【税理士監修】株式の譲渡損失と配当所得の損益通算・繰越控除のやり方

【税理士監修】株式の譲渡損失と配当所得の損益通算・繰越控除のやり方
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

株式の譲渡損失と配当所得の損益通算・繰越控除のやり方

「株で損が出たけど確定申告すれば税金が戻ってくるの?」とお悩みの個人投資家に向けて、損益通算と3年間繰越控除の具体的なやり方を完全ガイドします。この記事を読めば、確定申告で最大限に税金を取り戻す方法がわかります。

🏆 結論:株式の譲渡損失は確定申告すれば税金が戻る

上場株式の譲渡損失は、確定申告をすることで同じ年の譲渡益や配当所得と相殺(損益通算)でき、源泉徴収された税金の還付を受けられます。さらに、その年で控除しきれない損失は翌年以降3年間繰り越して、将来の譲渡益・配当所得から控除できます。ただし、繰越控除を受けるには損失が出た年から連続して確定申告書を提出する必要があります。1年でも申告を飛ばすと繰越控除の権利を失うため注意してください。

損益通算のしくみ|何と何が相殺できるのか

損益通算とは、ある所得の損失を別の所得の利益と差し引きして、税負担を軽くする制度です。株式投資に関する損益通算には「できるもの」と「できないもの」が明確に決まっています。

損益通算できるもの・できないものの判定表

損失の種類 通算できる利益 通算可否
上場株式等の譲渡損失上場株式等の譲渡益
上場株式等の譲渡損失上場株式等の配当所得(申告分離課税を選択)
上場株式等の譲渡損失特定公社債等の利子・譲渡益
上場株式等の譲渡損失一般株式等(非上場)の譲渡益×
上場株式等の譲渡損失配当所得(総合課税を選択)×
上場株式等の譲渡損失給与所得・事業所得など他の所得×
一般株式等(非上場)の譲渡損失一般株式等の譲渡益
一般株式等(非上場)の譲渡損失上場株式等の譲渡益×
FX・先物取引の損失株式の譲渡益・配当所得×
NISA口座の譲渡損失すべての所得×

⚠️ 特に注意すべき3つのルール

①上場と非上場は通算不可:上場株式等の損失と一般株式等(非上場)の利益は相互に通算できません。
②配当は申告分離課税のみ:配当所得と損益通算するには、配当金を申告分離課税で申告する必要があります。総合課税では通算できません。
③NISA口座は対象外:NISA口座内で生じた譲渡損失は、なかったものとみなされます。他の口座の利益や配当と通算することはできません。

参考: 国税庁「No.1465 株式等の譲渡損失(赤字)の取扱い」

損益通算で税金がいくら戻るのか?具体例で計算

損益通算を行うと、源泉徴収で天引きされた税金の一部または全部が還付されます。具体例で確認しましょう。

ケース1:同一年に譲渡損失と譲渡益がある場合

🧮 シミュレーション

A証券:譲渡益80万円(源泉徴収済み 162,520円)
B証券:譲渡損失▲50万円

損益通算後:80万円 − 50万円 = 30万円
正しい税額:30万円 × 20.315% = 60,945円
還付額:162,520円 − 60,945円 = 101,575円

ケース2:譲渡損失と配当所得を通算する場合

🧮 シミュレーション

譲渡損失:▲120万円
譲渡益:なし
配当金:50万円(源泉徴収済み 101,575円)

損益通算:配当50万円 − 譲渡損失120万円のうち50万円 = 0円
配当金の税額:0円(全額還付)
還付額:101,575円
残りの繰越損失:120万円 − 50万円 = ▲70万円を翌年に繰越

💡 実務のポイント:控除の順序に注意

繰越控除を適用する際、繰り越された損失はまず譲渡益から控除し、それでも控除しきれない場合に配当所得から控除するという順序が定められています。この順序は納税者が選択できるものではありません。譲渡益と配当所得の両方がある場合、配当所得に対する税金だけを還付してもらう、という使い方はできない点に留意してください。

3年間繰越控除の全体像|4年間のシミュレーション

損益通算をしてもなお控除しきれない譲渡損失は、翌年以降3年間にわたって繰り越すことができます。4年間の数値推移を具体例で追跡します。

📐 シミュレーション前提条件

  • 1年目に300万円の譲渡損失が発生
  • 毎年の譲渡益と配当金は表のとおり
  • すべて上場株式等。税率20.315%
  • 毎年連続して確定申告書を提出
年度 譲渡益 配当金 繰越損失(年初) 控除額 繰越損失(年末) 還付額
1年目0円30万円▲300万円30万円▲270万円60,945円
2年目80万円30万円▲270万円110万円▲160万円223,465円
3年目100万円30万円▲160万円130万円▲30万円264,095円
4年目50万円30万円▲30万円30万円0円(消化完了)60,945円
4年間の還付額合計609,450円

