公認会計士 第47928号・税理士 第159175号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。
青色事業専従者給与と事業専従者控除|家族への給与を経費にする方法
「配偶者に手伝ってもらっているが、給与を経費にできるのか?」と疑問をお持ちの個人事業主に向けて、青色事業専従者給与と白色の事業専従者控除の違い・届出書の書き方・適正な給与額の決め方・世帯トータルの節税シミュレーションまで、税理士が手順ごとに詳しく解説します。


青色事業専従者給与と事業専従者控除|家族への給与を経費にする方法
「配偶者に手伝ってもらっているが、給与を経費にできるのか?」と疑問をお持ちの個人事業主に向けて、青色事業専従者給与と白色の事業専従者控除の違い・届出書の書き方・適正な給与額の決め方・世帯トータルの節税シミュレーションまで、税理士が手順ごとに詳しく解説します。
🏆 結論:青色申告なら家族の給与を全額経費にできる
青色事業専従者給与は、届出書を提出すれば家族に支払う給与の全額を経費算入できる制度です。白色申告の事業専従者控除は配偶者86万円・その他50万円が上限で、それ以上は経費になりません。ただし、専従者にすると配偶者控除(38万円)が使えなくなるため、年間給与が38万円を超えなければ配偶者控除の方が有利です。適正額は月額8万〜25万円程度が実務上の目安です。
青色事業専従者給与とは、青色申告をしている個人事業主が、生計を一にする配偶者や親族に支払った給与を必要経費として算入できる制度です(所得税法第57条第1項)。
通常、個人事業主が家族に給与を支払っても必要経費にはなりません。しかし、一定の要件を満たし、税務署に届出書を提出すれば、実際に支払った金額の全額を経費にできます。
青色事業専従者として認められるためには、以下の5つの要件をすべて満たす必要があります。
| No. | 要件 | 具体例・注意点 |
|---|---|---|
| 1 | 青色申告者であること | 青色申告承認申請書を提出済みであること |
| 2 | 生計を一にする配偶者または親族 | 別居でも生活費を共有していれば該当 |
| 3 | 12月31日時点で15歳以上 | その年の12月31日現在の年齢で判定 |
| 4 | その年を通じて6ヶ月を超えて事業に専ら従事 | 他に職業がある場合は原則認められない。ただし、従事時間が短い副業は例外あり |
| 5 | 届出書を提出し、届出の範囲内で支給 | 「青色事業専従者給与に関する届出書」を期限内に提出 |
参考: 国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」
💡 実務のポイント
「専ら従事」の要件は厳格に判断されます。税務調査で最も指摘されやすいのが、配偶者がパートに出ている場合です。週5日フルタイムでパートに出ているのに「事業の専従者」として申告しているケースは、否認リスクが高いです。一方、パート勤務が週2日程度で事業への従事が主であれば認められるケースもあります。判断が難しい場合は事前に税理士に相談しましょう。
家族への給与を経費にする方法は、青色申告と白色申告で大きく異なります。10項目で比較します。
| 比較項目 | 青色事業専従者給与 | 白色・事業専従者控除 |
|---|---|---|
| ①経費算入の上限 | 上限なし(届出の範囲内で適正額) | 配偶者86万円、その他の親族50万円 |
| ②事前届出 | 必要(届出書を税務署に提出) | 不要(確定申告書に記載するだけ) |
| ③適正額の判定 | 労務の対価として相当な額であること | 定額(実際の労務内容は問わない) |
| ④給与の実際支払い | 実際に給与を支払う必要あり | 実際の支払い不要(みなし控除) |
| ⑤源泉徴収の義務 | あり(給与所得として源泉徴収) | なし |
| ⑥配偶者控除・扶養控除 | 適用不可(専従者は対象外) | 適用不可(専従者は対象外) |
| ⑦賞与 | 届出に記載すれば支給可能 | 賞与の概念なし |
| ⑧退職金 | 原則として経費算入不可 | 制度上の定めなし |
| ⑨社会保険 | 専従者の年収によっては国保・年金の負担増 | 専従者の収入なし扱い |
| ⑩変更手続き | 変更届出書の提出が必要 | 手続き不要 |
⚠️ 注意
⑥は青色・白色ともに共通の重要な注意点です。配偶者を専従者にすると配偶者控除(最大38万円)が使えなくなります。年間の専従者給与が38万円以下なら、配偶者控除の方が有利なケースがあります。必ず世帯トータルで損得を計算してください。
「青色事業専従者給与に関する届出書」は、国税庁のWebサイトからPDFをダウンロードするか、e-Taxで作成・提出できます。主要な記入欄を解説します。
