会社員の確定申告|必要なケースと手続き方法を税理士が解説

会社員の確定申告|必要なケースと手続き方法を税理士が解説
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

「会社員なのに確定申告って本当に必要?」とお悩みの方に向けて、確定申告が義務になるケース・申告すれば得するケースを判定表で整理し、手続き方法を5ステップで完全ガイドします。この記事を読めば、自分に合った申告方法がわかります。

🏆 結論:会社員でも確定申告で還付を受けられるケースは多い

年末調整だけで完結する会社員は多いですが、医療費控除・住宅ローン控除(初年度)・ふるさと納税(ワンストップ特例未使用)に該当すれば、確定申告で税金が戻ってきます。年収600万円の会社員が医療費30万円を支払った場合、約4万円の還付が見込めます。手続きはe-Taxなら自宅で完結し、所要時間は約1〜2時間です。

会社員の確定申告|必要・任意・不要の3分類判定表

会社員の確定申告は「義務として必要」「任意だが申告した方が得」「完全に不要」の3つに分類できます。まずは自分がどこに当てはまるか確認してください。

確定申告の要否3分類

分類 該当するケース 申告しないと?
① 義務年収2,000万円超/副業所得20万円超/2か所以上から給与/同族会社役員で利子・賃貸料あり無申告加算税・延滞税のペナルティ
② 任意(得)医療費控除/住宅ローン控除初年度/ふるさと納税(ワンストップ未使用)/年途中退職/株の損失繰越還付を受け取れない(損をする)
③ 不要上記に該当しない、年末調整で完結する会社員何もなし

確定申告が「必要な人・不要な人」の詳しい判定フローは「確定申告が必要な人・不要な人|判定フローチャートで簡単チェック」で解説しています。

💡 実務のポイント

確定申告の相談で最も多いのが②の「任意(得)」パターンです。特に医療費控除は、出産・歯科矯正・介護費用など対象範囲が広く、家族全員分を合算すると10万円を超えるケースが想像以上に多い。「面倒だから」とスルーしている会社員の方は、一度年間の医療費を合計してみてください。

確定申告が義務になる会社員の5つのケース

ケース①:給与年収が2,000万円を超える

給与の年収(額面)が2,000万円を超える場合、勤務先で年末調整が行われません。所得税法第190条の規定により、年末調整の対象は給与収入2,000万円以下の人に限られるため、超えた年は自分で確定申告をする必要があります。

ケース②:副業・投資の所得が20万円を超える

給与以外の所得(副業の事業所得・雑所得、不動産所得など)の合計が年間20万円を超える場合、確定申告が必要です。注意点として、所得とは「収入−必要経費」であり、収入そのものではありません。

ケース③:2か所以上から給与を受けている

本業のほかにアルバイト等で給与を受けている場合、年末調整されなかった方の給与収入と他の所得の合計が20万円を超えれば確定申告が必要です。

ケース④:年の途中で退職し、年末調整を受けていない

12月31日時点で在籍していない場合、年末調整が行われないため、源泉徴収で払い過ぎた税金を取り戻すには確定申告(還付申告)が必要です。

ケース⑤:その他のケース

同族会社の役員で会社から利子・賃貸料を受け取っている場合や、災害減免法の適用を受けている場合も確定申告が必要です。

参考: 国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」

確定申告した方が得な会社員の還付パターン

3大還付パターンの比較表

会社員が確定申告で還付を受けられる代表的な3パターンを比較します。

項目 医療費控除 住宅ローン控除(初年度) ふるさと納税
対象者家族合算の医療費が10万円超住宅購入・新築の初年度ワンストップ特例を使わなかった人
控除の種類所得控除税額控除所得控除+税額控除
計算式(医療費−10万円)×税率年末残高×0.7%寄附金−2,000円
必要書類医療費控除の明細書残高証明書・登記事項証明書・売買契約書等寄附金受領証明書
2年目以降毎年確定申告が必要年末調整で完結ワンストップ特例に切替可
還付時期申告から1〜2ヶ月申告から1〜2ヶ月申告から1〜2ヶ月

年収別・医療費控除の還付額シミュレーション

📐 シミュレーション前提条件

  • 家族合算の年間医療費:30万円
  • 保険金等で補塡された金額:0円
  • 医療費控除額:30万円−10万円=20万円
年収 課税所得の目安 所得税率 還付額の目安
400万円約170万円5%約1万円
600万円約310万円10%約2万円
800万円約480万円20%約4万円

