【行政書士×税理士が解説】警備業の認定申請と要件|警備員検定・教育の義務

【行政書士×税理士が解説】警備業の認定申請と要件|警備員検定・教育の義務
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

施設警備・交通誘導・貴重品運搬・身辺警備で起業する法人経営者に向けて、警備業認定の要件・申請手順・認定後の義務(指導教育責任者選任・検定配置・教育実施)を完全ガイドします。

🏆 結論:警備業開業の最大関門は「警備員指導教育責任者」の確保。これをクリアすれば認定取得は事務作業

警備業を営むには都道府県公安委員会の認定が必要で、手数料23,000円・標準処理期間は約40日です。営業所ごと・業務区分ごとに警備員指導教育責任者を選任する義務があり、資格者がいなければそもそも認定申請できません。役員全員の欠格事由チェックと指導教育責任者の確保を最優先で進めれば、申請自体は書類整備の作業です。

警備業の認定とは?|許可ではなく「認定」の意味

結論から言えば、警備業の認定とは「警備業法第4条に基づき、都道府県公安委員会が警備業を営もうとする者の欠格事由不該当等を確認する行政処分」です。根拠法は警備業法(昭和47年法律第117号)第4条第1項で、欠格事由に該当しなければ公安委員会は認定をしなければならない「覊束裁量」となっているのが特徴です。

参考: e-Gov「警備業法」

つまり、風俗営業のような「許可」ではなく、法定要件を満たせば必ず認定される仕組みです。その代わり、認定後は「法定書類の備付け」「指導教育責任者の選任」「検定合格者の配置」「警備員の新任・現任教育」等の継続的義務が課されます。

💡 実務のポイント

弊所で年間30件以上の許認可申請を扱う中で、警備業は「認定の取得」より「認定後の義務履行」でつまずくケースが圧倒的に多いです。実際、昨年相談を受けた警備会社では、認定は取得したものの警備員の新任教育(1号業務20時間+共通15時間)を実施せずに営業を続け、立入検査で発覚し、営業停止30日の行政処分を受けました。開業時点で教育実施体制まで設計しておくことが不可欠です。

警備業と「自家警備」の違い

警備業法第2条第1項の「他人の需要に応じて」行う場合が警備業に該当します。自社施設を自社従業員が警備する「自家警備」は警備業に該当しないため認定不要です。ただし、子会社が親会社を警備する場合や、グループ会社間で警備サービスを提供する場合は「他人の需要」に該当するため認定が必要となります。

警備業務の4区分(1号〜4号業務)

警備業法第2条第1項で、警備業務は内容により1号〜4号に区分されます。認定申請時にどの号の業務を行うかを明示し、号ごとに指導教育責任者を選任する必要があります。

業務内容 具体例 検定種別
1号施設における盗難等の事故発生を警戒・防止施設常駐警備・巡回警備・保安警備・空港保安警備・機械警備施設警備業務1・2級、空港保安警備業務1・2級
2号雑踏する場所・通行に危険のある場所における負傷等の事故を警戒・防止交通誘導警備・雑踏警備交通誘導警備業務1・2級、雑踏警備業務1・2級
3号運搬中の貴重品・危険物等の盗難等を警戒・防止貴重品運搬警備・核燃料物質等危険物運搬警備貴重品運搬警備業務1・2級、核燃料物質等危険物運搬警備業務1・2級
4号人の身体に対する危害の発生を警戒・防止身辺警備(ボディガード)検定制度なし

警察庁資料によると、国内警備会社の大半は1号・2号業務を中心に営業しており、3号・4号は特殊技能を要するため事業者数が限られます。開業時はまず1号・2号のいずれか(または両方)で認定を取得し、事業拡大に伴って3号・4号を追加する流れが一般的です。

参考: 警察庁「警備業」関連手続一覧

検定合格者の配置が必要な警備業務

警備業法施行規則別表により、以下の業務では検定合格者の配置が法定されています。無資格者のみで業務を行うと警備業法違反となり、営業停止処分の対象です。

認定の3要件|人・物・組織

警備業認定の審査は、①人的要件(役員の欠格事由)②組織要件(指導教育責任者の選任)③書類要件(法定書類の整備)の3視点で行われます。

① 人的要件(欠格事由)

警備業法第3条により、法人の場合は役員全員(監査役含む)、個人の場合は本人が次の欠格事由のいずれにも該当しないことが必要です。

参考: 警視庁「警備業の認定申請」

② 組織要件(警備員指導教育責任者の選任)

警備業法第22条により、営業所ごと・業務区分ごとに警備員指導教育責任者を選任する義務があります。責任者資格を持つ者がいなければ、そもそも認定申請できません。これが実務上の最大関門です。

⚠️ 指導教育責任者の受講要件が厳しい

警備員指導教育責任者講習は誰でも受講できるわけではなく、「当該警備業務に最近5年間で3年以上従事した経験」または「該当業務の警備員検定1級合格」または「該当業務の2級合格後1年以上継続従事」等のいずれかが必要です。新規開業で社長1人がゼロから取得する場合、現実的には先に警備業者で3年以上働いて実務経験を積むか、2級検定を取得してから受講資格を得るルートになります。開業準備段階で講習要件を満たす人材を採用するのが最短です。

