税理士に依頼すべきタイミング8選|会社設立・売上1,000万円超・法人化・相続発生【税理士×社労士が解説】

監
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。
税理士に依頼すべきタイミング8選|会社設立・売上1,000万円超・法人化・相続発生
「税理士にはいつから頼めばいいの?」「まだ早い気がするけど、遅すぎると損するの?」——そんな疑問を持つ経営者・個人事業主に向けて、税理士に依頼すべき8つのタイミングを売上・利益・イベント別に整理し、顧問契約とスポット依頼の判定フローまで解説します。
🏆 結論:8つのタイミングのうち1つでも当てはまれば相談を検討すべき
税理士に依頼すべきタイミングは「①会社設立時」「②売上1,000万円超」「③法人化の検討時」「④初めての決算」「⑤従業員の採用時」「⑥税務調査の通知時」「⑦相続の発生時」「⑧事業承継・資金調達の検討時」の8つです。いずれも「相談が遅れるほど損失が拡大する」特徴があり、特に①②③は「事前に相談する」ことで節税効果が最大化します。
税理士への依頼が「早すぎる」ことはない——相談の遅れが招く3つの損失
「まだ売上が少ないから税理士は不要」と考える経営者は多いですが、実務の経験上、税理士への相談が遅れたことで損をしたケースは枚挙にいとまがありません。
損失①:届出書の期限切れによる過大納税
たとえば青色申告承認申請書は、個人事業の場合は開業日から2ヶ月以内、法人の場合は設立の日以後3ヶ月以内に提出しなければなりません。この期限を過ぎると、青色申告特別控除(最大65万円)や欠損金の繰越控除が使えなくなり、年間で数十万円の過大納税につながります。
損失②:節税対策の機会損失
節税対策の多くは「事業年度が始まる前」に準備する必要があります。決算直前に税理士に駆け込んでも、その年度に使える節税策は限られます。ある飲食店の経営者は、開業2年目に税理士に相談したところ「1年目に少額減価償却資産の特例を使っていれば40万円近く節税できた」と指摘され、悔しい思いをされていました。
損失③:社会保険の手続き漏れによるペナルティ
法人を設立した場合、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入は代表者1人でも義務です。加入手続きが遅れると、遡って保険料を請求されるだけでなく、日本年金機構から指導を受けることになります。
| 相談の遅れ |
具体的な損失 |
推定損失額 |
| 青色申告の届出遅れ | 特別控除・繰越控除が使えない | 10〜65万円/年 |
| 消費税の届出遅れ | 有利な課税方式を選択できない | 50〜500万円 |
| 法人化の判断遅れ | 所得税と法人税の税率差による過大納税 | 30〜100万円/年 |
| 相続発生後の相談遅れ | 小規模宅地等の特例適用漏れ | 数百万〜数千万円 |
【タイミング①】会社設立時——設立「前」に相談するのがベスト
設立前に税理士に相談すべき3つの理由
会社設立は税理士に依頼する最も一般的なタイミングです。ただし、設立「後」ではなく設立「前」に相談することが重要です。理由は3つあります。
第一に、決算月の選定です。何月決算にするかによって、設立1期目の長さと節税戦略が大きく変わります。第二に、資本金の額です。資本金1,000万円未満であれば設立初年度の消費税が免税になる可能性があります。第三に、各種届出書の提出です。青色申告承認申請書・給与支払事務所等の開設届出書・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書など、設立後すぐに提出すべき届出が複数あります。
💡 実務のポイント
会社設立と顧問契約をセットで依頼すると、設立手続きの費用を値引きしてくれる事務所もあります。設立の2〜3ヶ月前には税理士を探し始め、複数の事務所を比較検討してください。
【タイミング②】売上1,000万円超——消費税の課税事業者になるとき
売上1,000万円のラインが重要な理由
