公認会計士 第47928号・税理士 第159175号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。
みなし贈与とは?低額譲渡・債務免除・保険金の課税関係
「親から安く土地を買ったら贈与税がかかるの?」「借金を肩代わりしてもらったらどうなる?」とお悩みの方に向けて、みなし贈与の全8類型・「著しく低い価額」の判定基準・具体的な計算例を完全ガイドします。この記事を読めば、意図せぬ贈与税の課税を避けるポイントがわかります。


みなし贈与とは?低額譲渡・債務免除・保険金の課税関係
「親から安く土地を買ったら贈与税がかかるの?」「借金を肩代わりしてもらったらどうなる?」とお悩みの方に向けて、みなし贈与の全8類型・「著しく低い価額」の判定基準・具体的な計算例を完全ガイドします。この記事を読めば、意図せぬ贈与税の課税を避けるポイントがわかります。
🏆 結論:「贈与のつもりがなくても」課税される。8類型を知って対策を
みなし贈与とは、法律上は贈与に該当しない取引であっても、実質的に贈与と同様の経済的利益の移転がある場合に、税務上「贈与があった」とみなして贈与税を課税する制度です。相続税法第5条〜第9条に規定されており、低額譲渡(第7条)・債務免除(第8条)・その他の利益享受(第9条)など全8類型があります。当事者に贈与の意思がなくても課税されるため、親族間の不動産売買・借金の肩代わり・保険契約の名義変更などを行う際は、事前に税理士に相談することが重要です。
みなし贈与とは、民法上の贈与契約には該当しないものの、実質的に贈与と同様の経済的利益の移転がある取引について、税務上「贈与があった」とみなして贈与税を課税する制度です。
| 比較項目 | 通常の贈与 | みなし贈与 |
|---|---|---|
| 成立要件 | 贈与者・受贈者の合意(民法549条) | 合意は不要。経済的利益の移転があれば成立 |
| 当事者の意思 | 「あげたい」「もらいたい」の意思が必要 | 贈与の意思がなくても課税される |
| 根拠条文 | 相続税法第21条の2 | 相続税法第5条〜第9条 |
| 課税対象 | 贈与された財産の価額 | 時価と対価の差額(経済的利益の額) |
| 典型例 | 現金・不動産の無償譲渡 | 低額譲渡・債務免除・保険金の受取り |
💡 実務のポイント:「知らなかった」では済まされない
みなし贈与の最大の特徴は「当事者に贈与の意思がなくても課税される」点です。親子間で「少し安くしてあげよう」と善意で行った不動産売買や、「借金は返さなくていい」と言った債務免除が、数百万円の贈与税を生むことがあります。税務調査で指摘されてから慌てるケースが後を絶ちません。
贈与税の基本的な仕組みについては「贈与税の基礎知識と仕組み」で解説しています。
| 条文 | 類型 | 具体例 | 課税される金額 |
|---|---|---|---|
| 第5条 | 生命保険金等 | 保険料を負担していない人が満期保険金を受け取った | 受け取った保険金の額 |
| 第6条 | 定期金(年金) | 保険料を負担していない人が年金受給権を取得した | 年金受給権の評価額 |
| 第7条 | 低額譲渡 | 親の土地を時価より著しく低い価額で購入した | 時価と対価の差額 |
| 第8条 | 債務免除等 | 借金を帳消しにしてもらった・肩代わりしてもらった | 免除された債務の額 |
| 第9条 | その他の利益享受 | 無利子貸付・名義変更・同族会社の増資等 | 受けた利益の価額 |
第9条は「バスケット・クローズ(包括条項)」としての性格を持ち、第5条〜第8条に該当しないあらゆる経済的利益の移転を捕捉する規定です。無利子貸付・共働き夫婦の住宅購入における持分の不一致・同族会社への低額譲渡による株価上昇・共有持分の放棄・離婚時の過大な財産分与なども第9条の射程に含まれます。
相続税法第7条は、著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合に、時価と対価の差額をみなし贈与として課税する規定です。問題は「著しく低い価額」の具体的な基準が法律上明示されていない点です。
| 財産の種類 | 「時価」の意味 | 判定の目安 |
|---|---|---|