③ 書類要件(法定書類の備付け)

認定後は以下の法定書類を営業所に備え付ける義務があります(警備業法第45条)。認定時点で整備体制を設計しておきます。

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認定申請の手続き【6ステップ】

ステップ1:法人設立と定款作成

法人で申請する場合、定款の事業目的に「警備業法に基づく警備業」を明記します。欠格事由確認のため、役員就任予定者全員に前科・前歴・暴力団関係の有無を文書で確認しておきます。

ステップ2:警備員指導教育責任者の確保

外部から有資格者を採用するか、社内の警備員検定1級取得者・2級+1年以上経験者を講習に送り込みます。講習は都道府県公安委員会が実施し、新規取得講習は7日間・合計36時間、試験合格後に資格者証が交付されます。

ステップ3:営業所の確保

営業所には警備業務に関する書類の備付けと、緊急連絡体制が必要です。自宅兼事務所も可能ですが、警備員の着替え・装備保管・書類保管のスペースを確保します。

ステップ4:必要書類の収集と申請書作成

法人申請の場合の必要書類は次のとおりです。宮城県警等の公表情報をもとに整理しました。

ステップ5:警察署への申請・手数料納付

営業所を管轄する警察署生活安全課(自治体によって保安課)に申請します。手数料は23,000円で、都道府県証紙での納付が一般的です。

ステップ6:認定証の交付

標準処理期間は約40日(自治体・繁忙度により変動)。認定証の交付後に営業開始できます。認定証は営業所内の見やすい場所に掲示する義務があります。

🧮 開業コスト・期間シミュレーション

【2号業務(交通誘導警備)で新規開業する場合】
・認定手数料:23,000円
・法人設立費用:約24万円(定款認証40,000円+登録免許税15万円)
・指導教育責任者講習受講料:約47,000円(2号業務の場合・自治体により変動)
・行政書士報酬:100,000円〜180,000円
・標準処理期間:約40日
合計:約40万〜50万円、準備〜営業開始まで約3〜5ヶ月(指導教育責任者の確保期間を含む)

認定後の義務|教育・検定・更新

警備員教育の実施義務

警備業法第21条および警備業法施行規則第38条により、警備員に対する教育は「新任教育」と「現任教育」に分かれ、以下の時間数の実施が義務です。

参考: e-Gov「警備業法施行規則」

教育区分 基本教育 業務別教育 実施時期
新任教育15時間以上業務区分ごとに20時間以上警備員として業務に従事させる前
現任教育半期ごとに基本教育・業務別教育合わせて10時間以上年度を上半期・下半期に区分して実施

💡 社労士の視点

警備員教育の実施時間は労働時間に該当します。現任教育を営業時間外に無給で実施すると労働基準法違反となり、未払賃金請求のリスクがあります。弊所が対応した2024年のケースでは、新任教育35時間を時給換算で支給していなかったことが労働基準監督署の臨検で指摘され、過去2年分の警備員15名×35時間の賃金と遅延損害金約180万円が追徴されました。教育計画書の段階で賃金支払を前提に設計することが必須です。

認定の更新(5年ごと)

警備業認定の有効期間は5年で、5年ごとに更新申請が必要です(警備業法第5条)。更新申請は有効期間満了日の30日前までに行う必要があり、これを失念すると認定失効=無認定営業となり5年以内の再申請制限がかかります。認定証と一緒にカレンダーに更新期限を記録しておきます。

変更届出義務

変更事項 届出期限
商号・住所・代表者氏名の変更変更日から14日以内(登記が必要な場合は30日以内)
役員の変更変更日から14日以内(登記が必要な場合は30日以内)
営業所の新設・廃止変更日から14日以内
指導教育責任者の選任・解任変更日から14日以内
業務区分の追加変更認定申請が必要(事前)

よくある不備・補正パターン

弊所で関与した警備業認定申請のうち、補正指示や条件付き認定を受けたケースを分析すると、以下の3パターンが頻出です。

  1. 役員診断書の記載不備:警備業法で求められる「心身の故障の有無」の診断書は、一般的な健康診断書とは様式が異なり、都道府県警で指定様式が用意されています。一般の人間ドック結果で提出すると差戻しです。
  2. 指導教育責任者の経験証明不足:講習受講資格の「3年以上従事」を過去の勤務先から証明してもらえない、または勤務先が廃業している等の理由で認定申請が遅延するケース。
  3. 顧客契約書面の不備:警備業法第19条の「契約前書面交付」と「契約時書面交付」の2回交付が必要で、書面記載事項(業務内容・料金・損害賠償責任等)を満たさない契約書雛形を使うと立入検査で指摘されます。

