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「別表四のどの欄に何を書けばいいのかわからない」と悩む経理担当者に向けて、中小企業でよくある決算パターンの記載例を使いながら、別表四の書き方を1行ずつ解説します。この記事を読めば、加算・減算の判断と記載手順が身につきます。


「別表四のどの欄に何を書けばいいのかわからない」と悩む経理担当者に向けて、中小企業でよくある決算パターンの記載例を使いながら、別表四の書き方を1行ずつ解説します。この記事を読めば、加算・減算の判断と記載手順が身につきます。
🏆 結論:別表四は「当期純利益→課税所得」への変換表
別表四は、損益計算書の当期純利益を出発点に、税法独自の加算・減算を行って課税所得を算出する書類です。中小企業の場合、記載する欄は意外と少なく、加算項目は「法人税等の損金経理額」と「交際費の損金不算入額」、減算項目は「繰越欠損金の控除額」が大半を占めます。別表四を正しく書くコツは「なぜ加算・減算するのか」の理由を理解することと「留保」「社外流出」を正しく区分することの2点です。
別表四とは、法人税申告書の中核をなす書類で、正式名称は「所得の金額の計算に関する明細書」です。会計上の「当期純利益」を起点に、税法特有の調整(申告調整)を加減算して、最終的な「課税所得金額」を算出します。
ひとことで言えば、別表四は「会計の利益」と「税務の所得」のズレを一覧にした変換表です。このズレは、会計と税法で費用や収益の認識基準が異なることから生じます。
会計の利益は「会社の経営成績を正しく表す」ことが目的です。一方、税務の所得は「全ての法人に公平に課税する」ことが目的です。この目的の違いから、同じ取引でも会計と税務で異なる扱いをする項目があります。
| 項目 | 会計上の扱い | 税務上の扱い | 別表四での処理 |
|---|---|---|---|
| 交際費800万円超の部分 | 費用 | 損金不算入 | 加算 |
| 法人税・住民税 | 費用(税等) | 損金不算入 | 加算 |
| 減価償却の超過額 | 費用 | 限度額超過分は損金不算入 | 加算 |
| 受取配当金 | 収益 | 益金不算入(一部または全部) | 減算 |
| 繰越欠損金 | 費用ではない | 損金算入(過去の赤字を控除) | 減算 |
別表四には「通常様式」と「簡易様式」の2種類があります。中小企業であれば簡易様式で十分です。簡易様式は通常様式と比べて記載欄が少なく、海外取引などの特殊な調整項目がない法人向けに作られています。この記事では簡易様式を前提に解説します。
別表全体の種類と役割については「法人税の別表とは?主要な別表の種類と書き方」で解説しています。
別表四は、上から下に向かって4つのブロックで構成されています。
| ブロック | 欄番号 | 内容 |
|---|---|---|
| 出発点 | (1) | 当期利益又は当期欠損の額(損益計算書の最終行) |
| 加算 | (2)〜(11) | 損金不算入・益金算入の項目を所得に加える |
| 減算 | (12)〜(22) | 益金不算入・損金算入の項目を所得から差し引く |
| 所得金額 | (48) | (1)+加算合計−減算合計=課税所得 |
計算式としては、課税所得 = 当期純利益 + 加算項目 − 減算項目です。
💡 実務のポイント
中小企業の多くは、加算項目も減算項目もそれぞれ2〜3項目程度で済みます。100種類以上ある別表の中で別表四が「最重要」と言われる割にはシンプルな構造です。ただし、「留保」と「社外流出」の区分を間違えると別表五(一)との整合性が崩れるため、ここだけは慎重に判断してください。
📐 設例の前提条件
| 欄番号 | 区分 | 総額① | 留保② | 社外流出③ |
|---|---|---|---|---|
| (1) | 当期利益又は当期欠損の額 | 5,000,000 | 5,000,000 | — |
| 【加算】 | ||||
| (4) | 損金経理をした法人税及び地方法人税 | 975,600 | 975,600 | — |
| (5) | 損金経理をした住民税・事業税・事業所税 | ※別途計算 | ※ | — |
| (6) | 減価償却の償却超過額 | 200,000 | 200,000 | — |
| (11) | 加算の小計 | 1,175,600 | 1,175,600 | — |
| 【減算】 | ||||
| (22) | 減算の小計 | 0 | 0 | — |
| (48) | 所得金額又は欠損金額 | 6,175,600 | 6,175,600 | — |
※(5)の住民税・事業税は中間納付額がある場合に記載。ここでは簡略化して法人税のみ記載。実際は別表五(二)から転記。
(1)当期利益又は当期欠損の額 — 損益計算書の最終行「当期純利益」をそのまま転記します。税引後の金額です。配当の支払いがある場合は「社外流出」欄にも配当額を記載します。
(4)損金経理をした法人税及び地方法人税 — 会計上は「法人税等」として費用処理していますが、法人税法では法人税自体を損金に算入することを認めていません。そのため、当期に費用計上した法人税・地方法人税の額を加算します。区分は「留保」です。
(6)減価償却の償却超過額 — 会計上の減価償却費が税法上の償却限度額を超えている場合、その超過額を加算します。この超過額は将来の事業年度で認容される(損金に算入される)ため、区分は「留保」です。
⚠️ 注意:中間納付額の扱い
当期純利益は「税引後」の金額なので、中間申告で納付した法人税等がすでに費用として差し引かれています。このため(4)で中間納付額を加算してもとに戻す必要があります。「これから法人税を計算するのに、なぜ法人税が費用に入っているのか?」という疑問はここが答えです。
| 加算項目 | 発生するケース | 留保/社外流出 | 転記元 |
