公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。
初めて従業員を採用する経営者・人事担当者に向けて、採用時に必要な届出を「社保・雇用保険・税務」の3系統に整理して解説します。この記事を読めば、提出期限・提出先・様式を一覧で把握し、抜け漏れなく手続きを完了できます。


初めて従業員を採用する経営者・人事担当者に向けて、採用時に必要な届出を「社保・雇用保険・税務」の3系統に整理して解説します。この記事を読めば、提出期限・提出先・様式を一覧で把握し、抜け漏れなく手続きを完了できます。
🏆 結論:採用時の届出は3系統・合計7つ
従業員を採用したら、社保(年金事務所)に2つ、雇用保険(ハローワーク)に1つ、税務(社内保管+市区町村)に2〜3つ、計7つ前後の届出が必要です。最も期限が短いのは社保の資格取得届(入社日から5日以内)で、これを起点に逆算してスケジュールを組みます。
従業員を採用したら、大きく分けて3系統の届出が必要になります。それぞれ提出先と期限が異なるため、入社日から逆算したスケジュール管理が不可欠です。
| 系統 | 提出先 | 主な届出 | 期限 |
|---|---|---|---|
| 社会保険系 | 年金事務所/健保組合 | 資格取得届/被扶養者異動届 | 入社日から5日以内 |
| 雇用保険系 | ハローワーク | 被保険者資格取得届 | 入社日の翌月10日まで |
| 税務系 | 社内保管/市区町村 | 扶養控除等申告書/住民税特別徴収切替届出書等 | 初回給与支払日の前日まで |
💡 実務のポイント
最も期限が短いのは社保の資格取得届(5日以内)です。採用決定後すぐにマイナンバー・基礎年金番号を従業員から取得し、内定段階から必要書類を準備しておくことで、入社日当日からスムーズに手続きを進められます。
採用した従業員の勤務時間・雇用期間によっては、届出が不要になる場合があります。例えば、週所定労働時間が20時間未満のアルバイトは、原則として雇用保険の加入対象外です。社会保険も、週所定労働時間・月所定労働日数がいずれも正社員の4分の3未満の場合、特定適用事業所の要件に該当しなければ加入義務が生じません。
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の届出は、採用時手続きの中で最も期限が短いため、最優先で対応します。健康保険法第48条により、事業主は被保険者資格を取得したときは5日以内に届け出る義務があります。
事業主が日本年金機構へ提出する、採用時の最重要届出です。日本年金機構の公表資料でも、被保険者資格取得届は事実発生から5日以内の提出が必要と明示されています。
📢 提出期限の起算日
「入社日から5日以内」の入社日とは、雇用契約上の就労開始日です。試用期間がある場合は試用期間の初日が資格取得日となり、本採用日ではありません。所定休日が入社日でも、契約上の初日を記載します。
提出方法は、年金事務所窓口への持参・郵送のほか、e-Gov電子申請・日本年金機構の「届書作成プログラム」による電子申請が可能です。資本金1億円超の大規模事業所は電子申請が義務化されています。
従業員に配偶者や子など扶養家族がいる場合、被扶養者(異動)届の提出が必要です。この届出により、扶養家族も健康保険の被保険者証を受け取ることができます。
📢 令和8年度改正:被扶養者認定の新ルール
2026年4月から、被扶養者認定における年収見込みの判定基準が明確化されました。扶養家族の収入見込みは、労働契約書(労働条件通知書)に記載された年収をベースに判定します。このため、扶養家族自身が勤務している場合、その方の労働条件通知書を確認する必要があります。
実務では、従業員のマイナンバーや基礎年金番号の提出が遅れ、5日以内の届出が困難な場合があります。やむを得ず遅延する場合は、後日の届出でも受理されますが、保険証の発行が遅れ、従業員が医療機関で全額自己負担する事態が発生します。立替払いと還付の手続きは煩雑なため、可能な限り期限内提出を目指しましょう。
弊所が担当したIT企業(従業員15名)の事例では、新卒採用のタイミング(4月1日)に入社手続きが集中し、5日以内の資格取得届提出が困難になるケースがありました。そこで、内定通知書とマイナンバー提出依頼書をセットで2月上旬に送付する運用に変更したところ、4月1日入社で3月末までに全従業員分の必要情報が揃い、入社日当日に年金事務所へ電子申請を完了できる体制を構築できました。
雇用保険の届出は、社会保険と異なり提出期限が翌月10日までと少し長めに設定されています。ただし加入要件を満たす従業員全員について、必ず提出する義務があります。
厚生労働省の資料によると、雇用保険の加入要件に該当する労働者を雇い入れた場合、被保険者となった日の属する月の翌月10日までに資格取得届の提出が必要とされています。
次の2つの要件をいずれも満たす労働者が、雇用保険の被保険者となります。
💡 雇用保険の加入要件
(1) 31日以上引き続き雇用されることが見込まれること
