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「住宅購入の資金を親から借りたいが贈与税がかからないか心配」「口約束で借りたお金は贈与とみなされるのか」とお悩みの方に向けて、親子間の金銭貸借が贈与とみなされないための7つの対策と契約書の書き方を税理士が解説します。この記事を読めば、税務署に贈与と指摘されない借入のしくみを作れます。


「住宅購入の資金を親から借りたいが贈与税がかからないか心配」「口約束で借りたお金は贈与とみなされるのか」とお悩みの方に向けて、親子間の金銭貸借が贈与とみなされないための7つの対策と契約書の書き方を税理士が解説します。この記事を読めば、税務署に贈与と指摘されない借入のしくみを作れます。
🏆 結論:契約書の作成+銀行口座での返済実績が必須
親子間の金銭貸借は、「真に金銭の貸借であると認められる場合」は贈与にはなりません(国税庁TA4420)。しかし、「ある時払いの催促なし」や「出世払い」のような形式的な貸借は、借入金の全額が贈与として扱われます。贈与認定を避けるためには、①金銭消費貸借契約書の作成、②銀行口座を通じた定期的な返済、③適正な利率の設定、④返済能力に見合った借入金額の4つが最低限必要です。
国税庁のタックスアンサーNo.4420では、親子間の金銭貸借について以下のように定めています。
| ケース | 課税関係 |
|---|---|
| 借入金の返済能力・返済状況からみて真に金銭の貸借であると認められる場合 | 借入金そのものは贈与にならない |
| 借入金が無利子の場合 | 利子相当額が贈与として扱われる場合がある |
| 実質的に贈与なのに形式上貸借としている場合 | 借入金の全額が贈与 |
| 「ある時払いの催促なし」「出世払い」の場合 | 借入金の全額が贈与 |
つまり、税務署が重視するのは「契約書があるかどうか」ではなく、「返済の実態があるかどうか」です。契約書があっても返済していなければ贈与とみなされ、逆に契約書がなくても返済の実績があれば貸借として認められる可能性があります。ただし、実務上は両方揃えておくことが安全です。
実務で税務署が「これは貸借ではなく贈与だ」と判断するパターンを以下にまとめました。
| # | NGパターン | なぜ贈与と判断されるか |
|---|---|---|
| 1 | 契約書を作成していない | 貸借の証拠がなく、「もらった」と区別できない |
| 2 | 返済期日が定められていない | 「ある時払いの催促なし」と同義 |
| 3 | 返済の実績がない・途中で止まっている | 実質的に返済する意思がないとみなされる |
| 4 | 返済能力を超える高額の借入 | 収入から返済不可能=贈与が前提とみなされる |
| 5 | 返済期間が親の余命を大幅に超える | 完済前に親が死亡→実質的に返済不要 |
| 6 | 返済が現金手渡しで記録がない | 返済の事実を客観的に証明できない |
| 7 | 「出世払い」「余裕ができたら返す」の口約束 | 返済時期が不確定=贈与と同視される |
💡 実務のポイント:新築の「お尋ね」で発覚するケースが多い
税務署は新築住宅を取得した人に「新増築等のお尋ね」という文書を送付し、資金の出所を確認します。ここに「親からの借入」と記入すると、金銭消費貸借契約書の有無、返済状況、利率などの詳細を求められます。準備不足だと贈与と認定されるリスクがあるため、借入時点で契約書と返済計画を整備しておくことが重要です。
貸し借りを証明する書面には「借用書」と「金銭消費貸借契約書」の2種類がありますが、双方が署名押印し各1通ずつ保管する「金銭消費貸借契約書」のほうがトラブル防止に適しています。
返済完了時の親の年齢が平均寿命を大幅に超えるような設定は、「最初から返す気がない」とみなされます。親の年齢から平均余命を確認し、その範囲内で返済期間を設定してください。
| 親の年齢(貸付時) | 平均余命の目安(男性) | 返済期間の上限目安 |
|---|---|---|
| 60歳 | 約24年(84歳まで) | 20年以内 |
| 65歳 | 約20年(85歳まで) | 15〜18年以内 |
