法定調書の作成・提出ガイド|給与支払報告書・支払調書の実務

法定調書の作成・提出ガイド|給与支払報告書・支払調書の実務
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

「法定調書って何を・いつまでに・どこに出せばいいの?」とお悩みの経理担当者に向けて、主要6種類の法定調書の作成方法・提出範囲・提出期限・電子提出義務化の基準を完全ガイドします。この記事を読めば、年末調整後の法定調書提出をミスなく進められます。

🏆 結論:毎年1月31日までに6種類の法定調書+合計表を税務署に提出

法定調書とは、給与・報酬・不動産使用料などの支払いを税務署に報告する書類の総称で、全63種類あります。中小企業が実務で扱うのは主に6種類(源泉徴収票・退職所得の源泉徴収票・報酬等の支払調書・不動産の使用料等の支払調書・不動産等の譲受けの対価の支払調書・不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書)+法定調書合計表です。提出期限は翌年1月31日(土日の場合は翌営業日)、提出先は所轄税務署です。令和9年1月提出分から電子提出の基準が「100枚以上→30枚以上」に引き下げられます。

法定調書とは?中小企業が押さえるべき基本

法定調書とは、所得税法・相続税法・租税特別措置法などに基づき、給与・報酬・不動産使用料などの支払いを行った事業者が、税務署への提出が義務付けられている書類の総称です。

税務署は法定調書を使って「誰が・誰に・いくら支払ったか」を把握し、受け取った側が正しく確定申告しているかを照合します。つまり、法定調書は適正な課税を支える基盤です。

法定調書は全63種類ありますが、中小企業の経理担当者が扱うのは主に以下の6種類+合計表です。

法定調書の種類 対象となる支払い 提出先
①給与所得の源泉徴収票従業員への給与・賞与税務署+本人
②退職所得の源泉徴収票退職金税務署+本人(役員のみ提出)
③報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書税理士報酬・弁護士報酬・原稿料・講演料等税務署
④不動産の使用料等の支払調書地代・家賃・駐車場代等税務署
⑤不動産等の譲受けの対価の支払調書不動産の購入代金税務署
⑥不動産等のあっせん手数料の支払調書不動産取引の仲介手数料税務署
+法定調書合計表上記6種類の合計集計税務署

参考: 国税庁「法定調書の種類及び提出期限」

⚠️ 注意

法定調書を提出しなかった場合や虚偽の記載をした場合、所得税法第242条第5号により「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科される可能性があります。期限内の正確な提出が必要です。

法定調書の提出期限と提出先

提出期限:翌年1月31日

法定調書の提出期限は、支払いが確定した年の翌年1月31日です。1月31日が土日祝の場合は翌営業日になります。令和7年分(2025年中の支払分)の提出期限は令和8年(2026年)2月2日(月)です。

提出先の整理

書類 提出先
法定調書6種類+合計表所轄税務署
給与支払報告書従業員の住所地の市区町村

💡 実務のポイント

「法定調書」と「給与支払報告書」は混同しやすいですが、提出先が異なります。法定調書は税務署に提出する書類。給与支払報告書は市区町村に提出する書類で、従業員の住民税の計算に使われます。給与支払報告書は法定調書ではありませんが、提出期限は同じ翌年1月31日です。年末調整後は「税務署向け+市区町村向け」の2系統を同時並行で準備する必要があります。

主要6種類の法定調書|提出範囲と作成のポイント

①給与所得の源泉徴収票

給与等を支払った全ての従業員に交付が必要です。ただし、税務署への提出は以下の条件を満たす者に限られます。

年末調整をした者:年間の給与等の支払金額が500万円超(役員は150万円超)の者。年末調整をしなかった者:年間の給与等の支払金額が250万円超(退職者は50万円超等の条件あり)の者。

つまり、従業員全員に源泉徴収票を交付するものの、税務署に提出するのは一部の高額給与者に限られます。中小企業では全員分を提出しているケースも多いですが、義務としては上記の範囲です。

②退職所得の源泉徴収票

退職金を支払った全ての者に交付しますが、税務署への提出義務があるのは法人の役員に支払った場合のみです。一般従業員への退職金は本人交付のみで、税務署への提出は不要です。

③報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書

個人に対して支払った報酬・料金のうち、一定の金額基準を超えるものが提出対象です。中小企業で最も多いのは「税理士・弁護士・司法書士への報酬」と「デザイナー・ライターへの原稿料」です。税理士報酬の場合、年間5万円超の支払いで提出が必要です。

④不動産の使用料等の支払調書

法人が不動産の使用料(地代・家賃・権利金等)を支払った場合、同一の支払先に対する年間15万円超の支払いが提出対象です。オフィスの家賃を支払っている法人はほぼ全て該当します。

⑤⑥不動産関連の支払調書

不動産を購入した場合(⑤)と仲介手数料を支払った場合(⑥)にそれぞれ提出が必要です。同一の支払先に対する年間100万円超(⑤)、15万円超(⑥)が基準です。事業年度中に不動産の売買がなければ作成不要です。

