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事業所得とは|計算方法・必要経費・課税のしくみを完全解説
事業所得は、個人事業主・フリーランスが事業から得た所得で、「総収入金額−必要経費」で計算します。本記事では、事業所得の定義・計算方法・必要経費の範囲(20種類)、総収入金額の決定ルール、雑所得との区分判定(帳簿保存基準)、令和9年からの青色申告特別控除75万円拡充までを税理士の実務目線で完全解説します。
🏆 結論:事業所得は「総収入金額−必要経費」、雑所得との区分は帳簿保存の有無で判定
事業所得は所得税法第27条に基づき、農業・漁業・製造業・小売業・サービス業等を継続的に営む個人事業主の所得です。計算式は「総収入金額−必要経費」で、必要経費は事業遂行に必要な支出に限定されます(法人税の損金とは似て非なる概念)。総合課税で他の所得と合算され、累進税率5〜45%が適用されます。雑所得との区分判定は2022年10月改正で「帳簿保存の有無」が中心基準となり、副業300万円以下でも帳簿があれば原則として事業所得に区分されます。事業所得には青色申告(最大65万円控除・令和9年から75万円拡充)・損益通算・3年繰越欠損金・専従者給与等の重要な節税メリットがあり、副業から本業に移行する際は事業所得区分の確保が極めて重要です。
事業所得の定義|10種類の所得区分の中での位置づけ
所得税法では、所得を性質に応じて10種類に区分します。事業所得はその中で、農業・漁業・製造業・卸売業・小売業・サービス業その他の事業から生じる所得を指します(所得税法第27条)。
所得税法上の10種類の所得区分
| 所得区分 | 代表例 |
|---|---|
| 利子所得 | 預貯金利息・公社債利子 |
| 配当所得 | 株式配当・投資信託の収益分配 |
| 不動産所得 | 不動産賃貸収入 |
| 事業所得 | 個人事業主・フリーランスの事業収入 |
| 給与所得 | サラリーマンの給与・賞与 |
| 退職所得 | 退職金 |
| 山林所得 | 山林の伐採・譲渡 |
| 譲渡所得 | 不動産・株式の売却益 |
| 一時所得 | 保険満期返戻金・懸賞金 |
| 雑所得 | 公的年金・副業収入・FX・暗号資産 |
事業所得の4要件
事業所得と認められるためには、所得税基本通達27-1により以下の4要件を満たす必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ①営利性・有償性 | 利益を得る目的で対価を得て行う |
| ②継続性・反復性 | 継続的・反復的に行われる(単発の取引は対象外) |
| ③自己の危険と計算 | 自己責任で事業を運営・赤字リスクを負う |
| ④社会通念上の事業性 | 取引の規模・形態が一般社会の「事業」として認識される |
事業所得の計算方法|総収入金額−必要経費
基本計算式
📢 事業所得の計算式
事業所得の金額 = 総収入金額 − 必要経費(−青色申告特別控除)
※青色申告者は、上記から青色申告特別控除(10万円〜65万円・令和9年から75万円)を引いた額が事業所得の金額
計算の流れ
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| STEP1 | 1月1日〜12月31日の総収入金額を集計 |
| STEP2 | 同期間の必要経費を集計 |
| STEP3 | STEP1−STEP2で事業所得の金額を計算 |
| STEP4 | 青色申告者は青色申告特別控除を差し引く |
| STEP5 | 他の所得と合算して所得控除を控除 |
| STEP6 | 累進税率(5〜45%)を適用して所得税額を計算 |
総収入金額のルール|何を「収入」とするか
事業所得の「総収入金額」は、単に売上金額だけではなく、事業に関連するすべての経済的利益を含みます。所得税法第36条に基づき、現金収入だけでなく現物収入・経済的利益も収入金額となります。
