【社労士×行政書士が解説】身元保証書・誓約書の法的効力と作成のポイント|極度額明記の民法改正対応

【社労士×行政書士が解説】身元保証書・誓約書の法的効力と作成のポイント|極度額明記の民法改正対応
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

【社労士×行政書士が解説】身元保証書・誓約書の法的効力と作成のポイント

入社時に提出を求める身元保証書と誓約書について、「本当に法的効力があるのか」「何を書けばよいのか」とお悩みの経営者・人事担当者に向けて、2020年民法改正による極度額明記の義務化、有効期間、通知義務、記載すべき条項を完全ガイドします。この記事を読めば、無効にならない身元保証書と有効性の高い誓約書を自社で整備できます。

🏆 結論:極度額を明記しない身元保証書は無効・誓約書は秘密保持と競業避止で使い分け

2020年4月の民法改正により、身元保証書には賠償の極度額(上限額)を必ず明記しなければ契約自体が無効となります。相場は給与の6〜12ヶ月分(100〜300万円程度)。一方、誓約書は秘密保持・競業避止・服務規律の確認を目的とする書類で、入社時と退職時の2回取得することが実務上の定石です。いずれも労働基準法ではなく民法と「身元保証ニ関スル法律」が根拠で、形式より実質を押さえた作成が重要です。

身元保証書と誓約書は何が違うのか

入社時の書類として混同されがちな身元保証書と誓約書ですが、法的性質と目的がまったく異なります。結論から言えば、身元保証書は「第三者(保証人)による賠償の担保」を目的とし、誓約書は「本人の服務規律遵守の確認」を目的とします。根拠となる法律も、前者は民法と身元保証ニ関スル法律、後者は民法の契約一般の規定です。

身元保証書の目的と法的性質

身元保証書は、従業員が故意または重過失により会社に損害を与えた場合に、本人と身元保証人(通常は親族)が連帯して賠償責任を負うことを約束する書類です。民法465条の2に規定する「個人根保証契約」の一種と整理され、賠償額の上限(極度額)を定める必要があります。

誓約書の目的と法的性質

誓約書は、従業員本人が就業規則の遵守、秘密保持、競業避止、会社への損害賠償責任の確認などを会社に対して約束する書類です。一方的な意思表示であっても、記載内容の合理性と従業員の自由な意思による署名があれば法的効力を持ちます。

💡 実務のポイント

実務では、身元保証書と誓約書を別書類として分ける運用が一般的です。一体化すると、身元保証書部分で極度額の不備があった場合に誓約書部分の有効性まで影響する可能性があるためです。弊所が担当する顧問先では、採用時に「労働条件通知書」「誓約書」「身元保証書」の3点セットで運用しています。

身元保証書と誓約書の対比表

項目 身元保証書 誓約書
署名者本人+保証人(通常親族1〜2名)本人のみ
根拠法民法465条の2・身元保証ニ関スル法律民法の契約一般の規定
主な目的損害発生時の第三者による賠償担保服務規律・秘密保持・競業避止の確認
有効期間定めない場合3年・定める場合最長5年原則無期限(退職後は合理的期間に制限)
極度額明記必須(なければ無効)不要
通知義務あり(不適任・任務変更時)なし
実務頻度入社時に1回入社時+退職時(+昇進時)

2020年民法改正で身元保証書はどう変わったか

2020年4月1日施行の改正民法により、身元保証書の取扱いが大きく変わりました。もっとも重要な変更点は、極度額(賠償の上限額)を明記しなければ契約自体が無効となることです。

改正の核心:民法465条の2による極度額義務化

改正民法465条の2は、個人根保証契約について「極度額を定めなければその効力を生じない」と規定しています。身元保証契約は従業員が将来発生させる損害(不特定の債務)を保証するため、個人根保証契約に該当し、この規定の適用対象となります。改正の趣旨は法務省「民法(債権関係)改正パンフレット」で公式に説明されています。

