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簿記の基礎知識|複式簿記・単式簿記の違いと仕訳の基本ルール
「簿記って何から覚えればいいの?」「複式簿記と単式簿記の違いがよくわからない」という経理初心者・個人事業主の方に向けて、簿記のしくみ・仕訳の基本ルール・帳簿の種類・会計ソフトの選び方まで、公認会計士・税理士がゼロから完全ガイドします。


「簿記って何から覚えればいいの?」「複式簿記と単式簿記の違いがよくわからない」という経理初心者・個人事業主の方に向けて、簿記のしくみ・仕訳の基本ルール・帳簿の種類・会計ソフトの選び方まで、公認会計士・税理士がゼロから完全ガイドします。
🏆 結論:簿記は「取引を2面から記録するルール」さえ覚えれば怖くない
簿記の基本は「1つの取引を借方(左)と貸方(右)の両面から記録する」ことです。複式簿記を使えば、お金の増減だけでなく「なぜ増減したか」の原因まで記録でき、正確な決算書(貸借対照表・損益計算書)を作成できます。個人事業主なら青色申告で最大65万円の特別控除を受けるために複式簿記が必須。法人は会社法で複式簿記が義務です。現在は会計ソフトが仕訳を自動化してくれるため、簿記の「考え方」さえ理解すれば、手書きの仕訳帳を作る必要はありません。
簿記(ぼき)とは、事業で発生する取引を一定のルールに従って帳簿に記録・整理し、最終的に決算書(財務諸表)としてまとめる技術のことです。「帳簿に記す」の略語が語源とされています。
簿記を行う目的は大きく3つあります。第一に、事業のお金の流れを正確に把握すること。第二に、税務署に提出する確定申告書・法人税申告書の基礎資料を作ること。第三に、銀行融資や取引先との信用構築に必要な決算書を作成することです。
💡 実務のポイント
年間100社以上の記帳代行を担当していますが、「簿記がわからないまま開業して、確定申告直前にレシートの山と格闘する」ケースが後を絶ちません。簿記の基礎を最初に30分学ぶだけで、1年後の作業量が10分の1になります。
すべての事業者に簿記は必要です。個人事業主・フリーランスは所得税法で帳簿の作成・保存が義務づけられています(所得税法第148条・第231条の2)。法人は会社法第432条で「適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない」と定められています。
「自分は白色申告だから簿記は不要」と思っている方もいますが、白色申告でも収入金額や必要経費を記帳する義務があります。違いは、白色申告は単式簿記でOKですが、青色申告で最大65万円の特別控除を受けるには複式簿記が必要だという点です。
簿記には「複式簿記」と「単式簿記」の2種類があります。最大の違いは、1つの取引を記録する面の数です。
| 比較項目 | 単式簿記 | 複式簿記 |
|---|---|---|
| 記録する面 | お金の増減のみ(1面) | お金の増減+その原因(2面) |
| イメージ | 家計簿・お小遣い帳 | 企業の会計帳簿 |
| 必要な知識 | ほぼ不要 | 簿記3級程度 |
| 作成できる書類 | 現金出納帳のみ | 貸借対照表+損益計算書 |
| 青色申告特別控除 | 最大10万円 | 最大65万円(e-Tax利用時) |
| 経営状況の把握 | 現金残高しかわからない | 資産・負債・利益が全てわかる |
| 法人での利用 | 不可(会社法で複式簿記が義務) | 必須 |
| 会計ソフトの対応 | Excel・手書きで可 | freee/マネーフォワード/弥生等 |
単式簿記では、「4月1日に仕入れ代金5万円を現金で支払った」場合、次のように記録します。
| 日付 | 摘要 | 支出 | 残高 |
|---|---|---|---|
| 4/1 | 商品仕入れ | 50,000 | 150,000 |
「5万円減った」ことはわかりますが、それが仕入れなのか光熱費なのか、後から見返しただけでは分類の集計が困難です。
同じ取引を複式簿記で記録すると、次のようになります。
| 日付 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 4/1 | 仕入 | 50,000 | 現金 | 50,000 |
「仕入れという費用が発生した(原因)」と「現金が減った(結果)」の2面が同時に記録されます。これが複式簿記の「二面性の原則」です。
今の記帳方法を続けるべきか迷っている方は、以下の判定表を確認してください。
| あなたの状況 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 法人(株式会社・合同会社) | 複式簿記必須 | 会社法で義務 |