総収入金額に含まれるもの
| 区分 | 具体例 |
|---|---|
| 売上収入 | 商品売上・サービス提供報酬 |
| 未収収入 | 12月末時点の売掛金(未入金でも計上) |
| 事業用資産の譲渡 | 事業用機械・備品の売却益 |
| 家事消費 | 事業の商品を自家用に消費した場合の通常販売価額 |
| 経済的利益 | 物品の贈与・無償サービスの享受 |
| 補助金等 | 事業に直接関連する補助金・給付金 |
| 損害賠償金 | 取引先からの損害賠償・違約金(事業関連分) |
| 為替差益 | 外貨建取引の為替差益 |
💡 実務のポイント
特に注意が必要なのは「家事消費」と「経済的利益」です。例えば、雑貨店経営者が自家用に商品を持ち帰った場合、通常販売価額または70%相当額(仕入価額が高い方)を収入金額に含める必要があります。これを失念すると過少申告となり、税務調査で指摘されるリスクがあります。事業の規模に関係なく、家事消費の計上は適正に行うことが重要です。実務上は会計ソフトの「家事消費」勘定を活用して、毎月一定額を計上するのが定石です。
収入金額の計上時期(発生主義)
事業所得の収入金額は、原則として発生主義(売上の発生時点)で計上します。商品引渡し時・サービス提供完了時・契約成立時等のタイミングで収入を認識し、入金時点ではありません。例えば12月25日に納品して翌年1月10日に入金された取引は、当年分の収入として計上します。
必要経費のルール|何を「経費」とするか
必要経費は「事業の遂行に必要な支出」で、所得税法第37条に基づきます。法人税の損金とは似ているようで、家事関連費等の特殊論点がある点で異なります。
必要経費の3要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ①事業関連性 | 事業に直接または間接に関連する支出 |
| ②業務遂行上の必要性 | 事業遂行上必要であること(社会通念上) |
| ③客観性・合理性 | 支出の証拠(領収書等)があり、金額・内容が合理的 |
事業所得の必要経費20種類
| 勘定科目 | 内容 |
|---|---|
| 租税公課 | 固定資産税・自動車税・印紙税等(所得税・住民税は除く) |
| 荷造運賃 | 商品の発送費・梱包資材費 |
| 水道光熱費 | 事業用の電気・ガス・水道代 |
| 旅費交通費 | 出張費・電車代・タクシー代 |
| 通信費 | 電話・インターネット・郵便 |
| 広告宣伝費 | 広告掲載料・チラシ印刷・ノベルティ |
| 接待交際費 | 取引先との会食・贈答品(個人事業主は全額損金算入) |
| 損害保険料 | 事業用の火災保険・賠償責任保険 |
| 修繕費 | 事業用資産の修理・メンテナンス |
| 消耗品費 | 事務用品・10万円未満の備品 |
| 減価償却費 | 10万円以上の固定資産の年次償却 |
| 福利厚生費 | 従業員の慰安会・健康診断費(本人は除く) |
| 給料賃金 | 従業員の給与(青色専従者給与は別途) |
| 外注工賃 | 外注先への業務委託料 |
| 利子割引料 | 事業用借入の利息(元本は除く) |
| 地代家賃 | 事業用の店舗・事務所・倉庫の家賃 |
| 貸倒金 | 回収不能となった売掛金 |
| 専従者給与(青色) | 青色専従者(配偶者・親族)への給与 |
| 事業税 | 個人事業税(290万円超の部分) |
| 雑費 | 他の科目に含まれない事業関連支出 |
家事関連費の按分
個人事業主特有の論点として、「家事関連費」(プライベートと事業の両方に関わる支出)があります。代表例は自宅兼事務所の家賃・光熱費・通信費等です。事業使用割合(時間・面積等の客観的基準)で按分計算します。
| 家事関連費の例 | 按分基準 |
|---|---|
| 家賃(自宅兼事務所) | 事業使用面積÷全体面積 |
| 電気代 | 事業使用時間÷総使用時間 または 部屋面積按分 |
| 通信費(スマホ・ネット) | 事業使用時間÷総使用時間 |