| ケース | 提出期限 |
|---|---|
| すでに事業を行っている場合 | 経費算入したい年の3月15日まで |
| 1月16日以降に新規開業した場合 | 開業の日から2ヶ月以内 |
| 新たに専従者がいることとなった場合 | 専従者がいることとなった日から2ヶ月以内 |
参考: 国税庁「A1-11 青色事業専従者給与に関する届出手続」
| 記入欄 | OK例 | NG例・注意点 |
|---|---|---|
| 続柄 | 「妻」「夫」「母」「子」 | 事業主本人との続柄を記入(専従者の側から見た続柄ではない) |
| 仕事の内容 | 「経理・請求書作成・顧客管理」「受発注管理・在庫管理・配送手配」 | 「手伝い」「事務」だけでは不十分。具体的な業務を3つ以上記載 |
| 従事の程度 | 「平日毎日10:00〜17:00(週5日・1日7時間)」 | 「適宜」「随時」は不可。具体的な時間と日数を記載 |
| 給料・月額 | 「月額200,000円」「月額150,000円」 | ここに記載した金額が上限。将来の昇給を見込んで余裕を持った金額を記入 |
| 賞与 | 「毎年7月・12月、給与の1ヶ月分」 | 賞与がない場合は空欄でOK |
| 昇給の基準 | 「使用人の昇給基準と同じ」「毎年おおむね3%」 | 昇給がない場合は「なし」と記入 |
💡 実務のポイント
給料の月額は上限額として機能します。実際の支給額がこの金額を下回るのは問題ありませんが、上回ると経費算入が否認されます。そのため、将来の昇給や物価上昇を見越して、実際の支給予定額よりやや高めの金額を記入するのがコツです。ただし、あまりに高額だと不審に思われるため、「他人を雇ったらいくら払うか」を基準に設定しましょう。
専従者給与は「高ければ高いほど節税になる」わけではありません。事業主の節税効果だけでなく、専従者側の税負担・社会保険料・配偶者控除の喪失を含めた世帯トータルで最適額を判断する必要があります。
基準1:労務の対価として相当であること。これが最も重要です。同業種・同規模の事業者が同様の仕事に対して支払う給与水準と比較して、著しく高額でないことが求められます。パートタイム程度の労務しかないのに月額30万円以上の給与を支払うと、税務調査で否認されるリスクがあります。
基準2:配偶者控除との損益分岐点を超えていること。配偶者を専従者にすると配偶者控除(最大38万円)が使えなくなります。専従者給与が年間38万円以下なら、配偶者控除の方が世帯全体で有利です。
基準3:専従者側の税負担を考慮すること。専従者の年収が160万円(令和7年分以後)を超えると所得税が、おおむね110万円(令和8年度分以後・自治体により異なる)を超えると住民税がかかります。130万円を超えると社会保険の扶養からも外れる可能性があります。
📐 シミュレーション前提条件
| 専従者給与(月額/年額) | 事業主の節税額 | 専従者の税負担増 | 配偶者控除の喪失 | 世帯の正味節税額 |
|---|---|---|---|---|
| 専従者なし(配偶者控除適用) | — | — | — | 基準(0円) |
| 月8万円(年96万円) | 約17.4万円 | 約0円 | △7.6万円 | 約9.8万円 |
| 月15万円(年180万円) | 約36.0万円 | 約3.8万円 | △7.6万円 | 約24.6万円 |
| 月25万円(年300万円) | 約60.0万円 | 約14.7万円 | △7.6万円 | 約37.7万円 |
| 月35万円(年420万円) | 約73.0万円 | 約28.5万円 | △7.6万円 | 約36.9万円 |
※概算値です。社会保険料の変動は含まず。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。
このシミュレーションからわかるように、月額25万円(年間300万円)程度までは世帯の正味節税額が増加しますが、月額35万円になると専従者側の税負担増が大きくなり、正味節税額はほぼ横ばいです。事業所得500万円の場合、月額15万〜25万円が世帯トータルで最も効率的なゾーンです。
AYUSAWA PARTNERS
専従者給与の最適設計は鮎澤パートナーズへ
公認会計士・税理士の代表が、記帳代行から決算・税務申告・年末調整まで一括で直接対応します。初回相談無料。
鮎澤パートナーズに相談する配偶者を専従者にすべきかどうかの判断ポイントを整理します。
| 条件 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 配偶者がフルタイムで事業を手伝っており、年間86万円以上の給与を支払う予定 | 青色専従者にすべき | 白色の上限86万円を超える分も経費にできる |
