【社労士×税理士が解説】派遣労働者の受入れと労働者派遣法の遵守|期間制限・同一労働同一賃金

【社労士×税理士が解説】派遣労働者の受入れと労働者派遣法の遵守|期間制限・同一労働同一賃金
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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派遣労働者の受入れと労働者派遣法の遵守|期間制限・同一労働同一賃金

派遣社員を受け入れる際、派遣先企業には事業所単位3年・個人単位3年の期間制限、派遣先責任者の選任、同一労働同一賃金対応、比較対象労働者情報の提供——など多数の義務があります。違反時は労働契約申込みみなし制度により直接雇用と同条件での雇用責任を負うリスクも。社労士と税理士の視点で実務を整理します。

🏆 結論:派遣受入れは「期間制限」「同一労働同一賃金」「責任者選任」が3本柱

労働者派遣法は派遣先企業にも多くの義務を課します。最重要は「事業所単位3年」「個人単位3年」の期間制限管理と、延長時の過半数労働組合意見聴取手続です。また、同一労働同一賃金の対応として、派遣元との情報提供(労使協定方式か均等均衡方式かを確認)、派遣先責任者と指揮命令者の選任、福利厚生施設の同等利用配慮などが必要です。違反すると労働契約申込みみなし制度で直接雇用責任が発生します。

労働者派遣法の基本構造

派遣・請負・業務委託の違い

派遣労働者の受入れ実務を理解するには、まず類似の契約形態との違いを整理する必要があります。請負契約は民法第632条、準委任契約は民法第643条・第656条に基づく契約類型で、派遣とは指揮命令権の所在が根本的に異なります。
契約形態 指揮命令権 雇用主 適用法令
労働者派遣派遣先派遣元労働者派遣法
請負・業務委託請負人側請負人(自社)民法(請負・準委任)
出向出向先出向元(または出向先)労働契約法
直接雇用自社自社労働基準法
形式的には請負契約なのに、実態は派遣(偽装請負)と判定されると、労働者派遣法違反として刑事罰(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)の対象となります。派遣と業務委託の使い分けは慎重な検討が必要です。

派遣の種類(有期雇用派遣・無期雇用派遣)

期間制限を超えて派遣を受け入れたい場合、派遣元から無期雇用派遣社員を派遣してもらう方法があります。

派遣先への主要な義務の一覧

派遣労働者を受け入れる企業には、以下の主要な義務があります。

期間制限の仕組み(3年ルール)

事業所単位の期間制限(派遣法第40条の2)

派遣先企業の同一の事業所が、派遣労働者を受け入れることができる期間は原則として3年です。最初の派遣労働者を受け入れた日が起算日となり、その事業所で何人派遣労働者が入れ替わっても、事業所単位の3年は延長しない限り統一されます。

参考: 厚生労働省「派遣先のみなさまへ 派遣労働者受入れ時に講ずべき措置」PDF

事業所単位の期間延長手続

事業所単位の3年を超えて派遣を受け入れたい場合、抵触日の1か月前までに、以下の手続が必要です。
  1. 過半数労働組合(または過半数代表者)への意見聴取
  2. 反対意見があった場合の対応方針の説明
  3. 意見聴取の内容を書面化して保存
  4. 派遣元・派遣労働者への延長通知
手続を経れば最長3年の延長が可能で、さらに同様の手続でもう3年延長できます。ただし、同一の派遣労働者を個人単位で3年を超えて同じ組織単位に留めることはできません。

個人単位の期間制限(派遣法第40条の3)

同一の派遣労働者を、同一の組織単位(課・グループ等)で働かせることができる期間は原則として3年です。事業所単位の期間が延長されても、個人単位の3年は独立に適用されます。

🧮 個人単位の制限の運用例

派遣労働者Aさんが2024年4月1日に営業課で就業開始した場合、営業課で働けるのは2027年3月31日まで。2027年4月1日以降も継続するには、経理課などの別の組織単位に異動する必要があります。単に肩書や担当業務を変えただけでは「組織単位の変更」と認められません。

クーリング期間

事業所単位・個人単位のいずれも、3か月を超える期間(3か月と1日以上)の中断があれば、期間制限は通算されず新たな3年が始まります。ただし、このクーリング期間の運用は派遣労働者の雇用安定を損なう脱法行為とみなされる可能性があり、労働基準監督署の指導対象となる点に注意が必要です。