| 土地・借地権 | 通常の取引価額(市場価格) | 個別に判定。路線価(時価の約80%)での売買は裁判例で認容された例あり |
| 家屋・構築物 | 通常の取引価額 | 固定資産税評価額は時価の約70%。これ以下での売買はリスクが高い |
| 上記以外(株式等) | 相続税評価額 | 相続税評価額を下回る対価は「著しく低い」と判定されやすい |
⚠️ 所得税の「2分の1基準」とは異なる
所得税法第59条では、法人への低額譲渡について「時価の2分の1未満」を基準としていますが、相続税法第7条にはこのような明確な数値基準がありません。個人間の取引では、対価が時価の80%程度であっても「著しく低い」と判定される可能性があり、取引の事情を総合的に考慮して社会通念に従い判断されます。
父が所有する土地(通常取引価額5,000万円・路線価評価額4,000万円)を子に2,000万円で売却した場合:
みなし贈与額=通常取引価額5,000万円 − 対価2,000万円 = 3,000万円
贈与税額=(3,000万円 − 110万円)× 45% − 265万円 = 約1,035万円(特例税率適用)
※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。
借金を帳消しにしてもらったり、他人に肩代わりしてもらった場合は、免除された債務の額がみなし贈与として課税されます。
| パターン | 具体例 | みなし贈与額 |
|---|---|---|
| 債務免除 | 親が子に貸した500万円を「返さなくていい」とした | 500万円 |
| 債務の肩代わり | 子のカードローン200万円を親が代わりに返済した | 200万円 |
| 債務引受 | 子の住宅ローン残債を親が引き受けた | 引き受けた残債額 |
| 連帯保証の求償権放棄 | 連帯保証人が代位弁済後、求償権を放棄した | 放棄した求償権の額 |
🧮 適用除外:債務者が資力喪失している場合
債務者がすでに資力を喪失し、債務の弁済が困難である場合で、その弁済に充てるために扶養義務者から債務免除等を受けたときは、弁済困難な部分の金額についてはみなし贈与に該当しません(相続税法第8条ただし書)。ただし、単に「お金がない」だけでは不十分で、客観的に債務超過の状態にあることが必要です。
AYUSAWA PARTNERS
みなし贈与のご相談は鮎澤パートナーズへ
公認会計士・税理士の代表が、記帳代行から決算・税務申告・年末調整まで一括で直接対応します。初回相談無料。
鮎澤パートナーズに相談する保険料を負担していない人が満期保険金や解約返戻金を受け取った場合、保険料負担者から受取人への「みなし贈与」として贈与税が課税されます。
| 契約者(保険料負担者) | 被保険者 | 受取人 | 課税される税金 |
|---|---|---|---|
| 父 | 父 | 子 | 相続税(みなし相続財産) |
| 父 | 母 | 子 | 贈与税(みなし贈与) |
| 父 | 父 | 父(満期) | 所得税(一時所得) |
💡 実務のポイント:契約者変更も要注意
保険料の払い込みが完了した後に契約者を子に変更した場合、変更時点ではみなし贈与は発生しません。しかし、その後子が満期保険金や解約返戻金を受け取った時点で、父が負担した保険料に対応する部分がみなし贈与として課税されます。契約者変更のタイミングと受取時の課税関係を正確に把握しておく必要があります。
共働き夫婦で住宅を購入する際、資金の出資割合と不動産の持分割合が一致しない場合、差額がみなし贈与になります。
たとえば、5,000万円の住宅を夫が4,000万円・妻が1,000万円を出資して購入したにもかかわらず、持分を夫1/2・妻1/2としている場合、妻は1,500万円分(2,500万円 − 1,000万円)を夫から贈与されたとみなされます。
親が子に無利子で金銭を貸し付けた場合、本来支払うべき利息相当額がみなし贈与になる可能性があります(相続税法基本通達9-10)。ただし、貸付金額が少額である場合や、利息相当額が贈与税の基礎控除(110万円)以下である場合は、実務上課税されないことが多いです。
個人が同族会社に時価より低い価額で財産を譲渡した場合、その会社の株価が上昇します。既存の株主が株価上昇分の経済的利益を受けたとして、第9条によるみなし贈与が問題になります。
