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試用期間中の従業員の社保加入や解雇について、実務でよくある誤解を整理し、正しい運用方法を解説します。この記事を読めば、「試用期間だから社保未加入」「14日以内なら自由に解雇できる」といった誤解を解消し、法令遵守と適切な運用を両立できます。


試用期間中の従業員の社保加入や解雇について、実務でよくある誤解を整理し、正しい運用方法を解説します。この記事を読めば、「試用期間だから社保未加入」「14日以内なら自由に解雇できる」といった誤解を解消し、法令遵守と適切な運用を両立できます。
🏆 結論:試用期間中も本採用と同様の扱いが原則
試用期間中であっても、社会保険への加入義務は本採用と同じです。「2か月以内有期雇用の適用除外」は試用期間には原則適用されません。また、「14日以内なら自由に解雇できる」も誤解で、解雇予告は不要ですが合理的な理由は必要です。試用期間は「解約権留保付労働契約」であり、通常の労働契約と同様に労働法が全面適用されます。
試用期間は、新規採用者の適性・能力を評価し、本採用の可否を判断するために設けられる期間です。法的には通常の労働契約と同時に雇用関係が発生しており、特別な契約形態ではありません。
試用期間の労働契約は「解約権留保付労働契約」と呼ばれます。労働契約は採用時点で成立しており、使用者が特定の場合に解約権(解雇権)を行使できる権利を留保している、という法律構成です。最高裁判決(三菱樹脂事件 昭和48年12月12日)で確立された概念です。
試用期間の長さは法律で上限が定められておらず、自由に設定できます。実務では3〜6か月が多く、長くても1年が限度と考えられています。過度に長い試用期間は、労働者の地位を不安定にするため、公序良俗違反として無効となる可能性があります。
💡 試用期間の一般的な長さ
・一般的な期間:3か月〜6か月
・上限の目安:1年以内
・過度に長い期間:無効リスクあり(裁判例では1年を超える試用期間が無効とされた例あり)
試用期間中の社会保険加入について、「2か月間は加入しなくてよい」という誤解が根強くあります。結論として、試用期間中も加入要件を満たせば入社日から加入義務が発生します。
日本年金機構の公表資料では、試用期間について「健康保険法・厚生年金保険法で規定している『臨時の雇用期間』には該当しないため、たとえこの期間が1か月でも被保険者の要件を満たしている場合は、加入手続きを行わなければならない」との見解が示されています。
社会保険には「2か月以内の期間を定めて使用される人」を適用除外とする規定があります。この規定を根拠に「試用期間中は社保未加入でよい」と考える経営者がいますが、これは誤解です。
| 状況 | 社保加入 | 根拠 |
|---|---|---|
| 2か月以内の純粋な有期雇用(更新なし) | 適用除外 | 健保法第3条1項2号ロ |
| 2か月の試用期間後に本採用予定 | 入社日から加入 | 継続使用関係あり |
| 2か月以内有期でも更新規定あり | 入社日から加入 | 日本年金機構疑義照会 |
| 2か月以内有期で実績上更新されている | 入社日から加入 | 日本年金機構疑義照会 |
⚠️ 未加入の罰則と追徴リスク
試用期間を理由に社保未加入のまま運用していた場合、年金事務所の調査で指摘されると最大2年間遡及して保険料を追徴されます。健保法第208条・厚年法第102条により、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性もあります。
雇用保険も試用期間初日から加入が必要です。1週間の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがあれば、入社日が資格取得日となります。労災保険はパート・アルバイトを含む全労働者が対象で、試用期間中も当然に適用されます。
「試用期間中は自由に解雇できる」というのも実務で頻繁に見られる誤解です。解雇の有効性には厳格な要件があります。
労働契約法第16条により、解雇は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は解雇権濫用として無効となります。これは試用期間中も同様に適用されます。
一方、試用期間は解約権留保付労働契約であるため、通常の解雇よりも広い範囲での解雇が認められます。採用時には判明しなかった労働者の適性・能力の不足が試用期間中に明らかになった場合、本採用後の解雇より緩やかな基準で解雇できるのが特徴です。