| 70歳 | 約16年(86歳まで) | 10〜15年以内 |
| 75歳 | 約12年(87歳まで) | 8〜10年以内 |
| 80歳 | 約9年(89歳まで) | 5〜8年以内 |
※厚生労働省「簡易生命表」に基づく概算。女性の場合は約5年プラスで考えてください。
無利息の貸付は、利息相当額が贈与とみなされる可能性があります。ただし、相続税法基本通達9-10のただし書きにより、利息相当額が少額(年間110万円以下)であれば実務上は課税されません。
| 借入の用途 | 推奨利率の目安 | 根拠 |
|---|---|---|
| 住宅資金 | 年0.5〜1.0% | 住宅ローン変動金利の相場に準拠 |
| 事業資金 | 年1.0〜2.0% | 日本政策金融公庫の金利に準拠 |
| 自動車購入 | 年1.5〜3.0% | ディーラーローンの相場に準拠 |
| その他 | 年1.0%程度 | 銀行カードローンより低めに設定 |
💡 実務のポイント:無利息でも問題ないケースが多い
2,000万円を年利1%で借りた場合、年間の利息は約20万円。この利息をゼロにしても「経済的利益」は20万円にすぎず、贈与税の基礎控除110万円の範囲内に収まります。つまり、数千万円程度の借入であれば無利息でも実務上は贈与税がかからないケースがほとんどです。ただし、念のため年1%程度の利率を契約書に設定しておくと、税務署からの指摘リスクをさらに下げられます。
年収300万円の子が5,000万円を借りるような場合、毎月の返済が収入の大半を占め、返済不可能とみなされます。住宅ローンの年間返済額が年収の25〜35%程度に収まるのが目安です。
返済は必ず銀行振込で行い、通帳に記録を残してください。現金手渡しでは返済の事実を客観的に証明できません。「子の口座→親の口座」への定期的な振込記録が、貸借であることの最も強い証拠になります。
金銭消費貸借契約書には、借入金額に応じた収入印紙を貼付し消印します。印紙がなくても契約書自体は有効ですが、「第三者間と同等の取引をしている」ことを示す証拠になります。
| 借入金額 | 印紙税額 |
|---|---|
| 100万円超〜500万円以下 | 2,000円 |
| 500万円超〜1,000万円以下 | 10,000円 |
| 1,000万円超〜5,000万円以下 | 20,000円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 60,000円 |
公証役場で確定日付を取得すれば、「その日付に契約書が存在していた」ことを公的に証明できます。費用は1通あたり700円です。後から作成したと疑われるリスクをなくすために有効です。
| # | 項目 | 記載内容 |
|---|---|---|
| 1 | 契約日 | 年月日を明記(金銭の交付日と合わせる) |
| 2 | 貸主の氏名・住所・押印 | 実印が望ましい |
| 3 | 借主の氏名・住所・押印 | 実印が望ましい |
| 4 | 借入金額 | 漢数字で記載(改ざん防止) |
| 5 | 金銭の交付日・方法 | 振込日と振込先口座を明記 |
| 6 | 返済期日 | 最終返済日を明記 |
| 7 | 返済方法 | 毎月○日に○円ずつ振込、ボーナス払いの有無 |
| 8 | 利率 | 年○%(用途に応じた相場を参考に設定) |
| 9 | 遅延損害金 | 年○%(法定利率3%程度が目安) |
⚠️ 注意:金銭の交付も銀行振込で記録を残す
親から子への金銭の交付も、銀行振込で行ってください。現金で渡した場合、「いつ、いくら渡したか」の証拠が残りません。親の口座から子の口座への振込記録は、「金銭の貸借が実際に行われた」ことの最も確実な証拠になります。
「親子間の借入は必ず利息をつけなければならない」と思っている方が多いですが、実務上はそうとも限りません。
相続税法基本通達9-10では、無利息の貸付による経済的利益が「少額である場合又は課税上弊害がないと認められる場合」は贈与として扱わなくてよいとされています。
🧮 シミュレーション:無利息の場合の「経済的利益」
