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法定調書・支払調書の作成と提出|年末調整の経理実務との関係
「年末調整が終わったのに、まだ提出書類があるの?」と戸惑う経理担当者に向けて、法定調書・支払調書の作成から提出までの経理フローを完全ガイドします。この記事を読めば、年末年始の経理業務を漏れなくスケジュール管理できます。


「年末調整が終わったのに、まだ提出書類があるの?」と戸惑う経理担当者に向けて、法定調書・支払調書の作成から提出までの経理フローを完全ガイドします。この記事を読めば、年末年始の経理業務を漏れなくスケジュール管理できます。
🏆 結論:年末年始の経理業務は3つの提出先を意識して段取りする
法定調書は税務署へ、給与支払報告書は市区町村へ、源泉徴収票は従業員へ。この3つの提出先と期限(翌年1月31日)を起点に逆算してスケジュールを組むのが、年末年始の経理実務のポイントです。年末調整の計算が終わってからが「法定調書業務」の本番です。
法定調書とは、所得税法・相続税法・租税特別措置法などの規定により、税務署への提出が義務づけられている書類の総称です。ひとことで言えば「お金を払った側が、誰にいくら払ったかを税務署に報告する書類」と考えてください。
税務署は法定調書を受け取ることで、報酬を受け取った個人の確定申告内容と照合し、申告漏れがないかを確認します。所得税法第225条で提出義務が定められており、正当な理由なく不提出の場合は1年以下の懲役または50万円以下の罰金の対象になります。
💡 実務のポイント
実務では、罰則よりも「税務調査での心証」が大きな問題です。法定調書の提出が不十分な会社は、税務署から「管理がずさんな会社」と見られ、税務調査の対象に選ばれやすくなります。年間100社以上の顧問先を見てきた経験上、法定調書の不備がきっかけで調査が入ったケースは珍しくありません。
法定調書は全63種類ありますが、一般的な中小企業で実際に作成するのは以下の6種類です。この6種類を「年末調整関連6調書」と呼ぶこともあります。
| 法定調書の名称 | どんなときに作成するか | 対象の支払い |
|---|---|---|
| 給与所得の源泉徴収票 | 従業員に給与・賞与を支払ったとき | 給与・賞与 |
| 退職所得の源泉徴収票 | 退職金を支払ったとき | 退職金 |
| 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書 | フリーランス・士業に報酬を支払ったとき | 原稿料・講演料・税理士報酬など |
| 不動産の使用料等の支払調書 | 個人の地主・家主に賃借料を支払ったとき | 家賃・地代(年15万円超) |
| 不動産等の譲受けの対価の支払調書 | 個人から不動産を購入したとき | 不動産の購入代金(100万円超) |
| 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書 | 不動産のあっせん手数料を支払ったとき | あっせん手数料(年15万円超) |
年末調整と法定調書の提出は切り離せない業務です。全体の流れを月別タイムラインで整理すると、「いつまでに何を終わらせるべきか」が見えてきます。
| 時期 | 担当業務 | 提出先・対象 | 期限 |
|---|---|---|---|
| 10月上旬 | 年末調整スケジュール策定・社内通知 | 社内 | — |
| 10月下旬 | 控除証明書の届き始め・従業員への案内配布 | 従業員 | — |
| 11月上旬 | 申告書の配布・マイナンバー確認 | 従業員 | 社内締切設定 |
| 11月下旬 | 申告書の回収・記載内容の確認・不備修正依頼 | 社内 | — |
| 12月上旬 | 年税額の計算・過不足額の算出 | 社内 | — |
| 12月下旬 | 12月給与で還付・追徴精算/源泉徴収票を従業員に交付 | 従業員 | 12月最終給与日 |
| 翌年1月上旬 | 支払調書の作成・法定調書合計表の作成 | 社内 | — |
| 翌年1月10日 | 12月分の源泉所得税の納付(納期の特例は1/20) | 税務署(納付) | 翌年1月10日 |
| 翌年1月31日 | 法定調書+合計表を税務署に提出 | 税務署 | 翌年1月31日 |
| 翌年1月31日 | 給与支払報告書を市区町村に提出 | 各市区町村 | 翌年1月31日 |
⚠️ 注意:1月は3つの提出先を同時進行
1月中に「税務署への法定調書」「市区町村への給与支払報告書」「従業員への源泉徴収票交付」の3つが同時に発生します。実務では12月中に源泉徴収票の作成を終え、1月上旬から支払調書と合計表の作成に集中するのが効率的です。
