【税理士×行政書士が解説】デジタル遺産の相続|暗号資産・ネット口座・NFTの取扱いと対策

【税理士×行政書士が解説】デジタル遺産の相続|暗号資産・ネット口座・NFTの取扱いと対策
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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デジタル遺産の相続|暗号資産・ネット口座・NFTの取扱いと対策

「亡くなった家族が暗号資産やネット口座を持っていたかもしれない」とお困りの相続人に向けて、デジタル遺産の見つけ方・相続税評価方法・手続きの流れ・生前対策を完全ガイドします。この記事を読めば、デジタル遺産の相続で見落としなく手続きを進められます。

🏆 結論:デジタル遺産も相続税の対象。見つけられなければ申告漏れリスク

ネット口座・暗号資産・NFT・電子マネー等のデジタル遺産は、不動産や預貯金と同様に相続税の課税対象です。最大の課題は「そもそも存在に気づけるか」。通帳やキャッシュカードがないため見落としやすく、相続税申告後に発覚すると追徴課税のリスクがあります。生前にデジタル資産のリストとアクセス情報を家族に共有しておくことが最も重要な対策です。

デジタル遺産とは?種類と相続財産になるもの・ならないもの

デジタル遺産とデジタル遺品の違い

デジタル遺産とは、故人がインターネット上やデジタル機器に保有していた財産的価値のあるデータのことです。一方、写真・動画・SNSアカウントなど財産的価値のないデータは「デジタル遺品」と呼ばれ、遺産分割や相続税の対象にはなりません。

デジタル遺産の種類一覧

分類 具体例 相続対象 評価方法
ネット銀行口座楽天銀行・住信SBIネット銀行・PayPay銀行等死亡日の残高
ネット証券口座SBI証券・楽天証券・マネックス証券等死亡日の終値(上場株式等)
暗号資産(仮想通貨)ビットコイン・イーサリアム等死亡日の取引価格
NFTデジタルアート・ゲームアイテム等個別評価(売買実例・精通者意見等)
FX口座GMOクリック証券・DMM FX等死亡日の評価損益(マイナスの場合あり)
電子マネー残高Suica・PayPay・楽天Edy等死亡日の残高(少額なら実務上省略も)
ポイント楽天ポイント・Tポイント・マイル等規約次第(多くは一身専属で相続不可)
サブスクリプションNetflix・Spotify・Adobe等×—(財産ではないが解約しないと課金継続)

⚠️ 注意

FX口座は「マイナスの遺産」になる可能性があります。レバレッジ取引で追加証拠金(追証)が発生していた場合、その返済義務も相続人が引き継ぎます。デジタル遺産にはプラスだけでなくマイナスもあることを認識しておいてください。

デジタル遺産の見つけ方|10の手がかりチェックリスト

デジタル遺産の最大の課題は「存在に気づけるか」です。通帳やキャッシュカードのような物理的な手がかりがないため、以下のチェックリストを使って漏れなく調査しましょう。

No. 確認すべき手がかり 見つかる可能性のあるデジタル遺産
1スマートフォンのアプリ一覧ネット銀行・証券・暗号資産取引所・電子マネー
2パソコンのブックマーク・ブラウザ履歴ネット証券・FX・クラウドファンディング
3メールの受信箱(取引通知・入出金通知)ほぼすべてのデジタル口座
4クレジットカードの利用明細サブスク・有料サービス・暗号資産購入履歴
5銀行口座の入出金明細ネット口座への振替・暗号資産取引所への入金
6郵送物(確定申告書の控え・年間取引報告書)証券口座・暗号資産の申告実績
7確定申告書(過去の雑所得・譲渡所得)暗号資産の取引・FXの損益
8パスワード管理アプリ・メモ帳各種ログイン情報
9ハードウェアウォレット(USBメモリ型の機器)自己管理の暗号資産
10エンディングノート・遺言書本人が記録したデジタル資産一覧

