【税理士×行政書士が解説】相続登記の義務化|施行内容と罰則・手続き方法

【税理士×行政書士が解説】相続登記の義務化|施行内容と罰則・手続き方法
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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相続登記の義務化|施行内容と罰則・手続き方法

「相続登記をしないとどうなる?」「期限はいつまで?」とお悩みの方に向けて、2024年4月施行の相続登記義務化の全容を解説します。この記事を読めば、自分の期限がいつか判断でき、手続きの方法と費用がわかります。

🏆 結論:相続登記義務化のポイント

2024年4月1日から相続登記が義務化されました。不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記申請が必要です。施行前の相続も対象で、2027年3月31日が期限です。正当な理由なく登記しないと10万円以下の過料の対象になります。遺産分割がまとまらない場合は「相続人申告登記」で暫定的に義務を果たせます。

📢 制度改正の経緯

相続登記の義務化は、令和3年(2021年)の民法・不動産登記法改正により創設され、令和6年(2024年)4月1日に施行されました。所有者不明土地が全国で約24%にのぼり、公共事業や災害復旧の妨げになっていたことが義務化の背景です。施行から2年が経過した現在、2024年4月以降の相続については最も早い過料適用が2027年4月以降となります。施行前の相続は2027年3月31日が期限のため、早めの対応が重要です。

相続登記義務化の全体像【5つのポイント】

相続登記の義務化について、押さえるべきポイントは5つです。

  1. 対象 — 相続(遺言を含む)により不動産を取得した全ての相続人
  2. 期限 — 不動産の取得を知った日から3年以内(施行前の相続は2027年3月31日まで)
  3. 罰則 — 正当な理由なく登記しないと10万円以下の過料
  4. 救済措置 — 遺産分割未了の場合は「相続人申告登記」で義務を履行可能
  5. 遡及適用 — 施行前の相続も全て対象(過去の未登記不動産も含む)

参考: 法務省「相続登記の申請義務化について」

相続発生時期別の期限判定表

相続登記の期限は、相続が発生した時期と遺産分割の状況によって異なります。以下の判定表で自分の期限を確認してください。

パターン 相続発生時期 遺産分割の状況 登記期限
A2024年4月1日以降遺産分割済み取得を知った日から3年以内
B2024年4月1日以降遺産分割未了取得を知った日から3年以内に法定相続登記or相続人申告登記 + 分割確定後3年以内に本登記
C2024年3月31日以前遺産分割済み2027年3月31日まで
D2024年3月31日以前遺産分割未了2027年3月31日までに法定相続登記or相続人申告登記 + 分割確定後3年以内に本登記

⚠️ 注意

パターンC・Dに該当する方は、2027年3月31日までに対応が必要です。特に数十年前の相続で未登記のまま放置している不動産がある場合、相続人の数が増加して手続きが非常に複雑になっている可能性があります。早めに専門家に相談してください。

過料が科されるまでのフロー

期限を過ぎたからといって即座に10万円の過料が科されるわけではありません。以下のフローで段階的に進みます。

段階 内容 対応方法
1. 義務違反の発見登記官が未登記の不動産を発見
2. 催告書の送付登記官が相続人に登記申請を催告催告を受けたら速やかに登記申請する
3. 説明の機会相続人に正当な理由の説明機会が与えられる正当な理由がある場合はここで説明する
4. 裁判所への通知正当な理由なく催告に応じない場合、登記官が裁判所に通知
5. 過料の決定裁判所が事情を聴取し、10万円以下の過料を決定

💡 実務のポイント

2024年4月の施行から2年が経過した現在、施行後の相続については最も早い過料適用は2027年4月以降です。現時点で過料が科された事例は報告されていません。ただし、催告書が届いてから慌てて手続きを始めると、戸籍収集だけで数週間かかるケースもあります。期限に余裕があるうちに準備を進めておくことをおすすめします。

「正当な理由」に該当するかの判定チェックリスト

以下のいずれかに該当すれば、期限を過ぎても「正当な理由」として過料を免れる可能性があります。ただし最終的な判断は法務局の登記官が個別に行います。

正当な理由のパターン 該当
相続人が極めて多数で、戸籍収集や相続人の把握に時間がかかる
遺言の有効性や遺産の範囲について相続人間で争いがある
登記申請義務を負う相続人自身が重病である
DV被害により避難を余儀なくされている
経済的に困窮し、登記費用(登録免許税等)を支払えない