「うちの会社は支払調書を出す必要があるの?」という質問は非常に多いです。以下の判定表で、支払先の種類・報酬の種類・金額から作成要否を確認できます。
| 報酬の種類 | 具体例 | 提出基準金額(年間) |
|---|---|---|
| 原稿料・講演料・デザイン料 | ライター・デザイナー・講師 | 5万円超 |
| 弁護士・税理士等の報酬 | 顧問料・決算報酬 | 5万円超 |
| 社会保険診療報酬 | 医療機関への支払い | 50万円超 |
| 外交員・集金人への報酬 | 保険外交員など | 50万円超 |
| 芸能人・プロスポーツ選手の報酬 | 出演料・賞金 | 5万円超 |
| 広告宣伝のための賞金 | 懸賞金・賞品 | 50万円超 |
| 不動産の使用料等 | 個人地主への家賃・地代 | 15万円超 |
| 不動産の譲受けの対価 | 個人からの不動産購入 | 100万円超 |
| ステップ | 判定内容 | Yesの場合 | Noの場合 |
|---|---|---|---|
| ① | 支払先は源泉徴収の対象になる個人またはその報酬か? | → ステップ②へ | → 原則不要(ただし法人宛でも提出範囲に該当すれば必要) |
| ② | 年間の支払金額が上記の提出基準金額を超えているか? | → ステップ③へ | → 税務署への提出は不要(ただし合計表には金額を集計する) |
| ③ | マイナンバーの取得は完了しているか? | → 支払調書を作成・提出 | → 取得依頼の経緯を記録した上で、マイナンバー未記載でも提出可能 |
💡 実務のポイント
支払調書の提出基準を下回る支払いでも、法定調書合計表の「B欄(上記のうち、提出するもの)」と対比される「A欄(全体)」には金額を集計する必要があります。現場でよく見かけるのが、提出対象外の支払いをA欄にも集計し忘れるミスです。A欄の金額が少なすぎると税務署が不審に思い、お尋ねが来ることがあります。
年末調整で計算した年税額と過不足額は、そのまま源泉徴収票に転記されます。源泉徴収票は法定調書の一種なので、年末調整の精度が法定調書の正確性を左右します。つまり、年末調整でミスをすると法定調書もミスになるという関係です。
具体的には、年末調整で確定した「支払金額」「給与所得控除後の金額」「所得控除の額の合計額」「源泉徴収税額」の4つの数値が、源泉徴収票のメイン情報になります。この数値は法定調書合計表にも集計されるため、年末調整→源泉徴収票→法定調書合計表のデータフローを意識することが大切です。
源泉徴収票は従業員全員分を作成しますが、税務署に提出するのは一部の人だけです。この「提出範囲」を間違えると、不要な提出で手間が増えるか、提出漏れでペナルティを受けるかのどちらかになります。
| 対象者の区分 | 年間の給与等の金額 | 税務署へ提出 |
|---|---|---|
| 法人の役員(現役) | 150万円超 | 必要 |
| 弁護士・税理士等(給与の形で支払う場合) | 250万円超 | 必要 |
| 上記以外の従業員 | 500万円超 | 必要 |
| 年の中途で退職した者(年調未済) | 250万円超 | 必要 |
| 上記基準以下の従業員 | — | 不要(市区町村・従業員への交付は必要) |
なお、給与支払報告書は従業員全員分を、それぞれの住所地の市区町村に提出する必要があります。「税務署には出さなくていいから終わり」ではありません。給与支払報告書については、「源泉徴収事務の経理処理|対象報酬・税率表・納付期限と特例」でも触れています。
中小企業で最も作成頻度が高い支払調書がこれです。記入項目は大きく5つのブロックに分かれます。
| 記入ブロック | 記入内容 | 実務上のポイント |
|---|---|---|
| ①支払いを受ける者 | 住所・氏名・マイナンバー | 契約時にマイナンバーを取得しておく |
| ②区分 | 「原稿料」「税理士報酬」など | 区分を間違えると源泉税率も変わるので要注意 |
| ③細目 | 報酬の具体的内容 | 「HP制作」「月次顧問料」など具体的に |
| ④支払金額・源泉徴収税額 | 年間の支払総額と徴収した所得税額 | 消費税を区分記載すれば税抜金額で判定可能 |
| ⑤支払者 | 自社の住所・名称・法人番号 | 法人番号13桁を忘れずに記載 |
支払調書に記載する金額は原則として税込金額です。ただし、請求書等で報酬と消費税が明確に区分されている場合は、税抜金額で記載することも認められています。この場合、「摘要」欄に消費税額を記載します。
実務では、税抜金額で記載した方が提出基準の判定で有利になる場合があります。たとえば税理士報酬が税込55,000円(税抜50,000円)の場合、税込表記なら提出対象ですが、税抜表記なら基準の5万円以下となり提出不要です。