⚠️ 極度額なしは契約自体が無効

極度額の記載がない身元保証書は、2020年4月1日以降に締結したものについては「一部無効」ではなく「契約全体が無効」となります。従業員が横領・背任等で会社に損害を与えても、身元保証人に対しては一切の請求ができません。旧様式のまま運用している会社は、至急書式を更新してください。

改正前後の対比表

論点 2020年3月まで 2020年4月以降
極度額の記載任意(なくても有効)必須(なければ全体無効)
賠償責任の上限なし(裁判所が相当額で判断)極度額が上限
既存契約の扱い2020年3月31日以前の契約は有効
追加情報提供義務限定的保証人からの請求時に財産・収支状況を提供
書式の必要対応新様式への差替え必須
法令の原文はe-Gov法令検索「民法」で確認できます。

極度額はいくらに設定すればよいか

極度額を設定する際、経営者から最もよく受ける質問が「いくらにすればよいか」です。結論から言えば、給与の6〜12ヶ月分(100〜300万円程度)が実務上の相場です。法律上の決まりはなく、会社が自由に設定できますが、高すぎれば保証人の確保が困難になり、低すぎれば実質的な意味を失います。

極度額の設定水準と影響

設定水準 金額目安 メリット デメリット
低額50万円以下保証人確保が容易抑止効果・実害補填が不十分
中額(推奨)100〜300万円バランスが取れ保証人も確保しやすい高額損害には足りない
高額500万円〜1,000万円金銭取扱・管理職に抑止効果大保証人確保が困難
超高額1,000万円超ほぼ事例なし非現実的・保証人拒否で入社取止めリスク

職種別の極度額設定例

🧮 職種別の実務相場

一般事務・営業職:100万円/経理・出納担当者:200〜300万円/管理職・役員:300〜500万円/ITエンジニア(重要システム担当):300万円前後/小売店員・配送員:100万円前後。金銭取扱の頻度・守秘性・権限の大きさで水準を調整します。

極度額の記載例

💡 極度額の記載文例

「身元保証人は、被保証人が貴社に対して負う損害賠償債務について、金200万円を極度額として連帯保証する責めを負う。」のように、金額を明確に記載します。「相当額」「応分の額」などの曖昧表現は無効となる可能性が高いので避けてください。

身元保証ニ関スル法律の5つの保護規定

身元保証契約には、民法とは別に1933年制定の「身元保証ニ関スル法律」という特別法が適用されます。この法律は身元保証人を保護するために5つの規定を設けており、会社側は遵守を怠ると損害賠償請求が制限される可能性があります。

規定1:有効期間の制限

身元保証ニ関スル法律第1条・第2条により、有効期間を定めない場合は3年(商工業見習者=新卒社員などは5年)、定める場合も最長5年です。自動更新条項は否定した裁判例があり、更新が必要な場合は改めて契約を締結します。

規定2:使用者の通知義務

第3条により、会社は次の2つの場合に身元保証人に遅滞なく通知する義務を負います。
  1. 本人に不適任または不誠実な行為があり、身元保証人の責任を生じる恐れがある場合
  2. 本人の任地または任務を変更したことにより身元保証人の責任が加重される場合、または監督が困難となる場合

規定3:身元保証人の解除権

第4条により、会社から上記の通知を受けた身元保証人、または通知を要する事実を独自に知った身元保証人は、将来に向けて契約を解除できます。この解除権の行使は、会社に対して意思表示をすることで足ります。

規定4:裁判所による賠償額の減額

第5条により、裁判所は身元保証人の責任および金額を定めるにあたり、以下の諸事情を考慮します。
考慮要素 具体内容
会社側の監督過失内部統制の不備、報告体制の不十分さ
保証引受の事情家族関係、社会通念上の義務感
身元保証人の注意本人への助言・監督の実施有無
本人の任務・身上変化職務変更・昇進・家族構成変化
その他一切の事情損害の性質・時期・経緯

規定5:強行規定性

第6条により、身元保証ニ関スル法律の規定に違反する契約条項で身元保証人に不利なものは無効となります。つまり、会社に有利な特約を盛り込んでも、この法律の水準を下回る保護しかない条項は無効となります。法令の原文はe-Gov法令検索「身元保証ニ関スル法律」で確認できます。

