準確定申告とは?亡くなった人の確定申告の手続きと期限

準確定申告とは?亡くなった人の確定申告の手続きと期限
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
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家族が亡くなった後の税務手続きで不安を感じている相続人の方に向けて、準確定申告の手続き・期限・必要書類・控除のルールを完全ガイドします。この記事を読めば、準確定申告の要否判断から書類の準備、提出までの流れを把握できます。

🏆 結論:準確定申告は「相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内」に相続人が行う

準確定申告とは、年の途中で亡くなった人の所得税を、相続人が代わりに申告・納税する手続きです。期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内で、通常の確定申告(翌年3月15日)とは異なります。相続人が2人以上いる場合は連署で1通を提出するのが原則です。提出先は被相続人の納税地の税務署であり、相続人の住所地ではありません。期限を過ぎると無申告加算税・延滞税が課されるため、早めの対応が重要です。

準確定申告とは?通常の確定申告との違い

準確定申告とは、年の途中で亡くなった人(被相続人)の1月1日から死亡日までの所得について、相続人が代わりに確定申告を行う手続きです。所得税法第124条・第125条に基づき、相続人には被相続人の所得税を申告・納税する義務があります。

項目 通常の確定申告 準確定申告
申告する人本人相続人(包括受遺者含む)
対象期間1月1日〜12月31日1月1日〜死亡日
申告期限翌年2月16日〜3月15日相続開始を知った翌日から4ヶ月以内
提出先本人の住所地の税務署被相続人の納税地の税務署
控除の判定基準日12月31日時点死亡日時点
還付金の扱い本人の口座に入金相続財産として相続税の課税対象
e-Tax対応○(令和2年分以降)

参考: 国税庁「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」

💡 実務のポイント

準確定申告で最もよく間違えるのが「提出先」です。相続人の住所地の税務署ではなく、亡くなった方の最後の住所地を管轄する税務署に提出します。相続人が遠方に住んでいる場合は郵送やe-Taxの利用が便利です。

準確定申告が必要な人・不要な人の判定

準確定申告が必要かどうかは、亡くなった方の所得状況によって決まります。基本的な判定基準は通常の確定申告と同じです。

準確定申告が必要なケース

被相続人の状況 判定 備考
個人事業主・フリーランスだった必要事業所得がある場合は原則必要
不動産所得があった必要死亡日までの家賃収入を申告
給与収入が2,000万円超だった必要年末調整の対象外のため
2箇所以上から給与を受けていた要確認従たる給与等の合計が20万円超なら必要
株式や不動産を売却していた必要譲渡所得が発生する場合
公的年金等の収入が400万円超だった必要確定申告不要制度の範囲外

準確定申告が不要でも申告した方が得なケース

以下の場合は申告義務はありませんが、申告すれば税金が還付される可能性があります。還付申告は5年以内に提出可能です。

ケース 還付が見込まれる理由
年の途中で退職し年末調整を受けていない源泉徴収税額が年税額より多い可能性
医療費が多額にかかっていた医療費控除の適用で還付される可能性
ふるさと納税をしていた寄附金控除の適用で還付される可能性

確定申告の基本については「確定申告とは?対象者・期間・やり方を完全ガイド」をご覧ください。

準確定申告の期限と死亡月別のスケジュール

準確定申告の期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内」です。多くの場合、被相続人が亡くなった日が起算日になります。

死亡月別の期限一覧表

死亡月(例:10日死亡) 準確定申告の期限 注意点
1月5月10日前年分も未申告なら前年分も4ヶ月以内
2月6月10日前年分も未申告なら前年分も4ヶ月以内
3月(15日以前)7月10日前年分も未申告なら前年分も4ヶ月以内
4月〜12月死亡月+4ヶ月後の同日当年分のみ

⚠️ 注意:1月〜3月15日に亡くなった場合の「2年分申告」

被相続人が1月1日〜3月15日の間に前年分の確定申告をしないまま亡くなった場合、前年分と当年分の2年分の準確定申告が必要です。どちらも期限は相続開始を知った翌日から4ヶ月以内です。実務では前年分の書類が比較的揃いやすいため、先に前年分を作成する流れが効率的です。

相続後の手続き全体タイムライン

期限 手続き 届出先
7日以内死亡届の提出市区町村役場
14日以内年金受給停止届・健康保険の資格喪失届年金事務所・健保組合等
3ヶ月以内相続放棄・限定承認(必要な場合)家庭裁判所
4ヶ月以内準確定申告・納税被相続人の納税地の税務署
10ヶ月以内相続税の申告・納税被相続人の住所地の税務署

💡 実務のポイント

準確定申告の4ヶ月以内という期限は、相続税の10ヶ月以内に比べて短いため見落とされがちです。特に被相続人が個人事業主だった場合、帳簿や領収書を探す時間を考えると、亡くなった直後から準備を始めることが重要です。