支払調書を支払先(フリーランスなど)に交付する法的義務はありません。多くの企業が慣習で控えを送付していますが、これは任意です。ただし、支払先が確定申告の際に報酬額と源泉徴収額を確認する必要があるため、実務上は交付しておく方がトラブルを防げます。
📊 公認会計士の視点
支払調書の金額と会計帳簿の「支払報酬」勘定の残高は一致するはずです。決算時にこの照合を行うことで、経費計上漏れや源泉徴収漏れを発見できます。法定調書の作成は「年に1回の帳簿監査」と位置づけると、経理業務の精度が上がります。
法定調書合計表(正式名称「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」)は、その年に提出する全ての法定調書を集計した「表紙」のような書類です。各法定調書の人数・支払金額・源泉徴収税額の合計を1枚の用紙にまとめます。
📐 記入例の前提条件
| 合計表の欄 | A欄(全体) | B欄(提出分) | 提出する法定調書の枚数 |
|---|---|---|---|
| 1.給与所得の源泉徴収票 | 人員5人・支払2,400万円・税額120万円 | 人員2人(役員で150万超)・支払1,200万円・税額65万円 | 2枚 |
| 2.退職所得の源泉徴収票 | 該当なし | 該当なし | 0枚 |
| 3.報酬、料金等の支払調書 | 人員2人・支払93万円・税額9.5万円 | 人員2人・支払93万円・税額9.5万円 | 2枚 |
| 4.不動産の使用料等の支払調書 | 人員1人・支払180万円 | 人員1人・支払180万円 | 1枚 |
※この例では法定調書5枚+合計表1枚=合計6枚を税務署に提出します。
年末調整の仕訳方法や源泉徴収の基本は「簿記・帳簿の基礎知識」でも解説しています。
年末調整と法定調書の作成にあたって発生する仕訳を、場面別に整理します。会計ソフトへの入力時に迷いやすいポイントです。
| 場面 | 借方 | 貸方 | 補足 |
|---|---|---|---|
| ①還付(従業員に返す) | 預り金(源泉所得税) | 現金預金 | 12月給与で相殺する方法が一般的 |
| ②追徴(従業員から徴収) | 現金預金 | 預り金(源泉所得税) | 12月給与から天引きで処理 |
| ③源泉所得税の納付 | 預り金(源泉所得税) | 現金預金 | 翌年1月10日までに納付 |
| ④住民税の特別徴収納付 | 預り金(住民税) | 現金預金 | 翌月10日までに市区町村に納付 |
| ⑤賞与の源泉徴収 | 賞与 | 現金預金 / 預り金(源泉所得税・住民税・社保) | 賞与支給時に社保・源泉・住民税を同時処理 |
🔷 社労士の視点
年末調整の過不足精算は「所得税」に関する処理ですが、12月給与では社会保険料や住民税の天引きも同時に行います。特に賞与月は「賞与支払届」の提出も必要になるため、税理士と社労士の連携が重要です。鮎澤パートナーズでは税務と労務を同時に処理できるため、期限管理の漏れを防げます。
給与支払報告書は、源泉徴収票とほぼ同じ様式ですが、提出先が異なります。源泉徴収票は税務署(一部の人のみ)に提出するのに対し、給与支払報告書は従業員が住む市区町村に全員分を提出します。市区町村はこの情報をもとに住民税を計算します。
| 比較項目 | 源泉徴収票(税務署) | 給与支払報告書(市区町村) |
|---|---|---|
| 提出先 | 所轄税務署 | 従業員の住所地の市区町村 |
| 提出対象 | 一定金額超の人のみ | 全従業員(1月1日在籍者+退職者) |
| 添付書類 | 法定調書合計表 | 総括表 |
| 提出期限 | 翌年1月31日 | 翌年1月31日 |
| 電子提出の義務化基準 | 前々年100枚以上(2027年〜は30枚以上) | eLTAXでの電子提出を推奨 |
総括表は市区町村ごとに1枚作成します。記入すべき主な項目は、給与の支払期間、受給者の総人数、特別徴収の対象者数、退職者がいる場合はその人数です。複数の市区町村に従業員がいる場合は、市区町村の数だけ総括表を作成する必要があります。
会計ソフトの導入を検討している方は「会計ソフトの選び方」で、年末調整機能の比較もしています。
法定調書の提出方法は、書面・e-Tax・光ディスク・クラウドの4つから選べます。ただし、前々年の法定調書の提出枚数が100枚以上の場合は、e-Taxまたは光ディスクでの電子提出が義務づけられています。
この基準は段階的に引き下げられており、2027年1月1日以降は30枚以上で電子提出が義務化されます。従業員30人以上の法人は対応が必須になります。