※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。

4年間で約60.9万円の税金が還付されるシミュレーションです。確定申告をしなければ、この還付はゼロになります。株式投資の税金の全体像は「株式投資の税金|譲渡益・配当金にかかる税金と確定申告のやり方」をご覧ください。

損益通算・繰越控除を受けるための確定申告の手順【6ステップ】

損益通算・繰越控除の確定申告の手順は、全部で6ステップです。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、必要な書類は自動で作成されます。

【ステップ1】必要書類を準備する

書類名 入手先 備考
特定口座年間取引報告書証券会社(1月中旬に交付)譲渡損益・配当金額・源泉徴収税額が記載
上場株式配当等の支払通知書証券会社特定口座外の配当金がある場合
源泉徴収票勤務先給与所得がある場合
前年の確定申告書の控え自身で保管繰越損失がある場合(付表の金額確認用)
マイナンバーカードまたは通知カードe-Tax利用時は本人確認に必要

【ステップ2】確定申告書等作成コーナーにアクセスする

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、「所得税の確定申告書作成開始」を選択します。e-Taxで提出するか、書面で提出するかを選択してください。

【ステップ3】株式等の譲渡所得等の入力

「株式等の譲渡所得等」の欄から、特定口座年間取引報告書の内容を入力します。複数の証券会社に口座がある場合は、それぞれの報告書を入力します。損失が出た口座の内容も漏れなく入力してください。

【ステップ4】配当所得の入力と課税方式の選択

損益通算を行う場合は、配当所得の課税方式で「申告分離課税」を選択します。総合課税を選択すると損益通算ができないため注意してください。課税方式の選び方は「上場株式の配当金の課税方法|総合課税・申告分離・源泉徴収の有利判定」で詳しく解説しています。

【ステップ5】付表の確認と繰越損失の入力

前年からの繰越損失がある場合は、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」に前年の繰越損失額を入力します。確定申告書等作成コーナーでは、画面の案内に沿って入力するだけで付表が自動作成されます。

【ステップ6】申告書の提出と還付金の受取り

申告書を提出すると、還付金がある場合は通常1〜2ヶ月で指定の銀行口座に振り込まれます。e-Taxで提出すると、書面提出より約2〜3週間早く還付される傾向があります。

参考: 国税庁「No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」

AYUSAWA PARTNERS

株式の損益通算・繰越控除の確定申告はお任せください

初回相談無料。税理士が複数口座の損益を最適に通算し、還付額を最大化する確定申告書を作成します。

鮎澤パートナーズに相談する

確定申告を1年飛ばすとどうなる?繰越控除が消滅するケース

繰越控除で最も多い失敗が、「取引がなかった年の確定申告を忘れる」ケースです。繰越控除を受けるには、損失が出た年から連続して確定申告書を提出しなければなりません。

失敗事例シミュレーション:2年目の申告を飛ばした場合

📐 前提条件

  • 1年目に200万円の譲渡損失が発生(確定申告済み)
  • 2年目は取引なし(確定申告を忘れた
  • 3年目に150万円の譲渡益が発生
ケース 3年目の課税対象額 3年目の税額 損失の金額
正しく毎年申告した場合0円(150万−200万=マイナス)0円▲50万円を翌年に繰越
2年目を飛ばした場合150万円(繰越控除不可)304,725円繰越権利消滅

2年目の申告を1回飛ばしただけで、約30.5万円の損失です。取引がなくても「譲渡損失を繰り越す」ための確定申告は忘れずに行いましょう。

💡 実務のポイント

確定申告で繰越控除の手続きを忘れた場合でも、法定申告期限から5年以内であれば「期限後申告」をすることで繰越控除の適用を受けられる場合があります。ただし、すでに確定申告書を提出済みの年に繰越損失を追加する場合は「更正の請求」が必要になるケースもあり、手続きが複雑になります。心当たりのある方は早めに税理士にご相談ください。

特定口座(源泉徴収あり)の口座内自動損益通算と確定申告の違い

特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合、証券会社が口座内の譲渡損益と配当所得を年末に自動で損益通算してくれます。ただし、この自動通算にはいくつかの限界があります。

