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特定公社債等の課税|申告分離20.315%・損益通算・繰越控除を徹底解説
「国債の利子は源泉徴収だけで申告不要?」「社債の売却損は株式の譲渡益と相殺できる?」と迷う個人投資家・経営者へ。平成28年改正で導入された「特定公社債等」は、上場株式等と同じ申告分離20.315%課税・損益通算・3年繰越控除の対象になっています。一般公社債との違い、特定口座での取扱い、確定申告の判定フローまで4士業が完全ガイドします。
🏆 結論:特定公社債等は申告分離20.315%・上場株式等と完全に同一の取扱いに統合
平成28年(2016年)1月1日以後の取引から、国債・地方債・公募公社債投信などの「特定公社債等」は、上場株式等と一体化された申告分離課税(所得税15.315%+住民税5%=20.315%)の対象になりました。利子・分配金は源泉徴収のみで申告不要(申告分離選択も可)、譲渡損益・償還差損益は上場株式等の譲渡損益・配当所得と損益通算可能で、控除しきれない損失は翌年以降3年間繰越できます。特定口座(源泉徴収あり)に組み入れれば確定申告も原則不要。一方、同族会社が発行する社債等の「一般公社債」は別建ての課税で総合課税となるため、保有債券がどちらに該当するかの判定が最初の重要ポイントです。
特定公社債等とは|平成28年改正の概要
平成28年改正の3要点
平成25年度税制改正により、公社債等の課税方式が大きく見直され、平成28年(2016年)1月1日以後の取引から新制度が適用されました。改正の3要点は以下のとおりです。
| 改正の要点 | 改正前(〜2015年) | 改正後(2016年〜) |
|---|---|---|
| 課税方式 | 利子=源泉分離・譲渡=非課税 | 全て申告分離20.315% |
| 上場株式等との損益通算 | 不可 | 可能 |
| 特定口座への組入れ | 不可 | 可能 |
参考: 国税庁 平成28年からの公社債等の課税方式変更について
改正の趣旨|上場株式等との一体化
従来は、公社債は預金と同じ「貯蓄性商品」として源泉分離課税(20.315%)で完結する一方、譲渡益は原則非課税という変則的な扱いでした。これにより、株式投資との損益通算ができない、損失が出ても3年間繰り越せないなど投資家にとって不利な面がありました。改正により、公社債を「金融商品」として位置付け、上場株式等と統一的に取り扱う仕組みになっています。
💡 実務のポイント
弊所の顧問先で、退任した役員が退職金を国債・社債で運用しているケースが多くあります。改正前は「公社債の利子は20%引かれて終わりなので確定申告は不要」が常識でしたが、改正後は「特定公社債で譲渡損失が出たら株式の譲渡益と通算できる」「3年繰越控除を活用するなら確定申告が必要」と、投資戦略が変わりました。年末調整しかしていない方も、債券投資の損失がある年は必ず確定申告を検討してください。
特定公社債と一般公社債の違い|2区分の判定
特定公社債等の範囲
「特定公社債等」は、租税特別措置法第3条の3等に規定された一定の公社債・公社債投信を指します。具体的には次のものが該当します。
- 国債(個人向け国債を含む)
- 地方債(都道府県債・市町村債)
- 外国国債・外国地方債
- 公募公社債(50人以上に募集する社債)
- 上場公社債(金融商品取引所に上場された社債)
- 公募公社債投資信託(MRF、MMF等)
- 公募公社債等運用投資信託
- 平成27年12月31日以前に発行された一定の公社債(同族会社発行の社債を除く)
一般公社債(非特定公社債)の範囲
特定公社債に該当しないものはすべて「一般公社債」として別建ての課税となります。代表的なものは以下のとおりです。
| 区分 | 具体例 |
|---|---|
| 同族会社発行の社債 | 自社の株主・役員が発行法人を支配する社債(発行日問わず) |
| 私募の社債(平成28年以後発行分) | 49人以下に募集された社債 |
| 私募公社債投資信託 | 私募型のMRF等 |
特定公社債と一般公社債の課税の3つの違い
| 比較項目 | 特定公社債 | 一般公社債 |
|---|---|---|
| 利子の課税 | 申告分離20.315%(申告不要選択可) | 源泉分離20.315%(申告できない) |
| 譲渡損益の課税 | 申告分離20.315% | 原則非課税(損益通算不可) |
| 上場株式等との損益通算 | 可 | 不可 |
申告分離課税のしくみ|20.315%税率の3要素
20.315%の内訳
特定公社債等の利子・配当・譲渡損益に適用される税率20.315%は、3つの要素から構成されています。
| 税目 | 税率 | 根拠法令 |
|---|---|---|
| 所得税 | 15% | 租税特別措置法第3条の3等 |
| 復興特別所得税 | 0.315% | 所得税額×2.1%(2037年まで) |
| 住民税 | 5% | 地方税法第71条の28等 |
| 合計 | 20.315% | − |
