所得税の税率と計算方法|速算表の使い方をシミュレーション付きで解説

所得税の税率と計算方法|速算表の使い方をシミュレーション付きで解説
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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「自分の所得税がいくらになるのか知りたい」「速算表の使い方がわからない」とお悩みの方に向けて、所得税の計算方法を5ステップで解説します。年収別の税額シミュレーション付きで、自分の状況に当てはめて計算できます。

🏆 結論:所得税は「課税所得 × 税率 − 控除額」で求められる

所得税の税率は課税所得金額に応じて5%〜45%の7段階で、所得が高いほど税率が上がる「超過累進課税」が採用されています。計算は①収入から経費(または給与所得控除)を引いて所得を求め、②所得控除を差し引いて課税所得を計算し、③速算表で税額を算出し、④復興特別所得税(税額×2.1%)を加える、という流れです。速算表を使えば複雑な段階計算をせずに正しい税額を一発で求められます。

所得税のしくみ|超過累進課税とは?

所得税とは、1年間(1月1日〜12月31日)に得た所得に対してかかる税金です。日本の所得税は「超過累進課税」を採用しており、課税所得が一定額を超えた部分にだけ高い税率が適用されます。

よくある誤解として「年収が上がると全体の税率が上がるから損をする」と考える方がいますが、それは「単純累進課税」の考え方です。日本の所得税では、収入が増えても増えた部分にだけ高い税率がかかるため、収入が増えるほど手取りも必ず増えます。

超過累進課税と単純累進課税の違い

課税所得200万円の場合で、両方式の税額を比較してみましょう。

方式 計算方法 税額
超過累進課税(日本の制度)195万円×5%+5万円×10%102,500円
単純累進課税(日本は不採用)200万円×10%(全額に10%適用)200,000円

超過累進課税では、195万円を超えた5万円の部分にだけ10%がかかるため、税額は単純累進課税の約半分で済みます。この仕組みにより「年収が上がると逆に損をする」ということは起こりません。

所得税の速算表(令和7年分以降)

所得税の税率は、課税所得金額(1,000円未満の端数切捨て)に応じて以下の7段階に分かれています。速算表を使えば「課税所得×税率−控除額」の計算式で一発で税額を求められます。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円〜1,949,000円5%0円
1,950,000円〜3,299,000円10%97,500円
3,300,000円〜6,949,000円20%427,500円
6,950,000円〜8,999,000円23%636,000円
9,000,000円〜17,999,000円33%1,536,000円
18,000,000円〜39,999,000円40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円

参考: 国税庁「No.2260 所得税の税率」

💡 実務のポイント

速算表の「控除額」は超過累進課税の段階計算を省略するための調整額であり、所得控除とは別物です。混同する方が多いのですが、「控除額97,500円」は所得から差し引く金額ではなく、速算表の計算式(課税所得×税率−控除額)で使う数字です。

所得税の計算5ステップ

所得税の計算は以下の5ステップで行います。会社員と個人事業主では「経費の差し引き方」が異なりますが、基本の流れは同じです。

ステップ 計算内容 計算式
所得金額を求める収入 − 経費(会社員は給与所得控除)
課税所得を求める所得金額 − 所得控除の合計
速算表で所得税額を計算課税所得 × 税率 − 控除額
税額控除を差し引く所得税額 − 住宅ローン控除等
復興特別所得税を加算所得税額 × 2.1%

ステップ①の詳細:給与所得控除(2026年分)

会社員の場合、収入(年収)から「給与所得控除」を差し引いて所得金額を求めます。2026年分からは給与所得控除が引き上げられ、最低保障額が74万円になりました。

給与収入 給与所得控除額
162.5万円以下74万円(最低保障額)
162.5万円超〜180万円以下収入×40%−10万円
180万円超〜360万円以下収入×30%+8万円
360万円超〜660万円以下収入×20%+44万円
660万円超〜850万円以下収入×10%+110万円
850万円超195万円(上限)

📢 2026年分からの改正ポイント

2026年分から給与所得控除の最低保障額が55万円→74万円に、基礎控除が48万円→58万円→さらに特例で最大104万円に引き上げられました。これにより、所得税がかかり始める年収の目安は従来の103万円から178万円に引き上げられています。

