【税理士監修】青色事業専従者給与と事業専従者控除|家族への給与を経費にする方法

【税理士監修】青色事業専従者給与と事業専従者控除|家族への給与を経費にする方法
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

青色事業専従者給与と事業専従者控除|家族への給与を経費にする方法

「配偶者に手伝ってもらっているが、給与を経費にできるのか?」と疑問をお持ちの個人事業主に向けて、青色事業専従者給与と白色の事業専従者控除の違い・届出書の書き方・適正な給与額の決め方・世帯トータルの節税シミュレーションまで、税理士が手順ごとに詳しく解説します。

🏆 結論:青色申告なら家族の給与を全額経費にできる

青色事業専従者給与は、届出書を提出すれば家族に支払う給与の全額を経費算入できる制度です。白色申告の事業専従者控除は配偶者86万円・その他50万円が上限で、それ以上は経費になりません。ただし、専従者にすると配偶者控除(38万円)が使えなくなるため、年間給与が38万円を超えなければ配偶者控除の方が有利です。適正額は月額8万〜25万円程度が実務上の目安です。

青色事業専従者給与とは?制度の基本

青色事業専従者給与とは、青色申告をしている個人事業主が、生計を一にする配偶者や親族に支払った給与を必要経費として算入できる制度です(所得税法第57条第1項)。

通常、個人事業主が家族に給与を支払っても必要経費にはなりません。しかし、一定の要件を満たし、税務署に届出書を提出すれば、実際に支払った金額の全額を経費にできます。

青色事業専従者の5つの要件

青色事業専従者として認められるためには、以下の5つの要件をすべて満たす必要があります。

No. 要件 具体例・注意点
1青色申告者であること青色申告承認申請書を提出済みであること
2生計を一にする配偶者または親族別居でも生活費を共有していれば該当
312月31日時点で15歳以上その年の12月31日現在の年齢で判定
4その年を通じて6ヶ月を超えて事業に専ら従事他に職業がある場合は原則認められない。ただし、従事時間が短い副業は例外あり
5届出書を提出し、届出の範囲内で支給「青色事業専従者給与に関する届出書」を期限内に提出

参考: 国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」

💡 実務のポイント

「専ら従事」の要件は厳格に判断されます。税務調査で最も指摘されやすいのが、配偶者がパートに出ている場合です。週5日フルタイムでパートに出ているのに「事業の専従者」として申告しているケースは、否認リスクが高いです。一方、パート勤務が週2日程度で事業への従事が主であれば認められるケースもあります。判断が難しい場合は事前に税理士に相談しましょう。

青色事業専従者給与と白色の事業専従者控除の違い【10項目比較】

家族への給与を経費にする方法は、青色申告と白色申告で大きく異なります。10項目で比較します。

比較項目 青色事業専従者給与 白色・事業専従者控除
①経費算入の上限上限なし(届出の範囲内で適正額)配偶者86万円、その他の親族50万円
②事前届出必要(届出書を税務署に提出)不要(確定申告書に記載するだけ)
③適正額の判定労務の対価として相当な額であること定額(実際の労務内容は問わない)
④給与の実際支払い実際に給与を支払う必要あり実際の支払い不要(みなし控除)
⑤源泉徴収の義務あり(給与所得として源泉徴収)なし
⑥配偶者控除・扶養控除適用不可(専従者は対象外)適用不可(専従者は対象外)
⑦賞与届出に記載すれば支給可能賞与の概念なし
⑧退職金原則として経費算入不可制度上の定めなし
⑨社会保険専従者の年収によっては国保・年金の負担増専従者の収入なし扱い
⑩変更手続き変更届出書の提出が必要手続き不要

⚠️ 注意

⑥は青色・白色ともに共通の重要な注意点です。配偶者を専従者にすると配偶者控除(最大38万円)が使えなくなります。年間の専従者給与が38万円以下なら、配偶者控除の方が有利なケースがあります。必ず世帯トータルで損得を計算してください。

届出書の書き方|全記入欄を徹底解説

「青色事業専従者給与に関する届出書」は、国税庁のWebサイトからPDFをダウンロードするか、e-Taxで作成・提出できます。主要な記入欄を解説します。

提出期限

ケース 提出期限
すでに事業を行っている場合経費算入したい年の3月15日まで
1月16日以降に新規開業した場合開業の日から2ヶ月以内
新たに専従者がいることとなった場合専従者がいることとなった日から2ヶ月以内