| 車両費 | 事業走行距離÷総走行距離 または 使用時間 |
⚠️ 必要経費にならない代表的なもの
①事業主本人の食事代・福利厚生費(従業員のみ対象)
②所得税・住民税・国民健康保険料・国民年金(所得控除や社会保険料控除で別途処理)
③罰金・科料・延滞税・加算税(政策的に経費否認)
④事業主の生命保険料(生命保険料控除で別途処理)
⑤自己投資的な書籍・セミナー(事業に直接関連しないもの)
⑥スーツ・腕時計(私生活でも使えるもの)
これらは「個人事業主の必需品」と思われがちですが、必要経費にはなりません。
雑所得との区分判定|2022年10月通達改正
副業の所得が「事業所得」か「雑所得」かは、税負担に大きな違いをもたらします。事業所得の方が青色申告・損益通算・繰越欠損金等で有利なため、区分判定が重要な論点となっています。
2022年10月通達改正の核心
国税庁は当初、2022年に「副業収入300万円以下は雑所得」とする通達改正案を公表しましたが、世論の反発を受け、最終的に「帳簿書類の保存の有無」を中心基準とする内容に修正しました。
| 条件 | 所得区分 |
|---|---|
| 帳簿書類の保存あり | 原則として事業所得(収入金額に関係なく) |
| 帳簿書類の保存なし | 原則として雑所得(社会通念上の判定) |
| 帳簿なし+収入300万円超 | 「概ね業務にかかる雑所得」 |
| 帳簿なし+収入300万円以下 | 「業務にかかる雑所得」 |
事業所得 vs 雑所得の比較
| 項目 | 事業所得 | 雑所得 |
|---|---|---|
| 青色申告 | ○ 適用可 | × 適用不可 |
| 青色申告特別控除(65万円) | ○ 適用可 | × 適用不可 |
| 損益通算 | ○ 給与所得等と通算可 | × 不可(雑所得内のみ) |
| 繰越欠損金(3年) | ○ 青色申告者は3年繰越可 | × 不可 |
| 専従者給与 | ○ 青色専従者給与制度あり | × 不可 |
| 少額減価償却資産特例 | ○ 青色申告者は30万円未満一括 | × 不可 |
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鮎澤パートナーズに相談する事業所得の課税のしくみ
総合課税の累進税率
事業所得は他の所得(給与所得・不動産所得・雑所得等)と合算され、総合課税の対象となります。累進税率5〜45%が適用され、所得が高いほど税率が上がります。
| 課税所得 | 所得税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 〜195万円 | 5% | 0円 |
| 〜330万円 | 10% | 97,500円 |
| 〜695万円 | 20% | 427,500円 |
| 〜900万円 | 23% | 636,000円 |
| 〜1,800万円 | 33% | 1,536,000円 |
| 〜4,000万円 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
住民税・事業税の付加
事業所得には、所得税のほかに住民税(10%)と個人事業税(3〜5%・290万円超の部分)が課税されます。実質的な税負担率は、所得税率+10〜15%程度となります。
事業所得のシミュレーション例
📐 シミュレーション前提条件
- 個人事業主(青色申告・65万円控除)
- 年商700万円・必要経費200万円
- 所得控除合計140万円(基礎控除48万円+社会保険料控除60万円+その他32万円)
🧮 税額計算
事業所得 = 700万円−200万円−65万円(青色) = 435万円
課税所得 = 435万円−140万円(所得控除) = 295万円
所得税 = 295万円×10%−9.75万円 = 19.75万円
復興特別所得税 = 19.75万円×2.1% = 4,148円
住民税 = 295万円×10% = 29.5万円
個人事業税 = (435万円−290万円)×5% = 7.25万円
