間未満の労働者が対象。早見表で判定
  • 基準日管理は一斉付与方式か入社日方式かの選択。50人以上は一斉推奨
  • 管理監督者・パート・定年後再雇用も付与対象。勤続通算が原則

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