参考: 国税庁「A1-11 青色事業専従者給与に関する届出手続」

主要記入欄のポイント

記入欄 OK例 NG例・注意点
続柄「妻」「夫」「母」「子」事業主本人との続柄を記入(専従者の側から見た続柄ではない)
仕事の内容「経理・請求書作成・顧客管理」「受発注管理・在庫管理・配送手配」「手伝い」「事務」だけでは不十分。具体的な業務を3つ以上記載
従事の程度「平日毎日10:00〜17:00(週5日・1日7時間)」「適宜」「随時」は不可。具体的な時間と日数を記載
給料・月額「月額200,000円」「月額150,000円」ここに記載した金額が上限。将来の昇給を見込んで余裕を持った金額を記入
賞与「毎年7月・12月、給与の1ヶ月分」賞与がない場合は空欄でOK
昇給の基準「使用人の昇給基準と同じ」「毎年おおむね3%」昇給がない場合は「なし」と記入

💡 実務のポイント

給料の月額は上限額として機能します。実際の支給額がこの金額を下回るのは問題ありませんが、上回ると経費算入が否認されます。そのため、将来の昇給や物価上昇を見越して、実際の支給予定額よりやや高めの金額を記入するのがコツです。ただし、あまりに高額だと不審に思われるため、「他人を雇ったらいくら払うか」を基準に設定しましょう。

適正な給与額の決め方|世帯トータルで最適化する

専従者給与は「高ければ高いほど節税になる」わけではありません。事業主の節税効果だけでなく、専従者側の税負担・社会保険料・配偶者控除の喪失を含めた世帯トータルで最適額を判断する必要があります。

適正額の3つの判断基準

基準1:労務の対価として相当であること。これが最も重要です。同業種・同規模の事業者が同様の仕事に対して支払う給与水準と比較して、著しく高額でないことが求められます。パートタイム程度の労務しかないのに月額30万円以上の給与を支払うと、税務調査で否認されるリスクがあります。

基準2:配偶者控除との損益分岐点を超えていること。配偶者を専従者にすると配偶者控除(最大38万円)が使えなくなります。専従者給与が年間38万円以下なら、配偶者控除の方が世帯全体で有利です。

基準3:専従者側の税負担を考慮すること。専従者の年収が103万円を超えると所得税が、100万円を超えると住民税がかかります。130万円を超えると社会保険の扶養からも外れる可能性があります。

給与額別の世帯トータル節税シミュレーション

📐 シミュレーション前提条件

  • 事業主の事業所得(経費控除後・専従者給与控除前):500万円
  • 事業主の所得控除:基礎控除48万円+社会保険料60万円=108万円
  • 専従者は配偶者(給与所得控除55万円+基礎控除48万円=103万円まで非課税)
  • 配偶者控除:38万円(専従者にしない場合に適用)
専従者給与(月額/年額) 事業主の節税額 専従者の税負担増 配偶者控除の喪失 世帯の正味節税額
専従者なし(配偶者控除適用)基準(0円)
月8万円(年96万円)約17.4万円約0円△7.6万円約9.8万円
月15万円(年180万円)約36.0万円約3.8万円△7.6万円約24.6万円
月25万円(年300万円)約60.0万円約14.7万円△7.6万円約37.7万円
月35万円(年420万円)約73.0万円約28.5万円△7.6万円約36.9万円

※概算値です。社会保険料の変動は含まず。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。

このシミュレーションからわかるように、月額25万円(年間300万円)程度までは世帯の正味節税額が増加しますが、月額35万円になると専従者側の税負担増が大きくなり、正味節税額はほぼ横ばいです。事業所得500万円の場合、月額15万〜25万円が世帯トータルで最も効率的なゾーンです。

AYUSAWA PARTNERS

専従者給与の最適設計は鮎澤パートナーズへ

初回相談無料。税理士・社労士が、世帯トータルの税負担を最小化する給与設計をご提案します。

鮎澤パートナーズに相談する

専従者にすべきか?判断フロー

配偶者を専従者にすべきかどうかの判断ポイントを整理します。

条件 判断 理由
配偶者がフルタイムで事業を手伝っており、年間86万円以上の給与を支払う予定青色専従者にすべき白色の上限86万円を超える分も経費にできる
配偶者が週2〜3日で手伝い、年間38万〜86万円の給与を想定青色専従者にすべき白色の控除と同額でも、実際に給与を支払って配偶者の所得にできる
配偶者の手伝いは月数時間程度で、年間38万円未満配偶者控除のまま専従者にすると配偶者控除38万円を失い、世帯で損
配偶者が正社員として他社に勤務専従者にできない「専ら従事」の要件を満たさない

