負担付贈与の税金|時価課税のルールと具体的な計算例

負担付贈与の税金|時価課税のルールと具体的な計算例
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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「住宅ローンが残っている不動産を子に贈与したい」「借金ごと財産を引き継がせたい」とお考えの方に向けて、負担付贈与で発生する税金の全体像・計算方法・通常の贈与との比較を税理士が具体的な数値で解説します。この記事を読めば、負担付贈与が自分のケースで有利かどうかを判断できます。

🏆 結論:負担付贈与は不動産では時価課税となり、通常の贈与より税負担が重くなる

負担付贈与では、不動産が「相続税評価額」ではなく「通常の取引価額(時価)」で評価されます。時価は相続税評価額の約1.2〜1.3倍のため、贈与税が高くなりがちです。さらに贈与者にも譲渡所得税がかかる可能性があります。不動産の負担付贈与は「贈与者・受贈者の双方に税負担が発生する」点を理解したうえで、通常の贈与や親族間売買と比較検討することが重要です。

負担付贈与とは?基本的なしくみ

負担付贈与とは、財産を贈与する際に、受贈者(もらう人)に一定の債務や義務を負担させることを条件とした贈与契約です(民法第553条)。通常の贈与が「あげる」だけなのに対し、負担付贈与は「あげる代わりに○○してね」という双務契約の性格を持ちます。

実務で最も多いのは、住宅ローンが残っている不動産を子に贈与し、ローンの残債を子が引き受けるケースです。ほかにも「土地をあげるから介護をお願いする」「アパートをあげるから敷金返還義務を引き受けてもらう」なども負担付贈与に該当します。

項目 通常の贈与 負担付贈与
契約の性格片務契約(あげるだけ)双務契約(あげる+負担)
不動産の評価方法相続税評価額(時価の約8割)時価(通常の取引価額)
上場株式の評価4つの終値の最低額課税時期の取引価額
その他の財産相続税評価額相続税評価額(同じ)
贈与者への課税なし譲渡所得税が発生する場合あり
契約の解除履行前の部分のみ撤回可能受贈者が負担を履行しない場合に解除可能
贈与者の瑕疵担保責任原則なし負担の限度で売主と同等の責任

⚠️ 注意:不動産の時価課税が最大の落とし穴

負担付贈与の最大の注意点は、不動産(土地・建物・借地権)の評価が「相続税評価額」ではなく「通常の取引価額(時価)」になることです。相続税評価額は時価の約7〜8割のため、同じ不動産でも負担付贈与のほうが評価額が2〜3割高くなり、結果として贈与税が大幅に増加します。この時価課税ルールは、国税庁の負担付贈与通達(平成元年3月29日付)によるものです。

負担付贈与で発生する税金の全体像

受贈者(もらう人)にかかる税金

受贈者には以下の3つの税金がかかる可能性があります。

税金 課税される場面 計算の基本
贈与税財産の時価が負担額を上回る場合(時価 − 負担額 − 110万円)× 税率 − 控除額
不動産取得税不動産を取得した場合固定資産税評価額 × 税率(原則4%、住宅用は軽減あり)
登録免許税所有権移転登記をする場合固定資産税評価額 × 2%(贈与による移転)

贈与者(あげる人)にかかる税金

通常の贈与では贈与者に税金はかかりませんが、負担付贈与では贈与者にも譲渡所得税が発生する場合があります。これは「負担額(=引き受けてもらった債務の額)で財産を売却した」とみなされるためです。

具体的には、負担額(=譲渡価額)が財産の取得費を上回る場合、その差額が譲渡所得となり、所得税・住民税が課税されます。所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得(税率20.315%)、5年以下なら短期譲渡所得(税率39.63%)が適用されます。

💡 実務のポイント:贈与者の譲渡所得を見落としやすい

負担付贈与の相談で最も多い見落としが「贈与者にも税金がかかる」点です。親が「住宅ローンを引き受けてもらうだけだから自分には税金はかからない」と思い込んでいるケースが少なくありません。負担額が取得費を上回れば、親にも確定申告と納税が必要です。特にバブル期に購入し現在の時価が取得費を下回る不動産では、ローン残高が取得費を超えているケースがあるため注意が必要です。

財産種類別の評価方法判定表

負担付贈与における課税価格は、贈与する財産の種類によって評価方法が異なります。以下の判定表で確認してください。

財産の種類 通常の贈与での評価 負担付贈与での評価 差異
土地(更地)路線価(時価の約80%)通常の取引価額(時価)約25%増
建物固定資産税評価額(時価の約50〜60%)通常の取引価額(時価)約70〜100%増
借地権路線価×借地権割合通常の取引価額(時価)約25%増
上場株式4つの終値のうち最低額課税時期の取引価額(当日終値)やや増加
現金・預貯金額面額面(同じ)差異なし
非上場株式財産評価基本通達1株当たり純資産価額(相続税評価額)ケースによる
その他の財産相続税評価額相続税評価額(同じ)差異なし