(2) 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
雇用保険法改正により、2028年10月1日から、1週間の所定労働時間が10時間以上20時間未満の短時間労働者も雇用保険の加入対象となります。現在は対象外のアルバイト・パートも、2028年以降は加入手続きが必要になる可能性があるため、労働時間管理の見直しを検討しておきましょう。
原則として資格取得届のみで添付書類は不要です。ただし、提出期限(翌月10日)を超過すると、賃金台帳・労働者名簿・出勤簿の提出を求められる場合があります。電子申請はGビズIDを取得すれば、事業所のPCから完結できます。
税務系は届出自体を役所に提出するものは限定的ですが、給与計算の源泉徴収を正しく行うために、従業員から受け取るべき書類があります。これらは社内で保管し、税務調査の際に提示できるようにしておきます。
国税庁の公表によれば、扶養控除等申告書は、中途就職の場合は就職後最初の給与の支払を受ける日の前日までに提出することとされています。この書類の有無で、源泉徴収税額の計算方法(甲欄・乙欄)が変わります。
| 区分 | 扶養控除等申告書 | 源泉徴収 |
|---|---|---|
| 甲欄 | 提出あり | 主たる給与として源泉徴収。扶養の数に応じて税額計算 |
| 乙欄 | 提出なし | 従たる給与として源泉徴収。税額高め |
💡 実務のポイント
扶養控除等申告書は2か所以上の給与支払者に提出できません(主たる給与1か所のみ)。副業・兼業の従業員には、どちらの会社を主とするか確認した上で提出を求めましょう。
前職で住民税の特別徴収(給与天引き)を受けていた従業員を採用した場合、そのまま特別徴収を引き継ぐために「給与所得者異動届出書」を、従業員が住む市区町村に提出します。この届出は、前職の会社が作成するケース・新しい会社が作成するケースの両方があるため、入社時に前職の給与担当者と連携する必要があります。
個人事業主が初めて従業員を雇う場合、所轄税務署に「給与支払事務所等の開設届出書」を提出する必要があります。提出期限は開設日から1か月以内です。法人の場合は、法人設立届出書に給与支払事務所の開設事項を記載すれば、別途この届出は不要です。
円滑な届出のため、内定段階から従業員に依頼し、入社日までに揃えておくべき書類があります。抜け漏れがあると、届出が遅延するリスクが高まります。
📋 採用時チェックリスト
☐ マイナンバー(番号確認書類)
☐ 基礎年金番号(年金手帳または基礎年金番号通知書)
☐ 雇用保険被保険者証(前職がある場合)
☐ 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
☐ 源泉徴収票(前職がある場合・年末調整用)
☐ 給与振込口座の情報
☐ 労働条件通知書(会社から交付・控えを返却)
☐ 健康保険被扶養者(異動)届(扶養家族がいる場合)
扶養家族がいる場合は、扶養家族の年収を証明する書類(課税証明書・源泉徴収票など)が必要です。前職から退職後1年以内に社保資格を喪失している場合は、前職の退職証明書や離職票の提示を求められることもあります。
3系統の届出期限を一元管理するため、入社日を起点とした逆算スケジュールを作成します。
| 時期 | 対応事項 |
|---|---|
| 内定〜入社2週間前 | マイナンバー・基礎年金番号の確認依頼。扶養家族の有無を確認 |
| 入社1週間前 | 労働条件通知書を交付。前職の雇用保険被保険者証・源泉徴収票を依頼 |
| 入社日 | 扶養控除等申告書に記入。初回給与日前日までに提出完了 |
| 入社日から5日以内 | 社保 資格取得届を年金事務所へ提出 |
| 翌月10日まで | 雇用保険 資格取得届をハローワークへ提出 |
| 初回給与計算時 | 社保料・雇用保険料・源泉所得税を給与から控除 |
従業員数が増えてくると、各届出の期限管理と書類作成が煩雑になります。freee人事労務、マネーフォワードクラウド給与、SmartHR等のクラウド人事労務ソフトを活用すれば、従業員が自分でマイナンバーや扶養情報を入力し、会社側の入力負担と入力ミスが大幅に削減できます。
採用時の届出で発生しやすい典型的な失敗パターンを整理します。
社保の資格取得届が5日を超過しても、即座に罰則が科されるわけではありません。しかし、保険証の発行が遅れ、従業員が医療機関で10割負担する事態が発生すると、後日の立替払い・還付手続きが必要になり、経理部門・従業員双方に大きな負担がかかります。
弊所が担当した税務調査立会いの事例(顧問先の飲食業・従業員8名)では、採用時の雇用保険資格取得届が3か月遅延しており、ハローワークから「遅延理由書」と全従業員の賃金台帳・出勤簿の提出を求められました。当該事業所は結果的に2か月かけて過去書類を整備する必要が生じ、通常業務に大きな支障をきたしました。期限管理の重要性を痛感する事案でした。
⚠️ 雇用保険の6か月超遅延は要注意
