【税理士監修】譲渡した株式の取得費の計算方法|同一銘柄を複数回購入した場合

【税理士監修】譲渡した株式の取得費の計算方法|同一銘柄を複数回購入した場合
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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譲渡した株式の取得費の計算方法|同一銘柄を複数回購入した場合

「同じ銘柄の株を何回かに分けて買ったけど、売るときの取得費はどう計算する?」とお悩みの方に向けて、総平均法に準ずる方法による取得費の計算方法を具体例で完全ガイドします。この記事を読めば、複数回購入した株式の取得費を正確に計算できるようになります。

🏆 結論:同一銘柄を複数回購入した場合は「総平均法に準ずる方法」で計算する

同一銘柄の株式を2回以上に分けて購入し、その一部を売却した場合、取得費は「総平均法に準ずる方法」で1株あたりの単価を算出して計算します。特定口座なら証券会社が自動計算してくれますが、一般口座や確定申告時には自分で計算する必要があります。

株式の取得費とは?|譲渡所得計算の基本

株式の取得費の計算は、全部で5ステップです。「何が取得費に含まれるか」を確認し、「総平均法に準ずる方法」で1株あたりの単価を計算し、「売却株数」を掛けて取得費を算出します。

株式の譲渡所得は、売却価額から「取得費」と「譲渡費用(売却手数料等)」を差し引いて計算します。取得費が大きいほど譲渡益は小さくなり、税金も少なくなります。したがって、取得費を正確に計算することは節税の第一歩です。

株式投資の税金の全体像については、「株式投資の税金|譲渡益・配当金にかかる税金と確定申告のやり方」で詳しく解説しています。

取得費に含まれる費用・含まれない費用

取得費(取得価額)は、株式の購入代金だけではありません。取得にかかった付随費用も含まれます。

費用の項目 取得費に含まれるか 備考
株式の購入代金約定単価×株数
購入時の売買委託手数料証券会社に支払う手数料
手数料にかかる消費税手数料の10%
名義書換料(非上場株式)取得のために支出した費用
売却時の売買委託手数料×(譲渡費用)取得費ではなく譲渡費用に該当
株式保管料・口座管理料×保有中のランニングコスト
投資情報サービスの利用料×取得に直接要した費用ではない
借入金の利子×株式の場合は取得費に不算入

参考: 国税庁「No.1464 譲渡した株式等の取得費」

総平均法に準ずる方法の計算式

計算の基本ルール

同一銘柄の株式を2回以上に分けて購入し、その一部を売却した場合、取得費は「総平均法に準ずる方法」で算出した1株あたりの金額を基に計算します(所得税法施行令第118条第1項)。

💡 計算式

1株あたりの取得費 =(A + B)÷(C + D)

A:最初の購入(または直前の売却時)の購入価額の総額
B:Aの後から今回の売却時までの購入価額の総額
C:Aに係る株式の総数
D:Bに係る株式の総数

取得費 = 1株あたりの取得費 × 売却株数
※1株あたりの金額に1円未満の端数が出たときは切り上げ

ポイント:「直前の売却」でリセットされる

総平均法に準ずる方法の重要なポイントは、株式を売却するたびに1株あたりの単価が再計算される点です。1回目の売却後に追加購入があれば、2回目の売却時には「1回目の売却後の残りの単価 × 残り株数 + 追加購入分」で再平均します。

具体例で完全理解|5ステップの時系列計算

実務で最もよくあるパターンを、時系列の5ステップで計算してみましょう。

📐 シミュレーション前提条件(X社株式)

  • ①4月:1株800円×1,000株を購入(購入代金80万円)
  • ②7月:1株900円×500株を追加購入(購入代金45万円)
  • ③9月:600株を1株1,100円で売却(売却代金66万円)
  • ④11月:1株950円×400株を追加購入(購入代金38万円)
  • ⑤翌年2月:500株を1株1,200円で売却(売却代金60万円)
  • ※手数料は計算の簡便化のため省略

ステップ①②:購入(4月・7月)

まだ売却はないので、ここでは取得費の計算は不要です。保有状況を整理します。

時点 株数 購入代金合計
①4月購入1,000株800,000円
②7月追加購入500株450,000円
売却前の合計1,500株1,250,000円

ステップ③:1回目の売却(9月・600株)