| 時期 | 電子提出が義務となる基準 | 対象の目安 |
|---|---|---|
| 〜2020年12月 | 1,000枚以上 | 大企業 |
| 2021年1月〜 | 100枚以上 | 従業員100人超 |
| 2027年1月〜 | 30枚以上 | 従業員30人超 |
📢 2027年1月〜 電子提出義務化の拡大
2027年1月1日以降の提出分から、前々年の法定調書提出枚数が30枚以上の場合は電子提出が義務化されます。書面提出を続けてきた企業は、今のうちからe-Tax利用の準備を進めましょう。
freee・マネーフォワード・弥生などの主要クラウド会計ソフトは、年末調整から法定調書の作成・電子提出まで一気通貫で対応しています。手書きや手入力で作成する場合と比べて、以下のメリットがあります。
①年末調整のデータがそのまま源泉徴収票に反映される、②源泉徴収票のデータが法定調書合計表に自動集計される、③e-Tax・eLTAXへの電子申告がソフト内から直接可能。これにより、転記ミスのリスクが大幅に減ります。
クラウド会計ソフトの選び方は「会計ソフトの選び方ガイド」で詳しく比較しています。電子帳簿保存法への対応も含めて検討したい場合は「電子帳簿保存法の概要」もご覧ください。
提出済みの法定調書に誤りが見つかった場合は、正しい内容で改めて法定調書を作成し、税務署に再提出します。その際、摘要欄に「訂正」と記載します。合計表も修正が必要な場合は、合計表も再提出します。
訂正できる期限に法律上の定めはありませんが、税務署から「お尋ね」が来る前に自主的に訂正した方が心証は良くなります。実務上、翌年3月までに訂正するのが望ましいでしょう。
| よくあるミス | 原因 | 防止策 |
|---|---|---|
| 提出対象外の人を提出してしまう | 提出範囲の金額基準の誤解 | 提出前にチェックリストで金額基準を確認 |
| 合計表のA欄の集計漏れ | 提出対象外の人をA欄に含め忘れる | A欄は「全員分」の集計であることを意識 |
| マイナンバーの記載漏れ | フリーランスからの番号未取得 | 年初の契約時に番号を取得する社内ルール |
| 支払調書の消費税の取扱い不統一 | 税込・税抜が混在 | 社内統一ルール(原則税込 or 税抜)を決める |
| 給与支払報告書の提出先間違い | 従業員の引っ越し後の住所を反映していない | 12月時点の住民票住所を確認 |
法定調書そのものには明確な保存義務はありませんが、法定調書の作成根拠となる書類(年末調整の各種申告書・源泉徴収簿など)は提出期限の翌年1月10日から7年間の保存が義務づけられています(所得税法施行規則第76条の3)。
実務では、法定調書の控えも同期間保存しておくのが安全です。税務調査で「この支払調書の根拠となる請求書を見せてください」と言われたときに対応できるよう、支払調書と請求書をセットでファイリングしておくと便利です。
💡 実務のポイント
税務調査では、法定調書の金額と帳簿の金額の整合性がチェックされます。特に「報酬、料金等の支払調書」は外注費・支払報酬の勘定科目と照合されるため、決算時に法定調書と帳簿の金額を突合しておくことが調査対策の基本です。
法定調書にはマイナンバーを記載するため、取得・保管・廃棄にあたって安全管理措置が求められます。具体的には、①取得時の本人確認、②保管期間中のアクセス制限、③利用目的終了後の速やかな廃棄の3点です。中小企業でも、マイナンバーを記載した書類は施錠できるキャビネットに保管し、担当者を限定するなどの対応が必要です。
法定調書の作成を自社で行うか税理士に依頼するか、判断に迷う経営者は多いです。以下のチェックリストで判断してみてください。
| 判断項目 | 自社対応でOK | 税理士に依頼推奨 |
|---|---|---|
| 従業員数 | 10人以下 | 10人超 |
| 外注先の数 | 5社以下 | 5社超(特に個人のフリーランス多数) |
| 不動産関連の支払い | 法人オーナーのみ(提出不要が多い) | 個人オーナーへの支払いあり |
| 会計ソフト | 年末調整・法定調書に対応済み | 未対応 or 手書き |
| 経理担当者の経験 | 年末調整を2回以上経験 | 初めて or 1回のみ |
| 電子提出の対応 | e-Tax環境構築済み | 未対応で期限が迫っている |
記帳代行のコスト感については「記帳代行の費用相場」を参考にしてください。
📋 この記事のポイント
法定調書・支払調書の作成は、年末調整とセットで毎年発生する定期業務です。タイムラインを把握して段取りよく進めれば、1月31日の期限に慌てることはありません。自社での対応が不安な場合は、早めに税理士に相談しましょう。