準確定申告の手続き5ステップ

ステップ1:被相続人の所得状況を確認する

まず、亡くなった方にどのような所得があったかを把握します。過去の確定申告書の控え、源泉徴収票、通帳の入出金記録、年金の受給状況などを確認してください。被相続人が個人事業主だった場合は帳簿や請求書・領収書も必要です。

ステップ2:必要書類を収集する

源泉徴収票は勤務先や年金の支払機関に請求します。年金の源泉徴収票は日本年金機構に死亡届を提出した後に「準確定申告用」として発行されます。控除証明書(生命保険料・医療費の領収書等)も死亡日までの分を整理します。

ステップ3:相続人全員に連絡・協力を依頼する

相続人が複数いる場合は、全員に準確定申告が必要であることと期限を伝えます。代表者を決めて一括で進めるのが効率的です。

ステップ4:確定申告書と付表を作成する

通常の確定申告書の表題に「準確定」と記載して使用します。相続人が2人以上いる場合は「確定申告書付表」の作成が必要です。国税庁の確定申告書等作成コーナーでも作成可能です。

ステップ5:税務署に提出・納税する

申告書の提出先は被相続人の死亡当時の納税地を管轄する税務署です。税務署への持参・郵送・e-Taxのいずれでも提出できます。還付金がある場合は代表者がまとめて受け取ることも可能です(委任状が必要)。

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準確定申告の必要書類チェックリスト

書類 入手先 備考
確定申告書(第一表・第二表)国税庁HP / 税務署表題に「準確定」と記載
確定申告書付表国税庁HP / 税務署相続人が2人以上の場合に必要
給与の源泉徴収票被相続人の勤務先死亡時に発行される
公的年金等の源泉徴収票日本年金機構 / 各共済組合死亡届提出後に「準確定申告用」として請求
医療費の領収書医療機関 / 薬局死亡日までに被相続人が支払った分のみ
各種控除証明書保険会社等生命保険料・地震保険料等
青色申告決算書 / 収支内訳書自身で作成事業所得・不動産所得がある場合
相続人全員の本人確認書類マイナンバーカード両面コピー等
委任状国税庁HP代表者が還付金を受領する場合に必要

準確定申告で使える所得控除の判定表

準確定申告では通常の確定申告と同じ所得控除が原則として適用できますが、判定基準が「12月31日時点」ではなく「死亡日時点」になる点が大きな違いです。

所得控除 適用 注意点
基礎控除(48万円)全額適用(月割りなし)
医療費控除○(注意)死亡日までに被相続人が支払った分のみ
社会保険料控除○(注意)死亡日までに支払った分のみ
生命保険料控除○(注意)死亡日までに支払った保険料が対象
配偶者控除・扶養控除死亡日時点の状況で判定
寄附金控除死亡日までに支払った寄附金が対象
住宅ローン控除居住の実態があれば月割り計算で適用可

⚠️ 医療費控除でよくあるミス

死亡後に相続人が支払った入院費や治療費は、準確定申告の医療費控除には含められません。これは最も間違いの多いポイントです。死亡後に支払った医療費は、生計を一にしていた相続人自身の確定申告で医療費控除の対象にできる場合があります。

各種所得控除の詳細は「所得控除の全種類一覧|適用要件と控除額を完全解説」で解説しています。

相続人が複数いる場合の手続きルール

連署方式と個別申告方式の比較

項目 連署方式(原則) 個別申告方式
申告書の数1通(付表に全員記載)相続人ごとに1通ずつ
マイナンバー付表に全員分記載各自の申告書に記載
通知義務不要(連署のため)他の相続人全員に通知する義務あり
メリット1回の提出で完了マイナンバーを共有しなくてよい

納税額と還付金の分担ルール

準確定申告で納税が発生した場合、各相続人は法定相続分(または遺言の指定相続分)に応じて納税義務を負います。還付金も同様に相続分に応じて受け取ります。代表者がまとめて受け取る場合は委任状が必要です。

準確定申告で受け取った還付金は相続財産として相続税の課税対象になります。一方、納付した税金は相続税の計算上、被相続人の債務として控除できます。

💡 実務のポイント

準確定申告の結果は相続税の計算に直接影響します。還付金は相続財産に加算され、納税額は債務として控除されます。準確定申告と相続税の申告を同じ税理士に依頼すると、両方の整合性を確認しながら進められるため効率的です。

準確定申告と相続税の関係

項目 準確定申告(所得税) 相続税の申告
課税対象被相続人の1月1日〜死亡日の所得被相続人から相続した財産
期限4ヶ月以内10ヶ月以内
基礎控除48万円3,000万円+600万円×法定相続人の数

被相続人が個人事業主だった場合の特則

被相続人が青色申告を行っていた個人事業主で、相続人が事業を引き継ぐ場合は、準確定申告に加えて以下の届出が必要です。

届出 期限 届出先
個人事業の開業届出書事業開始から1ヶ月以内相続人の納税地の税務署
青色申告承認申請書死亡日により異なる(※)相続人の納税地の税務署
被相続人の廃業届出書廃業から1ヶ月以内被相続人の納税地の税務署