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法定調書合計表の書き方と提出方法

法定調書合計表は、上記6種類の法定調書の支払金額・源泉徴収税額などの合計を集計する書類です。法定調書の「表紙」のような位置づけで、個別の法定調書とセットで税務署に提出します。

合計表の構成(6セクション)

法定調書合計表は、①給与所得の源泉徴収票、②退職所得の源泉徴収票、③報酬・料金等の支払調書、④不動産の使用料等の支払調書、⑤不動産等の譲受けの対価の支払調書、⑥不動産等のあっせん手数料の支払調書の6つの合計欄で構成されています。

それぞれのセクションに「提出枚数」「支払金額の合計」「源泉徴収税額の合計」などを記入します。税務署に提出する調書の枚数だけでなく、提出不要の分も含めた「全体の人数・金額」を記入する欄がある点に注意してください。

💡 実務のポイント

合計表の作成では、「A 提出するものの合計」と「B Aのうち税務署に提出するもの」を区別して記入する必要があります。たとえば従業員30人の会社で、税務署への提出対象が3人の場合、Aには30人分の合計を、Bには3人分の合計を記入します。この区別を間違えるケースが実務で非常に多いです。

電子提出の義務化|現行基準と令和9年からの変更

法定調書は紙での提出も可能ですが、一定の枚数を超える場合はe-Tax等による電子提出が義務化されています。

適用時期 電子提出義務の基準 判定時期
現行(〜令和8年12月提出分)法定調書の種類ごとに前々年の提出枚数が100枚以上前々年の提出枚数で判定
令和9年1月提出分〜法定調書の種類ごとに前々年の提出枚数が30枚以上前々年(令和7年分=2025年分)の提出枚数で判定

📢 令和9年1月から基準が「30枚以上」に引き下げ

令和9年1月31日提出分(2026年分の支払い)から、電子提出の義務基準が「100枚以上→30枚以上」に大幅引き下げされます。判定の基準は前々年(2025年分)の提出枚数です。従業員30人以上の企業は「給与所得の源泉徴収票」が30枚以上になるため、電子提出が義務になる可能性が高いです。今のうちからe-Taxの準備を進めておきましょう。

なお、電子提出の義務は調書の種類ごとに判定します。「給与所得の源泉徴収票」が30枚以上でも、「報酬等の支払調書」が30枚未満なら、報酬等の支払調書は紙提出でも構いません。

法定調書の作成スケジュール|年末調整後の実務フロー

年末調整から法定調書の提出までの実務フローを時系列で整理します。

時期 作業内容
11月中旬従業員に年末調整の書類(扶養控除等申告書・保険料控除申告書等)を配布
12月上旬年末調整の書類を回収、記入内容を確認
12月給与年末調整の計算を実行、過不足額の精算
1月上旬源泉徴収票の作成、支払調書のデータ集計
1月中旬法定調書合計表の作成、給与支払報告書の作成
1月31日法定調書+合計表を税務署に提出、給与支払報告書を市区町村に提出

🔷 社労士の視点

給与支払報告書は従業員の住所地の市区町村に提出しますが、従業員が複数の市区町村に分散している場合は、市区町村ごとに分けて提出する必要があります。eLTAXを使えば電子的に一括提出できるため、複数の自治体への提出が効率化されます。法人決算の全体的なスケジュールについては「法人決算の流れを完全ガイド」もご確認ください。

マイナンバーの記載ルール

法定調書にはマイナンバー(個人番号)の記載が義務付けられています(税務署提出分のみ)。ただし、従業員や報酬支払先に交付する控えにはマイナンバーを記載してはいけません。

記載が必要な場面:税務署に提出する源泉徴収票・支払調書。記載してはいけない場面:従業員本人に交付する源泉徴収票の控え、報酬支払先に交付する支払調書の控え。

印刷設定のミスでマイナンバーが控えに印字されてしまうトラブルが実務では発生しています。税務署提出用と本人交付用で印刷設定を分けるか、提出用を印刷した後に設定を変更して控えを印刷する運用をおすすめします。

法定調書の提出方法|紙・e-Tax・eLTAX

①書面(紙)で提出

法定調書の用紙に手書きまたは印刷で記入し、所轄税務署の窓口に持参または郵送で提出します。電子提出が義務化されていない法人はこの方法で提出可能です。

②e-Tax(国税の電子申告)で提出

国税庁のe-Taxシステムを使って電子的に提出します。63種類の法定調書のほぼ全てに対応しており、電子提出義務がある法人はこの方法またはクラウド等での提出が必要です。利用には電子証明書(マイナンバーカード等)とe-Taxの利用者識別番号が必要です。

③eLTAX(地方税の電子申告)で提出

給与支払報告書は法定調書ではないためe-Taxではなく、eLTAXで市区町村に電子提出します。eLTAXを使えば複数の市区町村への給与支払報告書を一括で送信できるため、従業員が多い会社ほど効率的です。電子申告全般については「法人税のe-Tax電子申告」で詳しく解説しています。