| 個人事業主・青色申告で65万円控除を受けたい | 複式簿記必須 | 所得税法施行規則第56条 |
| 個人事業主・青色申告で10万円控除でOK | 単式簿記でも可 | ただし55万円分の控除を逃す |
| 個人事業主・白色申告 | 単式簿記でも可 | ただし節税メリットなし |
| 将来、融資を受けたい | 複式簿記推奨 | 銀行は決算書(B/S・P/L)を要求 |
📊 公認会計士の視点
「単式簿記のままでいい」と判断できるケースは実務上ほとんどありません。年間売上が数十万円のごく小規模な副業を除けば、複式簿記の方が節税効果・経営管理の両面で圧倒的に有利です。現在は会計ソフトが自動で複式簿記の仕訳を作成してくれるため、「複式簿記は難しい」というハードルは実質的に消えています。
仕訳(しわけ)とは、取引を「借方(かりかた)」と「貸方(かしかた)」に分けて記録する作業のことです。複式簿記の核となるルールです。
借方は帳簿の左側、貸方は右側に記載します。「かりかた」の「り」は左にはらう→左側、「かしかた」の「し」は右にはらう→右側、と覚えるのが定番です。
仕訳で最も重要なのは、「その勘定科目が5つのグループのどれに属するか」と「増えたのか減ったのか」の2つを判断することです。以下の表を暗記してしまえば、どんな取引も仕訳できます。
| グループ | 増加した時 | 減少した時 | 覚え方のキーワード | 代表的な勘定科目 |
|---|---|---|---|---|
| 資産 | 借方(左) | 貸方(右) | 「持ち物が増えた→左」 | 現金・預金・売掛金・建物 |
| 負債 | 貸方(右) | 借方(左) | 「借金が増えた→右」 | 買掛金・借入金・未払金 |
| 純資産 | 貸方(右) | 借方(左) | 「元手が増えた→右」 | 資本金・利益剰余金 |
| 収益 | 貸方(右) | 借方(左) | 「売上が立った→右」 | 売上・受取利息・雑収入 |
| 費用 | 借方(左) | 貸方(右) | 「お金を使った→左」 | 仕入・給料・地代家賃 |
💡 実務のポイント
記帳代行を何千件とこなしてきた経験上、「資産と費用は左(借方)、負債・純資産・収益は右(貸方)に増える」とだけ覚えれば十分です。B/S(貸借対照表)の左側に載るもの=増加は借方、P/L(損益計算書)の左側に載る費用=増加は借方、と覚えると一貫性が出ます。
複式簿記の大原則として、1つの仕訳の借方合計と貸方合計は必ず一致します。これを「貸借平均の原則」と呼びます。借方と貸方の金額がズレている場合は、必ずどこかに記帳ミスがあるということです。
仕訳の考え方を理解したら、次は実際によく使うパターンを見ていきましょう。業種によって頻出する仕訳は異なります。
| # | 取引内容 | 借方 | 貸方 | よく使う業種 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 商品を現金で仕入れた | 仕入 50,000 | 現金 50,000 | 小売・飲食 |
| 2 | 売上代金が振り込まれた | 普通預金 100,000 | 売掛金 100,000 | IT・建設 |
| 3 | 事務所の家賃を支払った | 地代家賃 120,000 | 普通預金 120,000 | 全業種 |
| 4 | 従業員に給料を支払った | 給料手当 300,000 | 普通預金 255,000 / 預り金 45,000 | 飲食・建設 |
| 5 | 交通費を現金で支払った | 旅費交通費 1,200 | 現金 1,200 | 全業種 |
| 6 | クレジットカードで備品購入 | 消耗品費 30,000 | 未払金 30,000 | IT・フリーランス |
| 7 | クライアントに請求書を発行 | 売掛金 500,000 | 売上 500,000 | IT・建設 |
| 8 | 銀行から融資を受けた | 普通預金 3,000,000 | 長期借入金 3,000,000 | 建設・飲食(開業時) |
| 9 | パソコン(20万円)を購入 | 工具器具備品 200,000 | 普通預金 200,000 | IT・全業種 |
| 10 | 従業員が立替えた経費を精算 | 旅費交通費 5,000 | 未払金 5,000 | 全業種 |
※消費税の仕訳は税込経理方式で記載。税抜経理方式の場合は仮払消費税・仮受消費税を使用します。
勘定科目の全一覧や設定のコツについては、「勘定科目一覧と設定のポイント|業種別テンプレート付き」で詳しく解説しています。
⚠️ 注意
仕訳#4(給料の支払い)では、源泉所得税や社会保険料の天引き分を「預り金」として別に処理する必要があります。「給料30万円を振り込んだから、借方30万/貸方30万」とすると、源泉徴収の記録が漏れてしまいます。これは税務調査で指摘を受けやすいポイントです。
