公認会計士 第47928号・税理士 第159175号
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【社労士×税理士が解説】個人事業主が従業員を初めて雇うときの手続き完全ガイド
初めて従業員を雇う個人事業主に向けて、税務署・労基署・ハローワーク・年金事務所の4系統の手続きを順序立てて解説します。この記事を読めば、抜け漏れなく全ての届出を完了し、合法的に給与計算をスタートできます。


【社労士×税理士が解説】個人事業主が従業員を初めて雇うときの手続き完全ガイド
初めて従業員を雇う個人事業主に向けて、税務署・労基署・ハローワーク・年金事務所の4系統の手続きを順序立てて解説します。この記事を読めば、抜け漏れなく全ての届出を完了し、合法的に給与計算をスタートできます。
🏆 結論:個人事業主の初雇用は4系統・8ステップで完了
個人事業主が初めて従業員を雇う場合、税務署(2〜3種類)・労基署(労災)・ハローワーク(雇用保険)・年金事務所(社保)の4系統に届出が必要です。ただし5人未満の個人事業所は社保強制加入の対象外(法定17業種を除く)のため、一般的には最初の雇用時は税務署・労基署・ハローワークの3系統となります。
手続きに入る前に、「そもそも雇うべきか」「業務委託ではダメか」を検討することが重要です。
同じ仕事でも、雇用契約と業務委託契約では法的扱いが大きく異なります。税務・社保・労務のコスト負担に影響するため、契約形態の選択は慎重に行います。
| 項目 | 雇用契約 | 業務委託契約 |
|---|---|---|
| 源泉徴収義務 | あり | 原則なし(報酬額と業種による) |
| 社会保険 | 加入義務あり(要件次第) | 受託者が個別加入 |
| 労働基準法 | 適用 | 適用外 |
| 労災・雇用保険 | 加入義務あり | なし |
| 経費計上 | 給与として全額経費 | 外注費として経費 |
⚠️ 「業務委託」の判定は実態で決まる
契約書で「業務委託」と記載しても、実態が①指揮命令関係あり、②労働時間・場所の拘束あり、③時給制や月給制、④業務器具を事業主が負担、等であれば雇用と判定されます。税務調査で指摘されると源泉徴収漏れとして追徴、労基署調査で指摘されると社保遡及加入のリスクがあります。
配偶者や親族を「従業員」として雇う場合、一般の従業員とは異なる「青色事業専従者給与」の制度を使います。青色申告をしている個人事業主が生計を一にする親族に給与を支払う場合、青色事業専従者給与に関する届出書を税務署に提出することで、給与を全額経費計上できます。
個人事業主が初めて従業員を雇う際の手続きは、以下の4系統に整理されます。
| 系統 | 提出先 | 主な届出 | 必須/任意 |
|---|---|---|---|
| 税務系 | 所轄税務署 | 給与支払事務所等の開設届出書/源泉所得税納期特例申請/青色事業専従者給与届出書 | 必須(納期特例は任意) |
| 労災保険系 | 労働基準監督署 | 労働保険 保険関係成立届/労働保険概算保険料申告書 | 必須(従業員1名から) |
| 雇用保険系 | ハローワーク | 雇用保険適用事業所設置届/雇用保険被保険者資格取得届 | 必須(要件該当時) |
| 社会保険系 | 年金事務所 | 新規適用届/被保険者資格取得届 | 5人未満は任意(法定17業種を除く) |
💡 実務のポイント
5人未満で社保任意適用に留まる個人事業主の場合、最初の手続きは税務署・労基署・ハローワークの3系統で完了します。従業員が5人以上になった段階で年金事務所への手続きが追加されます。ただし法定17業種(製造業・建設業等)は従業員数にかかわらず強制適用です。
初雇用の手続きを時系列で8ステップに整理します。雇用予定日の2週間前から準備を始めるのが理想です。
雇用契約を締結する前に、労働条件通知書(または雇用契約書兼労働条件通知書)を作成します。労働基準法第15条により、採用時に労働条件を書面で明示することが義務付けられています。
2024年4月改正により「就業場所・業務の変更の範囲」の明示も必要です。詳しくは労働条件通知書の記事を参照してください。
初めて従業員に給与を支払うことになったら、所轄税務署に給与支払事務所等の開設届出書を提出します。これにより、源泉所得税の納付書が税務署から送付されるようになります。
💡 開業届との関係
個人事業の開業届に「給与支払事務所等を開設する旨」を記載していれば、給与支払事務所等の開設届出書は改めて提出する必要はありません。ただし、開業後に雇用を開始する場合は必須の届出です。
従業員が常時10人未満の事業所は、源泉所得税の納期を毎月から年2回(1〜6月分を7月10日、7〜12月分を翌年1月20日)に変更できます。「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出すると、翌月から適用されます。