| 項目 | 試用期間中の解雇 | 本採用後の解雇 |
|---|---|---|
| 法的性質 | 留保解約権の行使 | 通常の普通解雇 |
| 解雇理由の範囲 | 比較的広い | 厳格に限定 |
| 解雇の有効性 | 客観的合理性・社会通念上相当性が必要 | 同左(より厳しい) |
| 14日以内 | 解雇予告不要 | 該当なし |
| 15日以降 | 通常の解雇手続が必要 | 通常の解雇手続 |
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鮎澤パートナーズに相談する労働基準法第21条により、試用期間中の「雇入れ後14日以内」の解雇については解雇予告が不要とされています。しかしこのルールはしばしば誤解されています。
労働基準法第21条により、14日以内の解雇は労働基準法第20条が定める「30日前の解雇予告または解雇予告手当の支払」という手続が免除されるだけです。解雇そのものの有効性は、労働契約法第16条により別途判断されます。
⚠️ よくある誤解
❌ 誤解:「14日以内なら自由に解雇できる」
✅ 正解:「14日以内は解雇予告手続が不要だが、合理的な理由と社会通念上の相当性は必要」
雇入れ後14日を超えて勤務した場合は、試用期間中であっても通常の解雇手続(30日前の予告または解雇予告手当の支払)が必要です。労基法第21条但書により、14日を超えた時点で労基法第20条の解雇予告規定が適用されます。
解雇予告手当は、直前3か月間の賃金総額を該当日数で除した「平均賃金」を基準に計算します。予告なしの即時解雇なら30日分以上、15日前予告なら15日分以上が必要です。
実務で特に頻繁に見られる試用期間に関する誤解を整理します。
前述の通り、試用期間中も本採用と同じ基準で社保加入義務が発生します。入社日が資格取得日となります。
解雇予告は不要ですが、解雇理由の合理性は必要です。14日以内でも客観的合理性がなければ不当解雇として無効となります。
試用期間の延長は、合理的理由と社会通念上の相当性があれば可能ですが、無制限ではありません。また、延長の可能性は就業規則または労働条件通知書に事前明記されている必要があります。事前明記のない延長は労働者の同意がない限り認められません。
試用期間中も最低賃金法は適用されます。ただし、最低賃金法第7条により、都道府県労働局長の許可を受けて最低賃金から最大20%まで減額する特例制度があります。自主的に最賃を下回ることはできません。
年次有給休暇は、入社日から起算して6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した場合に発生します。試用期間中も勤続期間に含まれるため、試用期間が6か月を超える場合、試用期間中に有給休暇が発生します。
誤解を避けつつ適切に試用期間を運用するための実務ポイントを整理します。
試用期間を設ける場合、以下の項目を就業規則および労働条件通知書に明記します。
📋 試用期間で明記すべき事項
☐ 試用期間の長さ(例:3か月)
☐ 試用期間中の労働条件(本採用との違いがあれば明記)
☐ 試用期間の延長可能性と条件
☐ 本採用拒否・試用期間中の解雇事由
☐ 試用期間中の賃金(本採用時と異なる場合)
実務で混同されやすいのが「本採用拒否」と「試用期間中の解雇」の区別です。
💡 2つの違い
本採用拒否:試用期間満了時に本採用しない決定
試用期間中の解雇:試用期間の途中で解雇する決定
本採用拒否の方が訴訟リスクが低いと言われており、途中解雇より試用期間満了時の本採用拒否の方が推奨されます。
現場でよく見かけるのが、試用期間中の能力不足を理由に解雇したものの、十分な指導・教育を行っていなかったため不当解雇と判断されるケースです。解雇する前に以下のプロセスを踏むことが重要です。
📋 解雇前のプロセス
試用期間満了時に本採用しない「本採用拒否」は、試用期間中の解雇より訴訟リスクが低いとされます。ただし、無制限に認められるわけではなく、一定の要件が必要です。
判例(三菱樹脂事件 最高裁昭和48年12月12日判決)により、本採用拒否は「留保解約権の行使」として位置づけられ、以下の要件が必要とされています。
📋 本採用拒否の要件
実務で本採用拒否が認められた事例としては、以下のようなものがあります。
| 理由類型 | 具体例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 勤務態度不良 | 度重なる遅刻・無断欠勤 | 指導記録が必要 |