所得控除の全種類と適用要件については「所得控除の全種類一覧|適用要件と控除額を完全解説」をご覧ください。

年収別の税額シミュレーション

会社員(独身・社会保険料控除のみ適用)の場合の所得税額を年収別に計算します。

📐 シミュレーション前提条件

  • 独身・扶養親族なし
  • 所得控除は基礎控除(58万円)+社会保険料控除(年収×約14%で概算)のみ
  • 復興特別所得税(2.1%)を含む
  • 住民税は含まない
年収 給与所得控除 所得金額 所得控除計 課税所得 所得税+復興税
300万円98万円202万円100万円102万円約52,400円
500万円144万円356万円128万円228万円約133,700円
700万円180万円520万円156万円364万円約305,600円
1,000万円195万円805万円198万円607万円約792,400円
1,500万円195万円1,305万円268万円1,037万円約1,780,800円

※概算値です。医療費控除・配偶者控除・扶養控除・生命保険料控除等を適用すると税額は下がります。正確な計算は税理士にご相談ください。

🧮 シミュレーションのポイント

年収500万円と1,000万円を比較すると、年収は2倍ですが所得税は約5.9倍になります。これは超過累進課税により、課税所得が上がるにつれて適用される税率ゾーンが増えるためです。ただし、扶養控除や住宅ローン控除を活用すれば高年収でも大幅に税額を下げられます。

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総合課税と分離課税の違い

所得税の課税方法には「総合課税」と「分離課税」の2種類があります。総合課税では全ての対象所得を合算して超過累進税率を適用し、分離課税では特定の所得を他の所得と分離して一定の税率で課税します。

所得の種類別:課税方法の判定表

所得の種類 総合課税 分離課税 税率
給与所得5〜45%(累進)
事業所得5〜45%(累進)
不動産所得5〜45%(累進)
雑所得(副業・年金等)5〜45%(累進)
上場株式の譲渡所得15.315%(所得税+復興税)+住民税5%
不動産の譲渡所得(長期)15.315%+住民税5%
不動産の譲渡所得(短期)30.63%+住民税9%
退職所得5〜45%(退職所得控除適用後に1/2課税)

参考: 国税庁「No.1300 所得の区分のあらまし」

💡 実務のポイント

分離課税の意味がよくわかるのは株式譲渡所得のケースです。たとえば課税所得900万円(税率33%)の方が株式で100万円の利益を得た場合、総合課税であれば33%で課税されますが、分離課税のため15.315%(所得税+復興税)で済みます。分離課税は高所得者にとって有利な仕組みです。

復興特別所得税とは

所得税に加えて、復興特別所得税(所得税額の2.1%)が課されます。これは東日本大震災の復興財源として2013年から2037年まで(令和19年まで)適用される追加税です。

計算方法は「所得税額×2.1%」で、確定申告では所得税と復興特別所得税を合算して申告・納付します。たとえば所得税額が50万円の場合、復興特別所得税は50万円×2.1%=10,500円で、合計510,500円を納付します。

📢 2027年以降の見通し

2027年(令和9年)以降、復興特別所得税の税率は2.1%→1.1%に引き下げられ、新たに防衛特別所得税1%が上乗せされる予定です。納税者の負担割合(所得税額の2.1%)は変わりませんが、名目が変わります。

所得税額を下げる3つの方法

方法1:所得控除を最大限活用する

所得控除を増やせば課税所得が下がり、結果的に所得税が減ります。見落としやすい所得控除として、iDeCo(小規模企業共済等掛金控除)、ふるさと納税(寄附金控除)、セルフメディケーション税制などがあります。

方法2:税額控除を適用する

税額控除は所得税額から直接差し引くため、所得控除よりも節税効果が大きいのが特徴です。代表的な税額控除は住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)で、最大年間35万円が13年間にわたり税額から控除されます。

方法3:個人事業主は青色申告を活用する

青色申告特別控除(最大65万円)を適用すれば、課税所得が65万円減少します。所得税率20%の方なら、65万円×20%=13万円の所得税が節税できます。さらに住民税も約6.5万円軽減されるため、合計約19.5万円の節税効果があります。

青色申告のメリットについては「青色申告のメリット完全ガイド」をご覧ください。

源泉徴収と確定申告の関係

会社員の場合、毎月の給与から所得税が「源泉徴収」として天引きされています。源泉徴収は概算額であるため、年末調整で正確な税額との過不足を精算します。年末調整で処理しきれない控除(医療費控除・住宅ローン控除初年度・ふるさと納税等)がある場合は、確定申告を行うことで税金の還付を受けられます。