💡 実務のポイント

実務では、通知義務を怠ったために身元保証人の責任が免除されたケースを見ます。弊所が担当した製造業40名の顧問先では、経理担当者の使い込みが発覚した際、過去2回の軽微な金銭ミスを身元保証人に通知していなかったため、裁判所が損害額の80%を減額判定しました。通知義務の履行は、会社側の重要な実務負担です。

身元保証書に必ず入れるべき条項

無効にならない、かつ会社を守る身元保証書を作成するため、以下の条項を必ず盛り込みます。

必須条項リスト

条項 記載要点
1. 被保証人の特定氏名・生年月日・採用年月日
2. 保証の範囲故意・重過失により会社に与えた損害の賠償責任
3. 極度額具体的金額(例:金200万円)
4. 有効期間3年または5年以内(なければ3年)
5. 連帯保証の明示「連帯して」との文言
6. 保証人の署名・押印氏名・住所・本人との関係・連絡先
7. 契約日締結年月日
8. 説明事項極度額・保証範囲についての理解確認文

2人以上の保証人を要求する場合

実務では身元保証人を2名求めるケースが一般的です。この場合、各保証人ごとに極度額を設定するか、連帯して極度額を負担するかを明記する必要があります。複数保証人の場合も、各保証人に対して民法465条の2の極度額明記義務が適用されます。

📢 保証人の適格要件を明確化する

多くの会社は保証人の要件として「独立の生計を営む成年者で、本人の親族または準ずる者」と規定します。未成年者・無収入者・本人と生計を同一にする者(同居家族)は、実質的な保証能力を欠くため保証人として不適格です。

誓約書の記載事項と効力

誓約書は、身元保証書と異なり本人一人が署名する書類です。その内容は会社ごとに自由に設計できますが、実務では以下の9つの条項を網羅する構成が定番です。

誓約書の9つの定番条項

  1. 就業規則・服務規律の遵守
  2. 提出書類の真実性の保証
  3. 秘密保持義務(在職中および退職後)
  4. 競業避止義務(退職後一定期間)
  5. 個人情報・マイナンバー等の適正な取扱い
  6. SNS・ブログ等での情報発信の制限
  7. 反社会的勢力でないことの表明
  8. 損害賠償責任の確認
  9. 違反時の処分・責任の受諾

法的効力を高めるための3つのポイント

💡 誓約書の効力を高めるコツ

①秘密情報を具体的に列挙(顧客リスト・製造原価・設計資料等)し、抽象的な「業務上知り得た情報」で終わらせない、②就業規則との整合性を保ち、誓約書の内容が就業規則にも記載されている状態にする、③署名日付・署名欄を明確にし、自筆署名を原則とする。この3点を押さえた誓約書は、現場の経験上、裁判においても有効と判断されやすいです。

退職時の秘密保持誓約書も重要

入社時の誓約書だけでなく、退職時の秘密保持誓約書も必須です。退職後は従業員に対して業務命令が下せず、雇用契約に付随する秘密保持義務も原則として消滅するため、退職時点で改めて合意を取得する必要があります。退職後の秘密保持期間は3〜5年が相場で、製造方法等の核心技術は「退職後も永久に秘密保持する」と定めることも可能です。

競業避止義務条項の有効性4要件

誓約書に競業避止義務条項を盛り込むケースが増えていますが、裁判例上、以下の4要件を満たさなければ無効とされる傾向があります。

4要件の詳細

要件 具体的基準
1. 守るべき企業利益の存在営業秘密・顧客情報・特殊なノウハウなど
2. 労働者の地位秘密情報にアクセスする地位であったこと
3. 期間・場所・範囲の合理性期間は6ヶ月〜2年、地域・業種は必要最小限
4. 代償措置の有無退職金加算・競業手当の支給などの補償
この4要件のうち、代償措置の有無がもっとも見落とされがちです。代償措置がない競業避止条項は、裁判所により職業選択の自由(憲法22条)を過度に制約するとして無効判断される可能性が高まります。

