【税理士監修】白色申告の記帳・帳簿保存義務|簡単な記帳方法と保存期間

【税理士監修】白色申告の記帳・帳簿保存義務|簡単な記帳方法と保存期間
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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白色申告の記帳・帳簿保存義務|簡単な記帳方法と保存期間

「白色申告でも帳簿は必要?」「どんな帳簿をどうやってつければいい?」そんな疑問を持つ個人事業主に向けて、白色申告の記帳義務と具体的な書き方、保存期間のルール、帳簿がない場合のペナルティまで完全ガイドします。

🏆 結論:白色申告でも帳簿の作成・保存は義務

2014年(平成26年)1月から、全ての白色申告者に記帳と帳簿保存が義務化されています。所得金額にかかわらず、事業所得・不動産所得・山林所得がある方は帳簿をつけなければなりません。白色申告の記帳方法は「単式簿記」で、家計簿のように日付・科目・金額・内容を記録するだけでOK。1日の取引をまとめて記帳する簡易な方法も認められています。

白色申告の記帳義務とは?【全員が対象】

記帳義務化の経緯

かつて白色申告者は、前々年分の事業所得等の合計が300万円以下であれば記帳義務が免除されていました。しかし、平成24年度の税制改正により、2014年(平成26年)1月から全ての白色申告者に記帳と帳簿書類の保存が義務化されました。

現在は「白色申告だから帳簿は不要」という考えは完全に誤りです。所得の金額にかかわらず、事業所得、不動産所得、山林所得のいずれかがある全ての個人事業主は記帳義務があります。

記帳が必要な内容

白色申告で帳簿に記載すべき内容は、所得税法第232条に基づき、以下の項目です。

売上などの収入金額、仕入れや経費に関する事項について、取引の年月日、売上先・仕入先その他の相手方の名称、金額、日々の売上げ・仕入れ・経費の金額等を記載します。

💡 実務のポイント:「簡易な方法」でOK

白色申告の記帳は、一つ一つの取引ごとに記録する必要はありません。日々の合計金額をまとめて記載する「簡易な方法」でも認められています。たとえば、1日に3件の現金売上があった場合、3件を合計した1行だけ記帳すればOKです。ただし、高額な取引(数十万円以上)は個別に記帳することをおすすめします。

参考: 国税庁「No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」

白色申告と青色申告の記帳義務の違い【比較表】

白色申告と青色申告では、記帳方法や保存期間、メリットが大きく異なります。「どちらを選ぶべきか」を判断するために、8項目で比較します。

比較項目 白色申告 青色申告
記帳方法単式簿記(簡易簿記)複式簿記(65万円控除)
or 簡易簿記(10万円控除)
作成する帳簿法定帳簿(収入・経費を記録)1種類でOK仕訳帳・総勘定元帳など複数
帳簿の保存期間法定帳簿7年、その他5年帳簿7年、書類5〜7年
提出書類確定申告書+収支内訳書確定申告書+青色申告決算書
(貸借対照表・損益計算書)
特別控除なし最大65万円
赤字の繰越不可3年間繰越可能
少額資産特例10万円未満のみ即時償却40万円未満まで即時償却
事前届出不要(デフォルト)開業日から2ヶ月以内に届出

青色申告のメリットについては「青色申告のメリット完全ガイド」で詳しく解説しています。

白色申告の帳簿の書き方【5つの記帳例】

記帳に必要な4つの要素

白色申告の帳簿に決まった書式はありません。「日付」「科目(勘定科目)」「金額」「具体的な内容(取引先名など)」の4つの要素が揃っていれば、どのような形式でも構いません。手書きのノート、Excel、会計ソフトのいずれでもOKです。

記帳例5パターン

パターン 日付 科目 金額 内容
①現金売上4/1売上35,0004/1分 現金売上合計
②掛け売上4/5売上(売掛金)110,000A社 デザイン制作費
③現金仕入4/8仕入22,000B商店 材料費
④経費支払い4/10通信費5,500スマホ代(事業割合70%で按分後)
⑤家事按分4/30地代家賃42,000自宅家賃12万円×事業割合35%

※①の現金売上は1日の合計額をまとめて1行で記帳してOK(少額の場合)。②のように取引先が明確な場合は取引先名を記入。

💡 実務のポイント:収支内訳書の科目と揃えるのがコツ

白色申告では確定申告時に「収支内訳書」を提出します。帳簿の経費科目を収支内訳書の科目(租税公課・荷造運賃・水道光熱費・旅費交通費・通信費・広告宣伝費・接待交際費・損害保険料・修繕費・消耗品費・福利厚生費・地代家賃…)と揃えておくと、年末に転記するだけで収支内訳書が完成します。

