【税理士監修】電子帳簿保存法の最新改正|デジタルインボイス連携・青色控除要件拡大

【税理士監修】電子帳簿保存法の最新改正|デジタルインボイス連携・青色控除要件拡大
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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電子帳簿保存法の最新改正|デジタルインボイス連携・青色控除要件拡大

電子帳簿保存法は度重なる改正で大きく変わっています。「結局どこがどう変わったのか整理できていない」という中小企業経営者・個人事業主に向けて、令和3年度〜令和7年度の改正を年度別に比較し、デジタルインボイス(Peppol/JP PINT)との連携や青色申告特別控除65万円の要件拡大まで、実務に必要な情報を網羅します。

📢 令和7年度改正のポイント

令和7年度(2025年度)税制改正では、①「基準適合システム」を使用して電子取引データを保存している場合の重加算税10%加重の除外と、②同システム利用者への青色申告特別控除65万円の適用要件拡大が決定されました。いずれも令和9年(2027年)1月以降に適用されます。

電子帳簿保存法の改正年表【令和3年度〜令和7年度の比較】

電子帳簿保存法は短期間に何度も改正されており、全体像がつかみにくくなっています。以下の表で、主要な改正ポイントを年度別に整理します。

改正年度 施行日 主な改正内容
令和3年度2022年1月事前承認制度の廃止、タイムスタンプ要件の緩和、検索要件の簡素化、電子取引データ保存の義務化(宥恕措置付き)
令和4年度2022年1月〜宥恕措置の設定(2023年12月末まで紙保存を容認)
令和5年度2024年1月宥恕措置の廃止と猶予措置の新設、検索要件免除の対象拡大(売上5,000万円以下)、スキャナ保存の要件緩和、優良帳簿の対象範囲見直し
令和6年度電帳法に関する改正なし
令和7年度2027年1月基準適合システム使用による重加算税10%加重の除外、青色申告特別控除65万円の要件拡大

電帳法の全体像は「電子帳簿保存法とは?3つの区分と対応ポイント」で解説しています。

令和7年度改正①:基準適合システムによる重加算税加重の除外

改正の概要

現行制度では、電子取引データやスキャナ保存データに関する改ざん・仮装・隠蔽が発覚した場合、重加算税が10%加重されます。令和7年度改正では、国税庁長官が定める基準に適合するシステム(以下「基準適合システム」)を使用して、一定の要件を満たして電子取引データを保存している場合に限り、この10%加重の対象から除外されることになりました。

これは、しっかりしたシステムでデータ管理を行っている企業に対するインセンティブです。改ざん防止機能が組み込まれたシステムを使っていれば、そもそも改ざんが起きにくいため、加重措置の対象から外すという合理的な考え方に基づいています。

「基準適合システム」に求められる要件

基準適合システムの具体的な要件は、国税庁長官が定める基準として今後詳細が公表されますが、財務省の税制改正大綱から読み取れるポイントは以下の通りです。

要件 内容
訂正削除の管理電子取引データの訂正・削除の事実と内容を確認できるシステム、または訂正・削除ができないシステムを使用すること
金額の訂正管理電子取引データの金額を訂正・削除して帳簿に記録した場合に、その事実と内容を確認できること
帳簿との相互関連性電子取引データの記録事項と関連する帳簿の記録事項との間で、相互に関連性を確認できること
システム利用の確認基準適合システムを使用してデータの授受・保存を行ったことを確認できること

参考: 財務省「令和7年度税制改正の大綱」

💡 実務のポイント

基準適合システムの要件は、実質的には「請求書データと帳簿データを自動連携させるデジタル完結型の経理システム」を想定しています。freee、マネーフォワード、弥生などの主要クラウド会計ソフトが今後どの程度対応するかがポイントになります。中小企業は焦って新しいシステムを導入する必要はなく、まずは現在のクラウド会計ソフトのアップデート情報を注視してください。

令和7年度改正②:青色申告特別控除65万円の要件拡大

改正前と改正後の比較

個人事業主が所得税の青色申告特別控除で最大65万円の控除を受けるための要件が拡大されました。

要件 改正前 改正後(令和9年分〜)
①優良な電子帳簿の保存
②e-Taxでの電子申告
③基準適合システムで電子取引データを保存×○(新設)

改正後は、上記の①②③のいずれかを満たせば65万円の控除が適用されます。つまり、優良な電子帳簿の要件を満たしていなくても、e-Taxで申告していなくても、基準適合システムで適切にデータ管理していれば65万円の控除を受けられるようになります。