参考: 国税庁「No.4426 負担付贈与に対する課税」

💡 実務のポイント:建物の評価差が最も大きい

実務で見落としがちなのは、建物の評価差が土地以上に大きい点です。通常の贈与なら固定資産税評価額(時価の50〜60%程度)で済むところ、負担付贈与では時価での評価が求められます。築浅のマンションや都心の物件ほど、固定資産税評価額と時価の差が大きくなるため、負担付贈与を選択すると想定外の贈与税額になることがあります。

負担付贈与の贈与税の計算方法と具体例

贈与税の計算式

負担付贈与における贈与税は、以下の計算式で算出します。

📐 負担付贈与の贈与税の計算式

贈与税額 =(贈与財産の時価 − 負担額 − 基礎控除110万円)× 税率 − 控除額

  • 不動産の場合:「贈与財産の時価」は通常の取引価額(不動産鑑定評価額や実勢価格)
  • 現金の場合:「贈与財産の時価」は額面どおり
  • 親→子(18歳以上)の贈与:特例税率を適用

計算例①:住宅ローン残債付き不動産の贈与(典型ケース)

📐 シミュレーション前提条件

  • 父(65歳)→ 子(30歳)への贈与
  • 自宅マンション:時価4,000万円、相続税評価額2,800万円(路線価+固定資産税評価額)
  • 住宅ローン残債:1,500万円(子が引き受け)
  • 父の取得費:3,000万円(15年前に購入)

【受贈者(子)の贈与税】

(4,000万円 − 1,500万円 − 110万円)× 45% − 265万円 = 810.5万円

【贈与者(父)の譲渡所得税】

負担額1,500万円で譲渡したとみなされるため、取得費3,000万円と比較します。1,500万円 < 3,000万円なので、譲渡損失が発生し、贈与者に譲渡所得税はかかりません

なお、この場合の受贈者の取得費は、贈与者の取得費3,000万円を引き継ぎます(所得税法第60条第1項:負担額が時価の1/2未満かつ譲渡損失の場合の取扱い)。

計算例②:同じ不動産を通常の贈与にした場合との比較

仮に住宅ローンを完済してから通常の贈与をした場合、不動産は相続税評価額2,800万円で評価されます。

(2,800万円 − 110万円)× 45% − 265万円 = 845.5万円

一見すると通常の贈与のほうが高く見えますが、負担付贈与では1,500万円のローン残債を子が引き受けているため、子の実質的な負担総額は以下のとおりです。

項目 負担付贈与 通常の贈与
贈与税810.5万円845.5万円
ローン引受額1,500万円0円
不動産取得税(概算)約56万円約56万円
登録免許税約56万円約56万円
子の実質負担総額2,422.5万円957.5万円

通常の贈与のほうが子の実質負担が軽いのは、ローン完済後に贈与するケースです。ただし、ローンを完済する資金がない場合は負担付贈与を選択せざるを得ません。

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贈与者にかかる譲渡所得税の計算方法

譲渡所得の基本的な計算式

贈与者は「負担額で財産を売却した」とみなされるため、以下の計算式で譲渡所得を算出します。

📐 贈与者の譲渡所得の計算式

譲渡所得 = 負担額(=譲渡価額)− 取得費 − 譲渡費用

  • 長期譲渡所得(所有期間5年超):税率20.315%(所得税15.315%+住民税5%)
  • 短期譲渡所得(所有期間5年以下):税率39.63%(所得税30.63%+住民税9%)

計算例③:贈与者に譲渡所得が発生するケース

📐 シミュレーション前提条件

  • 父(70歳)→ 子(35歳)への贈与
  • 賃貸マンション:時価5,000万円
  • ローン残債:3,000万円(子が引き受け)
  • 父の取得費:2,000万円(20年前に購入、長期所有)

【贈与者(父)の譲渡所得税】

譲渡所得 = 3,000万円(負担額)− 2,000万円(取得費)= 1,000万円

所得税・住民税 = 1,000万円 × 20.315% = 約203万円

【受贈者(子)の贈与税】

(5,000万円 − 3,000万円 − 110万円)× 45% − 265万円 = 585.5万円

親子合計の税負担:約788.5万円(贈与税585.5万円 + 譲渡所得税203万円)