帳簿はどうやって作る?3つの方法を比較

記帳方法 メリット デメリット おすすめの人
手書き
(ノート・出納帳)
コストゼロ。100均の出納帳でOK計算ミスのリスク。年末の集計が大変取引が月10件以下の方
Excel
(テンプレート利用)
国税庁の無料テンプレートあり。関数で自動集計消費税の区分経理には不向きPCに慣れている方。取引が月30件程度まで
会計ソフト
(freee・弥生等)
銀行口座連携で自動取込。収支内訳書を自動作成。青色に切り替えも容易月額料金がかかる(無料プランあり)取引が多い方。将来青色申告にする予定の方

💡 実務のポイント

白色申告であっても、最初から会計ソフトを使うことをおすすめします。理由は2つ。第一に、白色申告用の無料プランがある会計ソフトが多いこと。第二に、将来青色申告に切り替えたときにデータがそのまま移行できること。手書きやExcelから会計ソフトへの移行は意外と手間がかかります。

確定申告の全体像については「確定申告の基礎知識完全ガイド」で解説しています。

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白色申告の帳簿・書類の保存期間一覧

白色申告者は、帳簿や書類を一定期間保存する義務があります。保存期間は書類の種類によって5年または7年です。

書類の種類 具体例 保存期間
法定帳簿収入金額・必要経費を記載した帳簿7年
任意帳簿業務に関して作成した帳簿(固定資産台帳等)5年
決算関係書類収支内訳書の控え、棚卸表5年
請求書・見積書取引先からの請求書、自社発行の見積書の控え5年
領収書・レシート経費の領収書・レシート5年
納品書商品の納品書5年

※保存期間の起算日は、確定申告の法定申告期限の翌日(原則3月16日)から。「種類ごとに保存期間を分けるのが面倒」な場合は、全部7年保存にしてしまうのがラクです。

⚠️ 注意:電子データの保存ルール

電子帳簿保存法により、メールやWebで受け取った請求書・領収書は、電子データのまま保存することが原則です。紙に印刷して保存するだけではNGになる場合があります。クラウド会計ソフトを使っていれば自動的にデータ保存されますが、メール添付のPDF請求書などは別途整理して保存する必要があります。

帳簿をつけなかった場合のリスク【3段階のペナルティ】

白色申告の記帳義務に違反しても、それだけで直接的な罰則はありません。しかし、帳簿がないことで以下の3段階のリスクが発生します。

段階 リスクの内容 具体的な影響
推計課税のリスク帳簿がない場合、税務署が同業他社の所得率などをもとに所得を推計して課税する。実際の所得より高い税額になる可能性がある
加算税の加重
(令和5年分〜)
売上に関する帳簿を保存していない場合、通常の過少申告加算税・無申告加算税に5%〜10%が上乗せされる(令和5年分の修正申告等から適用)
経費を否認される帳簿で経費を証明できなければ、税務調査で経費として認めてもらえず、所得が増える=税金が増える

💡 実務のポイント

白色申告の税務調査では「推計課税」が使われることがあります。これは税務署が帳簿なしの事業者に対して、同業他社の所得率(たとえば同業の飲食店の平均所得率20%)を当てはめて課税する方法です。実際の経費率が30%だったとしても、帳簿がなければ反論できません。帳簿をきちんとつけることは、自分を守る最大の防御策です。

「白色のまま」vs「青色に切り替え」損益分岐シミュレーション

白色申告者が「このまま白色でいいのか、青色に切り替えるべきか」を判断するための税額シミュレーションです。2014年以降は白色でも記帳義務があるため、「帳簿をつける手間は同じ。それなら控除のある青色が有利」というのが基本的な考え方です。

📐 シミュレーション前提条件

  • 個人事業主(他の給与所得なし)
  • 基礎控除48万円+社会保険料控除40万円=控除合計88万円
  • 所得税のみ比較(住民税・事業税は含まず)
事業所得 白色
(控除なし)
青色10万円
控除
青色65万円
控除
白色と65万円控除
の税額差
100万円6,000円1,000円0円▲6,000円
300万円112,500円107,500円80,000円▲32,500円
500万円372,500円362,500円242,500円▲130,000円

※概算値です。復興特別所得税は含まず。住民税でもさらに約6.5万円(65万円×10%)の差が出ます。

📊 公認会計士の視点

事業所得300万円のケースで、白色と青色65万円控除の税額差は所得税だけで約3.25万円、住民税を含めると約10万円の差が出ます。500万円になると約20万円の差です。白色でも記帳義務がある現在、「手間は同じだが控除がゼロ」の白色を続ける合理的な理由はほとんどありません。特に会計ソフトを使えば、簡易簿記と複式簿記の手間の差はほぼゼロです。