離婚による財産分与は原則として贈与税の課税対象になりません。しかし、財産分与の額が社会通念上相当と認められる範囲を超える場合や、贈与税・相続税の回避を目的とした離婚と認められる場合は、みなし贈与として課税されます(相続税法基本通達9-8)。
| 取引の種類 | 回避策 | チェック |
|---|---|---|
| 親族間の不動産売買 | 不動産鑑定士の鑑定評価を取得し、時価での売買を証明する | □ |
| 親族間の金銭貸借 | 金銭消費貸借契約書を作成し、適正な利率を設定。定期的に返済を記録 | □ |
| 借金の肩代わり | 肩代わりではなく「貸付」として契約書を作成し、返済計画を立てる | □ |
| 保険契約 | 契約者(保険料負担者)と受取人を一致させる、または課税関係を理解した上で契約 | □ |
| 共働き住宅購入 | 出資割合と持分割合を一致させる | □ |
| 同族会社との取引 | 時価で取引し、株価への影響を事前にシミュレーション | □ |
負担付贈与の課税関係について詳しくは「負担付贈与の税金」をご覧ください。
親族間で不動産を売買する場合、最も問題になるのが売買価格の設定です。安すぎればみなし贈与、高すぎれば売主側に過大な譲渡所得税が発生します。
| 価格水準 | みなし贈与のリスク | 実務上の評価 |
|---|---|---|
| 市場価格(時価)の100% | なし | 最も安全だが、親族間で市場価格の取引は珍しい |
| 路線価(時価の約80%) | 低い | 東京地裁H19.8.23で路線価での売買が認容された裁判例あり |
| 時価の60〜70% | 中程度 | 取引の事情次第。税理士に事前相談が必須 |
| 時価の50%未満 | 高い | 「著しく低い」と判定される可能性が極めて高い |
💡 実務のポイント:不動産鑑定評価が最大の武器
親族間の不動産売買でみなし贈与の指摘を受けた場合、売買価格が時価に基づいていることを立証する責任は納税者側にあります。不動産鑑定士による鑑定評価書を取得しておけば、税務調査で有力な証拠になります。鑑定費用は数十万円かかりますが、みなし贈与で数百万円の贈与税を課税されるリスクと比べれば安い投資です。
相続税の計算方法について詳しくは「相続税の計算方法」、小規模宅地等の特例については「小規模宅地等の特例の概要」をご覧ください。
父が時価5,000万円の土地を子に1,500万円で売却した。父は「家族だから安くしてあげた」と思っていたが、税務署は時価との差額3,500万円をみなし贈与と認定。子に約1,330万円の贈与税が課された。
教訓:親族間の不動産売買は「時価」での取引が原則です。安くする場合は不動産鑑定評価を取得し、「著しく低い価額」に該当しないことを確認しましょう。
子名義の住宅ローン(毎月返済額10万円)を親が5年間にわたって返済していた。合計600万円が債務の肩代わりとして各年120万円のみなし贈与に該当。基礎控除110万円を超える10万円分に毎年贈与税が課された。
教訓:親が子の住宅ローンを返済する場合は、親から子への「貸付」として金銭消費貸借契約書を作成し、返済記録を残しましょう。
4,000万円の住宅を夫3,000万円・妻1,000万円の出資で購入。持分を「とりあえず半々」にしたところ、妻は本来の持分(1/4)より多い持分(1/2)を取得したことになり、差額1,000万円がみなし贈与と認定された。
教訓:住宅購入時の持分割合は、必ず出資割合と一致させましょう。
父が保険料を負担し、母を被保険者、子を受取人とする生命保険に加入。母の死亡により子が1,000万円の死亡保険金を受け取ったが、契約者(保険料負担者)が父であるため、父から子への「みなし贈与」として贈与税が課税された。相続税なら500万円×法定相続人の数の非課税枠が使えたが、贈与税には非課税枠がない。
教訓:死亡保険金を相続税の非課税枠で受け取りたい場合は、契約者=被保険者にする必要があります。保険契約の形態は契約前に税理士に確認しましょう。
📋 この記事のポイント
AYUSAWA PARTNERS
相続税・贈与税のご相談は鮎澤パートナーズへ
公認会計士・税理士の代表が、記帳代行から決算・税務申告・年末調整まで一括で直接対応します。初回相談無料。
鮎澤パートナーズに相談する