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「親の土地にマイホームを建てたいが贈与税がかかるのか」「地代を払ったほうがいいのか」とお悩みの方に向けて、親子間の土地利用5パターン別の課税関係と相続時の評価方法を税理士が解説します。この記事を読めば、自分のケースで最も税負担が軽い方法を判断できます。


「親の土地にマイホームを建てたいが贈与税がかかるのか」「地代を払ったほうがいいのか」とお悩みの方に向けて、親子間の土地利用5パターン別の課税関係と相続時の評価方法を税理士が解説します。この記事を読めば、自分のケースで最も税負担が軽い方法を判断できます。
🏆 結論:無償で借りる「使用貸借」が最もシンプルで贈与税もかからない
親の土地に子が家を建てる場合、地代も権利金も支払わない「使用貸借」であれば贈与税はかかりません。使用貸借による土地使用権の価額はゼロと扱われるためです(国税庁TA4552)。一方、中途半端に「地代だけ」支払うと、権利金相当額が贈与とみなされて贈与税がかかる落とし穴があります。親の土地を使う場合は「①無償で借りる(使用貸借)」か「②地代+権利金の両方を支払う(賃貸借)」のどちらかに整理するのが鉄則です。
親の土地に子が家を建てる場合、土地の使い方は大きく5パターンに分かれます。どのパターンを選ぶかによって、贈与税・所得税・相続税の課税関係が異なります。
| パターン | 子の贈与税 | 親の所得税 | 相続税 | 土地の名義 |
|---|---|---|---|---|
| ①無償で借りる(使用貸借) | なし | なし | 自用地評価 | 親のまま |
| ②地代だけ支払う | あり(権利金相当額) | あり | 貸宅地評価 | 親のまま |
| ③地代+権利金を支払う | なし | あり | 貸宅地評価 | 親のまま |
| ④土地を無償で贈与 | あり(土地の評価額全額) | なし | 対象外(既に移転済み) | 子に変更 |
| ⑤土地を低額で売買 | あり(差額がみなし贈与) | あり(譲渡所得) | 対象外(既に移転済み) | 子に変更 |
実務で最も多いのはパターン①の「使用貸借」です。親の土地を無償で借りて子が家を建てるこの方法は、贈与税も所得税もかからず、最もシンプルです。
💡 実務のポイント:固定資産税程度の支払いは使用貸借のまま
「親に何も払わないのは申し訳ない」と、子が土地の固定資産税相当額を親に支払うケースがあります。この場合は「使用貸借」のままと扱われ、贈与税は課税されません。固定資産税程度の金額は地代とはみなされないためです(昭和48年11月1日通達)。
参考: 国税庁「No.4552 親の土地に子供が家を建てたとき」
使用貸借とは、地代も権利金も支払わずに他人の土地を使わせてもらうことです(民法第593条)。親子間では最も一般的な土地の利用形態で、友人から本を無料で借りるのと同じ法的な位置づけです。
通常、第三者から土地を借りて家を建てる場合は、借地権(土地を使う権利)が発生し、権利金を支払います。権利金を支払わなければ、その分が「贈与」とみなされてもおかしくありません。
しかし、個人間の使用貸借では「使用借権の価額はゼロ」として扱われます。ゼロ円のものをもらっても贈与税は発生しません。これが、親の土地を無償で借りても贈与税がかからない理由です。
使用貸借で親の土地を使っていた場合、親が亡くなって相続が発生したとき、その土地は「自用地」(更地と同じ状態)として評価されます。第三者に賃貸している「貸宅地」と異なり、借地権割合を差し引くことはできません。
相続税の計算方法の詳細は「相続税の計算方法」で解説しています。
| 土地の利用形態 | 相続税の評価方法 | 具体例(路線価1億円・借地権割合70%の場合) |
|---|---|---|
| 使用貸借(無償) | 自用地評価(100%) | 1億円 |
| 賃貸借(地代+権利金) | 貸宅地評価=自用地×(1−借地権割合) | 3,000万円 |
| 小規模宅地等の特例(同居) | 自用地×(1−80%) | 2,000万円 |
使用貸借の場合、相続税評価額は自用地と同じ1億円で高くなりますが、子が親と同居して小規模宅地等の特例を適用できれば、最大80%減額(2,000万円)になります。
