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株式の譲渡損失と配当所得の損益通算・繰越控除のやり方
「株で損が出たけど確定申告すれば税金が戻ってくるの?」とお悩みの個人投資家に向けて、損益通算と3年間繰越控除の具体的なやり方を完全ガイドします。この記事を読めば、確定申告で最大限に税金を取り戻す方法がわかります。


株式の譲渡損失と配当所得の損益通算・繰越控除のやり方
「株で損が出たけど確定申告すれば税金が戻ってくるの?」とお悩みの個人投資家に向けて、損益通算と3年間繰越控除の具体的なやり方を完全ガイドします。この記事を読めば、確定申告で最大限に税金を取り戻す方法がわかります。
🏆 結論:株式の譲渡損失は確定申告すれば税金が戻る
上場株式の譲渡損失は、確定申告をすることで同じ年の譲渡益や配当所得と相殺(損益通算)でき、源泉徴収された税金の還付を受けられます。さらに、その年で控除しきれない損失は翌年以降3年間繰り越して、将来の譲渡益・配当所得から控除できます。ただし、繰越控除を受けるには損失が出た年から連続して確定申告書を提出する必要があります。1年でも申告を飛ばすと繰越控除の権利を失うため注意してください。
損益通算とは、ある所得の損失を別の所得の利益と差し引きして、税負担を軽くする制度です。株式投資に関する損益通算には「できるもの」と「できないもの」が明確に決まっています。
| 損失の種類 | 通算できる利益 | 通算可否 |
|---|---|---|
| 上場株式等の譲渡損失 | 上場株式等の譲渡益 | ○ |
| 上場株式等の譲渡損失 | 上場株式等の配当所得(申告分離課税を選択) | ○ |
| 上場株式等の譲渡損失 | 特定公社債等の利子・譲渡益 | ○ |
| 上場株式等の譲渡損失 | 一般株式等(非上場)の譲渡益 | × |
| 上場株式等の譲渡損失 | 配当所得(総合課税を選択) | × |
| 上場株式等の譲渡損失 | 給与所得・事業所得など他の所得 | × |
| 一般株式等(非上場)の譲渡損失 | 一般株式等の譲渡益 | ○ |
| 一般株式等(非上場)の譲渡損失 | 上場株式等の譲渡益 | × |
| FX・先物取引の損失 | 株式の譲渡益・配当所得 | × |
| NISA口座の譲渡損失 | すべての所得 | × |
⚠️ 特に注意すべき3つのルール
①上場と非上場は通算不可:上場株式等の損失と一般株式等(非上場)の利益は相互に通算できません。
②配当は申告分離課税のみ:配当所得と損益通算するには、配当金を申告分離課税で申告する必要があります。総合課税では通算できません。
③NISA口座は対象外:NISA口座内で生じた譲渡損失は、なかったものとみなされます。他の口座の利益や配当と通算することはできません。
参考: 国税庁「No.1465 株式等の譲渡損失(赤字)の取扱い」
損益通算を行うと、源泉徴収で天引きされた税金の一部または全部が還付されます。具体例で確認しましょう。
🧮 シミュレーション
A証券:譲渡益80万円(源泉徴収済み 162,520円)
B証券:譲渡損失▲50万円
損益通算後:80万円 − 50万円 = 30万円
正しい税額:30万円 × 20.315% = 60,945円
還付額:162,520円 − 60,945円 = 101,575円
🧮 シミュレーション
譲渡損失:▲120万円
譲渡益:なし
配当金:50万円(源泉徴収済み 101,575円)
損益通算:配当50万円 − 譲渡損失120万円のうち50万円 = 0円
配当金の税額:0円(全額還付)
還付額:101,575円
残りの繰越損失:120万円 − 50万円 = ▲70万円を翌年に繰越
💡 実務のポイント:控除の順序に注意
繰越控除を適用する際、繰り越された損失はまず譲渡益から控除し、それでも控除しきれない場合に配当所得から控除するという順序が定められています。この順序は納税者が選択できるものではありません。譲渡益と配当所得の両方がある場合、配当所得に対する税金だけを還付してもらう、という使い方はできない点に留意してください。
損益通算をしてもなお控除しきれない譲渡損失は、翌年以降3年間にわたって繰り越すことができます。4年間の数値推移を具体例で追跡します。
📐 シミュレーション前提条件
| 年度 | 譲渡益 | 配当金 | 繰越損失(年初) | 控除額 | 繰越損失(年末) | 還付額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1年目 | 0円 | 30万円 | ▲300万円 | 30万円 | ▲270万円 | 60,945円 |
| 2年目 | 80万円 | 30万円 | ▲270万円 | 110万円 | ▲160万円 | 223,465円 |
| 3年目 | 100万円 | 30万円 | ▲160万円 | 130万円 | ▲30万円 | 264,095円 |
| 4年目 | 50万円 | 30万円 | ▲30万円 | 30万円 | 0円(消化完了) | 60,945円 |
| 4年間の還付額合計 | 609,450円 | |||||
※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。
