【税理士×公認会計士が解説】相続した非上場株式を発行会社に譲渡した場合の特例|みなし配当課税の回避方法

【税理士×公認会計士が解説】相続した非上場株式を発行会社に譲渡した場合の特例|みなし配当課税の回避方法
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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相続した非上場株式を発行会社に譲渡した場合の特例|みなし配当課税の回避方法と手続き

「相続した非上場株式を会社に買い取ってもらいたいが、税金がいくらになるか不安」という相続人の方に向けて、みなし配当課税の特例の適用要件・届出手続き・税額シミュレーションを完全ガイドします。この記事を読めば、特例を使うべきかどうかを判断できます。

🏆 結論:特例を使えば税負担を大幅に軽減できる

相続した非上場株式を発行会社に譲渡する場合、通常はみなし配当として最大55.945%の総合課税が適用されます。しかし、相続税の申告期限から3年以内に届出書を提出して譲渡すれば、全額が譲渡所得として一律20.315%で課税されます。さらに取得費加算の特例(措法39条)と併用すれば、実質的な税負担をさらに圧縮できます。この特例を知らずに売却すると数千万円単位の税額差が生じるため、相続後の非上場株式の売却を検討している方は必ず確認してください。

非上場株式を発行会社に譲渡したときの課税のしくみ

「みなし配当」とは何か

非上場株式を発行会社に買い取ってもらう(自己株式の取得)場合、受け取る対価は単なる「売却代金」ではなく、税務上は2つの性質に分解されます。

具体的には、対価のうち「資本金等の額」に対応する部分は譲渡所得(株式の元本の払い戻し)として扱われ、それを超える部分はみなし配当(会社の利益積立金の分配)として扱われます。実際に配当金を受け取っていなくても、法律上は「配当を受け取った」とみなされて課税される——これが「みなし配当」のしくみです。

💡 実務のポイント

現場で「相続した株を会社に買い取ってもらうだけなのに、なぜ配当扱いになるの?」という質問を非常に多くいただきます。上場株式のように市場で第三者に売れる株式とは異なり、非上場株式は会社自身が買い取る形になるため、その対価の一部が「利益の分配」として扱われるという点が、この論点の出発点です。

みなし配当の税率が高額になる理由

問題は、非上場会社のみなし配当には総合課税が適用される点です。給与や事業所得と合算して累進税率(所得税5%〜45%+住民税10%)で課税されるため、高所得者ほど税率が跳ね上がります。

課税所得 みなし配当の実効税率(総合課税) 譲渡所得の税率(申告分離)
330万円以下約15%20.315%
695万円以下約30%20.315%
900万円以下約33%20.315%
1,800万円以下約43%20.315%
4,000万円超約55.945%20.315%

※住民税10%を含む概算値です。配当控除は考慮していません。

このように、みなし配当の部分は最大で約55.945%もの税率が適用されるのに対し、譲渡所得であれば一律20.315%で済みます。この税率差こそが、特例のメリットの本質です。

みなし配当課税の特例(措法9条の7)の概要

特例の効果

租税特別措置法第9条の7に規定されるこの特例を適用すると、本来みなし配当として総合課税の対象となる部分を含め、対価の全額が非上場株式の譲渡所得の収入金額として扱われます。つまり、一律20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の申告分離課税で完結します。

この特例は、相続による非上場株式の取得者が納税資金を確保するために発行会社に株式を買い取ってもらうケースで、過大な税負担を避けるために設けられた制度です。

適用要件の一覧

要件 内容
①取得原因相続または遺贈により非上場株式を取得していること
②相続税の発生その相続・遺贈について納付すべき相続税額があること(配偶者控除等で相続税ゼロの場合は対象外)
③譲渡期限相続開始日の翌日から相続税申告書提出期限の翌日以後3年以内に譲渡すること(実質約3年10ヶ月以内)
④対象株式相続税の課税価格の計算の基礎に算入された非上場株式であること
⑤譲渡先その非上場株式の発行会社に譲渡すること(第三者への譲渡は対象外)
⑥対価金銭を対価として交付を受けること
⑦届出譲渡前に「みなし配当課税の特例に関する届出書」を発行会社に提出すること