⚠️ 注意:使用貸借の弱点は相続税評価額が下がらないこと
使用貸借では贈与税がかからない代わりに、相続時に土地が「自用地」として100%評価される点がデメリットです。小規模宅地等の特例が使えない場合(別居で要件を満たさない場合など)は、賃貸借にして借地権割合分を下げたほうが有利になるケースもあります。相続税全体のシミュレーションを行ったうえで判断してください。
「タダで借りるのは気が引けるから地代だけ払おう」と考える方がいますが、これが最も危険なパターンです。
権利金の支払い慣行がある地域(東京都内のほとんどのエリアが該当)で、地代だけを支払い権利金を支払わない場合、税法上は「権利金相当額の贈与を受けた」とみなされます。つまり、借地権の設定の対価を親から贈与されたことになり、その権利金相当額に贈与税がかかるのです。
🧮 シミュレーション:地代だけ支払った場合の贈与税
路線価5,000万円の土地、借地権割合70%の地域で地代だけを支払った場合、権利金相当額は5,000万円×70%=3,500万円。この3,500万円が贈与とみなされ、贈与税は(3,500万円−110万円)×50%−250万円=1,445万円。無償で使用貸借にしていれば贈与税はゼロだったにもかかわらず、善意で地代を払ったことで1,445万円の贈与税が発生するという逆説的な結果になります。
ただし、子が親に支払う金額が「固定資産税程度」であれば、地代を支払ったとはみなされず、使用貸借のまま扱われます。固定資産税額の確認は、毎年4〜5月に届く固定資産税の課税明細書で確認できます。
| 支払う金額 | 税法上の扱い | 贈与税 |
|---|---|---|
| ゼロ(無償) | 使用貸借 | なし |
| 固定資産税程度 | 使用貸借(とみなす) | なし |
| 固定資産税を超える地代のみ | 賃貸借(権利金なし) | 権利金相当額に課税 |
| 地代+権利金の両方 | 賃貸借(正式) | なし |
子が親に地代と権利金の両方を支払って土地を借りる場合、正式な賃貸借契約となり、贈与税はかかりません。ただし、親には地代と権利金が所得として課税されます。
賃貸借のメリットは、相続時に土地が「貸宅地」として評価され、借地権割合分だけ相続税評価額が下がる点です。借地権割合が70%の地域であれば、土地の評価額が30%(=1−70%)まで下がります。
ただし実務上、親子間で地代と権利金の両方を支払うケースは少数です。権利金は数百万円〜数千万円になることが多く、子にとって大きな負担になるためです。
親から土地を無償で贈与されると、土地の相続税評価額に対して贈与税がかかります。たとえば路線価5,000万円の土地を贈与された場合、贈与税は(5,000万円−110万円)×55%−640万円=2,049.5万円です。非常に高額になるため、一括での贈与はおすすめしません。
贈与税の基本的なしくみについては「贈与税の基本的なしくみ」をご覧ください。
親から時価より著しく安い金額で土地を購入した場合、時価と購入金額の差額が「みなし贈与」として贈与税の課税対象になります。たとえば時価5,000万円の土地を1,000万円で購入した場合、差額4,000万円がみなし贈与となります。みなし贈与の詳細は「みなし贈与とは?」で解説しています。
親が第三者(地主)から借りている借地の上に子が家を建てるケースも、実務上は一定数あります。このケースは国税庁のタックスアンサーNo.4555で扱われています。
親が地主との借地契約を維持したまま、子が親の借地上に家を建てる場合、親子間の土地利用は使用貸借となります。この場合、子に贈与税はかかりません。
ただし、親が地主との間で借地権を解消し、子が新たに地主と直接借地契約を結ぶ場合は、親の借地権が子に移転したとみなされ、借地権相当額に贈与税がかかる可能性があります。地主の承諾が必要になるため、事前に地主と十分に協議してください。
親が地主から土地を借りている場合に、子がその底地(土地の所有権)を地主から購入するケースがあります(国税庁TA4560)。
この場合、子は底地の価額(=土地全体の価額−借地権の価額)で購入するのが通常ですが、親の借地権部分を子が間接的に取得することになるため、親の借地権が子に移転したとみなされ贈与税が課税される可能性があります。