4年間で約60.9万円の税金が還付されるシミュレーションです。確定申告をしなければ、この還付はゼロになります。株式投資の税金の全体像は「株式投資の税金|譲渡益・配当金にかかる税金と確定申告のやり方」をご覧ください。
損益通算・繰越控除の確定申告の手順は、全部で6ステップです。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、必要な書類は自動で作成されます。
| 書類名 | 入手先 | 備考 |
|---|---|---|
| 特定口座年間取引報告書 | 証券会社(1月中旬に交付) | 譲渡損益・配当金額・源泉徴収税額が記載 |
| 上場株式配当等の支払通知書 | 証券会社 | 特定口座外の配当金がある場合 |
| 源泉徴収票 | 勤務先 | 給与所得がある場合 |
| 前年の確定申告書の控え | 自身で保管 | 繰越損失がある場合(付表の金額確認用) |
| マイナンバーカードまたは通知カード | — | e-Tax利用時は本人確認に必要 |
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、「所得税の確定申告書作成開始」を選択します。e-Taxで提出するか、書面で提出するかを選択してください。
「株式等の譲渡所得等」の欄から、特定口座年間取引報告書の内容を入力します。複数の証券会社に口座がある場合は、それぞれの報告書を入力します。損失が出た口座の内容も漏れなく入力してください。
損益通算を行う場合は、配当所得の課税方式で「申告分離課税」を選択します。総合課税を選択すると損益通算ができないため注意してください。課税方式の選び方は「上場株式の配当金の課税方法|総合課税・申告分離・源泉徴収の有利判定」で詳しく解説しています。
前年からの繰越損失がある場合は、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」に前年の繰越損失額を入力します。確定申告書等作成コーナーでは、画面の案内に沿って入力するだけで付表が自動作成されます。
申告書を提出すると、還付金がある場合は通常1〜2ヶ月で指定の銀行口座に振り込まれます。e-Taxで提出すると、書面提出より約2〜3週間早く還付される傾向があります。
参考: 国税庁「No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」
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鮎澤パートナーズに相談する繰越控除で最も多い失敗が、「取引がなかった年の確定申告を忘れる」ケースです。繰越控除を受けるには、損失が出た年から連続して確定申告書を提出しなければなりません。
📐 前提条件
| ケース | 3年目の課税対象額 | 3年目の税額 | 損失の金額 |
|---|---|---|---|
| 正しく毎年申告した場合 | 0円(150万−200万=マイナス) | 0円 | ▲50万円を翌年に繰越 |
| 2年目を飛ばした場合 | 150万円(繰越控除不可) | 304,725円 | 繰越権利消滅 |
2年目の申告を1回飛ばしただけで、約30.5万円の損失です。取引がなくても「譲渡損失を繰り越す」ための確定申告は忘れずに行いましょう。
💡 実務のポイント
確定申告で繰越控除の手続きを忘れた場合でも、法定申告期限から5年以内であれば「期限後申告」をすることで繰越控除の適用を受けられる場合があります。ただし、すでに確定申告書を提出済みの年に繰越損失を追加する場合は「更正の請求」が必要になるケースもあり、手続きが複雑になります。心当たりのある方は早めに税理士にご相談ください。
特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合、証券会社が口座内の譲渡損益と配当所得を年末に自動で損益通算してくれます。ただし、この自動通算にはいくつかの限界があります。
| 比較項目 | 口座内の自動損益通算 | 確定申告による損益通算 |
|---|---|---|
| 対象範囲 | 同一証券会社の同一口座内のみ | 異なる証券会社の口座間でも通算可能 |
| 通算のタイミング | 年末に自動で実施 | 翌年の確定申告時 |
| 翌年への繰越 | 不可(その年限り) | 翌年以降3年間繰越可能 |
| 配当金の受入条件 | 「株式数比例配分方式」が必須 | 受取方式を問わない |
| 合計所得金額への影響 | なし | あり |
| 確定申告の要否 | 不要 | 必要 |
複数の証券会社に口座がある場合、確定申告で口座間の損益を通算する際は以下の3つの戦略を検討してください。
| パターン | 状況 | 最適な戦略 |
|---|---|---|
| A:全口座が利益 | A証券+50万円、B証券+30万円 | 確定申告不要。前年の繰越損失がある場合のみ申告 |
| B:損益が混在 | A証券+50万円、B証券▲80万円 | 確定申告で口座間通算。A証券の源泉徴収税が還付される |
| C:全口座が損失 | A証券▲30万円、B証券▲50万円 | 確定申告で損失を合算し翌年に繰越。配当所得があればそれも通算 |