比較項目 口座内の自動損益通算 確定申告による損益通算
対象範囲同一証券会社の同一口座内のみ異なる証券会社の口座間でも通算可能
通算のタイミング年末に自動で実施翌年の確定申告時
翌年への繰越不可(その年限り)翌年以降3年間繰越可能
配当金の受入条件「株式数比例配分方式」が必須受取方式を問わない
合計所得金額への影響なしあり
確定申告の要否不要必要

複数口座の最適な通算戦略

複数の証券会社に口座がある場合、確定申告で口座間の損益を通算する際は以下の3つの戦略を検討してください。

パターン 状況 最適な戦略
A:全口座が利益A証券+50万円、B証券+30万円確定申告不要。前年の繰越損失がある場合のみ申告
B:損益が混在A証券+50万円、B証券▲80万円確定申告で口座間通算。A証券の源泉徴収税が還付される
C:全口座が損失A証券▲30万円、B証券▲50万円確定申告で損失を合算し翌年に繰越。配当所得があればそれも通算

💡 実務のポイント:申告する口座の選択

特定口座(源泉徴収あり)の場合、申告するかどうかは口座ごとに選択できます。ただし、損失が出た口座を申告する場合は、その口座内の配当所得も併せて申告しなければなりません。また、申告すると合計所得金額に算入されるため、国民健康保険料や扶養控除への影響を考慮する必要があります。利益が出た口座をあえて申告しない選択も時には有効です。

損益通算すべきか?8パターンの判断チェックリスト

自分が損益通算・繰越控除の確定申告をすべきかどうか、次のチェックリストで判断できます。

# あなたの状況 確定申告 理由
11社の特定口座(源泉あり)で損失。配当あり口座内で自動通算済み。繰り越したい場合は申告
2複数社の口座で損益が混在口座間通算で源泉徴収税の還付が受けられる
3損失のみ。来年以降に利益が見込まれる繰越控除で将来の税負担を軽減
4前年からの繰越損失あり。今年は利益が出た繰越損失で今年の税額を軽減・還付
5NISA口座のみで損失×NISA口座の損失は通算・繰越不可
6損失あり。扶養控除の範囲内でいたい申告すると合計所得金額に算入され扶養から外れる可能性
7非上場株式の損失のみ×非上場株式の損失は上場株の利益・配当と通算不可
8前年の繰越損失あり。今年は取引なし繰越を維持するために申告必須(連続申告要件)

不動産の譲渡損失の損益通算との違い

株式の譲渡損失と不動産の譲渡損失では、損益通算のルールが大きく異なります。不動産の場合は一定の要件を満たせば、給与所得や事業所得といった他の所得との損益通算が可能なケースがあります。

株式と不動産の損益通算ルール比較

比較項目 上場株式等の譲渡損失 居住用不動産の譲渡損失
他の所得との通算不可(株式等の所得内のみ)可(一定の要件あり)
繰越期間3年間3年間
適用要件金融商品取引業者等を通じた譲渡所有期間5年超、居住用財産であること等
配当所得との通算可(申告分離課税を選択時)不可(不動産は株式の配当と通算できない)

不動産を売却して損失が出た場合は、「マイホームの買換え等の場合の譲渡損失の損益通算・繰越控除」や「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除」の特例が使える場合があります。株式の損益通算とは全く別の制度です。

損益通算に関する注意点と失敗事例

よくある失敗パターン5選

# 失敗パターン 結果 対策
1取引がなかった年に確定申告を忘れた繰越控除の権利消滅カレンダーにリマインダー設定。期限後申告も検討
2配当所得を総合課税で申告した譲渡損失と通算不可損益通算する場合は必ず申告分離課税を選択
3NISA口座の損失を通算しようとした通算不可NISA口座の損失は「なかったもの」とみなされる
4上場株式の損失と非上場株式の利益を通算した通算不可(別区分)上場と非上場は別区分で計算。相互通算不可
5損失口座の申告時に配当所得を申告しなかった配当所得との通算不可損失口座を申告する場合、同口座内の配当も申告必須

⚠️ 相対取引の損失は対象外

損益通算・繰越控除の対象となるのは、金融商品取引業者等(証券会社等)を通じて行った上場株式等の譲渡により生じた損失に限られます。相対取引(証券会社を通さない直接取引)で生じた譲渡損失は対象外です。

確定申告の基本的な手続きは「確定申告の基礎知識」、所得控除の種類については「所得控除の一覧」をご参照ください。

特定公社債等の利子・譲渡益との損益通算

平成28年1月以降、特定公社債(国債、地方債、外国国債、上場公社債など)の利子所得・譲渡所得等は、上場株式等の譲渡損失と損益通算が可能になりました。

通算可能な特定公社債等の範囲

金融商品 上場株式等の損失と通算 繰越控除
国債・地方債の利子
上場公社債の利子・償還差益
公募公社債投資信託の分配金
一般公社債(同族会社の社債を除く)の利子××
銀行預金の利子××