💡 実務のポイント

デジタル遺産の調査で最も効率的なのは「故人のメールアカウント」へのアクセスです。ネット口座や暗号資産取引所は必ず登録メールアドレスに取引通知を送信しているため、メールを検索するだけで保有口座をほぼ網羅できます。スマートフォンのロック解除ができない場合は、専門業者(デジタルフォレンジック業者)に相談する方法もあります。

暗号資産(仮想通貨)の相続税評価方法

活発な市場がある暗号資産の評価

ビットコインやイーサリアムなど、暗号資産交換業者が取引価格を公表している暗号資産は、「相続開始日(死亡日)における取引価格」で評価します。国税庁のFAQでは、暗号資産交換業者が公表する課税時期の取引価格によって評価するとされています。

具体的には、故人が利用していた暗号資産交換業者に死亡の届出を行い、相続開始日時点の残高証明書を発行してもらいます。この残高証明書に記載された日本円換算額が相続税の評価額となります。

活発な市場がない暗号資産・NFTの評価

マイナーな暗号資産やNFTなど、活発な市場が存在しないデジタル資産については、売買実例価額や精通者意見価格などを参考に個別に評価します。NFTについては現時点で明確な評価通達がないため、税理士と相談の上、合理的な評価方法を選択する必要があります。

📊 公認会計士の視点

暗号資産は価格変動が非常に激しいため、死亡日と遺産分割時で評価額が大幅に異なるケースがあります。相続人間の公平を図るなら、遺産分割協議の前に暗号資産を日本円に換金し、現金として分割する方法が最もトラブルが少ないです。相続税の計算方法は「相続税の計算方法と税率」で詳しく解説しています。

暗号資産の相続手続き|取引所保管 vs 自己管理ウォレット

取引所に保管されている場合の手続き5ステップ

国内の暗号資産交換業者(Coincheck、bitFlyer、GMOコイン等)に保管されている暗号資産は、以下の5ステップで相続手続きを進めます。

ステップ1:暗号資産交換業者に故人の死亡を連絡します。IDやパスワードがわからなくても、死亡届のコピーと相続人の本人確認書類を提出すれば手続きを開始できます。

ステップ2:交換業者から残高証明書(相続開始日の日本円換算レート・換算額)と取引履歴の発行を受けます。

ステップ3:必要書類(戸籍謄本・印鑑証明書・遺産分割協議書等)を交換業者に提出します。

ステップ4:交換業者が書類を確認後、暗号資産を日本円に換金して代表相続人の銀行口座に振り込むか、代表相続人の交換業者口座に暗号資産のまま移管します。

ステップ5:相続手続き完了通知を受け取り、相続税申告に反映します。

自己管理ウォレットの場合の注意点

故人が自分のウォレット(ハードウェアウォレットやソフトウェアウォレット)で暗号資産を管理していた場合は、秘密鍵(プライベートキー)またはシードフレーズ(リカバリーフレーズ)がなければアクセスできません。

⚠️ 注意

秘密鍵を紛失すると、暗号資産は永久にアクセス不能になります。ビットコイン総量のうち約2割がアクセス不能により遺失しているという推計もあります。自己管理ウォレットを使用している方は、秘密鍵またはシードフレーズを安全な場所(貸金庫等)に保管し、信頼できる家族にその存在を伝えておくことが不可欠です。

AYUSAWA PARTNERS

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暗号資産の相続と二重課税問題|税負担シミュレーション

相続税+売却時の所得税で税負担が大きくなるケース

暗号資産を相続した後に売却すると、相続税とは別に売却益に対する所得税(雑所得)が課税されます。暗号資産の売却益は「雑所得」として総合課税され、最大55%(所得税45%+住民税10%)の税率が適用されます。しかも、暗号資産には「取得費加算の特例」が適用されないため、相続税と所得税の二重課税に近い状態が生じます。