⚠️ 注意:配偶者控除で相続税ゼロのケース

配偶者の税額軽減(相続税法第19条の2)を適用した結果、相続税額がゼロになった配偶者は、②の要件を満たしません。つまりこの特例を使えず、みなし配当として総合課税されます。実務ではこの見落としが非常に多いため、遺産分割の段階で「誰が非上場株式を取得するか」を慎重に検討する必要があります。

特例を使うべきか? 5ステップの判断フローチャート

「自分のケースでこの特例を使えるのか、使うべきなのか」を整理するための判断フローです。

ステップ 確認項目 Yes No
1相続・遺贈で非上場株式を取得した?→ステップ2へ✗ 対象外
2あなたに納付すべき相続税額がある?(配偶者控除でゼロではない?)→ステップ3へ✗ 対象外
3相続開始から3年10ヶ月以内に譲渡できる?→ステップ4へ✗ 対象外
4譲渡先はその株式の発行会社?(第三者ではない?)→ステップ5へ✗ 対象外
5譲渡前に届出書を発行会社に提出できる?✓ 特例適用可能✗ 届出が必要

すべてYesであれば特例を適用できます。実務では特にステップ2(相続税額の有無)とステップ3(期限)の見落としが多いため、相続が発生した段階で早めに税理士に相談することが重要です。

みなし配当の計算構造を図解で理解する

対価の分解イメージ

発行会社から受け取る対価がどのように2つの所得に分かれるか、具体的な数値で見てみましょう。

📐 計算の前提条件

  • 譲渡対価:1億円
  • 発行会社の資本金等の額のうち譲渡株式に対応する部分:2,000万円
  • 株式の取得費(被相続人の取得価額を引き継ぎ):1,500万円
  • 相続人の他の課税所得:1,000万円

【通常の場合(特例なし)】

区分 金額 課税方法
①みなし配当8,000万円総合課税(最大55.945%)
②譲渡所得の収入金額2,000万円申告分離課税(20.315%)
②の譲渡所得500万円(2,000万−1,500万)

みなし配当8,000万円は他の所得と合算されるため、税率は最高税率帯(55.945%)に到達します。

みなし配当部分の所得税等:8,000万円×45.945%−479万6,716円≒約3,196万円
譲渡所得部分の所得税等:500万円×20.315%≒約102万円
合計所得税等:約3,298万円

【特例適用の場合】

対価1億円の全額が譲渡所得の収入金額となります。

譲渡所得:1億円−1,500万円=8,500万円
所得税等:8,500万円×20.315%≒約1,727万円

🧮 シミュレーション結果

特例適用で約3,298万円→約1,727万円と、約1,571万円の税負担軽減になります。譲渡対価が大きいほど、またみなし配当の割合が高いほど、効果は大きくなります。

譲渡対価別・資本金等の額別シミュレーション

譲渡対価と資本金等の額の比率によって、特例の効果は大きく異なります。以下は資本金等の額が対価の20%のケースでの比較です。

譲渡対価 通常の税額(概算) 特例適用時の税額 差額(軽減額)
5,000万円約1,380万円約710万円約670万円
1億円約3,298万円約1,727万円約1,571万円
2億円約7,577万円約3,657万円約3,920万円
5億円約2億742万円約9,752万円約1億990万円

※取得費は対価の15%、他の課税所得1,000万円と仮定。復興特別所得税を含む概算値です。個別の状況により異なります。

譲渡対価が大きくなるほど、みなし配当が最高税率帯に入る割合が増えるため、特例の効果は飛躍的に大きくなります。非上場株式の株価が高い企業のオーナー相続では、この特例の適用漏れが数千万円〜数億円の損失に直結します。

取得費加算の特例(措法39条)との併用

2つの特例を組み合わせる効果

みなし配当課税の特例(措法9条の7)と、相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例(措法39条)は併用が可能です。取得費加算の特例は、相続税額のうち譲渡した資産に対応する部分を取得費に加算できる制度で、これにより譲渡所得の金額をさらに圧縮できます。

なお、取得費加算の特例も相続開始日の翌日から相続税申告期限の翌日以後3年以内の譲渡が要件であるため、みなし配当の特例と期限が一致しています。

📐 併用シミュレーションの前提条件

  • 譲渡対価:1億円
  • 株式の取得費:1,500万円
  • 相続税額のうち当該株式に対応する部分:1,200万円(取得費に加算)
区分 特例のみ 特例+取得費加算
譲渡収入1億円1億円
取得費1,500万円2,700万円
譲渡所得8,500万円7,300万円
所得税等(20.315%)約1,727万円約1,483万円
追加の軽減額約244万円