期間制限の適用除外

以下の5つのケースでは、例外的に期間制限は適用されません。
ケース 根拠
派遣元に無期雇用される派遣労働者派遣法第40条の2第1項第1号
60歳以上の派遣労働者派遣法第40条の2第1項第2号
終期が明確な有期プロジェクト業務派遣法第40条の2第1項第3号
日数限定業務(月の勤務日数10日以下等)派遣法第40条の2第1項第4号
産休・育休・介護休業の代替業務派遣法第40条の2第4項

抵触日の通知義務

派遣先は、抵触日を派遣元へあらかじめ通知する義務があります(派遣法第26条第4項)。通常は派遣契約締結時に契約書に明記します。通知を怠ると、派遣契約そのものが無効となる可能性があるため、派遣先責任者が契約管理で必ずチェックする必要があります。

同一労働同一賃金への対応

2つの方式(労使協定方式・派遣先均等均衡方式)

2020年4月の改正派遣法により、派遣労働者の待遇決定について、派遣元は以下2つの方式を選択する義務を負います。

参考: 厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金」

方式 賃金決定の基準 採用率
労使協定方式同種業務の一般労働者賃金水準以上派遣会社の約9割が採用
派遣先均等均衡方式派遣先の正社員との均等均衡約1割

派遣先の待遇情報提供義務

派遣契約締結前に、派遣先は派遣元へ以下の情報を提供する義務があります(派遣法第26条第7項)。

派遣先均等均衡方式の場合

  1. 比較対象労働者の職務内容・配置変更範囲・雇用形態
  2. 比較対象労働者を選定した理由
  3. 比較対象労働者の待遇の内容(賃金・賞与・手当・福利厚生等)
  4. 各待遇の性質及び目的
  5. 各待遇の決定基準

労使協定方式の場合

  1. 派遣先で通常の労働者に実施する教育訓練の内容
  2. 派遣先の福利厚生施設(食堂・休憩室・更衣室)の内容
情報提供がない場合、派遣元は労働者派遣契約を締結できません。

⚠️ 情報提供義務違反のリスク

待遇情報の提供を怠ったまま派遣契約を締結した場合、労働局の指導対象になり、悪質な場合は派遣先の社名公表(派遣法第49条の2)の可能性があります。弊所が関与した従業員30名の製造業では、派遣受入れ3年目の労働局調査で比較対象労働者情報の提供書類が保存されておらず、是正指導を受けました。以降、派遣先責任者が「派遣契約締結前に情報提供書類を作成・保存」する運用に切り替えています。

福利厚生施設の利用機会

派遣法第40条第3項により、派遣先は派遣労働者に対し、派遣先の労働者が通常利用する食堂・休憩室・更衣室について、利用機会を与えることが義務付けられています。この義務は待遇決定方式に関係なく全派遣先が負う義務です。

派遣先責任者と指揮命令者の選任

派遣先責任者の選任義務(派遣法第41条)

派遣先企業は、派遣先責任者を選任する義務があります。派遣先責任者は労働契約法第5条の安全配慮義務の一環として、派遣労働者の就業管理を担います。 派遣先責任者は、以下の業務を担います。
  1. 派遣法の内容・派遣先管理台帳の整備について派遣先社員に周知
  2. 派遣元事業主との連絡調整
  3. 派遣労働者から申出を受けた苦情の処理
  4. 派遣先管理台帳の作成・記録・保存
  5. 安全衛生に関する派遣元との連絡調整
  6. 均衡待遇確保のための調整

指揮命令者の選任

派遣先は、指揮命令者を選任する必要があります(派遣契約の必要的記載事項)。指揮命令者は、派遣労働者に対して業務上の指示を行う者で、実質的な上司にあたります。

派遣先管理台帳の記載事項

派遣法第42条により、派遣先は派遣先管理台帳を作成し、派遣終了後3年間保存する義務があります。
記載項目
派遣労働者の氏名
派遣元事業主の名称・許可番号
派遣就業日ごとの始業・終業時刻・休憩時間
従事した業務の内容・役職
無期雇用派遣労働者か有期雇用派遣労働者かの別
派遣先責任者・指揮命令者の氏名
教育訓練の実施日時・内容
派遣労働者から受けた苦情の内容・処理状況