💡 実務のポイント:申告する口座の選択
特定口座(源泉徴収あり)の場合、申告するかどうかは口座ごとに選択できます。ただし、損失が出た口座を申告する場合は、その口座内の配当所得も併せて申告しなければなりません。また、申告すると合計所得金額に算入されるため、国民健康保険料や扶養控除への影響を考慮する必要があります。利益が出た口座をあえて申告しない選択も時には有効です。
自分が損益通算・繰越控除の確定申告をすべきかどうか、次のチェックリストで判断できます。
| # | あなたの状況 | 確定申告 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 1 | 1社の特定口座(源泉あり)で損失。配当あり | △ | 口座内で自動通算済み。繰り越したい場合は申告 |
| 2 | 複数社の口座で損益が混在 | ○ | 口座間通算で源泉徴収税の還付が受けられる |
| 3 | 損失のみ。来年以降に利益が見込まれる | ○ | 繰越控除で将来の税負担を軽減 |
| 4 | 前年からの繰越損失あり。今年は利益が出た | ○ | 繰越損失で今年の税額を軽減・還付 |
| 5 | NISA口座のみで損失 | × | NISA口座の損失は通算・繰越不可 |
| 6 | 損失あり。扶養控除の範囲内でいたい | △ | 申告すると合計所得金額に算入され扶養から外れる可能性 |
| 7 | 非上場株式の損失のみ | × | 非上場株式の損失は上場株の利益・配当と通算不可 |
| 8 | 前年の繰越損失あり。今年は取引なし | ○ | 繰越を維持するために申告必須(連続申告要件) |
株式の譲渡損失と不動産の譲渡損失では、損益通算のルールが大きく異なります。不動産の場合は一定の要件を満たせば、給与所得や事業所得といった他の所得との損益通算が可能なケースがあります。
| 比較項目 | 上場株式等の譲渡損失 | 居住用不動産の譲渡損失 |
|---|---|---|
| 他の所得との通算 | 不可(株式等の所得内のみ) | 可(一定の要件あり) |
| 繰越期間 | 3年間 | 3年間 |
| 適用要件 | 金融商品取引業者等を通じた譲渡 | 所有期間5年超、居住用財産であること等 |
| 配当所得との通算 | 可(申告分離課税を選択時) | 不可(不動産は株式の配当と通算できない) |
不動産を売却して損失が出た場合は、「マイホームの買換え等の場合の譲渡損失の損益通算・繰越控除」や「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除」の特例が使える場合があります。株式の損益通算とは全く別の制度です。
| # | 失敗パターン | 結果 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 1 | 取引がなかった年に確定申告を忘れた | 繰越控除の権利消滅 | カレンダーにリマインダー設定。期限後申告も検討 |
| 2 | 配当所得を総合課税で申告した | 譲渡損失と通算不可 | 損益通算する場合は必ず申告分離課税を選択 |
| 3 | NISA口座の損失を通算しようとした | 通算不可 | NISA口座の損失は「なかったもの」とみなされる |
| 4 | 上場株式の損失と非上場株式の利益を通算した | 通算不可(別区分) | 上場と非上場は別区分で計算。相互通算不可 |
| 5 | 損失口座の申告時に配当所得を申告しなかった | 配当所得との通算不可 | 損失口座を申告する場合、同口座内の配当も申告必須 |
⚠️ 相対取引の損失は対象外
損益通算・繰越控除の対象となるのは、金融商品取引業者等(証券会社等)を通じて行った上場株式等の譲渡により生じた損失に限られます。相対取引(証券会社を通さない直接取引)で生じた譲渡損失は対象外です。
確定申告の基本的な手続きは「確定申告の基礎知識」、所得控除の種類については「所得控除の一覧」をご参照ください。
平成28年1月以降、特定公社債(国債、地方債、外国国債、上場公社債など)の利子所得・譲渡所得等は、上場株式等の譲渡損失と損益通算が可能になりました。
| 金融商品 | 上場株式等の損失と通算 | 繰越控除 |
|---|---|---|
| 国債・地方債の利子 | ○ | ○ |
| 上場公社債の利子・償還差益 | ○ | ○ |
| 公募公社債投資信託の分配金 | ○ | ○ |
| 一般公社債(同族会社の社債を除く)の利子 | × | × |
| 銀行預金の利子 | × | × |
株式と債券を組み合わせたポートフォリオ運用をしている場合、債券の利子や償還差益と株式の譲渡損失を通算できるため、資産全体の税負担を最適化できます。
📋 この記事のポイント
損益通算・繰越控除は、株式投資で損失が出た場合に最も効果的な節税手段です。特に、複数の証券会社に口座がある方や、配当金を受け取っている方は、確定申告をすることで数万円〜数十万円の還付を受けられるケースが少なくありません。手続きが不安な方は、税理士に相談して確実に還付を受けてください。
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