※青色申告承認申請書の期限は、死亡日が1月1日〜8月31日なら死亡日から4ヶ月以内、9月1日〜10月31日ならその年の12月31日まで、11月1日〜12月31日なら翌年2月15日までです。

被相続人が消費税の課税事業者だった場合は、消費税の準確定申告も必要です。期限は所得税と同じく4ヶ月以内です。

青色申告のメリットについては「青色申告のメリット完全ガイド」で解説しています。

準確定申告の期限に遅れた場合のペナルティ

期限(4ヶ月以内)を過ぎても申告は可能ですが、以下のペナルティが発生します。

ペナルティ 内容 税率の目安
無申告加算税期限内に申告しなかったことへのペナルティ自主申告5%〜調査後15〜30%
延滞税納税が遅れたことに対する利息的なペナルティ年2.4%〜年8.7%(令和7年特例)

ただし還付申告であれば期限を過ぎてもペナルティはなく、5年以内であれば申告可能です。期限ギリギリで間に合わない場合でも、概算でまず期限内に提出し、後から修正する方法もあります。

ペナルティの詳細は「確定申告を忘れたとき・間違えたときの対処法」で解説しています。

よくある質問(FAQ)

準確定申告をしなかった場合、何か問題がありますか?
義務がある場合に申告しないと、税務署から決定処分を受ける可能性があります。無申告加算税と延滞税が課され、さらに青色申告の承認が取り消される場合もあります。還付申告の場合はペナルティはなく、5年以内であれば申告可能です。
準確定申告はe-Taxで電子申告できますか?
令和2年分以降はe-Taxで提出可能です。代表者がe-Taxで申告する場合、他の相続人から委託を受けた旨を記載した「準確定申告の確認書」の添付が必要です。確認書もe-Taxで送信できます。
亡くなった人の医療費が高額でした。準確定申告で控除を受けられますか?
死亡日までに被相続人本人が支払った医療費は控除の対象になります。ただし、死亡後に相続人が支払った入院費・治療費は準確定申告では控除できません。生計を一にしていた相続人自身の確定申告で控除できる場合があります。
年金受給者が亡くなりました。準確定申告は必要ですか?
公的年金等の収入が400万円以下で他の所得が20万円以下の場合は原則不要です。ただし医療費が多かった場合など、申告すれば還付を受けられるケースもあるため、源泉徴収票で確認することをおすすめします。
準確定申告の還付金は誰の口座に振り込まれますか?
代表者がまとめて受け取る場合は代表者の銀行口座に振り込まれます。他の相続人全員からの委任状が必要です。還付金は被相続人の相続財産として相続税の課税対象になります。
消費税の課税事業者が亡くなりました。消費税の準確定申告も必要ですか?
はい、消費税の準確定申告も必要です。期限は所得税と同じく4ヶ月以内です。課税期間は1月1日〜死亡日で、死亡日までの課税売上高と仕入税額控除を計算して申告します。
海外に住んでいた人が亡くなった場合はどうなりますか?
海外居住で日本に恒久的施設がなかった場合、日本国内で生じた所得(国内源泉所得)のみが対象になります。国内に不動産所得や事業所得がない場合は不要なこともあります。国際税務は複雑なため、専門家への相談をおすすめします。
準確定申告を税理士に依頼する費用の目安は?
一般的に5万円〜15万円程度です。年金所得のみのシンプルなケースは5万円前後、事業所得や不動産所得がある場合は10万円〜15万円程度です。相続税の申告と合わせて依頼すると割引されることもあります。
期限内に書類が全部揃わない場合はどうすればよいですか?
概算でも構わないので、まず期限内に申告することをおすすめします。書類が揃った後に修正申告または更正の請求で修正できます。無申告になるよりも、概算でも期限内に提出した方がペナルティを避けられます。
ふるさと納税をしていた人が亡くなりました。控除は受けられますか?
死亡日までに支払ったふるさと納税は寄附金控除の対象になります。ワンストップ特例を利用していた場合でも、準確定申告を行う際には特例は無効になるため、申告書に寄附金控除を記載する必要があります。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 準確定申告は、亡くなった人の1月1日〜死亡日の所得税を相続人が代わりに申告する手続き
  • 期限は相続開始を知った翌日から4ヶ月以内。相続税の10ヶ月より短いため要注意
  • 提出先は「被相続人の納税地の税務署」であり、相続人の住所地ではない
  • 所得控除の判定基準は「死亡日時点」。医療費控除は死亡日までに本人が支払った分のみ
  • 相続人が複数いる場合は連署で1通を提出するのが原則。代表者方式が効率的
  • 還付金は相続財産に算入、納税額は債務として控除される

準確定申告は、大切な方を亡くされた直後の慌ただしい時期に行う手続きです。4ヶ月という期限は意外と短いため、早めに専門家に相談して計画的に進めることをおすすめします。

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