⚠️ 注意:贈与者の確定申告を忘れない

贈与者に譲渡所得が発生した場合、贈与があった年の翌年2月16日〜3月15日に確定申告が必要です。受贈者の贈与税申告(翌年2月1日〜3月15日)と合わせて、親子ともに確定申告が必要になるケースがある点に注意してください。

通常の贈与 vs 負担付贈与 vs 親族間売買の3方法比較

不動産を親から子に移転する方法は、大きく分けて「通常の贈与」「負担付贈与」「親族間売買」の3つがあります。贈与税と贈与者の負担について、「贈与税の基本的なしくみ」も参考にしてください。

📐 シミュレーション前提条件(共通)

  • 不動産の時価:5,000万円、相続税評価額:3,500万円
  • ローン残債:2,000万円
  • 父の取得費:3,000万円(長期所有)
比較項目 通常の贈与 負担付贈与 親族間売買
不動産の評価額3,500万円5,000万円5,000万円(売買価格)
受贈者/買主の主な税金贈与税 約1,195.5万円贈与税 約1,035.5万円贈与税なし
贈与者/売主の税金なし譲渡損失のため0円譲渡所得税 約406万円
ローンの取扱い別途完済が必要子が引き受け売買代金で返済
登録免許税率2%2%2%(軽減措置あり)
住宅ローン控除対象外対象外条件付きで適用可能
金融機関の承諾不要(完済後)必要(債務者変更)新規ローン組替

※上記の贈与税は暦年課税・特例税率で計算。通常の贈与は相続税評価額3,500万円から基礎控除110万円を差し引いて計算((3,500万−110万)×50%−250万=1,445万円。ローン完済分を考慮する必要あり)。実際のケースでは相続時精算課税制度の活用も検討すべきです。

住宅ローン控除が使えない点は、負担付贈与の見落としがちなデメリットです。贈与は「住宅の取得」に該当しないため、ローンを引き受けて返済しても住宅ローン控除は適用されません。

負担付贈与を使うべきケース・使うべきでないケースの判定表

負担付贈与は万能な手法ではありません。以下の判定表で自分のケースに合うかどうかを確認してください。

✅ 使うべきケース
ケース 理由
①ローン残債が時価に近い不動産を移転したい差額が小さいため贈与税が低額に抑えられる
②介護を条件に不動産を贈与したい介護の経済的価値を負担額として評価でき、贈与税を軽減できる
③現金・預貯金の負担付贈与現金は時価=額面のため、通常の贈与と評価が同じで不利にならない
④義務の履行を確実にしたい受贈者が義務を果たさない場合に契約解除できるメリットがある
❌ 使うべきでないケース
ケース 理由
①ローン残債が少ない不動産時価課税で評価が上がる分だけ不利。通常の贈与のほうが有利
②相続で取得予定の不動産相続なら相続税評価額で評価でき、小規模宅地等の特例(最大80%減額)も使える
③取得費を大きく上回るローン残債がある場合贈与者に高額な譲渡所得税が発生し、親子合計の税負担が膨らむ
④住宅ローン控除を活用したい場合負担付贈与は「取得」に該当しないためローン控除が使えない
⑤金融機関がローンの債務者変更を認めない場合実務上、金融機関の承諾が得られないケースが多い

💡 実務のポイント:金融機関の承諾がハードル

住宅ローン残債付きの不動産を負担付贈与する場合、債務者の変更について金融機関の承諾が必要です。しかし実務上、子に十分な返済能力がなければ金融機関が承諾しないケースが多く、「計画どおりに負担付贈与ができない」という相談を年に数件受けます。金融機関への事前相談を贈与前に必ず行ってください。

賃貸アパートの贈与と敷金の落とし穴

賃貸用不動産を贈与する場合、入居者から預かっている敷金(保証金)の返還義務は受贈者に移転します。この敷金返還義務が「負担」に該当するため、原則として負担付贈与になってしまいます。

つまり、「ただ賃貸アパートをあげただけ」のつもりでも、敷金が残っていれば自動的に負担付贈与となり、不動産が時価で評価されてしまうのです。

敷金の同時贈与で回避する方法

ただし、国税庁の質疑応答事例では、敷金返還債務に相当する現金を同時に贈与した場合、「一般的に当該敷金返還債務を承継させる意図が贈与者・受贈者間においてなく、実質的な負担はない」として、負担付贈与に該当しないとされています。

パターン 負担付贈与? 不動産の評価
アパートだけ贈与(敷金引継ぎ)該当する時価(高い)
アパート+敷金相当の現金も一緒に贈与該当しない相続税評価額(低い)