| 配偶者が週2〜3日で手伝い、年間38万〜86万円の給与を想定 | 青色専従者にすべき | 白色の控除と同額でも、実際に給与を支払って配偶者の所得にできる |
| 配偶者の手伝いは月数時間程度で、年間38万円未満 | 配偶者控除のまま | 専従者にすると配偶者控除38万円を失い、世帯で損 |
| 配偶者が正社員として他社に勤務 | 専従者にできない | 「専ら従事」の要件を満たさない |
青色事業専従者に給与を支払う場合、事業主には源泉徴収義務が生じます。これは白色の事業専従者控除にはない手続きです。
毎月の給与支払時に、所得税の源泉徴収税額表に基づいて所得税を差し引き、翌月10日までに税務署に納付します。ただし、常時雇用する従業員(専従者を含む)が10人未満の場合は「源泉所得税の納期の特例」を受けることができ、半年分をまとめて年2回(7月と翌年1月)で納付できます。
年末には年末調整を行い、毎月の源泉徴収額と年間の正確な所得税額との過不足を精算します。専従者が事業主の事業からのみ給与を受けている場合、専従者自身が確定申告をする必要はありません(年末調整で完了)。
🔷 社労士の視点
専従者の年収が130万円を超えると、国民年金の第3号被保険者(配偶者の扶養)から外れ、自分で国民年金保険料(月額約17,000円)を支払う必要が出てくる可能性があります。また、国民健康保険料も別途かかります。給与額を決める際は、社会保険料の負担増も考慮に入れてください。
事業主と専従者で行く旅行は経費になるのか——これは実務でよく質問を受けるテーマです。
| 旅行の種類 | 経費算入 | 条件・注意点 |
|---|---|---|
| 従業員を含む社員旅行 | ○ | 旅行期間4泊5日以内、参加者が全体の50%以上、1人あたりの費用が社会通念上相当(目安10万円以内) |
| 事業主と専従者だけの慰安旅行 | △ | 家族旅行と区別がつかないため、全額経費は困難。業務との関連性を客観的に示せる場合のみ一部認められる可能性 |
| 業務に直接関連する研修旅行 | ○ | 研修の目的・内容が事業に直結し、研修参加証明等の客観的証拠がある場合 |
| プライベートの家族旅行 | × | 事業との関連性がないため経費不可 |
💡 実務のポイント
事業主と配偶者(専従者)だけで旅行に行った場合、税務署は「家族旅行では?」と疑います。経費として主張するなら、旅行の業務目的・行程表・現地での打ち合わせ記録・取引先訪問の記録などを残しておくことが不可欠です。観光目的と推認されると全額否認されるだけでなく、悪質と判断されれば重加算税の対象になり得ます。
届出書に記載した給与額の範囲内での増減は変更届不要です。ただし、届出額を超えて給与を支給したい場合は、速やかに「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を提出する必要があります。変更届の様式は初回の届出書と同じです。
新たに親族が専従者として加わる場合は、その日から2ヶ月以内に届出書を提出します。専従者が退職したり他の職業に就いたりした場合は、速やかに届出書を再提出して給与額を0円に変更するか、取りやめの旨を記載した文書を提出します。
名目上は専従者としているが、実際にはほとんど事業の手伝いをしていないケースです。勤務実態を示す証拠として、タイムカード(出退勤記録)、業務日報、成果物(帳簿・請求書など)を日頃から残しておきましょう。
週2日・1日3時間程度の軽作業なのに月額30万円の給与を支払っている場合、同業種のパートタイム労働者の給与水準(時給1,200〜1,500円程度)と比較して著しく高額と判断されます。給与設定時には「他人を雇ったらいくら払うか」を基準にしましょう。
配偶者が別の会社で正社員として働いている場合、「事業に専ら従事している」とは認められません。パートであっても週4日以上・フルタイムに近い勤務時間であれば、専従者の要件を満たさないと判断されるリスクがあります。
確定申告の基本的な手続きについては「確定申告とは?やり方・必要書類・申告の流れを完全ガイド」もあわせてご確認ください。
📋 この記事のポイント
まずは今日できることとして、配偶者や家族が事業にどれくらい従事しているかを整理し、「届出書の提出期限に間に合うか」を確認しましょう。期限が迫っている場合は、届出書を先に提出してから詳細を詰めることも可能です。
AYUSAWA PARTNERS
専従者給与・確定申告のご相談は鮎澤パートナーズへ
公認会計士・税理士の代表が、記帳代行から決算・税務申告・年末調整まで一括で直接対応します。初回相談無料。
鮎澤パートナーズに相談する