「忙しいから」「面倒だから」「費用がもったいないから」といった理由は正当な理由として認められません。

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相続登記と相続人申告登記の比較

遺産分割がまとまらない場合の「相続人申告登記」と通常の「相続登記」の違いを比較表で確認しましょう。

比較項目 相続登記(本登記) 相続人申告登記
概要所有権の移転を登記相続人であることを申し出
所有権の取得対外的に主張可能主張不可(暫定措置)
義務の履行基本的義務+追加的義務を履行基本的義務のみ履行
遺産分割の要否必要(法定相続分登記を除く)不要
申請者取得者(共同申請の場合あり)相続人が単独で申出可能
必要書類戸籍一式・遺産分割協議書・印鑑証明書等申出人の戸籍(被相続人との関係を証する)のみ
費用登録免許税(不動産価額の0.4%)+司法書士報酬無料(登録免許税不要)
後の手続き完了(売却・担保設定可能)遺産分割確定後3年以内に本登記が必要

📝 行政書士の視点

相続人申告登記は手続きが簡易で費用もかからないため、遺産分割協議が長引きそうな場合の「応急措置」として非常に有効です。ただし、あくまで暫定的な制度であり、不動産の売却や担保設定はできません。遺産分割が確定したら速やかに本登記を行ってください。また、相続人申告登記は申し出た本人のみが義務を履行したことになるため、他の相続人にも申出を促すことが重要です。

相続登記の手続き方法と必要書類

手続きの流れ

相続登記の手続きは、相続人の確定(戸籍収集)、相続財産の確認(登記事項証明書の取得)、遺産分割協議書の作成(法定相続分と異なる場合)、登記申請書の作成、法務局への申請(窓口またはオンライン)の順で進めます。

必要書類チェックリスト

相続登記に必要な主な書類は、被相続人の出生から死亡までの全戸籍謄本、被相続人の住民票除票、相続人全員の戸籍謄本、不動産を取得する相続人の住民票、遺産分割協議書(法定相続分と異なる場合)、相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書がある場合)、固定資産評価証明書、登記申請書、登録免許税(不動産の固定資産税評価額の0.4%)です。

遺産分割協議書の作成方法については「遺産分割協議の方法|協議書の作成とトラブル防止策」で詳しく解説しています。

相続登記の費用シミュレーション

📐 シミュレーション前提条件

  • 不動産1件(土地+建物)、固定資産税評価額2,000万円
  • 相続人2人、遺産分割協議済み
  • 登録免許税:2,000万円 × 0.4% = 80,000円
費用項目 自分で申請 司法書士に依頼
登録免許税80,000円80,000円
戸籍謄本等の取得費用約5,000〜10,000円約5,000〜10,000円
司法書士報酬0円60,000〜100,000円
合計約85,000〜90,000円約145,000〜190,000円

※不動産の価額が100万円以下の土地は、令和9年3月31日まで登録免許税が免除されます(租税特別措置法第84条の2の3)。

💡 実務のポイント

相続登記を自分で行うことは可能ですが、不動産が複数件ある場合や相続人が多い場合は、申請書の記載ミスで補正を求められるケースが多くなります。法務局では「登記手続案内」として予約制の無料相談を実施しているので、自分で申請する場合はまず相談してから書類を作成することをおすすめします。

相続登記と相続税の関係

相続登記と相続税申告は別の手続きですが、密接に関連しています。相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月以内で、申告期限までに遺産分割が完了していれば、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用できます。相続登記の期限(3年以内)は相続税の申告期限(10ヶ月以内)より長いですが、相続税申告のために遺産分割協議書を作成するなら、同時に相続登記も進めるのが効率的です。

相続税の計算方法について詳しくは「相続税の計算方法」をご覧ください。小規模宅地等の特例については「小規模宅地等の特例の概要」で解説しています。

所有不動産記録証明制度(2026年2月施行)