🧮 シミュレーション:敷金200万円の場合の差額

時価5,000万円・敷金200万円のアパートの場合、敷金を贈与しない(負担付贈与扱い)と贈与税は約1,939万円。敷金相当額を一緒に贈与すれば(通常の贈与扱い)贈与税は約945万円。その差額は約994万円にもなります。200万円の現金を追加で渡すことで約1,000万円の贈与税を節約できるため、賃貸用不動産の贈与では敷金の同時贈与が鉄則です。

相続時精算課税制度の活用

負担付贈与でも相続時精算課税制度を選択できます。60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与であれば、累計2,500万円の特別控除が使えるため、贈与税を大幅に抑えられる可能性があります。

相続時精算課税制度を使った場合の計算例を示します。

📐 シミュレーション前提条件

  • 時価4,000万円のマンション、ローン残債1,500万円
  • 過去に相続時精算課税制度の利用なし

暦年課税の場合:(4,000万円 − 1,500万円 − 110万円)× 45% − 265万円 = 810.5万円

相続時精算課税の場合:(4,000万円 − 1,500万円 − 2,500万円)× 20% = 0円(2,500万円の特別控除内に収まる)

ただし相続時精算課税を選択すると、贈与時に課税されなかった金額は相続時に相続財産に加算されます。相続税の基礎控除(3,600万円+600万円×法定相続人の数)の範囲内であれば、贈与税も相続税もゼロになる可能性があります。

相続時精算課税制度の詳細は「相続時精算課税制度の基本的なしくみ」で解説しています。

⚠️ 注意:相続時精算課税制度は一度選択すると撤回できない

相続時精算課税制度は、一度選択すると同じ贈与者からの贈与について暦年課税に戻れません。将来の相続税の試算を行ったうえで選択することが重要です。相続税が発生する可能性が高い方(遺産総額が基礎控除を大きく超える方)は、暦年贈与で長期にわたって少しずつ移転するほうが有利なケースもあります。

負担付贈与の手続きの流れ【5ステップ】

【ステップ1】不動産の時価を把握する

負担付贈与では不動産の「通常の取引価額」が必要です。不動産会社に査定を依頼するか、不動産鑑定士に鑑定評価を依頼します。高額な不動産の場合は鑑定評価書を取得しておくと、税務署への説明資料になります。

【ステップ2】金融機関に債務者変更の相談をする

住宅ローン付きの不動産の場合、ローンの債務者変更について金融機関の承諾が必要です。子の返済能力(年収・勤続年数・他の借入状況)を審査されるため、事前相談を必ず行いましょう。

【ステップ3】負担付贈与契約書を作成する

口頭でも契約は成立しますが、実務上は必ず書面を作成します。贈与財産の特定、負担の内容・金額、履行期限、不履行時の解除条件などを明記します。公正証書にしておくとより安全です。

【ステップ4】所有権移転登記を行う

法務局に所有権移転登記を申請します。登記原因は「贈与」です。登録免許税は固定資産税評価額の2%、司法書士への報酬は5〜10万円程度が相場です。

【ステップ5】贈与税・譲渡所得税の申告を行う

受贈者は贈与があった年の翌年2月1日〜3月15日に贈与税の申告・納付を行います。贈与者に譲渡所得が発生した場合は、同年の2月16日〜3月15日に確定申告を行います。

相続税の計算方法の全体像は「相続税の計算方法」でも解説していますので、あわせてご覧ください。

負担付贈与の失敗事例4選

失敗事例①:時価課税を知らずに贈与税が想定の1.5倍に

父親が時価4,000万円(相続税評価額2,800万円)のマンションを、ローン残債1,000万円付きで子に贈与しました。「贈与税は評価額2,800万円から1,000万円を引いて計算すればいい」と考えていたところ、税務署から時価4,000万円での評価を求められ、贈与税が当初想定の約585万円から約810万円に増加しました。

失敗事例②:金融機関の承諾を得られず頓挫

住宅ローン残債2,000万円のマンションを子に負担付贈与しようとしましたが、子がフリーランスで安定収入の証明が難しく、金融機関がローンの債務者変更を承諾しませんでした。結局、子が別の金融機関で新規ローンを組み直す「親族間売買」に切り替えましたが、余計な手数料と時間がかかりました。

失敗事例③:贈与者の譲渡所得税を見落とし

父親が取得費1,500万円の土地(時価3,000万円)をローン残債2,000万円付きで子に贈与。父親は「贈与だから自分に税金はかからない」と思っていましたが、負担額2,000万円 − 取得費1,500万円 = 500万円の譲渡所得が発生し、約101万円の所得税・住民税を追徴されました。