🧮 納期特例のメリット
年12回の納付を年2回にまとめられるため、事務負担が大幅に削減されます。従業員1名で月3万円の源泉徴収税なら、年間36万円をまとめて2回で納付できます。小規模事業主には必須の申請です。
従業員を1名でも雇ったら、労災保険への加入義務が発生します。所轄の労働基準監督署に「労働保険 保険関係成立届」を雇用日から10日以内に提出します。同時に「労働保険概算保険料申告書」も提出し、雇用日から50日以内に概算保険料を納付します。
雇用保険の加入要件(週20時間以上・31日以上の雇用見込み)を満たす従業員を雇う場合、ハローワークへ「雇用保険適用事業所設置届」を雇用日の翌日から10日以内に提出します。同時に「雇用保険被保険者資格取得届」を翌月10日までに提出します。
従業員本人から以下の書類を受領します。給与計算・年末調整に必須です。
📋 従業員から集める書類
☐ 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
☐ マイナンバー(番号確認書類)
☐ 基礎年金番号(社保加入する場合)
☐ 雇用保険被保険者証(前職がある場合)
☐ 前職の源泉徴収票(年末調整用)
☐ 給与振込口座情報
配偶者や親族を従業員として雇う場合、青色事業専従者給与に関する届出書を税務署に提出することで、給与を全額経費計上できます。青色申告であることが前提条件です。
提出期限は①給与を経費算入しようとする年の3月15日まで、または②1月16日以降に新規開業や家族を雇う場合はその日から2か月以内です。
初回給与の計算から、源泉所得税の天引きを開始します。源泉徴収税額表(月額表・日額表)を使い、扶養家族数に応じた金額を天引きします。
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鮎澤パートナーズに相談する税務系の手続きは3種類あり、うち1つは任意、1つは家族従業員時のみです。
届出書には、給与支払事務所の所在地・事業主の氏名・屋号・開設年月日・給与支払い開始年月日・従業員数などを記入します。個人事業主の場合、「役員数」欄は空欄、「役員以外の従業員数」欄に雇用する従業員数を記入します。
納期特例の適用要件は「給与支給人員が常時10人未満」の事業所であることです。ここでの「常時10人未満」は、繁忙期に一時的に10人を超える場合でも、通常は10人未満である場合を指します。
青色事業専従者として認められるには、以下のすべての要件を満たす必要があります。
📋 青色事業専従者の要件
労災保険・雇用保険の総称を「労働保険」と呼びます。労災は全従業員必須、雇用保険は要件該当者のみ加入します。
労災保険は、アルバイト・パートを含むすべての雇用労働者が加入義務の対象です。個人事業主本人は原則加入対象外ですが、建設業・林業・運送業などは特別加入制度が利用できます。
労働保険の成立届は、従業員の雇用日から10日以内に労働基準監督署へ提出します。同時に、年度末までの概算保険料を算出した「概算保険料申告書」も提出し、雇用日から50日以内に保険料を納付します。厚生労働省の労働保険成立手続きの案内で様式ダウンロードと記入例を確認できます。
以下の2つの要件を両方満たす労働者が雇用保険の被保険者となります。
📋 雇用保険の加入要件
📢 2028年10月の要件拡大
2028年10月1日から、1週間の所定労働時間が10時間以上20時間未満の短時間労働者も雇用保険加入対象となります。現在は対象外のアルバイトも2028年以降は手続きが必要になる可能性があります。
個人事業主は、従業員が5人未満であれば社会保険(健康保険・厚生年金)の強制適用ではありません。ただし法定17業種や5人以上の場合は強制加入です。
社会保険が強制適用となる個人事業主は以下のいずれかに該当する場合です。日本年金機構の適用事業所に関する公表資料も併せてご確認ください。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 常時5人以上の従業員を雇用 | 法定16業種以外も強制適用(飲食業・旅館業等サービス業を除く) |
| 法定17業種に該当 | 製造業・建設業・運輸業・金融保険業など(従業員数問わず) |
5人未満でも、従業員の半数以上の同意を得て年金事務所に申請し、厚生労働大臣の認可を受けることで「任意適用事業所」として社会保険に加入できます。従業員の福利厚生を充実させ、採用力を強化したい場合に有効です。
⚠️ 任意適用は原則脱退不可
一度任意適用事業所になると、原則として脱退はできません(従業員の4分の3以上の同意と認可が必要)。将来の事業見通しや法人化のタイミングも含めて慎重に判断する必要があります。
雇用手続きが完了した後も、継続的な実務対応が必要です。
毎月の給与支払いで、所得税・住民税・社会保険料(該当時)を天引きします。源泉所得税は翌月10日までに納付(納期特例の場合は年2回)、住民税は翌月10日までに納付が必要です。