申告分離課税の計算式
📐 申告分離課税の計算式
税額 = (利子等収入 + 譲渡損益 + 償還差損益) × 20.315%
※他の上場株式等の譲渡損益・配当所得と通算後の金額に税率を適用
具体的な計算例
🧮 シミュレーション(国債の利子と償還差益)
・10年もの個人向け国債1,000万円・年利1%→年間利息10万円
・利息に対する税額=10万×20.315%=20,315円
・10年後の償還時に額面1,000万円受取(差損益なし)
・年間手取り=10万-2万315円=79,685円(税引後利回り0.797%)
損益通算のしくみ|上場株式等と一体
損益通算の対象範囲
租税特別措置法第37条の12の2により、特定公社債等の譲渡損失・償還差損は、以下の金額と通算できます。
参考: 国税庁 No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度
- 特定公社債等の利子・配当(申告分離選択した場合)
- 上場株式等の譲渡益
- 上場株式等の配当所得(申告分離選択した場合)
- 公募株式投資信託の譲渡益・分配金(申告分離選択した場合)
損益通算の計算順序
| 順序 | 計算内容 |
|---|---|
| ① | 同一年内の上場株式等(特定公社債等含む)の譲渡損益を合算 |
| ② | 譲渡損失が出た場合、申告分離選択の上場株式等の配当・特定公社債等の利子と通算 |
| ③ | 通算しきれない損失は翌年以降3年間繰越 |
損益通算の具体例
🧮 シミュレーション(特定公社債の譲渡損と株式譲渡益)
・2026年中の取引
・社債の譲渡損失:▲50万円
・上場株式の譲渡益:+200万円
・損益通算後の所得=200万-50万=150万円
・税額=150万×20.315%=304,725円
(通算しなかった場合は200万×20.315%=406,300円、約10万円の節税効果)
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鮎澤パートナーズに相談する3年繰越控除|損失を翌年以降に活用
繰越控除の制度概要
租税特別措置法第37条の12の2第6項により、特定公社債等を含む上場株式等の譲渡損失は、損益通算しきれない部分について翌年以降3年間繰り越して、翌年以降の譲渡益・配当所得と相殺できます。
参考: 国税庁 No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除
繰越控除の具体例
🧮 シミュレーション(繰越控除の活用)
・2025年:譲渡損失▲700万円(同年内通算しきれず700万円を繰越)
・2026年:譲渡益+200万円→繰越損失と相殺→課税対象0円、残り繰越損失500万円
・2027年:譲渡益+300万円→繰越損失と相殺→課税対象0円、残り繰越損失200万円
・2028年:譲渡益+250万円→繰越損失200万円相殺→課税対象50万円
・節税効果合計=(200+300+200)×20.315%=約142万円
繰越控除の要件
- 損失が生じた年について確定申告すること(必須)
- その後も損失が残っている限り毎年連続して確定申告すること
- 申告がない年があると、その時点で繰越権利を失う
⚠️ 注意
繰越控除は「申告を続けること」が条件です。3年間で利益が出る見込みがない場合でも、毎年「損失申告」を続けないと権利を失います。特定口座(源泉徴収あり)で確定申告不要にしている方も、繰越控除を使う場合は確定申告が必要です。手間を惜しまず申告を続けるか、控除を諦めるかの判断が重要です。
確定申告が必要なケース・不要なケース
確定申告不要のケース
| パターン | 理由 |
|---|---|
| 特定公社債の利子のみ受領 | 源泉徴収のみで完結(申告不要選択) |
| 特定口座(源泉徴収あり)で取引 | 証券会社が源泉徴収済 |
| NISA口座のみで取引 | 非課税枠内なら申告不要 |
確定申告が必要・有利なケース
| パターン | 理由 |
|---|---|
| 譲渡損失を上場株式等の譲渡益と通算したい | 通算には申告が必要 |
| 複数の特定口座で利益・損失が分散 | 口座間通算は申告が必須 |
| 3年繰越控除を使いたい | 毎年連続して申告が必要 |
| 一般口座で取引 | 源泉徴収されないため申告必須 |
| 国外で受け取る公社債利子 | 国内源泉徴収なし、申告必須 |
特定口座での取扱い|2016年からの拡大
特定口座とは
特定口座は、証券会社が顧客の取引について年間譲渡損益を計算し、損益計算書(年間取引報告書)を作成してくれる口座制度です。平成28年改正で、株式に加えて特定公社債も特定口座に組み入れ可能になりました。
特定口座の3種類
| 口座種別 | 源泉徴収 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 特定口座(源泉徴収あり) | 証券会社が源泉徴収 | 原則不要(損益通算等の場合のみ) |
| 特定口座(源泉徴収なし) | なし | 必要(年間報告書で簡便申告) |
