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事業承継税制(法人版)の仕組み|特例措置と一般措置の違い・適用要件
「事業承継で自社株の贈与税・相続税が心配」という中小企業経営者に向けて、法人版事業承継税制の特例措置と一般措置の違いを10項目で比較解説します。この記事を読めば、自社がどちらの措置を選ぶべきか判断できます。


「事業承継で自社株の贈与税・相続税が心配」という中小企業経営者に向けて、法人版事業承継税制の特例措置と一般措置の違いを10項目で比較解説します。この記事を読めば、自社がどちらの措置を選ぶべきか判断できます。
🏆 結論:特例措置の方が圧倒的に有利だが、期限がある
法人版事業承継税制には「一般措置」と「特例措置」の2つがあります。特例措置は納税猶予割合100%・対象株式の制限なし・雇用要件の実質撤廃など、一般措置より大幅に有利です。ただし、特例承継計画の提出期限は2027年9月30日、贈与・相続の適用期限は2027年12月31日までの時限措置です。活用を検討している経営者は早めの準備が不可欠です。
法人版事業承継税制とは、後継者が非上場会社の株式を贈与または相続で取得した際に、その株式にかかる贈与税・相続税の納税を猶予し、一定の条件を満たせば最終的に免除される制度です。租税特別措置法第70条の7等に規定されています。
制度の利用には、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)に基づく都道府県知事の認定が必要です。この制度には平成21年に創設された「一般措置」と、平成30年度改正で10年間限定で設けられた「特例措置」の2つがあります。
💡 実務のポイント
事業承継税制は「納税猶予」であって「非課税」ではありません。猶予期間中に取消事由に該当すると、猶予されていた税額に利子税を加算して納付が必要になります。この点を理解せずに制度を利用すると、想定外の税負担が発生するリスクがあります。実務では、事業承継後の経営体制や株式の管理方法まで含めた長期的なプランニングが欠かせません。
特例措置と一般措置の主要な違いを以下の表で比較します。結論から言えば、ほぼすべての項目で特例措置の方が有利です。
| 比較項目 | 特例措置 | 一般措置 |
|---|---|---|
| ①事前計画 | 特例承継計画の提出が必要(2027年9月末まで) | 不要 |
| ②対象株式数 | 全株式が対象(制限なし) | 総株式数の2/3まで |
| ③納税猶予割合(贈与) | 100% | 100% |
| ④納税猶予割合(相続) | 100% | 80% |
| ⑤贈与者・被相続人 | 全株主が対象(親族外含む) | 先代経営者1人のみ |
| ⑥後継者の人数 | 最大3人まで | 1人のみ |
| ⑦雇用確保要件 | 実質撤廃(未達でも理由書提出で継続) | 5年平均8割維持(未達で取消) |
| ⑧売却・廃業時の再計算 | あり(株価下落分を減免) | なし |
| ⑨適用期限 | 2027年12月31日まで | 期限なし(恒久措置) |
| ⑩役員就任要件(贈与) | 贈与直前に就任していればOK(令和7年改正) | 贈与直前に就任していればOK(令和7年改正) |
事業承継税制の対象となる会社は、中小企業基本法に定める中小企業者(業種ごとに資本金・従業員数の基準がある)で、非上場であり、風俗営業会社でないことが必要です。資産管理会社(有価証券・不動産等の資産保有割合が70%以上の会社)も原則として対象外ですが、一定の事業実態がある場合は除外されません。
贈与の場合、先代経営者は贈与前に代表権を有していたこと、贈与時点で代表権を有していないことが必要です。相続の場合は、被相続人が相続開始直前に代表権を有していたこと等が求められます。
贈与の場合、後継者は贈与時に18歳以上であること、贈与直前に会社の役員であること(令和7年改正で「3年以上」から緩和)、贈与後に代表権を有することが必要です。特例措置では最大3人まで後継者を指定でき、その場合はそれぞれが議決権の10%以上を保有する等の要件があります。
⚠️ 注意
特例措置で後継者を3人に分散すると、各後継者の議決権割合が低くなり、経営判断のスピードが落ちるリスクがあります。「税務上有利=経営上最適」とは限りません。後継者の人数は経営戦略と税務の両面から慎重に判断すべきです。
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | 自社株1億円 | 自社株3億円 | 自社株5億円 |
|---|---|---|---|
| 本来の贈与税額 | 約4,800万円 | 約1億6,400万円 | 約2億8,900万円 |
| 特例措置の猶予額 | 約4,800万円(100%) | 約1億6,400万円(100%) | 約2億8,900万円(100%) |
| 一般措置の猶予額(贈与) | 約3,000万円(2/3対象×100%) | 約9,800万円(2/3対象×100%) | 約1億7,100万円(2/3対象×100%) |
| 差額(特例の方が有利な金額) | 約1,800万円 | 約6,600万円 | 約1億1,800万円 |
※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。
💡 実務のポイント
自社株の評価額が高い会社ほど、特例措置と一般措置の差が大きくなります。評価額5億円のケースでは1億円以上の差が出ます。自社株の評価方法(類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式)の選択自体が節税のカギを握るため、評価額の算定と事業承継税制の適用はセットで検討すべきです。
自社株の評価方法について詳しくは「事業承継税制の仕組みと概要」で解説しています。
事業承継税制の手続きは、計画の提出から始まり、猶予の申告、毎年の報告、最終的な免除まで長期にわたります。以下のフロー表で全体像を把握してください。