借入金額2,000万円を年利1%で借りた場合、年間利息は約20万円。この利息をゼロにすると、子が受ける経済的利益は約20万円。贈与税の基礎控除110万円の範囲内なので贈与税はかかりません。仮に5,000万円を無利息で借りても、年利1%相当の経済的利益は約50万円で、やはり110万円以内です。つまり、数千万円程度の借入であれば、無利息でも利息部分に贈与税がかかることは実務上ほとんどありません。
ただし、他に暦年贈与を行っている場合は、利息相当額と合算して110万円を超える可能性があるため、念のため年1%程度の利率を設定しておくほうが安全です。
住宅購入の資金を親から調達する場合、「借りる」以外にも「もらう(贈与)」という選択肢があります。贈与税の基本は「贈与税の基本的なしくみ」をご覧ください。
| 比較項目 | ①親から借りる | ②暦年贈与でもらう | ③住宅取得等資金の非課税 |
|---|---|---|---|
| 贈与税 | かからない | 110万円超で課税 | 最大1,000万円まで非課税 |
| 返済義務 | あり(毎月返済) | なし | なし |
| 必要書類 | 金銭消費貸借契約書 | 贈与税の申告書(110万円超) | 贈与税の申告書+住宅関連書類 |
| 相続税への影響 | 親の財産が減らない(貸付金が残る) | 親の財産が減る(相続税軽減) | 親の財産が減る(相続税軽減) |
| 使える金額 | 返済能力の範囲内で自由 | 110万円/年(非課税枠内) | 最大1,000万円(省エネ住宅) |
| 向いているケース | まとまった金額が必要で返済能力がある | 少額ずつ長期間で移転したい | 住宅購入で1,000万円以内を一括で |
実務的には、住宅取得等資金の非課税制度で1,000万円をもらい、不足分を親から借り入れるという「併用パターン」が最も多く見られます。相続税の計算方法は「相続税の計算方法」で解説しています。
親からの借入金が残っている状態で親が死亡した場合、その貸付金(=親にとっての債権)は相続財産に含まれます。
親の立場からは「子への貸付金」は資産です。したがって、親の遺産に貸付金の残高が含まれ、相続税の課税対象になります。子がその貸付金を相続した場合は、債権と債務が同一人物に帰属するため「混同」により消滅し、借金はなくなります。
ただし、子以外の相続人がその貸付金を相続した場合は、子は引き続きその相続人に対して返済義務を負います。みなし贈与の全体像については「みなし贈与とは?」も参考にしてください。
💡 実務のポイント:債務控除との関係
子が親からの借入金を返済中に親が死亡した場合、子にとっての「親からの借入残高」は相続税の計算上、債務控除の対象にはなりません。これは、同じ相続の中で「貸付金(資産)」と「借入金(債務)」が同時に計上されるためです。相続人が複数いる場合は遺産分割の中でどう処理するかを事前に決めておくと、相続時のトラブルを防げます。
子が住宅購入の頭金として親から1,200万円を借りましたが、契約書を作成せず、返済も行っていませんでした。税務署の「新増築等のお尋ね」で資金の出所を問われ、「親からの借入」と説明しましたが、契約書なし・返済実績なしのため全額贈与と認定されました。贈与税は(1,200万円−110万円)×40%−190万円=約246万円。契約書と返済実績があれば税金はゼロだったケースです。
2,000万円の金銭消費貸借契約書を作成し、当初2年間は毎月10万円を銀行振込で返済していましたが、その後資金繰りが悪化し返済が3年間止まりました。税務調査で「最初から返す気がなかった」と指摘され、2,000万円全額が贈与と認定されるリスクに直面しました。返済が困難になった場合でも、少額でも毎月返済を継続し、返済条件の変更を契約書に記録しておくべきだったケースです。
80歳の父から3,000万円を借り、返済期間を35年(完済時115歳)と設定しました。税務署から「返済完了時に父が生存しているとは考えられず、最初から返済する意思がない」と指摘され、贈与と認定されるリスクに直面しました。父の平均余命(約9年)を考慮して10年以内の返済期間にすべきだったケースです。
📋 この記事のポイント