⚠️ 全職員一律の競業避止条項は危険

一般事務職や営業アシスタントまで含めて一律に競業避止義務を課す誓約書は、「労働者の地位」要件を満たさず無効判断されるリスクが高いです。弊所が担当した小売業70名の顧問先では、誓約書の競業避止条項を管理職以上に限定する形で再整備し、職種別に条項の適用範囲を切り分けました。

通知義務の実務:どんな場合に通知するか

身元保証ニ関スル法律第3条の通知義務は、実務上もっともトラブルになりやすい論点です。どんな場合に通知すべきかを具体的に整理します。

通知が必要な3パターン

パターン 具体例
① 不適任・不誠実な行為軽微な金銭ミス、業務態度の問題、遅刻欠勤の常習化
② 任地の変更他支店への転勤、海外赴任(監督困難となる場合)
③ 任務の変更(責任加重)平社員から経理担当・金庫番への異動、管理職への昇進

通知方法と記録保存

通知は書面(内容証明郵便または配達証明付き郵便)で行い、控えを5年以上保管します。電子メールやLINEでの通知も法律上は有効ですが、後日の立証のため書面が推奨されます。

💡 通知書面の雛形

「令和○年○月○日、貴殿が身元保証された被保証人○○氏について、下記のとおり身元保証ニ関スル法律第3条に定める通知事由が生じましたのでご通知申し上げます。……本件について身元保証契約の解除を検討される場合は、書面にてその旨ご連絡ください。」の基本形で足ります。

身元保証書・誓約書の電子化は可能か

働き方のデジタル化に伴い、身元保証書・誓約書を電子署名サービス(クラウドサイン・DocuSign・GMOサイン等)で締結するケースが増えています。結論から言えば、電子署名法に準拠した電子署名を用いれば、紙と同等の法的効力を持ちます

電子化の可否と留意点

書類 電子化可否 留意点
誓約書○ 可本人の電子署名で完結
身元保証書○ 可(要注意)保証人自身の電子署名が必須。本人経由の署名取得は無効リスクあり

📢 保証人本人の電子署名が必須

身元保証書の電子化で注意すべきは、「保証人本人」が電子署名サービスにアクセスして自ら署名することです。従業員本人のメールアドレスで保証人の署名を代行取得することはなりすましに該当し、契約自体が無効となります。保証人のメールアドレスを別途取得し、直接署名依頼を送信する運用が必須です。

不提出時の対応:内定取消や解雇は可能か

採用者が身元保証書や誓約書の提出を拒否した場合、会社はどう対応すべきかという問題も実務上頻出します。結論として、合理的な範囲の書類要求であれば、不提出を理由とした内定取消や懲戒処分が可能です。

不提出時の対応フロー

段階 対応
1. 提出期限の通知入社日または入社後1週間以内を目安に書面通知
2. 拒否理由の確認保証人が見つからない等の事情をヒアリング
3. 代替策の提示保証人1名でも可、有料保証サービス利用可能等
4. 再提出期限の設定催告書面で2週間程度の猶予
5. 最終判断就業規則に基づく懲戒・雇用継続の判断

就業規則との連携が不可欠

不提出を理由とした処分を有効とするため、就業規則に「身元保証書・誓約書の提出義務」を明記しておく必要があります。明記がない場合、不提出を理由とした解雇は解雇権濫用(労働契約法16条)と判断されるリスクが高まります。

💡 実務のポイント

現場の経験上、保証人確保が困難な独身者や外国人労働者に対しては、有料身元保証サービス(MiCoS・一般社団法人身元保証相談士協会等)の利用を認める柔軟な運用が増えています。弊所が担当したIT企業30名の顧問先では、外国人エンジニア採用に際し、有料サービス利用を就業規則に明記して運用しています。

採用書類全体の中での位置付け

身元保証書・誓約書は、採用時の提出書類全体の中で位置付けて理解する必要があります。労働条件通知書・雇用契約書・誓約書・身元保証書の4点セットで運用するのが実務標準です。