源泉徴収の義務と年末調整

青色事業専従者に給与を支払う場合、事業主には源泉徴収義務が生じます。これは白色の事業専従者控除にはない手続きです。

源泉徴収のしくみ

毎月の給与支払時に、所得税の源泉徴収税額表に基づいて所得税を差し引き、翌月10日までに税務署に納付します。ただし、常時雇用する従業員(専従者を含む)が10人未満の場合は「源泉所得税の納期の特例」を受けることができ、半年分をまとめて年2回(7月と翌年1月)で納付できます。

年末には年末調整を行い、毎月の源泉徴収額と年間の正確な所得税額との過不足を精算します。専従者が事業主の事業からのみ給与を受けている場合、専従者自身が確定申告をする必要はありません(年末調整で完了)。

🔷 社労士の視点

専従者の年収が130万円を超えると、国民年金の第3号被保険者(配偶者の扶養)から外れ、自分で国民年金保険料(月額約17,000円)を支払う必要が出てくる可能性があります。また、国民健康保険料も別途かかります。給与額を決める際は、社会保険料の負担増も考慮に入れてください。

専従者の慰安旅行・研修旅行の経費算入

事業主と専従者で行く旅行は経費になるのか——これは実務でよく質問を受けるテーマです。

旅行の種類 経費算入 条件・注意点
従業員を含む社員旅行旅行期間4泊5日以内、参加者が全体の50%以上、1人あたりの費用が社会通念上相当(目安10万円以内)
事業主と専従者だけの慰安旅行家族旅行と区別がつかないため、全額経費は困難。業務との関連性を客観的に示せる場合のみ一部認められる可能性
業務に直接関連する研修旅行研修の目的・内容が事業に直結し、研修参加証明等の客観的証拠がある場合
プライベートの家族旅行×事業との関連性がないため経費不可

💡 実務のポイント

事業主と配偶者(専従者)だけで旅行に行った場合、税務署は「家族旅行では?」と疑います。経費として主張するなら、旅行の業務目的・行程表・現地での打ち合わせ記録・取引先訪問の記録などを残しておくことが不可欠です。観光目的と推認されると全額否認されるだけでなく、悪質と判断されれば重加算税の対象になり得ます。

届出後の変更・取りやめ手続き

給与額を変更する場合

届出書に記載した給与額の範囲内での増減は変更届不要です。ただし、届出額を超えて給与を支給したい場合は、速やかに「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を提出する必要があります。変更届の様式は初回の届出書と同じです。

専従者を追加・削除する場合

新たに親族が専従者として加わる場合は、その日から2ヶ月以内に届出書を提出します。専従者が退職したり他の職業に就いたりした場合は、速やかに届出書を再提出して給与額を0円に変更するか、取りやめの旨を記載した文書を提出します。

税務調査で否認されやすいケースと対策

否認ケース1:労務の実態がない

名目上は専従者としているが、実際にはほとんど事業の手伝いをしていないケースです。勤務実態を示す証拠として、タイムカード(出退勤記録)、業務日報、成果物(帳簿・請求書など)を日頃から残しておきましょう。

否認ケース2:給与が過大

週2日・1日3時間程度の軽作業なのに月額30万円の給与を支払っている場合、同業種のパートタイム労働者の給与水準(時給1,200〜1,500円程度)と比較して著しく高額と判断されます。給与設定時には「他人を雇ったらいくら払うか」を基準にしましょう。

否認ケース3:「専ら従事」を満たしていない

配偶者が別の会社で正社員として働いている場合、「事業に専ら従事している」とは認められません。パートであっても週4日以上・フルタイムに近い勤務時間であれば、専従者の要件を満たさないと判断されるリスクがあります。

確定申告の基本的な手続きについては「確定申告とは?やり方・必要書類・申告の流れを完全ガイド」もあわせてご確認ください。

よくある質問(FAQ)