株式と債券を組み合わせたポートフォリオ運用をしている場合、債券の利子や償還差益と株式の譲渡損失を通算できるため、資産全体の税負担を最適化できます。

よくある質問(FAQ)

損益通算をするには配当金の受取方式は関係ありますか?
特定口座(源泉徴収あり)の口座内で自動的に損益通算を行う場合は、配当金の受取方式を「株式数比例配分方式」にする必要があります。確定申告で損益通算を行う場合は、受取方式に関係なく通算できます。配当金領収証方式や登録配当金受領口座方式でも、確定申告で申告分離課税を選択すれば損益通算の対象になります。
今年の損失と過去の繰越損失が両方ある場合、どちらが先に控除されますか?
古い年度の繰越損失から先に控除されます。例えば、2年前の繰越損失30万円と今年の損失50万円がある場合、今年の譲渡益からは2年前の損失30万円が先に控除され、今年の損失50万円は翌年に繰り越されます。これは、繰越期限が早く到来する損失から消化するためのルールです。
確定申告の期限を過ぎてしまいました。繰越控除はもう受けられませんか?
まだ間に合う可能性があります。確定申告を一度もしていない年については、法定申告期限から5年以内であれば「期限後申告」で損失の繰越控除の適用を受けられます。すでに確定申告書を提出済みで繰越損失の記載を忘れた場合は、「更正の請求」で修正できるケースもあります。早めに税理士にご相談ください。
特定口座(源泉徴収あり)で配当を自動通算した後、さらに確定申告で別口座と通算できますか?
はい、できます。ただし、特定口座(源泉徴収あり)を確定申告する場合は、口座内の自動通算後の金額ではなく、通算前の金額で申告します。つまり、口座内で一度通算されていても、確定申告では通算前の譲渡益・譲渡損失・配当金額をそれぞれ入力し、他の口座と合わせて再計算します。
FX(外国為替証拠金取引)の損失と株式の利益は通算できますか?
通算できません。FXや先物・オプション取引の損益は「先物取引に係る雑所得等」に該当し、株式等の譲渡所得とは別の区分です。FXの損失はFXや先物取引の利益とのみ通算可能で、株式の譲渡益や配当所得とは通算できません。逆に、株式の損失をFXの利益と通算することもできません。
繰越控除を受けると住民税や国民健康保険料に影響しますか?
はい、影響する可能性があります。令和5年分以降、所得税と住民税の課税方式が統一されたため、確定申告で損益通算・繰越控除を行うと、利益部分は合計所得金額に算入されます。ただし、繰越損失で利益が相殺される部分は総所得金額等に含まれないため、保険料への影響は限定的です。損失を大きく上回る利益がある場合は注意が必要です。
損益通算で還付される税金はいつ振り込まれますか?
確定申告書を提出してから通常1〜2ヶ月で、指定した銀行口座に振り込まれます。e-Taxで提出した場合は3週間程度に短縮されることもあります。還付金の処理状況は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」の「還付金処理状況確認」機能やe-Taxのメッセージボックスで確認できます。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 上場株式等の譲渡損失は、申告分離課税を選択した配当所得・譲渡益と損益通算できる
  • 控除しきれない損失は翌年以降3年間繰り越せる。連続して確定申告書の提出が必要
  • 上場株式と非上場株式は相互通算不可。NISA口座の損失も通算対象外
  • 複数口座の損益通算は確定申告が必要。口座内の自動通算だけでは不十分なケースがある
  • 確定申告を1年飛ばすと繰越控除の権利を失う。取引がない年も忘れずに申告すること
  • 確定申告すると合計所得金額に影響。扶養控除・保険料への影響も考慮して判断すること

損益通算・繰越控除は、株式投資で損失が出た場合に最も効果的な節税手段です。特に、複数の証券会社に口座がある方や、配当金を受け取っている方は、確定申告をすることで数万円〜数十万円の還付を受けられるケースが少なくありません。手続きが不安な方は、税理士に相談して確実に還付を受けてください。

AYUSAWA PARTNERS

株式の損益通算・繰越控除の確定申告はお任せください

初回相談無料。公認会計士・税理士が複数口座の損益を最適に通算し、還付額を最大化します。

鮎澤パートナーズに相談する
お電話で相談03-4500-9714LINEで相談無料相談を予約