📐 シミュレーション前提条件

  • 相続人:子1人(他に相続財産5,000万円あり)
  • 暗号資産の相続税評価額=取得価額:3,000万円
  • 売却時の価額:3,000万円(評価額と同額で売却と仮定)
  • 相続人の給与所得:500万円
項目 暗号資産のまま保有 相続後すぐに売却
相続税(暗号資産分の概算)約600万円約600万円
売却時の所得税・住民税約900万円
税負担合計約600万円約1,500万円
手元に残る額(3,000万円から)—(価格変動リスクあり)約1,500万円

※概算値です。被相続人の取得価額が不明の場合は売却額の5%を取得費とみなすため、税負担はさらに大きくなります。個別の状況により異なりますので、税理士にご相談ください。

💡 実務のポイント

暗号資産の相続で最も重要なのは「被相続人の取得価額」を把握しておくことです。取得価額が不明の場合、税務上は売却額の5%を取得費とみなすため、売却額のほとんどが課税対象になります。取引履歴は必ず暗号資産交換業者から取得し、保管してください。

ネット銀行・ネット証券の相続手続き

ネット銀行の口座凍結と解約

ネット銀行も通常の銀行と同様に、口座名義人の死亡を知った時点で口座が凍結されます。手続きの流れはカスタマーサポートへの連絡→必要書類の提出→残高の払い戻しという点で一般的な銀行と同じですが、「窓口がない」ため全てオンラインまたは郵送で手続きする必要があります。

ネット銀行の場合、故人のIDやパスワードがわからなくても、相続人であることを証明する書類(戸籍謄本・死亡届等)を提出すれば手続きを進められます。「〇〇銀行 相続手続き」で検索し、専用窓口の連絡先を確認しましょう。

ネット証券の相続手続き

ネット証券口座の有価証券は、相続人名義の証券口座に移管する形で相続します。相続人がその証券会社に口座を持っていない場合は、新規に口座を開設する必要があります。上場株式の相続税評価は、死亡日の終値、死亡月の終値の月平均、前月の終値の月平均、前々月の終値の月平均の4つのうち最も低い価額を選択できます。

デジタル終活のすすめ|生前にやっておくべき8つの対策

デジタル遺産のトラブルを防ぐためには、本人が元気なうちに「デジタル終活」を行うことが最も効果的です。以下の8項目を準備しておきましょう。

No. 対策項目 具体的な方法
1デジタル資産のリストアップ保有するネット口座・暗号資産・電子マネー等を一覧表にする
2ログイン情報の記録ID・パスワードをパスワード管理アプリまたは紙で安全に保管
3秘密鍵・シードフレーズの保管貸金庫等の安全な場所に保管し、家族に存在を伝える
4スマートフォンのロック解除方法の共有PINコードまたは生体認証の代替手段を家族に伝える
5不要な口座・サブスクの整理使っていない口座を解約し、サブスクは定期的に棚卸し
6遺言書にデジタル資産を明記財産目録にデジタル資産を含め、相続人と分割方法を指定
7暗号資産の取引履歴の保管取得価額の証明資料を交換業者からダウンロードして保存
8信頼できる家族への共有上記の情報をまとめたエンディングノートを家族に伝える

遺言書の書き方や種類については「遺言書の書き方と種類|自筆証書遺言・公正証書遺言の作成手順」をご覧ください。

📝 行政書士の視点

遺言書にデジタル資産を記載する際は、「暗号資産交換業者○○に保管するビットコイン○○BTC」のように具体的に特定することが重要です。また、遺言書にIDやパスワードを直接記載するのはセキュリティ上推奨されません。「デジタル資産のアクセス情報は貸金庫(○○銀行○○支店)に保管」のように、情報の所在を示す方法が安全です。

デジタル遺産の申告漏れリスクとペナルティ

デジタル遺産の存在に気づかず相続税申告をしてしまった場合、後日発覚すると以下のペナルティが課される可能性があります。

過少申告加算税は、自主的に修正申告した場合は原則なし(期限後に税務署の調査で発覚した場合は10〜15%)です。延滞税は、法定納期限の翌日から納付日まで年2.4〜8.7%(年により変動)がかかります。さらに、意図的な隠蔽と判断された場合は重加算税(35〜40%)が課される可能性もあります。