取得費加算により、さらに約244万円の税負担が軽減されます。相続税額が大きいケースほど加算額も大きくなるため、効果はさらに拡大します。

参考: 国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」

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届出書の提出手続き【5ステップ】

ステップ1:届出書を入手する

国税庁のホームページから「相続財産に係る非上場株式をその発行会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例に関する届出書」(A2-31)の様式をダウンロードします。

ステップ2:届出書に必要事項を記入する

届出書には、相続の開始日・相続人の氏名・対象株式の銘柄と株数・発行会社の名称・譲渡予定日などを記載します。

ステップ3:譲渡前に発行会社に届出書を提出する

ここが最も重要なポイントです。株式を譲渡する「前」に届出書を発行会社に提出しなければなりません。譲渡と同時や譲渡後の提出では特例を適用できません。

⚠️ 注意:届出書の提出タイミング

実務で最も多い失敗が「売買契約と届出書の提出を同日に行った」ケースです。届出書は必ず株式の譲渡日よりも前の日付で発行会社に提出する必要があります。売却スケジュールが決まったら、できるだけ早い段階で届出書を提出しておくべきです。

ステップ4:発行会社に株式を譲渡する

届出書の提出後、発行会社との間で株式譲渡契約を締結し、対価の受領と株式の引渡しを行います。なお、自己株式の取得には会社法上の手続き(株主総会の特別決議等)も必要です。

ステップ5:発行会社が税務署に届出書を提出する

発行会社は、株式を譲り受けた日の属する年の翌年1月31日までに、本店所在地の所轄税務署にこの届出書を提出する義務があります。また、届出書の写しを5年間保存する必要があります。

参考: 国税庁「A2-31 みなし配当課税の特例に関する届出」

譲渡価額の決め方と「時価」の考え方

非上場株式の時価を間違えるリスク

発行会社との間で合意する譲渡価額は自由に決められますが、税務上は「時価」との乖離に注意が必要です。時価の2分の1未満で譲渡した場合は「みなし譲渡」として、時価で売却したものとして所得税が計算されるリスクがあります。

非上場株式の評価方法

個人が発行会社に譲渡する場合の時価は、原則として財産評価基本通達178〜189-7に基づいて計算します。株主の区分(支配株主か少数株主か)によって評価方法が異なります。

株主の区分 適用される評価方法
支配株主(同族株主等)原則的評価方式(類似業種比準方式・純資産価額方式等)
少数株主特例的評価方式(配当還元方式)

📊 公認会計士の視点

非上場株式の時価の算定は、相続税申告時に行った株式評価の結果と整合させるのが安全です。相続税申告と譲渡所得の確定申告で異なる評価額を使うと、税務調査で指摘されるリスクが高まります。相続税申告を依頼した税理士に、譲渡時の適正価額についても相談することをお勧めします。

事業承継における自己株式取得の活用

遺産分割時の代償金確保

非上場会社のオーナーが亡くなった場合、株式は相続財産の中でも高額になりがちですが、現金化しにくい資産です。特に複数の相続人がいる場合、後継者が株式を集約し、他の相続人には代償金を支払うケースでは、会社の自己株式取得を活用する方法があります。

具体的には、後継者以外の相続人が相続した株式を発行会社に譲渡し、得られた対価を代償金として利用します。この場合にみなし配当課税の特例を使えば、手残りを最大化できます。

生前贈与で取得した株式にも適用可能

この特例は、相続時精算課税制度を適用した贈与や、事業承継税制の適用を受けた贈与で取得した株式にも適用可能です。つまり、相続・遺贈による取得だけでなく、一定の生前贈与による取得も対象となります。

💡 実務のポイント

事業承継を検討されている経営者からの相談では、「生前のうちから自己株式取得を進めたい」という要望が少なくありません。しかし、この特例は相続・遺贈(または一定の贈与)で取得した株式が対象であるため、生前に被相続人自身が発行会社に売却してもこの特例は使えません。生前対策と相続後の対策を混同しないよう注意が必要です。