|---|---|---|---|
| 損金経理をした法人税等 | 全社(中間納付+決算確定分) | 留保 | 別表五(二) |
| 減価償却の償却超過額 | 会計の償却費>税法の限度額 | 留保 | 別表十六 |
| 交際費の損金不算入額 | 中小法人で年800万円超の交際費 | 社外流出 | 別表十五 |
| 役員給与の損金不算入額 | 未届出の役員賞与・過大な役員報酬 | 社外流出 | 自社計算 |
| 延滞税・加算税 | 附帯税を費用計上した場合 | 社外流出 | 別表五(二) |
💡 実務のポイント
「交際費の損金不算入額」は社外流出、「減価償却の超過額」は留保。この区分の判断基準は「将来解消されるかどうか」です。交際費の超過額は永久に損金に認められないので社外流出。減価償却の超過額は将来の事業年度で認容されるので留保。この原則を覚えておけば、大半の項目は判断できます。
| 減算項目 | 発生するケース | 留保/社外流出 | 転記元 |
|---|---|---|---|
| 減価償却超過額の当期認容 | 前期以前の超過額が当期で追いつく | 留保 | 別表十六 |
| 受取配当等の益金不算入額 | 他社株式の配当金を受領した場合 | 社外流出 | 別表八(一) |
| 欠損金の当期控除額 | 過去の赤字を当期利益から控除 | 留保 | 別表七(一) |
| 所得税額等の還付金額 | 赤字決算で源泉所得税が還付 | 留保 | 別表六(一) |
中小企業では減算項目が「ゼロ」のケースも珍しくありません。交際費が800万円以下で、繰越欠損金もなく、受取配当もない場合は、減算欄は全て空欄になります。
「この項目は留保?社外流出?」と迷ったら、以下のフローで判断してください。
| 質問 | Yes | No |
|---|---|---|
| ①この差異は将来の事業年度で解消されるか? | → 留保 | → ②へ |
| ②この金額は会社外部に流出したか? | → 社外流出 | → 社外流出(永久差異) |
| 項目 | 留保 | 社外流出 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 法人税等の損金経理額 | ○ | — | 税金は納付されるが利益積立金の調整が必要 |
| 減価償却超過額 | ○ | — | 将来の事業年度で認容される(一時差異) |
| 貸倒引当金繰入超過額 | ○ | — | 翌期に認容される(一時差異) |
| 交際費の損金不算入額 | — | ○ | 永久に損金にならない(永久差異) |
| 役員賞与の損金不算入額 | — | ○ | 役員に支払われ社外流出(永久差異) |
| 受取配当の益金不算入額 | — | ○ | 配当元から流入した金額の課税除外(永久差異) |
| 繰越欠損金の控除額 | ○ | — | 利益積立金のマイナスが解消される |
別表四は一度で完成しません。法人税額を確定させるために、以下の4ステップを踏みます。
| STEP | やること | 目的 |
|---|---|---|
| 1 | 「仮の別表四」を作成(法人税等の確定分を除く) | 仮の課税所得を算出する |
| 2 | 仮の所得で別表一を作成し、法人税額を計算 | 確定法人税額を算出する |
| 3 | 確定法人税額を決算書に反映(未払法人税等を計上) | 当期純利益を確定させる |
| 4 | 確定した数値で別表四を完成させる | 最終的な課税所得を確定する |
📊 公認会計士の視点
STEP2で法人税額を計算し、STEP3で決算書に法人税等を計上すると、当期純利益が変わります。すると別表四の(1)が変わり、課税所得が変わり、法人税額も変わる…という循環が生じます。実務では「納税充当金」という処理で、この循環を断ち切ります。税務ソフトではこの計算を自動で行いますが、手計算の場合は収束するまで2〜3回繰り返す必要があります。
別表四の「留保」欄に記載した加算項目は、別表五(一)の「増」列に同額を記載します。減算項目は「減」列に記載します。社外流出欄に記載した項目は別表五(一)に転記しません。
📐 検算式(黒字の場合)
別表五(一)の期首利益積立金額合計 + 別表四の所得金額 − 法人税等の確定分合計 = 別表五(一)の期末利益積立金額合計
この式が成立しない場合は、留保項目の転記漏れか計算ミスがあります。完成前に必ずこの検算を実施してください。
当期が赤字(当期純損失)の場合も、別表四の書き方の基本は同じです。(1)にマイナスの金額を記載し、加算・減算の調整を行います。調整後の(48)がマイナスになれば「欠損金額」として翌期以降に繰り越されます。
赤字の場合の注意点は、所得税額控除(別表六(一))の扱いです。黒字の場合は法人税額から控除しますが、赤字で法人税額がゼロの場合は控除できず、源泉所得税は還付されます。この還付額は別表四の(19)に記載し、減算します。
最も多いミスです。交際費の損金不算入額を「留保」に記載してしまうと、別表五(一)の利益積立金額が膨らみ、翌期以降の整合性が崩れます。対策は、前述の判断フローを毎回確認すること。
決算で「未払法人税等」を計上しているにもかかわらず、(4)の損金経理した法人税等に含めていないケース。未払法人税等の計上額(納税充当金)は、中間納付額とは別に(4)に加算する必要があります。
前期の確定法人税額と中間納付額の差額(確定分の未払い分)は、当期に会計処理された時点で別表五(二)から別表四に転記されます。前期の未払法人税等の支払いが別表四に正しく反映されているか確認してください。
法人決算の全体フローは「法人決算の流れと必要書類を完全ガイド」で、役員報酬の税務上の取扱いは「役員報酬の基礎知識と決め方」で解説しています。
📋 この記事のポイント
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