税負担合計:約57万円(所得435万円に対する税負担率:13.1%)
令和9年改正|青色申告特別控除75万円拡充
令和8年度税制改正により、2027年分(令和9年分)から青色申告特別控除が拡充されます。電子申告・電子帳簿保存の両方を行う場合、75万円控除が受けられます。
青色申告特別控除の変遷
| 適用時期 | 控除額 | 要件 |
|---|---|---|
| 2019年分まで | 65万円 | 複式簿記+貸借対照表添付 |
| 2020〜2026年分 | 65万円 | 複式簿記+貸借対照表+e-Tax or 電子帳簿保存 |
| 2020〜2026年分 | 55万円 | 複式簿記+貸借対照表(電子要件なし) |
| 2027年分〜 | 75万円 | 複式簿記+貸借対照表+e-Tax+電子帳簿保存(両方必須) |
| 2027年分〜 | 65万円 | 複式簿記+貸借対照表+e-Tax or 電子帳簿保存(一方) |
| 2027年分〜(紙提出) | 55万円 | 複式簿記+貸借対照表(電子要件なし) |
| 簡易簿記 | 10万円 | 簡易簿記(現金主義可) |
事業所得の損益通算と繰越欠損金
損益通算
事業所得が赤字となった場合、給与所得・不動産所得等の他の総合課税所得と相殺(損益通算)できます。これは事業所得の最大のメリットの一つで、雑所得にはない強力な節税効果があります。
3年繰越欠損金(青色申告)
事業所得の赤字を当年で相殺しきれない場合、青色申告者は翌年以降3年間繰り越して相殺できます(所得税法第70条)。例えば、開業初年度に赤字200万円が発生し、2年目以降の所得から相殺することで、開業初期の節税効果を持続できます。
必要経費補填の損害賠償金
個人事業主が、すでに必要経費に計上した費用(修繕費・備品損害等)について、後から損害賠償金・保険金等の補填を受けた場合、その補填額は総収入金額として計上する必要があります。
| パターン | 処理 |
|---|---|
| 必要経費にした費用への補填 | 補填額を総収入金額に計上 |
| 必要経費にしない費用への補填 | 非課税(損害補填の性質のため) |
| 休業損害補償(事業中断中の所得補償) | 総収入金額に計上(売上代替の性質) |
| 慰謝料・精神的損害 | 原則非課税(身体的損害は除く) |
よくある質問(FAQ)
まとめ
📋 この記事のポイント
- 事業所得は所得税法第27条に基づく事業活動からの所得
- 計算式:「総収入金額−必要経費(−青色申告特別控除)」
- 事業所得の4要件:営利性・継続性・自己責任・社会通念上の事業性
- 総収入金額には現金収入だけでなく家事消費・経済的利益も含む
- 必要経費は20種類(租税公課・水道光熱費・通信費・地代家賃等)
- 家事関連費は合理的基準(時間・面積)で按分計算
- 2022年10月通達改正で雑所得との区分は「帳簿保存の有無」が中心基準
- 事業所得は青色申告・損益通算・3年繰越欠損金・専従者給与で大きな節税
- 累進税率5〜45%+住民税10%+個人事業税3〜5%
- 令和9年から青色申告特別控除が75万円に拡充(e-Tax+電子帳簿の両方必須)
🚀 次のアクション
- 会計ソフト(弥生・freee・マネーフォワード等)を導入して帳簿を作成
- 青色申告承認申請書を税務署に提出(開業2か月以内 or 前年3月15日まで)
- 必要経費20種類を勘定科目別に管理
- 家事関連費の按分基準を客観的に設定
- 家事消費の計上を毎月忘れず行う
- 令和9年に向けて電子帳簿保存とe-Taxの環境整備
- 判断に迷うケースは税理士に相談する
事業所得の確定申告は、個人事業主にとって最も重要な税務手続きです。青色申告のメリット、確定申告の基礎、青色申告特別控除もあわせてご参照ください。事業所得の計算・確定申告でお困りの場合は、税理士にご相談いただくことを強くお勧めします。
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