📊 公認会計士の視点

この改正は「デジタル完結型の経理」を税制面で強く後押しするものです。請求書データの授受から帳簿への記録までをシステム内で一貫して行う仕組みが、帳簿の正確性を担保するという考え方に基づいています。会計監査の現場でも、システム内で完結した記録は証拠力が高いと評価されます。

デジタルインボイス(Peppol/JP PINT)と電帳法の関係

デジタルインボイスとは

デジタルインボイスとは、請求書の内容を構造化されたデータ(XML形式)でやり取りする仕組みです。PDFの請求書を画像として送受信するのとは異なり、システムが直接データを読み取って会計処理を自動化できる点が最大の特徴です。

日本では、デジタル庁がPeppol Authority(日本の管理局)として、国際標準規格Peppolをベースに日本向けの標準仕様「JP PINT」を策定・管理しています。

電帳法との連携マトリクス

項目 従来の電子取引 デジタルインボイス(Peppol)
データ形式PDF・画像・メール本文構造化XML(JP PINT準拠)
会計ソフト連携手動取込みまたはOCR自動連携(仕訳まで自動化可能)
改ざん防止事務処理規程またはタイムスタンプシステム内で訂正削除履歴が自動管理
検索要件ファイル名ルールまたは索引簿システムが自動で検索要件を充足
基準適合システム個別に確認が必要要件を満たすシステムが登場見込み

Peppolに対応したシステムを使ってデジタルインボイスを授受すれば、電帳法の保存要件を自動的に満たせる可能性が高く、令和7年度改正の基準適合システムにも該当しやすくなります。

中小企業にとってのデジタルインボイスの現状

Peppolの利用は任意であり、義務ではありません。現時点では大企業を中心に導入が進んでいる段階で、中小企業が急いで対応する必要はありません。ただし、主要取引先がPeppol対応を求めてきた場合に備え、自社で利用しているクラウド会計ソフトがPeppolに対応しているかどうかは確認しておくとよいでしょう。会計ソフトの選び方は「会計ソフトの選び方ガイド」をご参照ください。

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タイムスタンプ要件の変遷と代替措置

タイムスタンプ要件はどう変わったか

タイムスタンプは電帳法の歴史の中で繰り返し緩和されてきました。以下の表で変遷を確認します。

時期 タイムスタンプの扱い
2021年12月以前3営業日以内の付与が必須。受領者の自署も必要
2022年1月〜(令和3年度改正)付与期間が「2ヶ月と概ね7営業日以内」に延長。自署不要。訂正削除履歴システムで代替可
2024年1月〜(令和5年度改正)事務処理規程の整備でも代替可。実質的にタイムスタンプは必須ではなくなった

現在選択できる代替措置3パターン

現行制度では、タイムスタンプを付与しなくても以下の3つの方法で真実性の確保が可能です。

代替措置 コスト おすすめ対象
訂正削除履歴が残るシステムソフト利用料に含まれるクラウド会計ソフト利用中の企業
訂正削除ができないシステム月額3,000〜3万円大量の電子取引がある中堅企業
事務処理規程の整備0円小規模事業者・個人事業主

実務では、クラウド会計ソフト内のデータは「訂正削除履歴が残るシステム」として扱い、ソフト外のメールPDF等は「事務処理規程」で対応するのが最もコストパフォーマンスの高い方法です。帳簿の基礎知識は「簿記・帳簿の基礎知識」で解説しています。

中小企業の対応優先度判定フロー

令和7年度改正を踏まえて、中小企業がいつ・何を対応すべきかを判定します。

対応項目 対応時期 対象者 必要なアクション
電子取引データの電子保存今すぐ全事業者事務処理規程の整備+保存フォルダの作成
基準適合システムへの移行2027年まで重加算税加重除外のメリットを受けたい企業クラウド会計ソフトのアップデート確認
65万円控除の要件確認令和9年分〜個人事業主(青色申告者)基準適合システムの対応状況確認
デジタルインボイス(Peppol)中長期取引先から求められた場合会計ソフトのPeppol対応状況の確認

⚠️ 注意

最優先は「電子取引データの電子保存」です。これは2024年1月に完全義務化されており、猶予措置を利用していても早期の正式対応が求められます。基準適合システムやデジタルインボイスの対応は、それができてからの「次のステップ」です。罰則や猶予措置の詳細は「電子帳簿保存法の罰則・猶予措置と税務調査での対応」で解説しています。

令和5年度改正の振り返り:現在適用中のルール

猶予措置の現状

令和5年度改正で新設された猶予措置は、現在も有効です。所轄税務署長が「相当の理由がある」と認める場合、保存要件(真実性の確保・検索要件)を満たさなくても、電子取引データの保存と書面出力・ダウンロード提示で対応できます。ただし、電子保存義務自体は免除されません。