💡 実務のポイント:底地購入は税理士に必ず相談
底地の購入は、借地権と底地の関係が複雑で、贈与税・譲渡所得税の両面でリスクがあります。底地を購入する前に、税理士に相談して課税関係を確認することを強くおすすめします。特に、親の借地権が存続しているのか消滅するのかによって課税関係が大きく変わります。
親の土地に子が家を建てる場合、住宅ローンを組む際に土地と建物の両方に抵当権を設定する必要があります。つまり、親名義の土地にも担保設定が求められます。
| チェック項目 | 確認内容 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|
| 親の土地に既存の抵当権がないか | 登記簿謄本で確認 | 既存の借入を完済するか、別の担保を提供 |
| 親が連帯保証人・物上保証人になれるか | 親の年齢・健康状態を確認 | 金融機関に事前相談 |
| 土地の一部だけに建てる場合の分筆 | 建築予定地の範囲を確定 | 土地家屋調査士に分筆を依頼 |
| 兄弟姉妹の了解は得ているか | 将来の相続トラブルを防止 | 家族会議・遺言書の作成を検討 |
| 住宅取得等資金の非課税制度は使えるか | 土地の現物贈与は対象外 | 建物資金への贈与に活用を限定 |
⚠️ 注意:住宅取得等資金の非課税は「土地の現物」には使えない
住宅取得等資金の贈与の非課税制度(最大1,000万円)は、住宅の新築・取得・増改築のための「金銭」の贈与が対象です。土地そのものを贈与された場合はこの制度の対象になりません。親から土地をもらうのではなく、建物の建築資金を贈与してもらう形にすれば、非課税制度を活用できます。
親の土地を使用貸借で借りて家を建てた場合、相続時に土地が自用地として100%評価されるデメリットがあります。しかし、小規模宅地等の特例の「特定居住用宅地等」の要件を満たせば、330㎡まで80%減額が可能です。
親と子が同居している場合(二世帯住宅を含む)、子がその土地を相続し、相続税の申告期限まで居住を続ければ、小規模宅地等の特例の適用対象になります。
特例の詳細は「小規模宅地等の特例の概要」で解説しています。
💡 実務のポイント:二世帯住宅なら同居要件を満たしやすい
親の土地に二世帯住宅を建てれば、親子同居の形をとれるため、小規模宅地等の特例の適用を受けやすくなります。区分登記(親世帯と子世帯を別々の登記にする)ではなく、一棟の建物として登記するほうが特例の適用上は有利です。ただし平成25年度税制改正以降、構造上独立した二世帯住宅でも内部で行き来できなくても特例が適用可能になりましたので、完全分離型でも問題ありません。
親の土地(路線価5,000万円、借地権割合70%)に家を建てた子が、「無償では申し訳ない」と月10万円の地代を支払い始めました。税務上は賃貸借とみなされ、権利金を支払っていないため権利金相当額3,500万円が贈与とみなされ、約1,445万円の贈与税が課税されました。ゼロか固定資産税程度の支払いにしていれば使用貸借のままで贈与税はゼロだったケースです。
親から土地(路線価3,000万円)を贈与され、住宅取得等資金の非課税制度で贈与税をゼロにしようとしたところ、この制度は「金銭の贈与」のみが対象であり、「土地の現物の贈与」は対象外と判明。結果として約1,035.5万円の贈与税が発生しました。土地は使用貸借のまま借り、建物資金として現金を贈与してもらうべきだったケースです。
長男が親の土地に家を建てましたが、親の遺言書が作成されていませんでした。親の死後、次男が「土地の半分は自分の相続分だ」と主張し、遺産分割で紛争になりました。長男は土地を手放すか、次男に代償金を支払うかの選択を迫られました。親の存命中に遺言書を作成しておくべきだったケースです。
親の土地に二世帯住宅を建てましたが、建物を1階(親名義)と2階(子名義)で区分登記にしてしまいました。平成25年度改正以前は区分登記でも特例が使えましたが、改正後は区分登記の場合、子の居住部分に対応する土地には特例が適用されません。一棟で登記していれば全体に80%減額が使えたケースです。
📋 この記事のポイント