2026年2月2日から「所有不動産記録証明制度」がスタートしました。これは、特定の人が所有者として登記されている全国の不動産を一覧的にリスト化して証明する制度です。手数料は窓口請求で1通1,600円です。

この制度を利用すれば、被相続人名義の不動産を漏れなく把握できるため、「知らない不動産が後から見つかった」というトラブルを防げます。相続登記の準備として活用することをおすすめします。

相続登記をしないまま放置するとどうなるか

過料のリスク以外にも、相続登記を放置するデメリットは多数あります。不動産を売却できない(買主への所有権移転登記ができない)、不動産を担保に融資を受けられない、相続人が増加して手続きが複雑化する、固定資産税の納税通知が届かなくなる場合がある、空き家として放置されると近隣トラブルの原因になるなどです。

遺言書で不動産の承継先を指定しておけば、遺産分割協議を経ずに相続登記が可能です。詳しくは「遺言書の書き方|自筆証書遺言・公正証書遺言の違いと注意点」をご覧ください。

📊 公認会計士の視点

不動産を相続した場合、相続税の申告(10ヶ月以内)と相続登記(3年以内)の2つの期限を同時に管理する必要があります。遺産分割協議書は両方の手続きで使用するため、一度に作成すれば手間を大幅に省けます。当事務所では、行政書士が遺産分割協議書を作成し、税理士が相続税申告を行い、提携司法書士が相続登記を行うワンストップ体制でサポートしています。

よくある質問(FAQ)

相続登記の義務化は過去の相続にも適用されますか?
はい、2024年4月1日より前に発生した相続であっても、未登記の不動産は義務化の対象です。この場合の期限は2027年3月31日です。数十年前の相続で放置している不動産も対象となるため、早めに対応してください。
相続人申告登記をすれば相続登記はもう不要ですか?
いいえ、相続人申告登記は暫定措置であり、遺産分割が確定した日から3年以内に正式な相続登記が必要です。相続人申告登記だけでは不動産の売却や担保設定はできません。
固定資産税を支払っていれば相続登記は不要ですか?
固定資産税の納税と相続登記は別の手続きです。固定資産税を支払っていても、登記簿上の名義が変更されていなければ相続登記の義務は果たしていません。固定資産税の納税通知書が届いているからといって安心せず、登記簿を確認してください。
相続した土地を国に引き取ってもらうことはできますか?
2023年4月27日に施行された「相続土地国庫帰属制度」を利用すれば、一定の要件を満たす土地を国に帰属させることができます。ただし、建物がある土地や担保権が設定されている土地は対象外で、負担金(20万円〜)の納付が必要です。
住所変更登記の義務化はいつからですか?
住所等変更登記の義務化は2026年4月1日に施行されます。住所や氏名の変更から2年以内に登記が必要で、正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の対象になります。
相続登記の登録免許税が免除されるケースはありますか?
令和9年3月31日までの間、不動産の価額が100万円以下の土地については登録免許税が免除されます。また、相続登記をせずに亡くなった場合の「数次相続」の登記についても免税措置があります。
相続登記は自分でできますか?それとも専門家に依頼すべきですか?
相続人が少なく不動産が1件だけの場合は自分で申請することも可能です。法務局の「登記手続案内」(予約制・無料)を活用してください。相続人が多い場合、不動産が複数ある場合、数次相続(二重三重の相続)が発生している場合は、司法書士に依頼した方が確実です。費用は不動産1件で6〜10万円程度が相場です。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 2024年4月1日から相続登記が義務化。不動産の取得を知った日から3年以内に申請が必要
  • 施行前の相続も対象で、2027年3月31日が期限
  • 正当な理由なく登記しないと10万円以下の過料の対象
  • 遺産分割がまとまらない場合は「相続人申告登記」(無料)で暫定的に義務を履行可能
  • 過料は即座に科されるのではなく、催告→説明機会→裁判所通知の段階を経る
  • 相続税申告(10ヶ月以内)と合わせて遺産分割協議書を作成すれば効率的
  • 2026年2月からの「所有不動産記録証明制度」で被相続人の不動産を網羅的に把握可能

贈与税の基本については「贈与税の仕組みと基礎知識」、事業承継については「事業承継税制の概要」もご覧ください。

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