12月の給与または賞与で、年間の所得税を精算します。従業員から保険料控除申告書等を集め、年間の源泉徴収税額と本来の年税額を精算します。還付または追加徴収が発生します。
毎年6月1日から7月10日までの間に、前年度の確定保険料と当年度の概算保険料を申告・納付する「年度更新」を行います。忘れると督促が届くため、カレンダーに登録しておくことが重要です。
前年分の給与支払報告書(市区町村)・源泉徴収票(税務署)・法定調書合計表を、翌年1月31日までに提出します。従業員の住民税の特別徴収額計算の基礎となります。
個人事業主が従業員を雇い事業規模が拡大してくると、法人成りを検討する時期が来ます。
法人成りを検討するタイミングとして、以下のような指標があります。
💡 法人成りの目安
・個人事業主の課税所得が年800万円以上(所得税率の境界)
・従業員が5人以上(社保強制適用の境界)
・消費税の課税事業者となる(売上1,000万円超)
・取引先から法人格を求められる
・銀行融資の拡大が必要
現場の経験上、従業員5人以上を常時抱えるようになった段階で法人成りするケースが多く、社保強制加入のタイミングに合わせて法人化することで、事業主本人も厚生年金に加入でき、将来の年金受給額を増やせるメリットがあります。
実務で個人事業主の初雇用時に発生しやすい失敗を整理します。
労災保険は1名でも雇ったら必須ですが、家族事業やアルバイト1人のみの場合に加入漏れが発生しやすいです。労災未加入中に労働災害が発生すると、保険給付が受けられず、事業主が全額負担するリスクがあります。
初めての雇用で源泉徴収義務を知らず、給与を額面のまま支払ってしまうケースが頻繁に見られます。税務調査で指摘されると、源泉徴収税本税+不納付加算税+延滞税の追徴となります。
配偶者に給与を支払っているが、青色事業専従者給与の届出を提出していないため経費計上できず、所得税の追加納付となる事例も多く見られます。開業時または家族を雇う時点で必ず届出を提出しましょう。
弊所が担当した飲食業(従業員3名)の事例では、福利厚生強化のため社保任意適用を申請したものの、法定福利費負担が想定以上に重く資金繰りを圧迫しました。任意適用は原則脱退できないため、年間の社保料負担を正確にシミュレーションしてから判断することが重要です。
実務でよく見られるのが、「外注費なら源泉徴収も社保も不要」と誤解し、実態が雇用関係の人を業務委託として支払い続けるケースです。現場の経験上、フリーランスエンジニアや営業代行を業務委託で継続利用していた個人事業主の税務調査で、指揮命令関係や時間的拘束がある実態を指摘され、過去2年分の源泉徴収税追徴+労働保険遡及加入を命じられた事例があります。契約形態は実態が重視されるため、業務委託とする場合は独立した事業者としての実態を整える必要があります。
労働保険料の年度更新(毎年6月1日〜7月10日)を忘れる個人事業主も多く見られます。顧問先として担当した小売業の事例では、年度更新を2年連続で忘れたことで督促が続き、遅延保険料の上乗せ徴収を受けました。初雇用時にカレンダーアプリやタスク管理ツールに登録しておくことを強く推奨します。
個人事業主の初雇用手続きは自分でも可能ですが、業種や規模によって専門家への依頼が推奨されます。
| 項目 | 自分で対応 | 社労士・税理士依頼 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 0円 | 5〜15万円(スポット) |
| 月額費用 | 0円 | 2〜5万円(顧問契約) |
| 所要時間 | 40〜80時間 | 打合せ数時間のみ |
| ミスのリスク | 高い | 低い |
| 継続管理 | 自己責任 | 委託可能 |
顧問先として多いのは、初雇用時のスポット依頼で手続きを依頼した後、給与計算・年末調整・社保対応を月額顧問で継続依頼するパターンです。従業員が3名を超える頃から、自力対応より顧問契約の方がコストパフォーマンスが良くなる傾向があります。
📋 この記事のポイント
🎯 次のアクション
個人事業主が初めて従業員を雇う際は、税務署・労基署・ハローワーク・年金事務所の4系統への届出が必要です。5人未満であれば社保は任意適用ですが、労災保険・源泉徴収義務は雇用1名目から発生します。
手続きを抜け漏れなく完了させることが、労働者との信頼関係構築と事業の健全な成長に繋がります。雇用人数が増えてきたら、法人成りも含めて経営全体の見直しを検討しましょう。
社会保険・労務全般については「社会保険の全体像」、就業規則の作成は「就業規則作成ガイド」、助成金の活用は「キャリアアップ助成金」で詳しく解説しています。採用時の届出詳細は「従業員採用時の届出完全ガイド」、労働条件通知書の書き方は「労働条件通知書の書き方」も併せてご参照ください。
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