採用時提出書類の4点セット

書類 作成者 役割
労働条件通知書会社労働条件の通知(労基法15条義務)
雇用契約書会社・本人労働契約の成立確認(任意)
誓約書本人服務規律・秘密保持の確認
身元保証書保証人損害発生時の賠償担保
前回の記事「労働条件通知書の書き方|2024年4月改正対応」と合わせて整備することで、採用時の書類整備が完成します。

自社で整備するか専門家に依頼するか

身元保証書・誓約書の整備は、自社でテンプレートを使って作成することも可能ですが、会社の業種・職種・就業規則との整合性を踏まえた個別設計が望ましい書類です。

自社対応vs社労士・行政書士依頼の判断マトリクス

判断軸 自社対応が向く場合 社労士・行政書士依頼が向く場合
会社規模従業員10名以下従業員11名以上
業種一般事務・小売など定型業務が中心金銭取扱・技術開発・医療介護など
職位別設計一律でよい管理職・技術職など階層別に必要
就業規則整備既存規則との整合性が取れている就業規則も併せて見直す必要がある
コスト目安無料〜数千円(テンプレ購入)5〜15万円(スポット作成)

AYUSAWA PARTNERS

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身元保証書・誓約書でよくある失敗パターン

弊所が顧問先の労務規程を点検してきた経験上、以下の失敗パターンが頻出します。

失敗パターン7選

  1. 極度額が未記載の旧様式を使用:2020年4月以降の契約でも旧書式を流用し、全契約が無効状態
  2. 有効期間の記載漏れ:自動的に3年となり、再契約を忘れるため長期勤続者の保証が切れている
  3. 通知義務の不履行:軽微なトラブルを放置し、重大事故発生時に減額判定を受ける
  4. 誓約書の内容が就業規則と矛盾:秘密情報の範囲・懲戒事由の定義が異なり、処分の根拠が弱体化
  5. 競業避止義務に代償措置なし:退職後の競業避止条項が無効とされ、顧客情報の持ち出しを抑止できない
  6. 保証人本人ではなく代筆で締結:署名の真正性が否定され、契約無効となる
  7. 退職時の秘密保持誓約書を取得していない:在職中の誓約書だけでは退職後の秘密保持が弱い

⚠️ 旧様式を使い続けるリスク

弊所が担当した運輸業50名の顧問先では、2020年4月以降も旧様式(極度額なし)で身元保証書を取得していました。ドライバーの横領事件(損害約300万円)が発生した際、身元保証人への請求ができず全損害を会社が負担する結果となりました。書式の更新は、会社を守る最優先課題です。

まとめ:身元保証書と誓約書の整備で採用リスクを最小化

📋 この記事のポイント

  • 2020年4月の民法改正により、極度額を明記しない身元保証書は契約自体が無効となる
  • 極度額の相場は給与の6〜12ヶ月分(100〜300万円程度)で、職種により調整する
  • 身元保証ニ関スル法律により、有効期間は最長5年、通知義務・解除権などの保護規定がある
  • 誓約書は秘密保持・競業避止・服務規律の確認が主目的で、入社時と退職時の2回取得する
  • 競業避止義務条項の有効性には、期間・場所・範囲の合理性と代償措置の4要件が必要
  • 電子署名での締結も可能だが、身元保証書は保証人本人の直接署名が必須
  • 提出拒否時の処分は、就業規則への明記と合理的な代替策の提示が前提となる

✅ 次のアクション

  • 現在使用している身元保証書の書式を点検し、極度額が明記されているか確認する
  • 極度額が未記載または旧様式の場合、速やかに新様式に差し替え、現従業員と再契約する
  • 誓約書と就業規則の整合性を確認し、秘密情報・懲戒事由の定義が一致しているか検証する
  • 退職時の秘密保持誓約書の雛形を整備し、退職手続きフローに組み込む
  • 競業避止条項がある場合、代償措置の有無と適用職位の妥当性を再点検する