| 一般口座 | なし | 必要(自分で損益計算) |
口座内配当等受入の選択
特定口座(源泉徴収あり)で「源泉徴収口座内配当等受入開始届出」を提出すると、配当金・利子も口座内で受け取り、譲渡損失と自動通算できます。これにより確定申告なしで損益通算が完結します。証券会社の口座開設時に必ず選択しておくべき設定です。
償還差損益の取扱い|額面と取得価額の差
償還差損益の計算
公社債が満期償還される際、額面金額と取得価額に差がある場合、差額が償還差損益となります。償還差損益も、特定公社債等であれば申告分離20.315%の対象です。
| 償還パターン | 税務上の取扱い |
|---|---|
| 取得価額1,000万円→償還1,050万円 | 償還差益50万円→譲渡益として課税 |
| 取得価額1,000万円→償還1,000万円 | 差損益なし、課税なし |
| 取得価額1,050万円→償還1,000万円 | 償還差損50万円→譲渡損失として損益通算可 |
外貨建て公社債の取扱い
外貨建ての公社債を償還した場合、外国通貨での償還金を円換算して償還差損益を計算します。為替差損益も含めて申告分離20.315%の譲渡損益として扱われます。
NISA口座での取扱い|2024年新NISA対応
NISA口座での公社債等の扱い
2024年から始まった新NISA(2023年までの旧NISA・つみたてNISAから刷新)では、つみたて投資枠(年120万円)・成長投資枠(年240万円)の合計年360万円・生涯1,800万円の非課税枠があります。
新NISAで取り扱える金融商品
- つみたて投資枠:長期積立に適した投資信託(金融庁基準を満たすもの)
- 成長投資枠:上場株式・ETF・REIT・公募株式投資信託等
- 除外:国債・社債・公募公社債投信は対象外(新NISAは株式中心の制度)
⚠️ 注意
特定公社債等は新NISAの対象外です。債券のみで資産形成する方は、新NISAの非課税枠ではなく、通常の特定口座での運用となります。一方、株式100%でNISA枠を使い、債券は特定口座で運用するハイブリッド戦略が一般的です。
シミュレーション3例|具体的な税負担比較
例1:国債10年もの1,000万円(利子のみ)
🧮 シミュレーション(個人向け国債1,000万円・年利1%)
・年間利息=10万円
・源泉徴収税額=10万×20.315%=20,315円
・年間手取り=79,685円
・10年間で手取り合計=約79.7万円(税引前は100万円)
・申告不要のまま完結。元本1,000万円も全額償還で課税なし。
例2:特定公社債の譲渡損と上場株式の譲渡益を通算
🧮 シミュレーション(損益通算による節税)
・2026年:外国債券の譲渡損▲100万円(為替損失含む)、株式譲渡益+300万円
・損益通算なし:300万×20.315%=609,450円
・損益通算あり:(300万-100万)×20.315%=406,300円
・確定申告で約20万円節税
例3:繰越控除を3年活用
🧮 シミュレーション(3年繰越控除のフル活用)
・2025年:譲渡損失▲500万円→確定申告で繰越登録
・2026年:譲渡益+200万円→繰越と相殺で課税なし(残繰越300万円)
・2027年:譲渡益+150万円→残繰越と相殺で課税なし(残繰越150万円)
・2028年:譲渡益+200万円→残繰越150万円を相殺、課税対象50万円
・3年合計の節税効果=(200+150+150)×20.315%=約102万円
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よくある質問(FAQ)
まとめ|特定公社債は申告分離20.315%+損益通算3年繰越
📋 この記事のポイント
- 平成28年(2016年)1月1日以後、特定公社債等は上場株式等と一体化された申告分離20.315%課税
- 特定公社債=国債・地方債・公募社債・上場社債・公募公社債投信等(同族会社社債は除外)
- 利子は源泉徴収で申告不要選択可、譲渡損益は申告分離で他の上場株式等と損益通算可
- 譲渡損失は翌年以降3年間繰越控除可(毎年確定申告が必須条件)
- 特定口座(源泉徴収あり)+口座内配当等受入で確定申告なしの自動損益通算が可能
- 新NISAは公社債対象外、債券運用は特定口座で行う
- 同族会社発行の社債は「一般公社債」扱いで源泉分離・損益通算不可
特定公社債等の課税は、平成28年改正により上場株式等と一体化されたことで、損益通算や繰越控除を活用した節税余地が広がりました。ただし、複数の証券口座を併用する方、譲渡損失が出る年がある方は、確定申告の判断が税負担に直結します。退任した役員・経営者で公社債を保有する方は、退職金・相続も絡む複合論点になるため、税理士による総合判断をお勧めします。確定申告の基礎については確定申告とは|対象者・期間・やり方の完全ガイド、退職金で運用を始める方は退職金の税金の計算方法も併せてご覧ください。
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