売上原価とは、「売れた商品の原価」のことです。仕入れた金額がそのまま売上原価になるわけではなく、期首の在庫と期末の在庫を考慮して計算します。
売上原価の計算式は次のとおりです。
多くの中小企業が採用する「三分法」では、期末に以下の決算整理仕訳を行います。
| タイミング | 借方 | 貸方 | 意味 |
|---|---|---|---|
| ①期首在庫の振替 | 仕入 200,000 | 繰越商品 200,000 | 前期から持ち越した在庫を仕入に含める |
| ②期末在庫の振替 | 繰越商品 150,000 | 仕入 150,000 | 売れ残った在庫を仕入から差し引く |
この仕訳を「しーくりくりしー(仕入/繰越商品、繰越商品/仕入)」と覚えるのが簿記の定番です。
💡 実務のポイント
飲食店や小売業で棚卸しの仕訳漏れがあると、売上原価が正しく計算されず、利益額がズレます。税務調査では棚卸しの正確性が重点的にチェックされるポイントです。期末に実地棚卸を行い、棚卸表を必ず保存しておきましょう。
複式簿記で使う帳簿は大きく「主要簿」と「補助簿」に分かれます。
| 帳簿名 | 役割 | 記録の順序 | 会計ソフトでの扱い |
|---|---|---|---|
| 仕訳帳 | 全取引を日付順に記録する帳簿 | 日付順(時系列) | 仕訳入力画面が該当 |
| 総勘定元帳 | 勘定科目ごとに仕訳を集計する帳簿 | 勘定科目別 | 自動生成される |
仕訳帳は取引の「日記」、総勘定元帳は取引の「カテゴリ別まとめ」と考えるとイメージしやすいでしょう。
補助簿は主要簿を補足するための帳簿です。法律上の作成義務はありませんが、実務では以下の帳簿を作成しておくと管理がスムーズになります。
| 補助簿の名称 | 記録する内容 | 特に必要な業種 |
|---|---|---|
| 現金出納帳 | 現金の入出金を日付順に記録 | 飲食・小売(現金取引が多い) |
| 預金出納帳 | 銀行口座ごとの入出金を記録 | 全業種 |
| 売掛金元帳 | 取引先ごとの売掛金残高を管理 | IT・建設(掛取引が多い) |
| 買掛金元帳 | 取引先ごとの買掛金残高を管理 | 小売・製造 |
| 固定資産台帳 | 固定資産の取得価額・減価償却額を記録 | 全業種(資産がある場合) |
帳簿の保存期間については、「帳簿の保存期間と保存方法|電子帳簿保存法対応ガイド」で詳しく解説しています。
簿記の作業は、取引の発生から決算書の作成まで、以下の7ステップで進みます。
| ステップ | 作業内容 | 使う帳簿・書類 | 会計ソフトの自動化度 |
|---|---|---|---|
| ① 取引発生 | 請求書・領収書・通帳を確認 | 証憑書類 | 自動取込(銀行API連携) |
| ② 仕訳 | 取引を借方・貸方に分ける | 仕訳帳 | AIが自動仕訳を提案 |
| ③ 転記 | 仕訳帳から科目別に分ける | 総勘定元帳 | 完全自動 |
| ④ 試算表作成 | 借方・貸方の合計を確認 | 合計残高試算表 | 完全自動 |
| ⑤ 決算整理 | 減価償却・棚卸し・未払計上 | 決算整理仕訳 | 一部手動(要判断) |
| ⑥ 精算表作成 | 決算整理後の残高を確定 | 精算表 | 完全自動 |
| ⑦ 決算書作成 | B/S(貸借対照表)とP/L(損益計算書)を出力 | 財務諸表 | 完全自動 |
ご覧のとおり、現在の会計ソフトでは③〜④と⑥〜⑦は完全自動で処理されます。経営者が本当に理解すべきなのは②の仕訳と⑤の決算整理です。
なお、発生主義と現金主義の違いについては、「発生主義と現金主義の違い|中小企業が採用すべき会計基準」をご覧ください。
簿記の最終的なゴールは、貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)という2つの決算書を作成することです。
貸借対照表は、ある時点(決算日)の「資産・負債・純資産」の残高を一覧にした書類です。左側(借方)に資産、右側(貸方)に負債と純資産を記載し、左右の合計が必ず一致します。
| 借方(左)= 資産 | 貸方(右)= 負債 + 純資産 |
|---|---|
| 現金・預金 500万円 | 買掛金 100万円 |
| 売掛金 200万円 | 借入金 300万円 |
| 建物 300万円 | 資本金 500万円 |
| 合計 1,000万円 | 利益剰余金 100万円 合計 1,000万円 |
損益計算書は、一定期間(事業年度)の「収益と費用」を記載し、その差額として利益(または損失)を示す書類です。
| 借方(左)= 費用 | 貸方(右)= 収益 |
|---|---|