配偶者が特例を使えない場合の対策

先述の通り、配偶者の税額軽減で相続税額がゼロになった配偶者は、この特例の適用対象外です。この場合の対策として、以下の選択肢があります。

対策 内容 注意点
①遺産分割で配偶者以外が取得非上場株式を配偶者ではなく後継者や他の相続人に取得させる全体の遺産分割バランスを考慮
②配偶者の税額軽減を一部不適用あえて配偶者控除の適用額を減らし、相続税が発生する状態にする相続税とみなし配当の税額をトータルで比較
③第三者への譲渡を検討発行会社ではなく第三者に譲渡すれば、みなし配当自体が発生しない非上場株式の買い手を見つけるのが困難

②の方法は、相続税が発生する分の税負担と、みなし配当課税の税負担をトータルで比較して判断する必要があります。この比較計算は非常に複雑なため、必ず税理士に相談してください。

海外勤務中に株式を譲渡した場合の取扱い

相続人が海外勤務中で日本の非居住者である場合、株式の譲渡に関する課税関係が変わる可能性があります。

所得税法上、非居住者が国内にある資産を譲渡した場合は、原則として日本で課税されます。非上場株式は「国内にある資産」に該当するため、海外勤務中であっても日本で申告が必要になるケースがあります。

ただし、租税条約の規定により、居住地国での課税が優先される場合もあります。海外勤務中に相続した非上場株式の譲渡を検討している場合は、国際税務に詳しい税理士に相談することを強く推奨します。

なお、株式の譲渡所得の計算方法や損益通算の基本的なしくみについては、「株式の譲渡損失と配当所得の損益通算・繰越控除のやり方」で詳しく解説しています。

取得請求権付株式の譲渡と課税の特例

取得請求権付株式とは

取得請求権付株式とは、株主が発行会社に対して株式の取得を請求できる権利が付いた種類株式です。事業承継の場面で活用されることがあり、後継者以外の株主に取得請求権付株式を発行しておくことで、将来的な株式の買戻しを円滑にする手段として利用されます。

課税の繰延べの特例(措法57条の4)

取得請求権付株式の請求権の行使により、対価として発行会社の他の株式のみが交付される場合は、譲渡がなかったものとみなされます(所得税法57条の4第3項)。つまり、課税が繰り延べられ、交付された新株式の取得費は旧株式の取得費を引き継ぎます。

対価の内容 課税関係
他の株式のみが交付される譲渡なしとみなされる(課税繰延べ)
金銭が交付される譲渡所得+みなし配当として課税
端数株式に対応する金銭のみ交付端数部分のみ譲渡所得として課税

この課税繰延べの特例は、取得条項付株式、全部取得条項付種類株式、新株予約権付社債、取得条項付新株予約権にも適用されます。組織再編に伴う株式の交換については、「株式交換・株式移転・合併・自己株式取得時の課税の特例」で詳しく解説しています。

確定申告の手順と添付書類

申告に必要な書類

書類 入手先
確定申告書B国税庁ホームページ or 税務署
株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書国税庁ホームページ or 税務署
みなし配当課税の特例に関する届出書の写し発行会社に提出した控え
株式の取得費がわかる書類被相続人の取得時の契約書・領収証等
相続税の申告書の写し(取得費加算を併用する場合)相続税申告時の控え

申告書への記載方法

特例を適用する場合、確定申告書の「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」に、譲渡対価の全額を収入金額として記載します。通常の場合のようにみなし配当と譲渡所得に分解する必要はありません。

取得費加算の特例を併用する場合は、取得費の欄に加算額を上乗せして記載します。適用条文として「措法9条の7」「措法39条」を明記してください。

株式の取得費の基本的な計算方法については、「株式投資にかかる税金の基礎知識」も参考になります。所得控除の全体像は「所得控除の一覧と適用条件」で解説しています。

よくある失敗事例と対策

失敗事例1:届出書の提出が間に合わなかった

相続が発生し、遺産分割協議に時間がかかっているうちに、株式の売買が先行してしまったケースです。届出書を譲渡後に提出しても特例は適用されません。対策:相続発生後の早い段階で、税理士と自己株式取得のスケジュールを組むこと。

失敗事例2:配偶者控除で相続税ゼロにしてしまった

「相続税を少しでも減らしたい」と配偶者控除を最大限活用した結果、配偶者の相続税額がゼロになり特例が使えなくなったケースです。みなし配当の税額が配偶者控除で節税できた相続税額を上回ることもあります。対策:相続税と所得税をトータルで試算してから遺産分割方法を決める。