ここで総平均法に準ずる方法で1株あたりの取得費を計算します。

計算ステップ 金額
購入代金合計(A+B)1,250,000円
購入株数合計(C+D)1,500株
1株あたりの取得費833.33…円 → 834円(切上げ)
売却600株の取得費834円×600株=500,400円
売却代金660,000円
譲渡益159,600円

1回目の売却後、残りは900株(1,500株−600株)。この900株の取得費の「繰越額」は834円×900株=750,600円です。

ステップ④⑤:追加購入(11月)→ 2回目の売却(翌年2月)

1回目の売却後に400株を追加購入しているので、2回目の売却時に再平均します。

計算ステップ 金額
前回売却後の繰越額(A)750,600円(834円×900株)
追加購入分(B)380,000円(950円×400株)
合計金額(A+B)1,130,600円
合計株数(900+400)1,300株
1株あたりの取得費869.69…円 → 870円(切上げ)
売却500株の取得費870円×500株=435,000円
売却代金600,000円
譲渡益165,000円

参考: 国税庁「No.1466 同一銘柄の株式等を2回以上にわたって購入している場合の取得費」

💡 実務のポイント

1円未満の端数の「切り上げ」を見落とすと、わずかですが取得費が過小計算になります。年間100社以上の確定申告を担当してきた経験上、端数処理のミスは意外に多いです。「切り上げ」は納税者有利のルールなので、忘れずに適用しましょう。

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特定口座と一般口座で同一銘柄を保有する場合の注意点

「別銘柄扱い」のルール

同一銘柄の株式を特定口座と一般口座の両方で保有している場合、税務上はそれぞれ別の銘柄として取得費を計算します。特定口座の取得費と一般口座の取得費を合算して総平均を取ることはできません。

これは東京地裁令和4年2月24日判決でも確認された取扱いであり、特定口座制度が口座ごとに譲渡損益を区分して計算する仕組みであることが根拠です。

⚠️ 注意:複数の証券会社の一般口座は合算する

特定口座と一般口座は「別銘柄扱い」ですが、複数の証券会社の一般口座同士は合算して取得費を計算します。A証券の一般口座で500株、B証券の一般口座で300株を保有している場合、両方の購入代金を合計して総平均を取ります。

特定口座内の取得費計算

特定口座では証券会社が自動的に総平均法に準ずる方法で取得費を計算し、年間取引報告書に記載してくれます。投資家が自分で計算する必要はありません。ただし、同日に同一銘柄の売買があった場合は、常に「買い」が「売り」より先にあったものとして処理されます。

取得費が調整されるケース|分割・併合・相続・合併

株式の取得費は、購入時の金額がそのまま使えない場合があります。主なケースを整理しました。

イベント 取得費の取扱い 計算例
株式分割(1→2)1株あたりの取得費が半分になる1,000円/株→500円/株(株数は2倍)
株式併合(2→1)1株あたりの取得費が2倍になる500円/株→1,000円/株(株数は半分)
相続(通常の相続)被相続人の取得費を引き継ぐ被相続人が500円で購入→取得費は500円
贈与贈与者の取得費を引き継ぐ贈与者が800円で購入→取得費は800円
合併(課税繰延べ)旧株式の取得費を合併比率で按分合併比率に応じて1株あたりの取得費を調整

💡 実務のポイント

相続で取得した株式を売却する場合、被相続人の取得費がわからないケースが非常に多いです。実務では、被相続人が使っていた証券会社に連絡して取引報告書の再発行を依頼するのが第一の対処法です。それでも判明しない場合は、売却代金の5%が取得費(概算取得費)として認められますが、税負担が大きくなるため最終手段と考えてください。

取得費が不明な場合の5つの確認方法

  1. 取引報告書を確認する — 証券会社から交付される売買の記録です。購入時の約定単価と手数料が記載されています
  2. 月次報告書・取引残高報告書を確認する — 証券会社が定期的に交付する残高報告書にも取得単価の記載がある場合があります
  3. 証券会社に問い合わせる — 過去の取引履歴を照会できます。ただし、証券会社の保存期間には限りがあります
  4. 名義書換日の株価で推定する — 非上場株式で購入時の記録がない場合、名義書換日の参考価格から推定する方法があります
  5. 概算取得費(売却代金の5%)を使う — 上記1〜4のいずれでも取得費が判明しない場合の最終手段です

⚠️ 概算取得費5%の影響は大きい

たとえば株式を300万円で売却した場合、取得費が不明だと概算取得費は15万円(300万円×5%)になります。仮に実際の購入代金が200万円だったとすれば、取得費が不明なだけで譲渡益が100万円から285万円に膨れ上がり、税額は約37.6万円増えます。取引報告書は必ず保管してください。