※概算値です。扶養人数・社会保険料・他の控除により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。

なお、医療費控除では所得税の還付に加えて、翌年度の住民税も軽減されます。住民税は一律10%のため、上記に加えて2万円(20万円×10%)の住民税が減額されます。

AYUSAWA PARTNERS

確定申告の還付申告をお手伝いします

初回相談無料。医療費控除・住宅ローン控除・ふるさと納税の申告を税理士がサポート。

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会社員の確定申告の手続き【5ステップ】

【ステップ1】必要書類を準備する

確定申告に必要な書類は、申告の理由によって異なります。共通して必要な書類と、ケース別に追加で必要な書類を整理します。

書類 全員共通 備考
源泉徴収票勤務先から受領。添付不要だが申告書記入に必要
マイナンバーカードe-Tax利用時に必須
還付先の口座情報還付金の振込先。本人名義の口座
医療費控除の明細書医療費控除を受ける場合。領収書は5年間保管
住宅ローン残高証明書住宅ローン控除初年度。登記事項証明書・売買契約書も必要
寄附金受領証明書ふるさと納税の場合。各自治体から郵送

【ステップ2】源泉徴収票の数字を確認する

源泉徴収票には、確定申告書に転記する重要な数字が記載されています。主に確認すべき箇所は次の4つです。

源泉徴収票の記載欄 確定申告書への転記先 確認ポイント
支払金額収入金額等「給与」欄額面の年収。手取りではない
給与所得控除後の金額所得金額等「給与」欄年末調整済みなら記載あり
所得控除の額の合計額所得から差し引かれる金額社保・配偶者・扶養等の控除合計
源泉徴収税額税金の計算「源泉徴収税額」すでに天引きされた税額

💡 実務のポイント

転職した方は前職と現職の2枚の源泉徴収票が必要です。前職の源泉徴収票を新しい会社に提出して合算の年末調整をしてもらうのが理想ですが、もし提出し忘れた場合は、2枚の源泉徴収票を使って自分で確定申告する必要があります。

【ステップ3】確定申告書を作成する

確定申告書の作成方法は大きく3つあります。会社員の還付申告であれば、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」が最も手軽です。

作成方法 メリット デメリット
国税庁の作成コーナー無料・案内に従い入力するだけ・自動計算複雑なケースは案内が追いつかないことがある
確定申告ソフト(freee・MF等)UI が直感的・データ連携で入力が楽有料プランが必要な場合がある
税理士に依頼ミスなし・節税アドバイス付き費用がかかる(数万円〜)

【ステップ4】確定申告書を提出する

提出方法は3つあります。期限は原則として翌年2月16日〜3月15日ですが、還付申告の場合は翌年1月1日から5年間いつでも提出できます。

提出方法 所要時間 必要なもの
e-Tax(スマホ・PC)自宅で完結。24時間提出可マイナンバーカード+スマホ or ICカードリーダー
郵送消印有効。窓口に並ばなくてよい印刷した申告書+添付書類+返信用封筒
税務署窓口混雑期は2〜3時間の待ち時間印刷した申告書+添付書類

参考: 国税庁「確定申告書等作成コーナー」

【ステップ5】還付金を受け取る

e-Taxで提出した場合、通常2〜3週間で還付金が指定口座に振り込まれます。書面提出の場合は1〜2ヶ月かかることがあります。

会社員が確定申告で間違えやすいミス5選

ミス 具体例 対策
① 控除の二重申告夫婦が同じ子供を両方の扶養控除に入れる扶養控除はどちらか一方のみ。事前に夫婦で確認
② 前職の源泉徴収票を出し忘れ転職時に前職分を合算せず年末調整前職の源泉徴収票を必ず保管。年末調整前に提出
③ ふるさと納税の過剰寄附控除上限を超えて寄附し、自己負担が増加年収と家族構成から上限額を事前にシミュレーション
④ 副業所得の計算ミス「収入」と「所得(収入−経費)」を混同経費を差し引いた「所得」で20万円を判定
⑤ 住民税申告の失念副業20万円以下で確定申告を省略し、住民税も未申告確定申告しない場合は市区町村に住民税の申告を行う

⚠️ 注意

ミス③は特に損をするパターンです。ふるさと納税は「税金の先払い」であり、控除上限を超えた分は純粋な支出になります。年収が変動した年は特に上限額を再確認してください。

還付申告の期限と注意点

還付申告は5年間いつでも提出できる

確定申告の義務がない会社員が控除を受けるための申告(還付申告)は、翌年1月1日から5年間提出できます。つまり、過去5年分の医療費控除やふるさと納税の控除を、まとめて申告することも可能です。

参考: 国税庁「No.2030 還付申告」

💡 実務のポイント

毎年の確定申告シーズン(2〜3月)に「3年前の医療費控除を今から申告できますか?」という相談を数多く受けます。答えはYesです。5年前まで遡れるため、過去に大きな手術や出産があった年の医療費を集計してみてください。数万円の還付になるケースは珍しくありません。

義務のある確定申告と還付申告を同時に行う場合

副業所得が20万円を超えて確定申告が義務になる場合、同時に医療費控除やふるさと納税の控除も申告できます。この場合、副業所得に対する追加の所得税と、控除による還付が相殺され、差額が還付または追加納税になります。

セルフメディケーション税制という選択肢

通常の医療費控除との比較

医療費が10万円に達しない場合でも、対象のOTC医薬品(スイッチOTC薬)の購入額が年間1万2,000円を超えれば、セルフメディケーション税制を利用できます。ただし、通常の医療費控除と併用はできないため、どちらが有利かを比較してから選択してください。