| 売上原価 400万円 | 売上 1,000万円 |
| 給料手当 200万円 | 受取利息 5万円 |
| 地代家賃 100万円 | |
| 当期純利益 305万円 | |
| 合計 1,005万円 | 合計 1,005万円 |
📊 公認会計士の視点
B/SとP/Lは「つながっている」と意識してください。P/Lで計算された当期純利益は、B/Sの利益剰余金に加算されます。つまり「1年間の成績表(P/L)が会社の健康診断書(B/S)を更新する」関係です。銀行は融資審査でB/SとP/Lの両方を見ますから、日々の仕訳の正確さが資金調達力に直結します。
現在の経理業務では、会計ソフトを使わずに手書きで簿記を行うメリットはほとんどありません。主要3社の特徴を比較します。
| 比較項目 | freee | マネーフォワード | 弥生会計 |
|---|---|---|---|
| 仕訳の入力方式 | 取引ベース(簿記の知識不要) | 仕訳ベース(伝統的な方式) | 仕訳ベース(伝統的な方式) |
| 簿記知識の必要度 | 低い(初心者向け) | やや必要 | やや必要 |
| 銀行口座連携 | ○(自動取込+AI仕訳提案) | ○(自動取込+AI仕訳提案) | ○(スマート取引取込) |
| 税理士との連携 | ○(アドバイザー制度あり) | ◎(税理士利用率が高い) | ◎(会計事務所利用率1位) |
| 個人事業主向け | ◎ | ○ | ◎(やよいの青色申告) |
| 法人向け | ○ | ◎ | ◎ |
| 向いている人 | 簿記の知識ゼロで始めたい人 | 給与・経費・請求を一元管理したい人 | 税理士に顧問を依頼している人 |
※各社の料金プランやサービス内容は変更される場合があります。最新情報は各社の公式サイトをご確認ください。
💡 実務のポイント
税理士に記帳代行や決算を依頼する場合は、「税理士が使っているソフトに合わせる」のが最も効率的です。鮎澤パートナーズでは、3社いずれのソフトにも対応していますが、法人のお客様にはマネーフォワードまたは弥生をおすすめするケースが多いです。税理士との連携機能が充実しており、月次のデータ共有がスムーズだからです。
従業員が立て替えた経費を会社が精算する場面は、どの業種でも日常的に発生します。仕訳の方法を正しく理解しておきましょう。
従業員Aさんが取引先への電車代1,200円を自腹で立て替えた場合、会社側の仕訳は以下のとおりです。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 旅費交通費 1,200 | 未払金 1,200 |
月末にまとめてAさんに精算金を振り込んだ場合の仕訳は以下のとおりです。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 未払金 1,200 | 普通預金 1,200 |
⚠️ 注意
立替経費の精算漏れは、未払金が膨らむ原因になります。実務では「月末締め翌月10日精算」などルールを決めて運用しましょう。また、経費精算にはレシートまたは領収書の原本保存が必要です(電子帳簿保存法の要件を満たせばスマホ撮影でもOK)。
経理初心者がやりがちなミスをチェックリスト形式でまとめました。月末・年末に確認してください。
| # | チェック項目 | 具体的な確認方法 | 頻度 |
|---|---|---|---|
| 1 | 残高が合っているか | 帳簿上の預金残高と通帳の残高を照合 | 毎月 |
| 2 | 借方と貸方が一致しているか | 試算表の合計借方=合計貸方を確認 | 毎月 |
| 3 | 勘定科目の選択は正しいか | 似た科目(交際費と会議費等)の使い分けを確認 | 仕訳のたび |
| 4 | 領収書・請求書は揃っているか | 証憑が欠けている取引がないか月次で棚卸し | 毎月 |
| 5 | 消費税の課税区分は正しいか | 課税/非課税/不課税/免税の4区分を確認 | 仕訳のたび |
💡 実務のポイント
年間100社以上の決算に携わっていますが、チェック項目3の「勘定科目の選択ミス」が最も多いです。特に交際費と会議費の境界線を曖昧にしていると、税務調査で指摘されるリスクがあります。1人あたり5,000円以下の飲食代は会議費として損金算入できますが、金額だけでなく「会議の事実」も必要ですので、参加者名と議題をメモしておきましょう。
参考: 国税庁「青色申告制度」
📋 この記事のポイント
簿記の基礎を理解したら、次のステップとして勘定科目の設定を整備しましょう。業種別のおすすめ勘定科目については、「勘定科目一覧と設定のポイント|業種別テンプレート付き」をご覧ください。
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