法人で経費にできるもの一覧|判断に迷う項目と損金算入の条件

法人で経費にできるもの一覧|判断に迷う項目と損金算入の条件
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

「この支出は経費にできるのか」「勘定科目はどれが正しいのか」と迷う経営者・経理担当者に向けて、法人の経費を勘定科目別に一覧表で完全整理します。この記事を読めば、経費にできるもの・できないものの判断基準が明確になり、計上漏れや誤計上を防げます。

🏆 結論:「事業に関連する支出」は原則として経費になるが、損金不算入の例外がある

法人税法上、事業年度の損金に算入できるのは「売上原価・販売費・一般管理費その他の費用」で、債務が確定しているものです(法人税法第22条第3項)。ただし、法人税・住民税の本税、役員報酬の一部、交際費の限度超過分、罰金・過料など、損金に算入できないものが法律で明確に定められています。「経費にできるかどうか」は、この損金不算入リストに該当しないかを確認することで判断できます。

法人の経費の基本ルール|損金算入の3要件

損金に算入できる3つの条件

法人税法上、支出が損金(=経費)として認められるには、以下の3つを全て満たす必要があります。

  1. 事業との関連性がある — その支出が事業の収益を得るために必要であること
  2. 債務が確定している — 事業年度終了日までに支払義務が確定していること(法人税法第22条第3項第2号)
  3. 損金不算入の規定に該当しない — 法人税法で損金に算入できないと定められた項目でないこと

この3つを基準に判断すれば、ほとんどの支出について経費にできるかどうかを判定できます。

勘定科目別|法人の経費にできるもの一覧表

中小企業で発生する主要な経費を勘定科目別に整理しました。各項目の損金算入条件と上限も併せて確認できます。

勘定科目 具体例 損金算入の条件・上限
役員報酬定期同額給与・事前確定届出給与要件を満たせば全額損金。不相当に高額な部分は損金不算入
給与・賞与従業員の月給・賞与・残業代全額損金
法定福利費社会保険料・労働保険料の会社負担分全額損金
福利厚生費健康診断・社員旅行・食事補助・慶弔費非課税要件を満たせば損金。特定者のみは給与扱い
接待交際費取引先との飲食・贈答品・ゴルフ中小法人:年800万円まで全額損金。1人1万円以下の飲食は交際費から除外
会議費社内外の会議に伴う飲食・場所代全額損金(交際費との区分に注意)
旅費交通費出張交通費・宿泊費・日当全額損金。旅費規程に基づく日当は受取側も非課税
通信費電話料金・インターネット・切手・宅配便全額損金。私用分は按分が必要
地代家賃事務所家賃・駐車場代・倉庫賃料全額損金。自宅兼事務所は按分が必要
水道光熱費電気・ガス・水道全額損金。自宅兼事務所は按分
広告宣伝費Web広告・チラシ・パンフ・SNS運用全額損金
消耗品費事務用品・10万円未満の備品全額損金
減価償却費10万円以上の固定資産の償却耐用年数に応じて按分。少額(40万円未満)は一括損金可
保険料火災保険・賠償保険・法人契約の生命保険種類により全額〜一部損金。生保は契約形態による
租税公課印紙税・固定資産税・事業税・自動車税損金算入可。ただし法人税・住民税本税は損金不算入
支払手数料振込手数料・税理士報酬・弁護士報酬全額損金
支払利息借入金の利息・社債利息全額損金。元本返済は損金にならない
寄附金NPOへの寄付・協賛金限度額あり(国等への寄附は全額損金)

参考: 国税庁「No.5300 損金の額に算入される租税公課等の範囲と損金算入時期」

「経費にできる?できない?」5ステップ判定フロー

ステップ 質問 YESの場合 NOの場合
事業に関連する支出か?→ ②へ→ 経費不可
当期中に債務が確定しているか?→ ③へ→ 翌期の経費
損金不算入リストに該当しないか?→ ④へ→ 損金不算入
上限額がある場合、範囲内か?→ ⑤へ→ 超過分は損金不算入
証拠書類(領収書等)があるか?→ 経費計上OK→ 証拠がないと否認リスク

💡 実務のポイント

税務調査で最も問われるのは「事業との関連性」です。経理処理が正しくても、「なぜこの支出が事業に必要だったのか」を説明できなければ否認されます。支出の都度、「誰と・何の目的で・なぜ必要だったか」を記録する習慣をつけてください。領収書の裏面にメモを書くだけでも大きな差が出ます。