信用取引の場合の取得費計算

信用取引で反対売買により決済した場合は、「総平均法に準ずる方法」は適用されません。信用取引は建玉ごとに個別に損益が計算されるため、それぞれの建玉の約定単価がそのまま取得費になります。

ただし、信用取引で取得した株式を現引き(現物株として受け取ること)した場合は、その後の現物株の取得費に含まれ、他の購入分と合わせて総平均法に準ずる方法で計算されます。

離婚時の財産分与で株式を渡した場合の取得費

離婚に伴う財産分与として株式を配偶者に渡した場合、渡した側(分与した側)には譲渡所得が課税されます(所得税法第33条)。この場合の取得費は、もともとの購入価額です。分与時の時価が売却価額となります。

一方、財産分与で株式を受け取った側は、分与時の時価が取得費となります。将来その株式を売却する際にはこの時価を基に計算します。

よくある質問(FAQ)

特定口座なら自分で取得費を計算する必要はありませんか?
原則としてその通りです。特定口座では証券会社が総平均法に準ずる方法で自動計算し、年間取引報告書に取得費を記載してくれます。ただし、一般口座でも同じ銘柄を保有している場合は、一般口座分の取得費を自分で計算する必要があります。
1円未満の端数はどう処理しますか?
1株あたりの取得費に1円未満の端数が出た場合は、切り上げます。これは納税者に有利な処理です。たとえば、計算結果が833.33円なら834円として計算します。
同じ日に同じ銘柄を購入して売却した場合、取得費はどう計算しますか?
特定口座では、1日単位で譲渡損益を計算するため、同日に購入と売却があった場合は常に「買い」が「売り」より先にあったものとして処理されます。つまり、当日の購入分も含めて平均単価を計算した上で、売却の取得費とします。
株式分割があった場合、取得費はどうなりますか?
株式分割が行われた場合、1株あたりの取得費は分割比率に応じて調整されます。たとえば、1株を2株に分割した場合、取得費の総額は変わりませんが、1株あたりの取得費は半分になります。特定口座では証券会社が自動で調整してくれます。
相続した株式の取得費がまったくわからない場合はどうすればいいですか?
まず被相続人が使用していた証券会社に連絡し、過去の取引報告書の再発行を依頼してください。それでも判明しない場合は、概算取得費(売却代金の5%)を使うことが認められています。ただし、概算取得費を使うと税負担が大きくなるため、あらゆる手段で購入価額を調べることをおすすめします。
NISAで購入した株式を特定口座に移管した場合、取得費はいくらになりますか?
NISA口座から特定口座に払い出された株式の取得費は、払い出し時の時価です。NISAで購入したときの価額ではありません。たとえばNISAで1株500円で購入した株式が、払い出し時に1株800円になっていた場合、特定口座での取得費は800円となります。逆に300円に下がっていた場合は300円が取得費となり、NISAでの含み損は税務上のメリットとして使えません。
総平均法と先入先出法のどちらを使うべきですか?
株式等に係る譲渡所得または雑所得の計算では、法令上「総平均法に準ずる方法」で計算することが定められています。先入先出法は認められていません。ただし、純金積立(金定額購入システム)の所有期間の判定には先入先出法が適用されるため、混同しないように注意してください。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 同一銘柄を複数回購入した場合、取得費は「総平均法に準ずる方法」で1株あたりの平均単価を計算する
  • 売却するたびに平均単価が再計算される(売却ごとにリセット)
  • 1株あたりの端数は切り上げ(納税者有利)
  • 特定口座と一般口座で同一銘柄を保有する場合は「別銘柄扱い」で取得費を別々に計算する
  • 相続・贈与で取得した場合は被相続人・贈与者の取得費を引き継ぐ
  • 取得費不明の場合は売却代金の5%が概算取得費(税負担が大幅に増えるため最終手段)
  • 取引報告書は確定申告に必須の証拠書類。必ず保管すること

取得費の計算は、特定口座を利用していれば証券会社が自動的に行ってくれます。しかし、一般口座を利用している場合や、相続で取得した株式、株式分割・合併があった場合などは、自分で正確に計算する必要があります。計算に不安がある場合は、取引報告書を持参のうえ税理士に相談されることをおすすめします。

確定申告の基本的な手順については、「確定申告の基本と手続きの流れ」で詳しく解説しています。

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