よくある質問

2020年3月31日以前に締結した身元保証書は、極度額の記載がなくても今も有効ですか?
有効です。改正民法は2020年4月1日以降に締結した契約に適用されるため、それ以前の契約については経過措置により従前のルールが適用されます。ただし、更新や再契約を行う際は新ルールに従い極度額を記載する必要があります。長期勤続者についても、有効期間満了のタイミングで更新するならば新様式への切替が必要です。
身元保証書の極度額はいくらに設定するのが適切ですか?
給与の6〜12ヶ月分(100〜300万円程度)が実務上の相場です。一般事務・営業職なら100万円、経理・出納担当なら200〜300万円、管理職・役員なら300〜500万円を目安に設定します。高すぎると保証人確保が困難になり、低すぎると抑止効果を失うため、業務の性質と取り扱う金銭の規模に応じた水準が望ましいです。
誓約書の提出を拒否された場合、内定取消はできますか?
就業規則に誓約書の提出義務を明記している場合は可能です。ただし、誓約書の内容が合理的な範囲(服務規律・秘密保持等)に限られ、過度な義務(全員一律の競業避止など)を含む場合は、拒否に正当な理由があるとして内定取消が無効とされる可能性があります。まず拒否理由を確認し、誓約書内容の修正で対応できるか検討することが実務的です。
身元保証書の自動更新条項は有効ですか?
自動更新条項は裁判例により否定されています(身元保証ニ関スル法律の趣旨に反するため)。有効期間満了時に保証を継続したい場合は、改めて書面で契約を締結する必要があります。実務では、5年ごとの更新手続きを労務担当者のカレンダーに登録し、満了3ヶ月前に対象従業員と保証人に通知する運用が推奨されます。
身元保証人になれる人の要件はありますか?
法律上の要件はありませんが、実務では「独立の生計を営む成年者で、本人の親族または準ずる者」を基準とします。未成年者・無収入者・本人と生計を同一にする者(同居家族)は保証能力を欠くため不適格とするケースが一般的です。独身者や外国人労働者など親族に保証を頼みにくい場合は、有料身元保証サービスの利用を認める運用が増えています。
退職時の秘密保持誓約書は絶対に必要ですか?
法律上の必須ではありませんが、実務上は強く推奨されます。在職中の誓約書だけでは退職後の秘密保持義務が「雇用契約に付随する信義則上の義務」に限定され、製造方法や顧客情報などの具体的秘密情報の保護が弱くなります。退職時点で改めて合意を取得することで、秘密情報の範囲を明確化し、違反時の損害賠償請求の根拠を強化できます。
誓約書の内容に従業員が異議を唱えた場合、修正に応じるべきですか?
合理的な異議であれば修正を検討すべきです。特に「競業避止義務の期間・範囲」「秘密情報の定義」「違反時の損害賠償額」などは、個別交渉の余地を認める運用が裁判例との整合性を保つ上で望ましいとされています。ただし、会社が核心的に守りたい条項(情報漏洩禁止・反社排除など)は、一律適用の合理性があるため修正の必要はありません。
電子署名で身元保証書を締結する場合、何に注意すべきですか?
最重要なのは「保証人本人が自ら電子署名する」ことです。従業員本人のメールアドレス経由で保証人の署名を取得するなりすまし操作は、契約を無効とする重大な瑕疵となります。保証人のメールアドレスを事前に取得し、電子署名サービスから直接署名依頼を送信する運用を徹底してください。また、電子署名法に準拠した信頼性の高いサービス(クラウドサイン・DocuSign・GMOサインなど)の利用が推奨されます。
身元保証書・誓約書の整備は、採用時の重要な労務リスクマネジメントです。詳しくは「社会保険の全体像|加入義務と手続き完全ガイド」で労務全体の整備ポイントを、就業規則との連携については「就業規則の作成・変更完全ガイド」で詳細を解説しています。また、採用に伴う助成金活用は「キャリアアップ助成金の要件と申請方法」、採用時の届出全体像は「従業員採用時の届出完全ガイド」、労働条件通知書の書き方は「労働条件通知書の書き方|2024年4月改正対応」をご参照ください。