判断に迷う10項目の○×判定表

経営者からよく質問される「これは経費にできるのか?」という10項目を○×で判定しました。

項目 判定 条件・注意点
社長の携帯電話代法人契約なら全額。個人契約は業務使用割合で按分
携帯電話の端末購入・加入費用法人名義で業務用なら通信費or消耗品費。10万円以上は減価償却
自宅兼事務所の家賃法人契約で社宅処理→賃貸料相当額以上を徴収。個人契約は按分根拠が必要
社長のスーツ代×プライベートでも着用可能なため原則不可。制服・作業着は○
取引先との飲食代(1人1万円以下)交際費から除外され全額損金。参加者名・人数の記録が必要
社長だけの高級ディナー×事業関連性がないため不可。1人での飲食は原則経費にならない
社長のゴルフ代取引先との接待なら交際費(800万円枠内で損金)。ゴルフ場利用税は租税公課
社用車の購入費減価償却で損金算入。ガソリン・保険・車検も損金。高級車は実態で判断
交通違反の罰金×罰金・科料は損金不算入。会社が負担しても損金にならない
従業員の資格取得費用業務に直接必要な資格なら全額損金(福利厚生費or研修費)

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損金に算入できないもの一覧|覚えておくべき7項目

法人税法で「損金に算入できない」と明確に定められている主要項目は以下の7つです。これらは金額の大小にかかわらず損金不算入です。

損金不算入の項目 具体例 根拠条文
法人税・法人住民税の本税法人税・都道府県民税・市区町村民税法人税法第38条
延滞税・加算税延滞税・過少申告加算税・重加算税法人税法第55条
罰金・科料・過料交通違反罰金・独禁法の課徴金法人税法第55条
役員報酬の損金不算入部分定期同額でない変動部分・不相当に高額な部分法人税法第34条
交際費等の限度超過額年800万円(中小法人)を超える部分租税特別措置法第61条の4
寄附金の限度超過額損金算入限度額を超える寄附金法人税法第37条
引当金の繰入額(原則)賞与引当金・退職給付引当金等法人税法第22条第3項

⚠️ 注意

社会保険料の延滞金は損金算入できます(法人税法第55条に列挙されていないため)。一方、法人税の延滞税は損金不算入です。「延滞金」と「延滞税」は名前が似ていますが、損金算入の可否が正反対なので注意してください。

交際費・会議費・福利厚生費の境界線

3つの勘定科目の使い分け

飲食を伴う支出は、勘定科目の選択を間違えやすいポイントです。以下の表で3つの科目の違いを整理します。

判断基準 接待交際費 会議費 福利厚生費
参加者社外の取引先等を含む社内外を問わず(会議目的)全従業員に平等に提供
目的接待・慰安・贈答業務上の打ち合わせ・会議従業員の福利厚生
金額基準1人1万円超の飲食社会通念上妥当な額(弁当・お茶程度)項目別の非課税基準
損金算入年800万円まで(中小法人)全額損金全額損金

💡 実務のポイント

1人あたり1万円以下の社外飲食は、参加者名・人数・飲食店名・日付を記録しておけば交際費から除外され、全額損金になります。この記録がないと交際費扱いとなり、年800万円の枠を消費してしまいます。領収書の裏に「参加者:○○社 △△氏 他2名」と書くだけで十分です。

決算全体の流れと経費計上のタイミングについては「法人決算の流れ完全ガイド」で解説しています。

経費計上漏れを防ぐ決算チェックリスト10項目

決算時に以下の10項目を確認するだけで、経費の計上漏れを大幅に減らせます。

  1. 決算月の社会保険料(会社負担分)を未払計上したか
  2. 決算月の従業員給与(末日締め翌月払い)を未払計上したか
  3. 固定資産税の未払い分を計上したか
  4. 少額減価償却資産の特例を適用できる備品がないか
  5. 不良在庫の評価替えを行ったか
  6. 回収不能な売掛金を貸倒処理したか
  7. 短期前払費用の特例を適用できる支出がないか
  8. 使っていない固定資産を除却処理したか
  9. 繰越欠損金の残高と期限を確認したか
  10. 税額控除(設備投資・研究開発等)の適用漏れがないか

節税対策の全体像は「中小企業の節税対策一覧」をご覧ください。

📊 公認会計士の視点

会計上の「費用」と税務上の「損金」は一致しない場合があります。たとえば、会計上は引当金を計上して費用に含めますが、税務上は引当金の繰入額は原則として損金不算入です。決算書の利益と法人税の課税所得が異なるのは、この「会計と税務の差異」が原因であり、法人税申告書の別表四で調整します。減価償却の詳細は「減価償却の基礎知識」をご覧ください。