青色事業専従者給与はいくらまで経費にできますか?
法律上の上限額はありません。届出書に記載した金額の範囲内で、労務の対価として適正な金額であれば全額を経費算入できます。ただし、過大な給与は税務調査で否認されるリスクがあるため、同業種・同規模の事業者が支払う給与水準を参考に設定しましょう。実務上の目安としては月額8万〜25万円程度が多いです。
白色申告の事業専従者控除との損得分岐点はいくらですか?
白色申告の事業専従者控除は配偶者86万円、その他の親族50万円が上限です。青色申告ではこの上限がないため、年間86万円を超える給与を支払うなら青色申告の方が確実に有利です。また、86万円以下でも、青色申告では実際に配偶者の手元にお金が入るため、家計の実態に合わせた所得分散が可能です。
配偶者を専従者にすると配偶者控除は使えなくなりますか?
はい、配偶者を青色事業専従者にすると、たとえ給与額が少なくても配偶者控除(最大38万円)の適用対象外になります。白色の事業専従者控除でも同様です。専従者給与の年額が38万円以下なら、専従者にせずに配偶者控除を受けた方が世帯で有利なケースがあるため、必ず両方を比較して判断してください。
子ども(15歳以上の学生)を専従者にできますか?
原則として、学生は「事業に専ら従事している」とは認められないため、専従者にすることは困難です。ただし、夜間の学校に通いながら日中フルタイムで事業に従事しているケースでは認められる余地もあります。判断が難しいため、個別の状況を税理士に相談することをおすすめします。
届出書を出し忘れた場合、今年の分は経費にできませんか?
残念ながら、届出書の提出期限を過ぎるとその年の専従者給与は経費にできません。今年は配偶者控除を適用し、速やかに届出書を提出して翌年分から適用を受けましょう。なお、白色申告の場合は届出不要で事業専従者控除(配偶者86万円)を適用できます。
専従者に賞与や退職金を支給できますか?
賞与は届出書に支給期と金額を記載すれば支給可能で、全額を経費にできます。一方、退職金は原則として必要経費に算入できません。専従者への退職金は、法人化してから支給する方が税務上有利です。
専従者給与を支払うと、源泉徴収が必要になりますか?
はい、専従者であっても給与を支払う場合は所得税の源泉徴収義務が生じます。毎月の給与から源泉徴収税額表に基づいて所得税を差し引き、原則として翌月10日までに税務署に納付します。従業員が10人未満なら「納期の特例」を申請して半年ごとにまとめて納付することも可能です。
青色申告と白色申告の違いについてもっと知りたいのですが?
青色申告と白色申告の全体的な比較(特別控除・損失繰越・記帳方法の違いなど)は「青色申告と白色申告の違い|メリット・デメリット比較と選び方」で詳しく解説しています。専従者給与は青色申告の主要メリットの1つですが、他にも多くの優遇措置があります。
所得控除の全体像を知りたいのですが、専従者給与は所得控除に含まれますか?
専従者給与は所得控除ではなく「必要経費」として事業所得の計算段階で差し引かれます。所得控除(基礎控除・社会保険料控除・配偶者控除など)は課税所得の計算段階で差し引くもので、両者は計算上の位置づけが異なります。所得控除の全体像は「所得控除一覧|15種類の控除と計算方法をわかりやすく解説」をご参照ください。
事業所得の基本的なしくみを知りたいのですが?
事業所得の定義・計算方法・必要経費の範囲などは「事業所得とは?計算方法と確定申告の基礎知識」で詳しく解説しています。専従者給与は事業所得の計算における必要経費の1つであり、事業所得の全体像を理解してから活用すると効果的です。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 青色事業専従者給与は上限なし、白色の事業専従者控除は配偶者86万円・その他50万円が上限
  • 専従者にすると配偶者控除(38万円)が使えなくなるため、世帯トータルで損得を計算すべき
  • 適正な給与額は「他人を雇ったらいくら払うか」を基準に設定。月額15万〜25万円が効率的なゾーン
  • 届出書は給与を経費にする年の3月15日までに提出(開業時は2ヶ月以内)
  • 給与額の記載は上限として機能するため、将来の昇給を見込んで余裕を持った金額を記入
  • 源泉徴収義務が生じるため、毎月の源泉徴収と年末調整が必要
  • 事業主と専従者だけの慰安旅行は「家族旅行」と見なされやすく、経費算入は困難

まずは今日できることとして、配偶者や家族が事業にどれくらい従事しているかを整理し、「届出書の提出期限に間に合うか」を確認しましょう。期限が迫っている場合は、届出書を先に提出してから詳細を詰めることも可能です。

AYUSAWA PARTNERS

専従者給与・確定申告のご相談は鮎澤パートナーズへ

初回相談無料。税理士・公認会計士・社労士が、世帯の税負担を最小化する専従者給与の最適設計をワンストップでサポートします。

鮎澤パートナーズに相談する