| ステップ | 内容 | 提出先 | 期限 |
|---|---|---|---|
| ①計画提出 | 特例承継計画を認定支援機関の指導を受けて作成・提出 | 都道府県庁 | 2027年9月30日まで |
| ②贈与・相続の実行 | 先代経営者から後継者へ株式を移転 | — | 2027年12月31日まで |
| ③認定申請 | 経営承継円滑化法に基づく認定を申請 | 都道府県庁 | 贈与の翌年1月15日まで / 相続開始後8ヶ月以内 |
| ④税務申告 | 認定書の写しを添付して贈与税・相続税の申告 | 税務署 | 贈与の翌年3月15日 / 相続開始後10ヶ月以内 |
| ⑤事業継続期間(5年) | 年次報告書(都道府県)+継続届出書(税務署)を毎年提出 | 両方 | 申告期限から5年間、毎年 |
| ⑥継続届出期間 | 継続届出書を3年に1回提出 | 税務署 | 5年経過後、後継者死亡等まで |
| ⑦免除 | 後継者死亡、次の後継者への贈与等で猶予税額が免除 | 税務署 | — |
📝 行政書士の視点
特例承継計画の作成には認定経営革新等支援機関(税理士、公認会計士、商工会議所等)の指導・助言が必要です。計画書の様式は中小企業庁のホームページからダウンロードでき、後継者の氏名・事業承継の予定時期・承継後5年間の事業計画等を記載します。記載例も業種別に公開されているため、参考にしながら作成するとよいでしょう。
事業承継税制では、事業承継後5年間の常時使用従業員数の平均が、承継時の8割以上を維持することが求められます(雇用確保要件)。この要件の取扱いが、特例措置と一般措置で大きく異なります。
| 項目 | 特例措置 | 一般措置 |
|---|---|---|
| 5年平均8割を維持した場合 | 猶予継続 | 猶予継続 |
| 5年平均8割を下回った場合 | 理由書(様式27)を提出すれば猶予継続 | 認定取消→猶予税額+利子税を納付 |
| 経営悪化が理由の場合 | 認定支援機関の指導・助言が必要 | 取消(救済なし) |
特例措置では、雇用が8割を下回っても理由書を提出すれば猶予が継続されます。人手不足が深刻な中小企業にとって、この「実質撤廃」は非常に大きなメリットです。
納税猶予が取り消されると、猶予されていた税額に加えて利子税の納付が必要になります。主な取消事由とそのリスク度を以下に整理します。
| 取消事由 | リスク度 | 対応策 |
|---|---|---|
| 後継者が代表権を失った(5年以内) | ★★★ | 5年間は代表を継続する経営計画を策定 |
| 対象株式を譲渡・売却した | ★★★ | 株式の管理ルールを社内で明確化 |
| 雇用が8割を下回った(一般措置の場合) | ★★☆ | 特例措置を選択して回避 |
| 会社が解散した | ★★☆ | 特例措置は株価再計算で減免の余地あり |
| 資産管理会社に該当した | ★★☆ | 有価証券・不動産の保有割合を70%未満に維持 |
| 継続届出書の提出期限を過ぎた | ★☆☆ | カレンダーに期限を登録し、税理士と共有 |
📊 公認会計士の視点
実務で見落としがちなのが「資産管理会社の判定」です。事業承継後に事業規模を縮小したり、遊休不動産の割合が増えたりすると、有価証券等の資産保有割合が70%を超えて資産管理会社に該当するケースがあります。5年間の事業継続期間中だけでなく、その後も資産構成には注意が必要です。
自社が特例措置の適用を受けられるかどうか、以下の8項目で確認してください。すべて「はい」であれば特例措置の適用対象です。
| チェック項目 | 確認 |
|---|---|
| ①会社は中小企業基本法の中小企業者に該当するか | □ |
| ②会社は非上場であるか | □ |
| ③会社は風俗営業会社に該当しないか | □ |
| ④2027年9月30日までに特例承継計画を提出できるか | □ |
| ⑤2027年12月31日までに贈与・相続を実行できるか | □ |
| ⑥後継者は贈与時18歳以上であり、会社の役員であるか | □ |
| ⑦先代経営者は贈与時に代表権を有していないか(贈与の場合) | □ |
| ⑧認定経営革新等支援機関(税理士等)の指導・助言を受けられるか | □ |
特例措置の適用には「特例承継計画の提出期限」と「贈与・相続の適用期限」の2つの期限があります。令和8年度改正で計画提出期限が1年6ヶ月延長されましたが、贈与・相続の適用期限自体は2027年12月31日のままです。
| 期限 | 内容 |
|---|---|
| 2027年9月30日 | 特例承継計画の提出期限(令和8年度改正で延長後) |
| 2027年12月31日 | 贈与・相続による適用期限(延長なしと明記済み) |
令和7年度の税制改正大綱では「特例措置の適用期限は今後とも延長しない」と明記されています。期限後は一般措置のみの利用となるため、活用を検討している経営者は残された期間で計画的に準備を進める必要があります。税制改正の動向について詳しくは「相続税・贈与税の税制改正まとめ」をご覧ください。
事業承継後5年間は毎年、都道府県への年次報告書と税務署への継続届出書の提出が必要です。5年経過後も3年に1回の継続届出書が求められます。この管理を怠ると猶予が取り消されるため、税理士への顧問料や社内の管理コストが継続的に発生します。
納税猶予を受けるには、猶予税額に見合う担保の提供が必要です。対象株式の全てを担保提供すれば要件を満たしますが、株式以外の担保を求められる場合もあります。
猶予が取り消された場合、猶予されていた税額に利子税を加算して納付する必要があります。自社株評価額が高い会社では億単位の納税が突然発生するリスクがあるため、取消事由に該当しないための経営管理が重要です。
相続税の基本的な計算方法については「相続税の計算方法」、贈与税の基礎知識については「贈与税の仕組みと基礎知識」をご覧ください。
📋 この記事のポイント
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