| 業務能力不足 | 十分な指導を経ても業務水準未達 | 指導と評価の記録が必須 |
| 協調性欠如 | 職場の人間関係を著しく乱す行動 | 客観的事実の記録が必要 |
| 経歴詐称 | 応募書類の学歴・職歴等の虚偽 | 業務への影響度が判断要素 |
| 適格性の欠如 | 求める職種適性の致命的欠如 | 採用時に予見できなかった事実が必要 |
本採用拒否は実質的に解雇であるため、雇入れ後14日を超えた時点で本採用拒否する場合は、解雇予告または解雇予告手当の支払が必要です。試用期間3か月として採用した場合、試用期間中の解雇は14日以降がほとんどであるため、通常の解雇手続が必要になります。
⚠️ 本採用拒否の通知は書面で
本採用拒否の通知は、口頭ではなく書面で行います。通知書には①本採用拒否の決定、②具体的な理由、③最終出社日を明記します。通知のタイミングは試用期間満了の30日前が望ましく、遅くとも満了の2週間前までには通知することが実務的です。
試用期間中と本採用後で労働条件に差を設ける企業が多く見られます。その合法性について整理します。
| 項目 | 差を設けられるか | 注意点 |
|---|---|---|
| 基本給 | 可 | 最低賃金以上。就業規則に明記 |
| 諸手当 | 可 | 通勤手当等の必須手当は支給 |
| 社会保険 | 不可 | 加入要件を満たせば全員加入 |
| 有給休暇 | 不可 | 勤続期間に算入 |
| 退職金 | 可 | 就業規則の規定による |
| 福利厚生 | 可 | 合理的な理由があれば |
試用期間中の基本給を本採用後より低く設定する場合、就業規則および労働条件通知書に明記する必要があります。明記なく一方的に減額することはできません。
弊所が担当した小売業(従業員20名)の事例では、試用期間中の基本給を本採用後の80%としていましたが、労働条件通知書に明記されていたため、労基署調査でも問題視されませんでした。一方、明記なく減額運用していた別の顧問先では、未払い賃金として本採用時の基本給水準まで遡及支払いを求められました。
試用期間の延長や、試用期間中の退職について実務で問題となる論点を整理します。
試用期間の延長は以下の要件をすべて満たす場合に認められます。
📋 延長が認められる要件
実務では、延長通知書を作成し、①延長の理由、②延長期間、③延長期間中の評価ポイント、④本採用判断の時期を明記します。労働者の合意(署名)を取得することで、後の紛争リスクを低減できます。
弊所が相談を受けた製造業(従業員30名)の事例では、就業規則に延長規定がないにもかかわらず、試用期間3か月の満了時に「もう3か月様子を見たい」として延長を一方的に通知し、労働者から労働組合経由で異議が出されました。結果的に本人の同意を改めて取得したうえで、延長期間中の給与アップと評価基準の明確化を条件として延長が成立しました。就業規則に延長規定を置いておくことの重要性を示す事例です。
試用期間中に労働者側から退職する場合、民法第627条により、2週間前の予告で退職できます。退職を理由に損害賠償を請求することは、労働基準法第16条(賠償予定の禁止)により原則できません。
実務では、試用期間満了の2〜3週間前に本採用の可否を判断し、本人にフィードバックする運用が推奨されます。現場の経験上、試用期間中に定期的な面談(月1回程度)を行い、評価を書面化することで、本採用拒否や延長の判断が客観的になり、紛争リスクが大幅に下がります。
📋 この記事のポイント
🎯 次のアクション
試用期間中の社会保険加入や解雇について、実務では多くの誤解が見られます。「試用期間中は社保未加入」「14日以内なら自由に解雇」といった誤解は、年金事務所の遡及追徴・不当解雇訴訟・労基署の是正勧告など、企業に大きなリスクをもたらします。
試用期間は「解約権留保付労働契約」であり、通常の労働契約と同様に労働法が全面適用されます。正しい運用のためには、就業規則・労働条件通知書への明記、適切な指導・評価プロセスの実施、社会保険の入社日加入が不可欠です。
社会保険・労務全般については「社会保険の全体像」、就業規則の作成は「就業規則作成ガイド」、助成金の活用は「キャリアアップ助成金」で詳しく解説しています。採用時の届出全体は「従業員採用時の届出完全ガイド」、労働条件通知書の書き方は「労働条件通知書の書き方」も併せてご参照ください。
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