前々年(個人)または前々事業年度(法人)の課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の課税事業者になります。課税事業者になると、消費税の申告義務が発生し、「本則課税」と「簡易課税」のどちらが有利かを判断しなければなりません。
この判断を誤ると、年間で数十万〜数百万円の差が出ることがあります。たとえば、卸売業で売上2,000万円・仕入1,400万円の場合、簡易課税のみなし仕入率(90%)を適用すると消費税は約18万円ですが、本則課税で計算すると約54万円になります。逆に、サービス業で仕入が少ない場合は本則課税の方が有利になるケースもあります。
確定申告の費用相場については「確定申告を税理士に依頼する費用相場」で詳しく解説しています。
【タイミング③】法人化の検討時——所得が500万円を超えたら試算を
法人化の損益分岐点シミュレーション
個人事業主の所得税は累進課税(5〜45%)であるのに対し、法人税は基本的に一定税率(年800万円以下の部分は15%、超える部分は23.2%。2026年4月以降は防衛特別法人税4%が加算)です。この税率差により、一定の所得を超えると法人化した方が税負担が軽くなります。
📐 シミュレーション前提条件
- 事業主1人(配偶者なし)、経費は売上の60%
- 法人化した場合の役員報酬は法人利益+役員報酬=個人事業の所得と同額に設定
- 社会保険料の増加分も考慮
| 事業所得 |
個人の税負担(所得税+住民税+事業税) |
法人の税負担(法人税等+所得税+社保差額) |
法人化メリット |
| 300万円 | 約40万円 | 約55万円 | ▲15万円(個人が有利) |
| 500万円 | 約100万円 | 約95万円 | +5万円(ほぼ同等) |
| 800万円 | 約200万円 | 約155万円 | +45万円(法人が有利) |
| 1,200万円 | 約350万円 | 約240万円 | +110万円(法人が有利) |
※概算値です。個別の状況(家族構成・控除額・業種等)により大きく異なります。正確な試算は税理士にご相談ください。
参考: 国税庁「所得税の税率」
AYUSAWA PARTNERS
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【タイミング④】初めての決算——遅くとも決算月の3ヶ月前までに
「決算直前に税理士に駆け込む」のは最も避けるべきパターンです。決算直前では節税対策がほぼできず、資料の整理も間に合わず、結果として通常より高い報酬を請求されることもあります。
初めての決算を迎える場合は、遅くとも決算月の3ヶ月前には税理士に相談してください。3ヶ月あれば、決算着地予測に基づく節税対策(少額減価償却資産の購入、中小企業経営強化税制の適用、役員報酬の見直しなど)を検討する時間が確保できます。
【タイミング⑤】従業員を採用したとき——社保・労務の手続きが発生する
従業員の採用で増える手続き
従業員を初めて採用すると、税務だけでなく社会保険・労務関連の手続きが一気に増えます。
| 手続き |
届出先 |
期限 |
| 源泉所得税の納付 | 税務署 | 給与支払月の翌月10日 |
| 社会保険の資格取得届 | 年金事務所 | 入社から5日以内 |
| 雇用保険の資格取得届 | ハローワーク | 入社の翌月10日まで |
| 労災保険の成立届 | 労働基準監督署 | 従業員を雇った日の翌日から10日以内 |
| 年末調整 | 税務署 | 翌年1月31日 |
🔷 社労士の視点
従業員を採用した場合、税務(源泉徴収・年末調整)は税理士、労務(社保・雇用保険・就業規則)は社労士がそれぞれ専門です。鮎澤パートナーズのようなワンストップ事務所であれば、1つの窓口で税務・労務の両方に対応できます。別々の専門家に依頼する手間とコストを削減できるのがメリットです。
【タイミング⑥】税務調査の通知が来たとき——すぐに税理士に連絡する
税務調査の事前通知は、通常は顧問税理士に連絡が入りますが、税理士がいない場合は直接経営者に連絡が来ます。この通知を受けたら、調査日の前日までに税理士を見つけて立会いを依頼する必要があります。