よくあるミスと対策チェックリスト

チェック項目 よくあるミス
合計表のA欄(全体)とB欄(提出分)を区別して記入しているかA欄にB欄の数字を入れてしまう
マイナンバーが控えに記載されていないか印刷設定ミスで控えにも番号が印字
退職者・中途入社者の源泉徴収票を漏れなく作成しているか年度途中の退職者を忘れる
税理士・弁護士への報酬が5万円超なら支払調書を作成しているか金額基準未満と誤判断して未作成
不動産の家賃が年15万円超なら支払調書を作成しているかオフィス家賃の支払調書を忘れる
給与支払報告書を従業員の住所地の市区町村に提出しているか会社所在地の市区町村に提出してしまう
電子提出義務の判定(前々年100枚以上)を確認しているか義務対象なのに紙で提出

会社設立直後の届出から法定調書提出までの全体像は「会社設立の流れと費用を完全ガイド」で解説しています。法人化のタイミングと法定調書の関係については「個人事業主の法人成りベストタイミング」もご参照ください。

よくある質問(FAQ)

法定調書は全ての法人に提出義務がありますか?
給与を支払っている法人であれば、最低でも「給与所得の源泉徴収票」と「法定調書合計表」の提出義務があります。その他の法定調書は、該当する支払いがあり、かつ金額基準を超える場合に提出が必要です。
法定調書と給与支払報告書は同じものですか?
別の書類です。法定調書(源泉徴収票等)は税務署に提出する書類、給与支払報告書は従業員の住所地の市区町村に提出する書類です。記載内容はほぼ同じですが、提出先と目的が異なります。法定調書は所得税の適正課税のため、給与支払報告書は住民税の計算のためです。
提出期限に遅れた場合、どうなりますか?
直ちに罰則が適用されるわけではありませんが、法律上は「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」の対象です(所得税法第242条第5号)。実務では、遅れた場合は速やかに提出すれば大きな問題にはならないことが多いですが、毎年遅れていると税務署から指摘を受ける可能性があります。
支払調書は支払先に交付する義務がありますか?
法律上、支払調書の支払先への交付義務はありません。ただし、実務慣行として交付している会社が多く、フリーランスの確定申告の参考資料として利用されています。交付する場合は、マイナンバーを記載しない控えを渡してください。
電子提出義務の基準が変わると聞きましたが、いつからですか?
令和9年1月提出分(2026年分の支払い)から、電子提出の義務基準が「前々年100枚以上→前々年30枚以上」に引き下げされます。判定は2025年分(前々年)の提出枚数で行われるため、2025年に法定調書を30枚以上提出した法人は、2027年1月の提出分からe-Tax等での電子提出が義務になります。
設立初年度で従業員が少ない場合も法定調書は必要ですか?
はい。従業員が1人でも給与を支払っていれば、源泉徴収票の作成と法定調書合計表の提出が必要です。役員報酬を支払っている場合も同様です。なお、合計表は提出する法定調書がゼロ枚でも提出義務があります。
法定調書の作成を税理士に依頼するメリットは何ですか?
税理士に依頼すれば、提出範囲の判定ミス(誰のを出す・出さない)や金額基準の見落としを防げます。また、e-Taxでの電子提出にも対応してもらえるため、電子提出義務がある法人にとっては特にメリットがあります。年末調整から法定調書提出までを一括で依頼すれば、社内の事務負担を大幅に軽減できます。
法定調書合計表だけ出して、個別の調書を出さなくても良いですか?
いいえ。法定調書合計表は個別の法定調書の集計表であり、提出対象の法定調書と一緒に提出する必要があります。合計表だけ提出しても、個別の法定調書の提出義務は残ります。
法人が解散した場合も法定調書の提出は必要ですか?
はい。解散・清算の過程で給与や報酬の支払いがあった場合、通常どおり法定調書の作成・提出が必要です。清算結了登記が完了するまでは法人としての義務が残ります。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 法定調書は全63種類。中小企業が扱うのは主に6種類+法定調書合計表
  • 提出期限は翌年1月31日。法定調書は税務署、給与支払報告書は市区町村に提出
  • 電子提出義務は現行「前々年100枚以上」→令和9年1月から「前々年30枚以上」に引き下げ
  • 源泉徴収票は全従業員に交付するが、税務署への提出は一定の高額給与者のみ
  • マイナンバーは税務署提出分に記載。本人交付の控えには記載禁止
  • 合計表のA欄(全体)とB欄(提出分)の区別が最も間違いやすいポイント
  • 提出しないと1年以下の懲役または50万円以下の罰金の可能性あり

法定調書の作成は年末調整とセットの年に1度の大仕事です。11月からスケジュールを立てて計画的に進めることで、1月末の提出期限に余裕を持って対応できます。

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