項目 通常の医療費控除 セルフメディケーション税制
控除の下限10万円(所得200万円未満は5%)1万2,000円
控除の上限200万円8万8,000円
対象費用治療費・薬代・通院交通費など幅広い対象OTC医薬品の購入費のみ
適用条件特になし健康診断・予防接種等を受けていること

年末調整で対応できる控除・できない控除の一覧

会社員が「確定申告しなければ受けられない控除」を把握しておくことで、還付の取りこぼしを防げます。所得控除の全体像は「所得控除の一覧と適用条件」で詳しく解説しています。

控除の種類 年末調整 確定申告
基礎控除・配偶者控除・扶養控除
社会保険料控除・生命保険料控除
医療費控除×
寄附金控除(ふるさと納税)×
雑損控除×
住宅ローン控除(初年度)×
住宅ローン控除(2年目以降)

確定申告の基本的なしくみや全体像は「確定申告とは?対象者・期間・やり方を完全ガイド」で解説しています。年末調整の仕組みについては「【税理士×社労士が解説】年末調整とは?しくみ・対象者・手続きの流れを完全ガイド」もご参照ください。

よくある質問(FAQ)

会社員は確定申告をしなくていいのですか?
年末調整で完結する会社員は原則不要です。ただし、給与年収が2,000万円超・副業所得20万円超・2か所以上から給与を受けている場合は確定申告が義務です。また、医療費控除や住宅ローン控除(初年度)を受けるには確定申告が必要です。
会社員の確定申告にかかる時間はどのくらいですか?
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使えば、還付申告(医療費控除のみ)の場合で1〜2時間程度です。事前に源泉徴収票と医療費の明細を準備しておけば、入力自体は30分〜1時間で完了します。
医療費控除の対象になるものは何ですか?
治療目的の医療費が対象です。具体的には、病院の診察料・入院費・処方薬代・通院の交通費(公共交通機関)・歯科治療費・出産費用などが含まれます。美容整形・予防目的のサプリメント・人間ドック(異常が見つからなかった場合)は対象外です。
ふるさと納税のワンストップ特例と確定申告、どちらがいいですか?
寄附先が5自治体以内で、他に確定申告する理由がなければワンストップ特例が簡単です。ただし、医療費控除など他の控除で確定申告をする場合、ワンストップ特例は無効になるため、ふるさと納税も含めて確定申告する必要があります。
住宅ローン控除は2年目以降も確定申告が必要ですか?
2年目以降は年末調整で控除を受けられます。税務署から送付される「住宅借入金等特別控除証明書」と金融機関の「残高証明書」を勤務先に提出するだけで完了します。
転職した年の確定申告はどうすればいいですか?
前職の源泉徴収票を転職先に提出すれば、合算で年末調整してもらえます。提出し忘れた場合は、前職・現職の2枚の源泉徴収票を使って自分で確定申告してください。退職金がある場合は「退職所得の受給に関する申告書」を前職に提出済みか確認しましょう。
確定申告したら副業が会社にバレますか?
確定申告そのものが会社に通知されることはありません。ただし、副業で住民税が増えると、住民税の特別徴収(天引き)で会社に気づかれる可能性があります。副業分の住民税を普通徴収(自分で納付)にすることで防げますが、副業がアルバイト(給与所得)の場合は原則として普通徴収を選択できません。
確定申告を間違えた場合、修正できますか?
申告期限(3月15日)前であれば、正しい申告書を再提出するだけで修正できます。期限後に間違いに気づいた場合は、税額が増える方向の修正は「修正申告」、税額が減る方向の修正は「更正の請求」を行います。更正の請求は法定申告期限から5年以内に行えます。
確定申告はスマホだけでできますか?
はい。マイナンバーカードとスマートフォンがあれば、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」からe-Taxで完結できます。給与所得の還付申告であれば、スマホの画面で源泉徴収票を撮影して自動入力する機能もあります。
確定申告を税理士に頼むといくらかかりますか?
会社員の還付申告であれば、1万〜3万円程度が相場です。副業所得がある場合や、不動産所得が加わると5万〜10万円程度になることもあります。還付額とのバランスを見て判断してください。所得控除の全体像は「所得控除の一覧と適用条件」もご参照ください。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 会社員の確定申告は「義務」「任意(得)」「不要」の3パターンに分かれる
  • 年収2,000万円超・副業所得20万円超・2か所給与の場合は申告義務あり
  • 医療費控除・住宅ローン控除(初年度)・ふるさと納税は確定申告で還付を受けられる
  • 年収600万円・医療費30万円の場合、約2万円の所得税還付+約2万円の住民税軽減
  • 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使えば自宅で1〜2時間で完了
  • 還付申告は5年間いつでも提出可能。過去分も遡って申告できる
  • 年末調整では医療費控除・寄附金控除・雑損控除・住宅ローン控除(初年度)は対応不可

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