経費計上に必要な証拠書類と保存期間

証拠書類の種類

法人の経費計上には、支出の事実を証明する書類が必要です。税務調査で確認される書類は主に以下の5種類です。

書類の種類 用途 保存期間
領収書・レシート支出の事実と金額の証明7年間
請求書取引内容と金額の確認7年間
契約書継続的取引の根拠7年間
銀行振込明細支払いの事実の証明7年間
社内稟議書・出張報告書支出の業務関連性の証明7年間

領収書がもらえない場合(慶弔費・自動販売機など)は、「出金伝票」に日付・金額・相手先・目的を記載して代用できます。電子帳簿保存法の要件を満たした電子データでの保存も認められています。

役員報酬の設計について詳しくは「役員報酬の基礎知識と税務」をご覧ください。会社設立時に最初に必要となる経費については「会社設立の流れと手続き」でまとめています。

よくある質問(FAQ)

個人事業主から法人成りすると経費の範囲は広がりますか?
はい、大幅に広がります。法人では、経営者自身への給与(役員報酬)、社宅の家賃、出張の日当、社用車の維持費などを経費にできます。個人事業主ではこれらは認められないか、認められても制限があります。法人成りの判断については「法人成りのタイミングと判断基準」をご覧ください。
法人税と住民税は経費にならないのに、事業税は経費になるのはなぜですか?
法人税法第38条で「法人税・住民税の本税は損金に算入しない」と明確に定められているためです。一方、法人事業税はこの規定に含まれておらず、租税公課として損金算入が認められています。事業税は「事業を行うことに対する税金」という性質から、事業のコストとして扱われます。
領収書がない場合、経費計上はできませんか?
領収書がなくても、支出の事実を証明できる代替書類があれば経費計上は可能です。出金伝票に日付・金額・支払先・目的を記載する方法が一般的です。また、銀行振込の場合は振込明細が領収書の代わりになります。ただし、税務調査では領収書がないと説明を求められるため、できる限り入手してください。
接待交際費の1人1万円基準はいつ変わりましたか?
令和6年度税制改正(2024年4月1日以後開始事業年度から適用)で、従来の1人5,000円以下から1人1万円以下に引き上げられました。参加者名・人数・飲食店名・金額・日付を記録することが要件です。
自宅を事務所として使っている場合、家賃は経費にできますか?
法人名義で賃貸契約を結び、社宅として役員に貸し出す形にすれば、家賃全額が法人の損金になります(役員は賃貸料相当額を会社に支払う必要あり)。個人名義の賃貸物件の場合は、事業使用割合を合理的に算出して按分する必要がありますが、税務調査で否認されるリスクが高いため、法人契約への切り替えを推奨します。
高級車を社用車として購入しても経費にできますか?
法人名義で購入し、業務に使用している実態があれば、減価償却費として損金算入できます。ただし、実態が経営者の私的利用中心であれば否認されるリスクがあります。車種の豪華さだけで否認されることはありませんが、使用実態(業務日誌・走行記録)を記録しておくことが重要です。
社会保険料の延滞金は経費にできますか?
はい、できます。法人税法第55条で損金不算入とされている「罰金・科料・過料・延滞税・加算税」のリストに社会保険料の延滞金は含まれていないため、租税公課として損金算入が認められています。ただし、延滞金が発生しないよう納期限を守ることが最善です。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 法人の経費(損金)になるかどうかは「事業関連性」「債務確定」「損金不算入に非該当」の3要件で判断
  • 人件費・通信費・家賃・広告費など事業に関連する支出は原則として全額損金
  • 法人税・住民税・罰金・過料・延滞税は損金不算入(社保延滞金は損金算入可)
  • 接待交際費は中小法人で年800万円まで損金。1人1万円以下の飲食は交際費から除外
  • 判断に迷う項目は「事業との関連性」と「証拠書類の有無」がカギ
  • 決算チェックリスト10項目で計上漏れを防ぎ、余分な法人税を払わない
  • 証拠書類は全て7年間保存——電子データでの保存も可

法人の経費は「知っているかどうか」で大きな差がつく分野です。この記事の一覧表と判定フローを決算のたびに見返し、計上漏れや誤計上がないか確認してください。判断に迷う場合は、顧問税理士に事前に相談することで、税務調査での否認リスクを最小限に抑えられます。

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