失敗事例④:敷金を考慮せずアパートを贈与

時価5,000万円の賃貸アパート(敷金200万円)をローンなしで子に贈与。通常の贈与のつもりでしたが、敷金返還義務の承継が「負担」に該当し、負担付贈与として時価で評価されました。敷金200万円相当の現金を同時に贈与していれば通常の贈与として相続税評価額で計算でき、約994万円の節税ができていたケースです。

💡 実務のポイント:事前シミュレーションが必須

負担付贈与は、受贈者の贈与税、贈与者の譲渡所得税、不動産取得税、登録免許税と複数の税金が絡む複雑な取引です。「やってみたら思ったより税金が高かった」という失敗を防ぐためには、事前に税理士に相談し、通常の贈与・親族間売買・相続を含めた総合的なシミュレーションを行うことをおすすめします。

負担付贈与と「みなし贈与」の関係

負担付贈与は、みなし贈与(相続税法第7条)と密接に関連します。負担付贈与で受贈者が引き受ける負担額が財産の時価より著しく低い場合、その差額がみなし贈与として贈与税の課税対象になるからです。

また、負担付贈与の負担額が第三者の利益になる場合(例:子に家を贈与し、親の代わりに第三者への借金を返済させる場合)、その第三者も負担額相当の贈与を受けたとみなされ、贈与税が課税されます(相続税法基本通達9-11、21の2-4)。

みなし贈与の全体像については「みなし贈与とは?低額譲渡・債務免除・保険金の課税関係」で詳しく解説しています。

よくある質問(FAQ)

負担付贈与で住宅ローン控除は使えますか?
使えません。住宅ローン控除は「住宅の取得」を要件としますが、贈与は取得に該当しないため適用されません。住宅ローン控除を利用したい場合は、親族間売買を検討してください。
負担付贈与の「負担」にはどのようなものが含まれますか?
住宅ローンの残債引受け、借金の肩代わり、介護の約束、ペットの飼育、土地の無償使用許可など、経済的価値のある義務であれば幅広く「負担」に該当します。ただし、介護のような非金銭的な負担は、経済的価値の算定が難しいため税務上の評価に注意が必要です。
負担付贈与の契約書は必須ですか?
法律上は口頭でも契約は成立しますが、実務上は必ず書面を作成してください。贈与の内容、負担の具体的内容・金額・履行期限・不履行時の解除条件などを明記します。特に不動産の場合は公正証書にしておくと安心です。税務署への説明資料にもなります。
親子間で負担付贈与をする場合、相続時精算課税制度は使えますか?
使えます。60歳以上の親から18歳以上の子への贈与であれば、負担付贈与でも相続時精算課税制度を選択できます。累計2,500万円の特別控除があるため、負担額を差し引いた贈与額が2,500万円以内であれば贈与税はゼロになります。ただし将来の相続時に精算されるため、相続税の試算を事前に行うことが重要です。
不動産の「時価」はどうやって調べればいいですか?
不動産会社に査定を依頼する方法が最も一般的です。高額な不動産の場合や税務リスクを減らしたい場合は、不動産鑑定士に鑑定評価を依頼します(費用は20〜50万円程度)。国土交通省の「土地総合情報システム」で近隣の取引事例を参考にする方法もありますが、あくまで参考値です。
負担付贈与をした後に受贈者が約束を守らない場合はどうなりますか?
民法第553条により、受贈者が負担を履行しない場合、贈与者は催告のうえ契約を解除できます。ただし、一度納付した贈与税や譲渡所得税は原則として還付されないため、契約解除によるリスクは大きいです。契約書に具体的な不履行条件と解除手続きを明記しておくことが重要です。
法人から個人への負担付贈与はどのように課税されますか?
法人から個人への贈与の場合、受贈者には贈与税ではなく所得税(一時所得または給与所得)が課税されます。法人側では、時価と負担額の差額が寄附金として処理されます。法人が絡む負担付贈与は個人間とは課税関係が大きく異なるため、必ず税理士に相談してください。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 負担付贈与では不動産が「時価」で評価され、通常の贈与より2〜3割高くなる
  • 贈与者にも譲渡所得税がかかる場合がある(負担額が取得費を超える場合)
  • 受贈者には贈与税+不動産取得税+登録免許税がかかる
  • 住宅ローン控除は負担付贈与では使えない
  • 賃貸用不動産は敷金相当額を同時に贈与すれば負担付贈与を回避できる
  • 相続時精算課税制度を活用すれば贈与税を大幅に軽減できる可能性がある
  • 通常の贈与・親族間売買・相続を含めた総合的なシミュレーションが必須

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