実務では、税務署は被相続人の過去の確定申告書から暗号資産の取引実績を把握している場合があります。確定申告で雑所得を申告していた方が亡くなった場合、税務署側はその方がデジタル資産を保有していたことを認識していますので、相続税申告で計上漏れがあれば指摘を受ける可能性は高いと考えてください。

よくある質問(FAQ)

故人のスマートフォンのロックを解除できない場合はどうすればいいですか?
携帯キャリア(ドコモ・au・ソフトバンク等)はロック解除に応じません。デジタルフォレンジック(デジタルデータの調査・復元)の専門業者に依頼する方法があります。費用は数万円〜数十万円程度です。iPhoneの場合はAppleの「故人アカウント管理連絡先」機能を生前に設定しておくと、死後に指定した人がアクセスできるようになります。
暗号資産の取得価額がわからない場合、相続税はどう計算しますか?
相続税の評価は「死亡日の取引価格」で行うため、取得価額は関係ありません。取得価額が問題になるのは、相続後に暗号資産を売却する場合です。売却時に取得価額がわからないと、売却額の5%を取得費とみなすため、売却額の95%が課税対象になります。取引履歴は必ず交換業者から取得してください。
電子マネーの残高は相続税の対象ですか?
原則として相続税の対象です。ただし、Suicaの数百円程度の残高であれば、実務上は少額財産として申告を省略するケースもあります。PayPayやLINE Payなど残高が大きくなり得るキャッシュレス決済は、必ず残高を確認して申告に含めてください。
NFTの相続税評価方法は決まっていますか?
現時点で明確な評価通達はありません。財産評価の原則に従い「相続開始時の時価」で評価しますが、NFTは一点もので市場価格が不透明な場合が多く、売買実例価額や精通者意見価格などを参考に個別に評価することになります。高額なNFTを保有している場合は、必ず税理士に相談してください。
故人がFX取引でマイナスだった場合、借金を相続することになりますか?
はい。FXの追加証拠金(追証)はFX業者に対する債務であり、相続の対象です。マイナスの額が大きい場合は、3ヶ月以内に相続放棄を検討してください。デジタル遺産にはプラスだけでなくマイナスの資産もあることを念頭に、早期の財産調査が重要です。
海外の暗号資産取引所を利用していた場合はどうなりますか?
海外取引所に保管されている暗号資産も相続税の対象です。ただし、手続きは外国語で行う必要があり、秘密鍵(プライベートキー)が求められる場合もあるため、国内取引所より難易度が高くなります。海外取引所の利用が判明した場合は、暗号資産の相続に詳しい税理士に早めに相談してください。
サブスクリプションの解約を忘れるとどうなりますか?
サブスクリプション自体は相続財産ではありませんが、解約しないとクレジットカードや口座から課金が続きます。相続手続きの一環として、故人のクレジットカード明細を確認し、定額課金のあるサービスは速やかに解約してください。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • デジタル遺産(ネット口座・暗号資産・NFT・電子マネー等)は相続税の課税対象
  • 最大の課題は「存在に気づけるか」。メール・アプリ・クレカ明細から手がかりを探す
  • 暗号資産の評価は「死亡日の取引価格」。活発な市場がないものは個別評価
  • 暗号資産を相続後に売却すると、相続税+所得税の二重課税に近い負担が生じる
  • 秘密鍵を紛失すると暗号資産は永久にアクセス不能。生前の情報共有が最重要対策
  • デジタル終活として、資産リスト・ログイン情報・遺言書の準備を早めに行う

デジタル遺産は目に見えないだけに、相続手続きで最も見落とされやすい財産です。相続税の申告期限は10ヶ月しかありませんので、早い段階でデジタル資産の有無を調査し、評価・申告の準備を始めてください。贈与税の基本については「贈与税の仕組みと基礎知識」も参考にしてください。

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参考: 国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱い(FAQ)」国税庁「No.1525 暗号資産等の譲渡等による所得」