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派遣元責任者講習(派遣元の要件)

講習の概要

派遣元責任者は、派遣元事業主が選任する責任者で、派遣元責任者講習を受講修了していることが要件です(派遣法第36条第5項、派遣則第29条第3号)。 この講習は、派遣先が直接受講する必要はありませんが、派遣元の選定時に確認すべき重要事項です。

派遣元責任者の要件

派遣先が派遣元選定で確認すべき事項

派遣先企業は、信頼できる派遣元を選ぶために、以下を確認すべきです。

労働契約申込みみなし制度

みなし制度の概要

派遣法第40条の6により、派遣先が違法な派遣を受け入れた場合、その時点で派遣先が派遣労働者に対して労働契約(直接雇用)の申込みをしたものとみなされます。派遣労働者が1年以内に承諾の意思表示をすれば、派遣先での直接雇用が成立する強力な制度です。

みなし制度の対象となる違反類型

違反類型 具体例
禁止業務派遣建設業務・港湾運送業務・警備業務等への派遣
無許可派遣元からの受入れ労働者派遣事業の許可を持たない事業者から派遣
期間制限違反事業所単位3年・個人単位3年の超過
偽装請負請負契約の形式で実態が派遣

⚠️ みなし制度の重大性

みなし制度で直接雇用が成立した場合、労働条件は派遣時と同一とみなされます。派遣先が想定していない条件(労使協定方式による派遣料金水準など)で直接雇用責任を負うことになり、経営への打撃が大きい制度です。唯一の免責事由は「違反について善意・無過失であったこと」の立証ですが、通常これは認められにくく、事後的な立証は困難です。日常的なコンプライアンス運用が唯一の予防策となります。

派遣受入れの税務・会計処理

派遣料金の会計処理と消費税

📊 税理士の視点

派遣料金は「業務委託費」ではなく「労務費」や「派遣費用」として処理するのが一般的です。直接雇用の給与と異なり、消費税の課税対象です(給与は不課税)。製造業では製造原価に含め、間接部門では販管費に計上します。インボイス制度下では、派遣元事業者が適格請求書発行事業者かどうかを確認し、適格請求書の保存を徹底する必要があります。弊所が顧問先の製造業で労務監査を行った際、派遣費用が「外注費」として処理されており、偽装請負の疑いを指摘されるリスクが顕在化。勘定科目の是正から実施しました。

派遣受入れコストと直接雇用コストの比較

項目 派遣受入れ 直接雇用
給与派遣料金に含む直接支給
社会保険料派遣元負担(料金に含まれる)自社負担
消費税課税(10%)不課税
採用費基本的に不要50〜200万円/人
教育訓練費派遣元負担自社負担
契約解除の柔軟性契約期間満了で対応可解雇規制の制約大
一般的に派遣料金は直接雇用の給与より2〜4割高くなりますが、消費税の仕入税額控除、社会保険料・採用費の不要化、契約解除の柔軟性等を含めて総合判断する必要があります。

関連する論点・次にすべきこと

派遣受入れの実務は、就業規則の整備、偽装請負の防止、社会保険手続きなど、他の労務テーマと密接に関連しています。以下の記事も併せてご確認ください。

よくある質問(FAQ)