失敗事例3:3年10ヶ月の期限を超過した

発行会社との株式評価の交渉に時間がかかり、期限を超過してしまったケースです。1日でも期限を過ぎれば特例は適用できません。対策:相続税の申告が完了した時点で、速やかに自己株式取得の手続きを進める。

💡 実務のポイント

実務で最も多いのは失敗事例2のパターンです。相続税の節税と所得税の節税を別々の税理士に相談していると、全体最適の判断ができません。相続税申告と株式の譲渡をワンストップで対応できる事務所に依頼することで、このリスクは大幅に軽減できます。

発行会社側の手続きと留意点

会社法上の手続き

発行会社が自己株式を取得するには、株主総会の特別決議(会社法第160条)が必要です。譲渡制限株式の場合は、定款に「相続人に対する売渡し請求」の規定を整備しておくことも重要です。

源泉徴収の取扱い

特例が適用される場合、発行会社はみなし配当部分の源泉徴収を行う必要はありません。ただし、届出書が適切に提出されていることを確認する義務があります。届出書の提出がない場合は、通常通りみなし配当部分について20.42%の源泉徴収が必要です。

会計処理

発行会社側では、自己株式の取得として純資産の部の減少項目として処理します。法人税上は自己株式の取得自体に課税関係は生じませんが、みなし配当に該当する部分がある場合は源泉徴収の処理が必要になる点に注意してください。

よくある質問(FAQ)

相続時精算課税制度で贈与された株式にもこの特例は使えますか?
使えます。租税特別措置法第9条の7は、相続時精算課税の適用を受けた贈与(措法70条の7の3)や事業承継税制に基づく贈与(措法70条の7の7)で取得した株式も対象に含めています。ただし、暦年贈与で取得した株式は対象外です。
届出書はいつまでに提出すればよいですか?
株式を発行会社に譲渡する「前」までに提出する必要があります。具体的な期限の定めはありませんが、譲渡日よりも前の日付で発行会社に届出書が到達している必要があります。余裕をもって1〜2ヶ月前に提出するのが安全です。
特例と取得費加算の特例(措法39条)は同時に使えますか?
同時に使えます。みなし配当の特例(措法9条の7)で全額を譲渡所得として計算した上で、取得費加算の特例(措法39条)により取得費に相続税額の一部を加算できます。両方の特例の期限はいずれも「相続開始後3年10ヶ月以内」で一致しています。
配偶者が相続した株式でも特例は使えますか?
配偶者の税額軽減(配偶者控除)を適用した結果、納付すべき相続税額がゼロになった場合は特例を使えません。配偶者がこの特例を使うには、相続税が発生している必要があります。遺産分割の段階で、誰が非上場株式を取得するかを税負担のトータルで検討することが重要です。
譲渡価額は相続税評価額と同じにする必要がありますか?
同じにする法的義務はありませんが、税務リスクの観点から相続税評価額を参考にすることが安全です。譲渡価額が時価の2分の1未満の場合は「みなし譲渡」の規定が適用される可能性があり、逆に時価を大幅に上回る場合は贈与税の問題が生じる可能性があります。
発行会社に買取資金がない場合はどうすればよいですか?
発行会社が分配可能額の範囲内でしか自己株式を取得できないため、資金が不足する場合は分割での買取りや、銀行融資を活用する方法があります。また、生命保険金を活用して買取資金を確保する方法も実務では広く利用されています。
この特例を使った場合、確定申告書にはどう記載しますか?
確定申告書第三表(分離課税用)と「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を使用します。特例適用条文欄に「措法9条の7」と記載し、譲渡対価の全額を収入金額として計算します。取得費加算を併用する場合は「措法39条」も併記します。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 非上場株式を発行会社に譲渡すると、対価の一部が「みなし配当」として最大55.945%の総合課税を受ける
  • みなし配当課税の特例(措法9条の7)を使えば、全額が譲渡所得として一律20.315%で課税される
  • 適用要件は7つ。特に「相続税額がゼロでないこと」「譲渡前に届出書を提出すること」が見落とされやすい
  • 取得費加算の特例(措法39条)と併用すれば、さらに税負担を圧縮できる
  • 配偶者控除で相続税ゼロの配偶者は対象外。遺産分割の段階で全体最適を検討する必要がある
  • 届出書の提出タイミング(譲渡「前」)と期限(3年10ヶ月以内)を厳守すること
  • 税額差が数千万円〜数億円に及ぶため、相続発生後は速やかに税理士に相談を

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