【社労士が解説】勤怠管理の方法|タイムカード・ICカード・クラウド勤怠の比較と選び方

【社労士が解説】勤怠管理の方法|タイムカード・ICカード・クラウド勤怠の比較と選び方
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

勤怠管理の方法|タイムカード・ICカード・クラウド勤怠の比較と選び方

「自社に合った勤怠管理方法を選びたい」という経営者・人事担当者に向けて、5方式の比較表・選定フローチャート・費用相場を完全ガイドします。この記事を読めば、法令要件を満たしつつコスト最適な方式を選べるようになります。

🏆 結論:客観的記録が原則。規模と業態で5方式から選定、30人以上はクラウド勤怠が実務標準

2019年4月施行の労働安全衛生法改正により、客観的な方法での労働時間把握が全事業者の義務となりました。主要な方式は①タイムカード、②ICカード、③クラウド勤怠、④PCログ、⑤出勤簿(手書き)の5つ。手書き出勤簿は客観性が弱く推奨されません。従業員10人未満は低コストのタイムカード・ICカード、10〜30人は中価格帯のクラウド勤怠、30人以上は統合型クラウド勤怠が実務標準です。労働時間の記録は3年保存(賃金台帳)、法定三帳簿と連動した管理が求められます。

勤怠管理の法的根拠|3つの根拠法令

勤怠管理は単なる事務作業ではなく、複数の法律に根拠を持つ法定義務です。

労働安全衛生法第66条の8の3(2019年4月施行)

使用者は労働者の労働時間の状況を、タイムカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法により把握しなければならないと規定されました。e-Gov 労働安全衛生法第66条の8の3に条文があります。管理監督者や裁量労働制対象者も含めた全労働者が対象です。

労働基準法第108条(賃金台帳)

使用者は賃金台帳を作成し、労働日数・労働時間数・時間外労働時間数・休日労働時間数・深夜労働時間数を記載しなければなりません。違反には30万円以下の罰金。

厚生労働省「労働時間適正把握ガイドライン」

2017年1月20日策定の厚生労働省「労働時間の適正な把握のためのガイドライン」では、客観的な記録方法として①使用者による現認、②タイムカード等の客観的記録、を原則としています。

「客観的な記録」の3要件

要件1:改ざんが困難であること

手書きやExcel入力は本人が後から修正可能で、客観性が弱いとされます。打刻時点での記録が自動保存される仕組みが望ましいです。

要件2:第三者が検証可能であること

使用者や労基署が記録内容を確認できる形式であることが必要です。ログが残らない方法は客観的記録と認められない可能性があります。

要件3:打刻時刻が正確であること

打刻時刻が実際の出退勤時刻と合致していることが前提です。始業時刻の数分前・終業時刻の数分後の打刻は実態との乖離を生みます。

⚠️ 自己申告制は原則不可

Excel・紙台帳・口頭報告による自己申告制は「改ざん可能性」があるため、原則として客観的記録と認められません。やむを得ず自己申告制を採用する場合は、①労働者・管理者への十分な説明、②実態調査の実施、③労働時間の上限設定の禁止、など追加要件を満たす必要があります。

勤怠管理5方式の比較

方式 初期費用 月額 客観性 自動集計
タイムカード(紙)1〜3万円数千円(用紙代)×
ICカード5〜15万円0〜1万円△(別途ソフト要)
クラウド勤怠0〜5万円200〜500円/人
PCログ0円0〜200円/人
手書き出勤簿0円0円××