個人事業主やフリーランスの場合は源泉徴収が行われないことが多いため、確定申告で所得税を計算して自分で納付します。ただし、報酬の支払い時に源泉徴収(10.21%等)が行われている場合は、確定申告でその金額を差し引いて精算します。

確定申告の手続きの全体像は「確定申告とは?対象者・期間・やり方を完全ガイド」をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

所得税率45%が適用されるのは年収いくらからですか?
課税所得金額が4,000万円を超える部分に45%が適用されます。課税所得は年収から給与所得控除と各種所得控除を差し引いた金額のため、年収の目安としてはおおむね年収5,000万円以上です。ただし、適用される控除の内容によって異なります。
速算表の「控除額」と所得控除は同じものですか?
異なるものです。速算表の「控除額」は超過累進課税の段階計算を簡略化するための調整値で、税額の計算式(課税所得×税率−控除額)で使います。一方、「所得控除」は課税所得を計算する際に所得金額から差し引くものです。名前は似ていますが、計算のステップが異なります。
所得税と住民税はどう違いますか?
所得税は国に納める税金で超過累進税率(5〜45%)が適用されます。住民税は都道府県・市区町村に納める税金で、一律10%(所得割)+均等割(年額約5,000円)です。所得税は確定申告または年末調整で計算・納付し、住民税は確定申告のデータをもとに自治体が計算して翌年に課税されます。
年収103万円以下なら所得税はかかりませんか?
2025年分までは給与所得控除55万円+基礎控除48万円=103万円が非課税ラインでした。2026年分からは給与所得控除が74万円に、基礎控除が最大104万円に引き上げられたため、非課税ラインは年収178万円に引き上がっています。
副業の所得にも同じ税率が適用されますか?
副業の所得(雑所得等)は本業の給与所得と合算され、合計の課税所得に対して超過累進税率が適用されます。つまり、本業の所得が高いほど、副業の所得に適用される税率も高くなります。副業の所得20万円に対して税率20%が適用される場合、所得税は4万円となります。
所得税の計算で1,000円未満の端数はどう処理しますか?
課税所得金額は1,000円未満を切り捨てて計算します。たとえば課税所得が3,421,650円の場合、1,000円未満を切り捨てて3,421,000円として税率を適用します。また、最終的な所得税額(復興特別所得税を含む)は100円未満を切り捨てます。
株式の利益にかかる税率は何%ですか?
上場株式の譲渡益にかかる税率は所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%=合計20.315%です。これは申告分離課税であるため、給与所得等の税率に関係なく一律で適用されます。特定口座(源泉徴収あり)を利用すれば、確定申告は原則不要です。
所得税は毎年いつ払うのですか?
会社員の場合は毎月の給与から源泉徴収され、年末調整で精算されます。個人事業主の場合は確定申告(翌年3月15日まで)で所得税を計算し、同日までに納付します。前年の税額が15万円以上の場合は、予定納税として7月と11月にも前払いが必要です。
退職金にかかる所得税はどう計算しますか?
退職金は「退職所得」として他の所得と分離して課税されます。退職所得控除(勤続20年以下:40万円×勤続年数、20年超:800万円+70万円×(勤続年数−20年))を差し引いた後、その1/2に超過累進税率を適用します。「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、正しい税額が源泉徴収されるため、確定申告は原則不要です。
年末調整で所得税の過不足が精算されるのはなぜですか?
毎月の源泉徴収は「その月の給与額」をもとに概算で計算されるため、年間の正確な税額とはズレが生じます。年末調整では1年間の正確な所得と各種控除を確定させ、過不足を精算します。多く天引きされていた場合は12月または1月の給与で還付され、不足していた場合は追加徴収されます。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 所得税の税率は課税所得に応じて5%〜45%の7段階(超過累進課税)
  • 速算表を使えば「課税所得×税率−控除額」で一発計算できる
  • 計算は5ステップ:①所得金額→②課税所得→③速算表で税額→④税額控除→⑤復興特別所得税
  • 2026年分から給与所得控除・基礎控除が引き上げられ、非課税ラインは年収178万円に
  • 株式譲渡益等は分離課税(一律20.315%)で、給与所得の税率とは別に計算される
  • 所得控除の活用・税額控除の適用・青色申告の利用で所得税額を合法的に下げられる

所得税の計算方法を正しく理解すれば、自分の税額が妥当かどうかを確認でき、活用できる控除の見落としも防げます。所得税の計算や節税対策に不安がある方は、税理士に相談してみてください。

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