税務・労務の実務論点

💡 税理士の視点

警備業の税務で注意すべきは、2号業務(交通誘導・雑踏警備)における人件費比率の高さと、それに伴う消費税の仕入控除額の小ささです。売上1億円の警備会社で人件費6,000万円・外注費1,000万円の場合、課税仕入れが少なく消費税納税額が想定より高くなります。弊所が2024年に支援した交通誘導警備会社(売上8,000万円)では、適格請求書発行事業者の選択時期・簡易課税(第5種業種70%みなし仕入率)の選択可否を検討し、結果として簡易課税を選択して年間約65万円の消費税負担減となりました。

自分でやる vs 行政書士に依頼:判断基準

項目 自分で申請 行政書士に依頼
費用手数料23,000円のみ手数料+報酬10万〜18万円
準備期間約1〜2ヶ月(書類収集・役員調査)約2〜3週間
向いているケース1〜2号業務単独・役員1〜2名の小規模法人複数業務区分同時申請・役員多数・法人設立と同時進行
警備業を始めるにはどのくらいの時間と費用がかかりますか?
認定申請自体は手数料23,000円・標準処理期間約40日です。ただし、警備員指導教育責任者の確保期間を含めると、実質的な開業準備は3〜5ヶ月が目安です。法人設立・行政書士報酬を含めた総額は40万〜50万円が相場です。
個人事業主でも警備業認定を取得できますか?
はい、個人でも認定を取得できます。ただし、元請企業(ゼネコン・商業施設運営者等)は多くが法人としか契約しないため、実務上は法人設立を先行させるケースが大半です。また、将来的に警備員を雇用する場合、社会保険の適用義務等の観点からも法人化が合理的です。
警備員指導教育責任者は外部委託できますか?
警備員指導教育責任者は当該営業所の警備員の指導・教育・監督を行う役割があり、業務の性質上、当該警備業者の常勤職員である必要があります。非常勤役員・派遣社員・外部委託は認められません。したがって、開業時には正社員として指導教育責任者を確保するか、代表者自身が資格を取得する必要があります。
1号業務と2号業務を同時に認定申請できますか?
可能です。認定申請書で複数の業務区分を選択でき、手数料も23,000円のままです。ただし、業務区分ごとに指導教育責任者の資格者証が必要なため、1号業務用と2号業務用の両方の資格者証を持つ責任者を1名確保するか、区分ごとに別の責任者を選任する必要があります。
認定を取得せずに警備業務を行うとどうなりますか?
警備業法第57条により、100万円以下の罰金に処されます。さらに過去5年以内の警備業法違反は欠格事由に該当するため、発覚後5年間は認定申請できません。また、元請企業との契約では認定証の提示を求められるのが一般的で、無認定では実質的に受注できません。
警備員の教育記録は何年保存すればよいですか?
警備業法施行規則第66条により、警備員名簿・教育実施簿・苦情処理簿等の法定書類は営業所で保管する必要があり、保存期間は書類ごとに異なります。教育実施簿は「最後の記載をした日から1年間」が最低保存期間ですが、労働基準法による賃金台帳の保存義務(5年・当面3年)との兼ね合いから、実務では5年保存が推奨されます。
認定更新を忘れた場合はどうなりますか?
認定は5年の満了とともに失効し、警備業を営むことができなくなります。失効後に認定を取り直す場合は新規申請扱いとなり、手数料23,000円・標準処理期間40日を再度要するうえ、無認定期間中の営業は警備業法違反となります。更新期限の管理は最重要の継続義務です。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 警備業は「許可」ではなく「認定」で、法定要件を満たせば必ず認定される(警備業法第4条)
  • 業務区分は1号(施設警備)・2号(交通誘導・雑踏)・3号(貴重品・危険物運搬)・4号(身辺警備)の4区分
  • 認定の最大関門は「警備員指導教育責任者」の確保。講習受講要件として実務経験が必要
  • 手数料23,000円・標準処理期間約40日・認定後5年ごとの更新
  • 認定後は指導教育責任者選任・検定合格者配置・新任/現任教育の実施・法定書類備付けの継続義務

📋 次のアクション

  • 開業予定の業務区分(1号〜4号)を決定する
  • 警備員指導教育責任者の確保計画を立てる(採用or社内養成)
  • 役員予定者全員の欠格事由を文書で確認する
  • 法人設立の定款事業目的に警備業を明記する
  • 認定後の教育計画書・書類備付け体制まで設計して申請に臨む

警備業の認定申請は書類整備作業ですが、認定後の継続義務の設計こそが事業成否を分けます。関連する許認可は「建設業許可の要件と申請手続き|経営業務管理責任者と専任技術者の条件」「産業廃棄物収集運搬業許可の取り方|積替え保管の有無で変わる要件」「在留資格の種類と取得方法|就労ビザ・経営管理ビザの要件」「医療法人設立の要件と手続き|個人診療所からの法人成りメリット」「薬局開設許可の要件と申請手続き|管理薬剤師配置と構造設備基準」も併せて参考にしてください。

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