タイムカード方式|小規模事業場の定番

タイムカードの特徴

紙のカードを打刻機に通して時刻を刻印する伝統的な方式です。導入費用が低く、操作が直感的で誰でも使える点がメリットです。

メリット・デメリット

メリット デメリット
導入コストが安い
操作が簡単
電源があれば運用可能
代理打刻の可能性
月末集計の手間
紙の保管スペース必要
外出・在宅勤務に非対応

向く事業場

従業員10人未満・事業場が1か所・固定勤務時間の会社。製造業の小規模工場、個人経営の飲食店、小規模小売店などで多用されます。

ICカード方式|打刻の正確性を重視する場合

ICカードの特徴

交通系ICカード(Suica・PASMO等)や社員証をリーダーにかざして打刻する方式です。打刻データは電子的に保存され、USB等でパソコンに転送して集計します。

メリット・デメリット

メリット デメリット
打刻が正確
カード紛失リスクが低い(再発行可能)
紙が不要で省スペース
初期費用が高い
集計ソフトが別途必要
カード忘れで打刻不可

向く事業場

従業員10〜30人・本社のみの事業場。オフィスワーク中心でシフトがシンプルな会社で多用されます。

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クラウド勤怠管理|実務標準となる方式

クラウド勤怠の特徴

スマートフォン・PC・ICカードリーダー等から打刻し、データがクラウド上で自動集計される方式です。ジョブカン・KING OF TIME・マネーフォワード勤怠・freee人事労務・スマレジタイムカード等が主要サービスです。

メリット・デメリット

メリット デメリット
在宅・外出時も打刻可能
集計・有給管理が自動
給与計算ソフトと連携
GPS・顔認証で不正防止
法改正への自動対応
月額費用がかかる
インターネット環境必須
ITリテラシーが必要

向く事業場

従業員30人以上・複数拠点・リモートワーク導入企業。成長企業・IT企業・小売チェーン等で急速に普及しています。

主要サービスの比較

サービス 月額(目安) 特徴
KING OF TIME300円/人打刻方式が豊富、大企業向け
ジョブカン200円/人〜中小企業向け、使いやすい
マネーフォワード勤怠300円/人給与計算と統合、人事労務向け
freee人事労務300〜500円/人freee会計と統合
スマレジタイムカード0〜500円/人30人以下は無料プランあり

PCログ方式|デスクワーク中心の会社向け

PCログの特徴

パソコンのログオン・ログオフ時刻を自動記録する方式です。Windows・Macの標準機能のほか、専用ツールでより詳細な記録を取得できます。

メリット・デメリット

メリット デメリット
導入コストほぼゼロ
打刻忘れがない
サービス残業の把握に有効
PCを使わない職種に不向き
休憩・中抜けの把握が困難
ログ取得ツールが別途必要

向く事業場

デスクワーク中心のIT企業・士業事務所・コンサルティング会社。ただし単独ではなくクラウド勤怠と併用して実労働時間の検証手段として使うケースが多いです。

手書き出勤簿|原則非推奨

手書き出勤簿の扱い

ノートやフォーマットに出退勤時刻を手書きで記入する方式です。労働時間適正把握ガイドラインでは客観性が弱く、原則として推奨されていません。2〜3人の超小規模事業場を除き、現在では実質的に使われなくなっています。

💡 実務のポイント

弊所が労務監査で見てきたケースでは、従業員5名の士業事務所でも手書き出勤簿を採用している会社が労基署調査で指導を受けた実例があります。30人以下でも月額数千円からクラウド勤怠を導入できるため、コスト削減よりもリスク管理の観点から電子化することを推奨します。

規模別の推奨方式選定フロー

従業員数 推奨方式 月額総コスト(目安)
1〜5人無料プランクラウド or タイムカード0〜2,000円
5〜10人低コストクラウド勤怠1,000〜3,000円
10〜30人標準クラウド勤怠3,000〜9,000円
30〜100人給与計算統合型クラウド9,000〜30,000円
100人以上大規模向けクラウド or オンプレ30,000円〜

記録の保存期間と賃金台帳

保存期間は3年(労基法109条・115条)

労働時間の記録、賃金台帳、出勤簿等は作成後3年間の保存義務があります(時効改正により将来5年に延長予定)。退職した労働者の記録も同様に保存が必要です。

賃金台帳への必須記載項目

労働基準法第108条および同法施行規則54条により、賃金台帳には以下7項目を記載する必要があります。

  1. 氏名
  2. 性別
  3. 賃金計算期間
  4. 労働日数
  5. 労働時間数
  6. 時間外・休日・深夜労働時間数
  7. 基本給・手当・賃金控除額