派遣社員を3年以上同じ職場で働いてもらうには、どうすればよいですか?
3つの選択肢があります。①派遣先が直接雇用に切り替える、②派遣元の無期雇用派遣社員に切り替える、③異なる組織単位(例:営業部→総務部)に配置転換する——です。ただし、③の場合は業務内容・指揮命令系統の実質的な変更が必要で、単に肩書を変えるだけでは「組織単位の変更」と認められません。また、事業所単位の3年ルールも別途適用されるため、過半数労働組合への意見聴取手続も必要になります。
派遣先責任者に資格は必要ですか?人数に基準はありますか?
派遣先責任者には特段の資格要件はありませんが、「人事労務管理の知識・経験がある者」を選任することが望ましいとされています。人数は派遣労働者100人ごとに1人以上で、事業所単位で必ず選任が必要です。派遣労働者が10人程度の中小企業でも、人事課長や総務部長が兼務する形で1人は必須です。選任後は、厚労省の「派遣先責任者講習」(任意受講)で業務内容を学ぶことが推奨されます。
同一労働同一賃金で派遣先均等均衡方式を選ぶと、具体的に何が変わりますか?
派遣先均等均衡方式は、派遣労働者の賃金を派遣先の正社員と均等または均衡にする方式です。派遣先として、①比較対象労働者の待遇情報を詳細に提供する義務、②待遇変更時の情報更新義務、③正社員の賃金改定が派遣料金に反映される可能性——があります。実務では多くの派遣会社が労使協定方式を採用しており、派遣先均等均衡方式はまれです。自社の正社員賃金体系を派遣元に開示することへの抵抗から、選択されにくい状況です。
派遣先の食堂や更衣室を派遣社員も使えるようにする義務がありますか?
派遣法第40条第3項により、派遣先は派遣労働者に対し、食堂・休憩室・更衣室の利用機会を与える義務があります。これは労使協定方式・派遣先均等均衡方式に関係なく全派遣先が負う義務です。「派遣社員は使用禁止」と明示したり、実質的に利用できない運用を行ったりすると、労働局の指導対象となります。なお、福利厚生施設のうち「法令で定められた3種」以外(例:社宅・保養所等)については、派遣元の裁量で決定されます。
無許可の派遣会社から派遣労働者を受け入れてしまった場合、どうなりますか?
労働契約申込みみなし制度(派遣法第40条の6)により、受入れの時点で派遣先が派遣労働者に対して直接雇用の申込みをしたものとみなされます。派遣労働者が1年以内に承諾の意思表示をすれば、派遣先での直接雇用が成立します。さらに、派遣先自身が派遣法違反(禁止業務派遣)として処罰される可能性もあります。派遣元との契約前に、厚生労働省の許可事業者であるかを必ず確認してください。許可番号は厚生労働省の「人材サービス総合サイト」で検索できます。
派遣労働者の勤怠管理(タイムカード打刻)は、派遣先と派遣元どちらの責任ですか?
労働時間の把握は派遣先の責任です(労働基準法第32条の労働時間規制は派遣先が負う)。タイムカード・勤怠システムでの打刻を派遣先で管理し、月次で派遣元に労働時間を報告する運用が一般的です。一方、給与計算・有給休暇の付与・社会保険手続きは派遣元の責任です。派遣先は、残業指示時に36協定(派遣元の36協定)の範囲内であるかを事前確認する必要もあります。
派遣料金は消費税の仕入税額控除ができますか?
派遣料金は課税取引で、仕入税額控除の対象です。ただし、インボイス制度下では、派遣元事業者が適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)である必要があります。大手派遣会社は全てインボイス発行事業者ですが、中小派遣会社では未登録のケースがあります。未登録の派遣元からの派遣受入れは、消費税の仕入税額控除ができず、実質的なコスト増となります。契約前に適格請求書発行事業者番号(T-XXXXXXXXXXXXX)の提示を求めることが必須です。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 派遣には事業所単位3年・個人単位3年の期間制限、延長には過半数代表の意見聴取手続が必要
  • 同一労働同一賃金は労使協定方式(9割)と派遣先均等均衡方式(1割)の2方式
  • 派遣先は比較対象労働者の待遇情報を派遣元に提供する義務
  • 派遣先責任者・指揮命令者の選任、派遣先管理台帳(3年保存)の整備が必須
  • 派遣元責任者講習は3年ごと受講、派遣先は派遣元選定時に確認すべき
  • 違法派遣には労働契約申込みみなし制度による直接雇用責任のリスク
  • 派遣料金は消費税課税対象、インボイス制度下は適格請求書発行事業者の確認必須
派遣労働者の受入れは、柔軟な人材活用が可能な一方で、派遣法の遵守義務は多岐にわたります。期間制限の管理・同一労働同一賃金対応・派遣先責任者の選任・労働契約申込みみなし制度の予防——これらを組織的に運用する体制が必要です。鮎澤パートナーズでは、社会保険労務士・税理士・公認会計士・行政書士が連携し、派遣契約管理から税務処理、偽装請負リスク判定まで包括的にサポートします。

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