白色申告から青色申告への切り替え方法

切り替えの手順

白色申告から青色申告に切り替えるには、「所得税の青色申告承認申請書」を所轄税務署に提出します。提出期限は、青色申告をしたい年の3月15日までです。たとえば、来年分から青色申告にしたい場合は、来年の3月15日までに提出する必要があります。

新規開業の場合は、開業日から2ヶ月以内に提出すれば、開業した年から青色申告が使えます。

切り替え時の注意点

青色申告に切り替えると、複式簿記で帳簿をつける必要がありますが、クラウド会計ソフトを使えば入力方法は白色とほぼ変わりません。freeeやマネーフォワードなら、取引を入力するだけで自動的に仕訳帳・総勘定元帳が生成されます。

事業所得の基本については「事業所得の基礎知識」をご覧ください。

白色申告で提出する「収支内訳書」の書き方

収支内訳書の構成

白色申告者が確定申告時に提出する書類は、確定申告書(第一表・第二表)と収支内訳書です。収支内訳書には、1年間の収入金額と必要経費の内訳を記載します。日々の帳簿から年間の合計額を転記する形で作成します。

収支内訳書の主な記載項目

収支内訳書には、売上(収入)金額、売上原価(仕入金額・期首棚卸高・期末棚卸高)、経費の科目別合計額(租税公課・荷造運賃・水道光熱費・旅費交通費・通信費・広告宣伝費・接待交際費・損害保険料・修繕費・消耗品費・福利厚生費・給料賃金・外注工賃・利子割引料・地代家賃・貸倒金・雑費など)を記載します。

所得控除の全体像は「所得控除一覧ガイド」をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

白色申告で帳簿をつけないと罰則はありますか?
帳簿をつけないこと自体に直接的な罰則(罰金・懲役)はありません。しかし、税務調査で帳簿がない場合、推計課税を受けるリスクがあります。また、令和5年分以降は、売上帳簿が不十分な場合、加算税が5〜10%上乗せされる制度が導入されています。
白色申告でも領収書を保存する義務はありますか?
はい、あります。領収書・レシートは5年間の保存義務があります。帳簿だけでなく、請求書・納品書・領収書などの証拠書類も整理して保存してください。税務調査では帳簿と証拠書類の両方を確認されます。
白色申告の帳簿は手書きでもいいですか?
はい、手書きでも問題ありません。白色申告の帳簿には決まった書式がないため、大学ノートでも100均の出納帳でもOKです。ただし、取引件数が多い場合はExcelや会計ソフトの方が集計が楽になります。
白色申告でも複式簿記で帳簿をつけることはできますか?
できますが、白色申告では複式簿記でつけても特別控除は受けられません。複式簿記で記帳するなら、青色申告に切り替えて65万円控除を受ける方がメリットがあります。
副業の雑所得でも帳簿をつける必要がありますか?
令和4年以降、前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える方は、現金預金取引等関係書類(領収書・請求書等)の保存が必要です。また、1,000万円超の場合は収支内訳書の添付も必要になりました。
白色申告から青色申告に切り替えるタイミングはいつがベスト?
できるだけ早い方がベストです。白色と青色の記帳の手間の差は、会計ソフトを使えばほぼゼロ。一方、65万円控除による節税効果は年間数万円〜十数万円になります。提出期限は青色にしたい年の3月15日までです。
消費税の課税事業者の場合、白色申告の帳簿で何か変わりますか?
消費税の課税事業者は、仕入税額控除を受けるために「区分経理」が必要です。帳簿に税率(10%/8%)と、相手方がインボイス発行事業者かどうかを記載する必要があります。消費税の計算は複雑なので、課税事業者になったら会計ソフトの利用を強くおすすめします。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 2014年から全ての白色申告者に記帳と帳簿保存が義務化されている
  • 白色申告は単式簿記でOK。日付・科目・金額・内容の4項目を記録する
  • 1日の取引をまとめて記帳する「簡易な方法」も認められている
  • 法定帳簿は7年、その他書類は5年の保存義務がある。迷ったら全て7年保存
  • 帳簿がないと推計課税のリスクがあり、加算税が5〜10%加重される制度も
  • 白色でも記帳義務がある以上、青色申告に切り替えた方が節税効果が大きい
  • 青色への切り替えは3月15日までに届出を提出するだけ

白色申告の記帳は「面倒くさい」というイメージがありますが、実際はシンプルな作業です。毎日こまめに記帳する習慣をつければ、確定申告の時期に慌てることもなくなります。さらに節税効果を得たいなら、青色申告への切り替えを検討してみてください。

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