雇用保険の資格取得届が6か月以上遅延した場合、ハローワークから「遅延理由書」の提出を求められることがあります。また、全期間の賃金台帳・出勤簿の提出も必要となり、事業主の信頼性に影響します。
実務でよく見られる失敗が、「試用期間中は社保未加入、本採用後に加入」という誤った運用です。試用期間中でも、雇用契約が成立している以上、加入要件を満たせば社保・雇用保険への加入義務があります。試用期間を理由に加入を先延ばしにすることはできません。
現場でよく見かけるのが、小規模事業所(従業員5〜10名規模)で「試用期間3か月中はアルバイト扱い、3か月経過後に正社員登用」という雇用慣行です。実態として週40時間以上働き雇用契約書もある場合、試用期間初日が社保資格取得日となります。過去に実際の税務調査で、3か月分の社会保険料(会社負担分・従業員立替分)を遡及的に支払わされた事例もあるため、試用期間と社保加入は別物として整理する必要があります。
内定段階でマイナンバー提出依頼を怠ると、入社日当日になって「まだ集めていない」というケースが頻発します。マイナンバーは社保・雇用保険・税務の全ての届出で必要となるため、内定通知書とセットでマイナンバー提出依頼書を送る運用が推奨されます。
業種によっては、一般的な7つの届出に加えて追加の手続きが発生します。
建設業や運送業では、労災保険の特別加入制度があり、一人親方・事業主自身が加入するための別途手続きが必要な場合があります。また、建設業では労働保険料の申告が一般の事業とは異なる「有期事業」扱いとなるケースがあるため、社労士への相談が推奨されます。
労働者派遣事業を行う場合、派遣元は派遣先への派遣元管理台帳の整備等、追加の労務管理義務が生じます。また、業務委託契約で雇う場合は社保・雇用保険の加入義務がありませんが、実態が雇用関係と判断されると、遡及的に加入義務が生じるリスクがあるため、契約書の内容を慎重に検討する必要があります。
業務委託と雇用の判定基準として、実務では「指揮命令関係の有無」「業務時間・場所の拘束度合い」「報酬の支払形態(時給制か成果報酬か)」「業務に要する機械・材料の負担主体」などが総合的に見られます。形式的に業務委託契約書を締結していても、これらの実態が雇用契約と変わらない場合、税務調査や労働基準監督署調査で「偽装請負」と判定されるリスクがあります。採用段階で業務委託と雇用のどちらで契約するかは、契約書文言だけでなく実態設計まで含めて検討することが重要です。
外国人従業員を採用する場合、在留資格の確認と「外国人雇用状況届出書」の提出が必要です。雇用保険の被保険者となる外国人は雇用保険資格取得届の備考欄に在留資格等を記載することで、外国人雇用状況届出書を兼ねることができます。雇用保険の被保険者とならない外国人については、別途ハローワークへ「外国人雇用状況届出書」を翌月末日までに提出します。在留資格の内容によっては、業務内容に制限があるため、労働条件通知書と在留資格の整合性確認も必要になります。
採用時届出は手続き自体は難しくないものの、期限管理と書類作成が煩雑です。専門家への依頼を検討するポイントを整理します。
| 項目 | 自社対応 | 社労士・税理士依頼 |
|---|---|---|
| 月額費用 | 0円(担当者の人件費は別) | 2〜5万円/月 |
| 期限管理の手間 | 担当者負担 | 委託可能 |
| 改正対応 | 自己責任 | 専門家が最新情報を反映 |
| ミスの影響 | 直接的 | 専門家責任 |
採用数が年間5人未満で、担当者が人事労務に慣れている場合は自社対応でも十分です。採用数が年間10人以上、または人事労務専任担当者がいない場合は、社労士への依頼を検討する価値があります。
📝 行政書士の視点
採用時の届出とは別に、建設業許可の「経営業務の管理責任者」「専任技術者」の届出、古物商許可の「管理者」変更など、業種別許認可に紐づく人事変更届出が発生するケースがあります。従業員の採用・退職時には、許認可側の届出も漏れなく対応する必要があります。
📋 この記事のポイント
🎯 次のアクション
従業員採用時の届出は、社保・雇用保険・税務の3系統に分かれ、それぞれ提出先と期限が異なります。最も期限が短いのは社保の資格取得届(5日以内)で、これを起点に逆算スケジュールを組むことが重要です。
2026年4月の被扶養者認定ルール変更、2028年10月の雇用保険加入要件拡大など、今後も制度改正が続きます。最新情報をキャッチアップしながら、従業員にとっても会社にとっても安心できる採用手続きを整備しましょう。
社会保険・労務全般については「社会保険の全体像」、就業規則作成については「就業規則作成ガイド」、助成金については「キャリアアップ助成金」で詳しく解説しています。関連する手続きとして「労働条件通知書の書き方」や「試用期間中の社会保険加入義務」も併せてご参照ください。
AYUSAWA PARTNERS
採用時の届出・社保手続きのご相談は鮎澤パートナーズへ
初回相談無料。社会保険労務士・税理士・公認会計士・行政書士がワンストップで対応します。採用手続きの代行・定期顧問契約も承ります。
鮎澤パートナーズに相談する