勤怠管理システムで記録した労働時間が、そのまま賃金台帳と連動する設計にしておくのが実務的です。

勤怠管理システム導入の5ステップ

ステップ1: 現状把握と要件定義

従業員数・勤務体系(シフト制/固定勤務)・勤務場所(事業所のみ/リモート含む)・給与計算ソフトとの連携要否を整理します。

ステップ2: 3〜5社の比較検討

無料トライアルを活用して、打刻画面のわかりやすさ・集計機能の正確性・サポート体制を評価します。

ステップ3: 就業規則の改訂

打刻方法・休憩時間の取扱・残業申請フローを就業規則に明記します。打刻忘れ時の対応ルールも規定しておきます。

ステップ4: 従業員への周知・研修

打刻方法の説明会を実施し、マニュアルを配布します。ITリテラシーに差がある従業員への個別サポートも重要です。

ステップ5: 運用開始後のモニタリング

導入後1〜2か月は打刻漏れ・修正申請の状況をモニタリングし、運用ルールを微調整します。管理職の承認フローも確認します。

よくある質問

タイムカードから手書き出勤簿に戻すことはできますか?
労働安全衛生法上、客観的な方法での把握が義務のため、手書き出勤簿への切り戻しは推奨されません。すでに導入している客観的な方法を維持することが前提です。コスト削減を目的とするならタイムカード等を継続し、クラウド勤怠の月額費用を節約する工夫が現実的です。
管理監督者の勤怠管理も必要ですか?
必要です。2019年の労働安全衛生法改正により、管理監督者も含めた全労働者の労働時間把握が義務化されました。労基法41条による時間外・休日規制の適用除外は、勤怠記録の免除を意味するものではありません。深夜労働割増の計算にも記録が必要です。
リモートワーク・在宅勤務の場合の打刻はどうすればいいですか?
クラウド勤怠のスマートフォンアプリ打刻、PCログ記録、始業終業のチャット報告が主な方法です。GPS付き打刻で不正防止する方式も一般的です。業務指示があった時点で労働時間としてカウントするため、メール・チャットの送信時刻と打刻時刻の整合性も重要です。
打刻忘れの修正申請はどう扱えばいいですか?
就業規則で「打刻忘れ時は翌営業日中に申請する」「管理者の承認を経て修正する」ルールを定めておきます。修正履歴が残る仕組みが必須で、打刻後の無制限な自由編集ができるシステムは客観性が失われます。打刻忘れが頻発する従業員には個別指導が必要です。
時間外労働の集計は自動計算できますか?
クラウド勤怠なら自動計算が可能です。法定労働時間超過・深夜・休日の割増率を設定しておけば、月末に時間外労働時間が自動集計されます。ただし変形労働時間制やフレックス制を採用している場合は、制度に応じた設定が必要です。詳しくは「変形労働時間制の導入手続きと計算方法」も参考にしてください。
勤怠管理システムの費用は経費として計上できますか?
できます。月額費用は「支払手数料」または「ソフトウェア使用料」として当期の経費になります。初期費用(買い切りソフト等)が10万円以上の場合、ソフトウェアとして資産計上し、5年で均等償却するのが原則です。クラウドサービスの月額利用料は、全額当期経費で問題ありません。
有給休暇の取得管理もシステムに組み込めますか?
クラウド勤怠の標準機能として、有給残日数・取得実績・年5日取得義務の達成状況を自動管理できます。年次有給休暇管理簿(3年保存義務)の作成も自動化されるため、法令遵守の観点からも有効です。年5日取得義務の詳細は「有給休暇の年5日取得義務と時季指定」で解説しています。

📋 この記事のポイント

  • 2019年4月の労安衛法改正で客観的方法による労働時間把握が義務化
  • 5方式の中で手書き出勤簿は原則非推奨。客観性の3要件を満たす方式を選ぶ
  • 従業員30人以上はクラウド勤怠が実務標準。月額200〜500円/人が相場
  • 管理監督者・リモートワーク・裁量労働制対象者も全員が把握対象
  • 勤怠記録は3年保存(将来5年に延長予定)。賃金台帳と連動した管理が必須

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