検索要件の免除対象

基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者は、税務調査時にダウンロードの求めに応じられる場合、検索要件が全て免除されます。また、電子取引データを印刷した書面を取引日付・取引先ごとに整理して提示できる事業者も、検索要件が免除されます。

スキャナ保存の要件緩和

令和5年度改正では、スキャナ保存に関して3つの要件が緩和されました。解像度・階調等の情報保存が不要になったこと、入力者情報の確認要件が廃止されたこと、帳簿との相互関連性が必要な書類が重要書類に限定されたことです。

今後の展望:電帳法はどこに向かうのか

デジタル完結型経理への移行

令和7年度改正が示す方向性は明確です。政府は「請求書の授受→帳簿への記録→申告」までの一連のプロセスをデジタルで完結させる経理体制を推進しています。基準適合システムの要件に「帳簿との相互関連性」が含まれているのはその表れです。

eシールの動向

電子署名に代わる企業の電子認証技術として「eシール」の制度化が進んでいます。eシールは、文書の発行元企業を証明する電子的な封印であり、将来的には電帳法の真実性確保の手段として活用される可能性があります。ただし、現時点では電帳法の保存要件にeシールは含まれていないため、中小企業が今すぐ対応する必要はありません。

💡 実務のポイント

電帳法の改正は毎年のように行われていますが、中小企業が今すぐやるべきことはシンプルです。①電子取引データを電子のまま保存する、②事務処理規程を整備する、③会計ソフトのアップデートに注意する。この3つを押さえておけば、今後どのような改正があっても慌てずに対応できます。記帳代行の活用も選択肢の一つです。費用感は「記帳代行の費用相場」をご確認ください。

よくある質問(FAQ)

令和7年度改正はいつから適用されますか?
重加算税10%加重の除外は令和9年(2027年)1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から適用されます。青色申告特別控除65万円の要件拡大は令和9年分(2027年分)以後の所得税から適用されます。
基準適合システムとは具体的にどの会計ソフトですか?
基準適合システムの具体的な認定リストは、今後国税庁長官が基準を定めた上で公表される予定です。freee、マネーフォワード、弥生などの主要クラウド会計ソフトが対応する見込みですが、現時点で確定情報はありません。各ソフトのアップデート情報を注視してください。
デジタルインボイス(Peppol)は義務化されますか?
現時点では義務化の予定はなく、利用は任意です。ただし、EUでは2030年7月からデジタルインボイスが義務化される予定であり、将来的に日本でも義務化の議論が出てくる可能性はあります。大手取引先がPeppol対応を求めてくるケースは今後増えると予想されます。
個人事業主で現在e-Taxで申告している場合、令和7年度改正の影響はありますか?
e-Taxで電子申告している個人事業主は、引き続きe-Taxで65万円の控除を受けられます。令和7年度改正で追加されたのは「第3の選択肢」であり、既存の要件が変わるわけではありません。基準適合システムへの対応は任意です。
タイムスタンプは完全に不要になったのですか?
タイムスタンプは完全に不要になったわけではありませんが、代替措置(訂正削除履歴システムの利用、事務処理規程の整備)で代替可能です。多くの中小企業にとって、タイムスタンプを別途導入する必要はありません。
電帳法の改正に対応するために、毎年システムを変更する必要がありますか?
いいえ。クラウド会計ソフトを利用している場合は、ソフト側が法改正に合わせてアップデートするため、利用者がシステムを変更する必要はほぼありません。重要なのは、ソフトのアップデート情報を確認し、新機能を適切に設定することです。
令和7年度改正で「事務処理規程だけで対応」という方法は使えなくなりますか?
事務処理規程による対応は引き続き有効です。令和7年度改正は「基準適合システムを使っている場合のメリット」を追加するものであり、従来の対応方法を廃止するものではありません。事務処理規程での対応は、現時点でも将来的にも中小企業にとって有効な選択肢です。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 電帳法は令和3年度〜令和7年度にかけて段階的に改正が進んでいる
  • 令和7年度改正の2大ポイント:①基準適合システムによる重加算税加重除外、②65万円控除の要件拡大
  • いずれも令和9年(2027年)1月以降に適用。中小企業は焦らず準備すればOK
  • デジタルインボイス(Peppol/JP PINT)は任意だが、主要取引先の対応状況は確認しておく
  • タイムスタンプは事務処理規程やシステムで代替可能。別途導入は不要
  • 最優先は「電子取引データの電子保存」と「事務処理規程の整備」——これは今すぐ必要
  • 会計ソフトのアップデート情報を定期的に確認し、法改正への対応状況を把握する

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