税務調査は突然に感じるかもしれませんが、事前通知から実際の調査日までは通常2〜3週間の猶予があります。この間に税理士を探して依頼することは可能です。ただし、顧問税理士がいる場合と比べると、会社の状況を把握する時間が短いため、対応が不十分になるリスクがあります。
⚠️ 注意:税務調査に1人で対応してはいけない
税理士なしで税務調査に対応すると、調査官の質問に対して不必要に多くの情報を開示してしまったり、本来は否認されない経費まで指摘を受け入れてしまったりするリスクがあります。税理士の立会い費用(3〜5万円/日×2〜3日)は、追徴税額の削減効果を考えれば十分に回収できる投資です。
【タイミング⑦】相続が発生したとき——49日以内に税理士を探し始める
相続税の申告期限は「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」です。10ヶ月は長いように感じますが、遺産の調査・相続人間の協議・申告書の作成を考えると、実際にはかなりタイトです。
経験上、相続税に強い税理士を探し始めるのは四十九日の法要が終わった頃がベストです。それより早いと気持ちの整理がつかないケースが多く、それより遅いと期限に余裕がなくなります。
相続税は税理士によって税額が大きく変わるYMYLの代表的なテーマです。特に不動産の評価方法によって数百万〜数千万円の差が出ることがあり、相続に強い税理士を選ぶことが極めて重要です。
【タイミング⑧】事業承継・資金調達を検討し始めたとき
事業承継や大型の資金調達を検討している場合は、実行の1〜2年前から税理士に相談すべきです。事業承継は自社株の評価と株式の移転方法によって贈与税・相続税に大きな影響があり、事前の対策が不可欠です。
資金調達では、金融機関に提出する決算書の「見映え」が融資審査に直結します。税理士が関与して適正に作成された決算書は金融機関からの信頼度が高く、書面添付制度(税理士法第33条の2)を利用していればさらに有利になります。事業承継と資金調達の詳細は「事業承継・資金調達を考え始めたときの税理士への相談」をご覧ください。
顧問契約 vs スポット依頼——あなたに合うのはどっち?
税理士への依頼形態は大きく「顧問契約(月額制)」と「スポット依頼(都度払い)」の2つがあります。
| 比較項目 |
顧問契約 |
スポット依頼 |
| 費用 | 月2〜5万円+決算料15〜25万円 | 依頼ごとに10〜30万円 |
| 節税提案 | 年間を通じた提案が可能 | 依頼時点で可能な範囲のみ |
| 税務調査対応 | 日常的に状況を把握しているため万全 | 急な対応になりリスクが高い |
| 経営相談 | 随時相談可能 | 別途費用が発生 |
| 向いている人 | 法人・年商1,000万円超・従業員あり | 年商500万円未満・経費がシンプル |
スポット依頼の詳細については「確定申告だけ税理士に依頼するケース」で解説しています。また、顧問料の相場感を知りたい方は「顧問税理士の費用相場と選び方」を参照してください。
税理士を探すベストタイミング——繁忙期を避けて相談する
税理士にも繁忙期と閑散期があります。繁忙期に相談すると、対応が遅くなったり、新規の受付を断られたりすることがあります。
| 時期 |
繁忙度 |
主な業務 |
新規相談のしやすさ |
| 1〜3月 | ★★★(最繁忙) | 確定申告・法定調書 | △ 断られる可能性あり |
| 4〜5月 | ★★(繁忙) | 3月決算法人の申告 | ○ 面談は可能 |
| 6〜10月 | ★(閑散期) | 通常業務 | ◎ 最も相談しやすい |
| 11〜12月 | ★★(繁忙) | 年末調整・9月決算法人 | ○ 面談は可能 |
新しい税理士を探すなら6〜10月がベストです。税理士も時間に余裕があり、じっくりと面談してくれるケースが多いです。
よくある質問(FAQ)
個人事業主で売上が少ないうちは税理士は不要ですか?
売上が年間300〜500万円未満であれば、クラウド会計ソフト(freee、マネーフォワードなど)を使って自分で記帳・申告することも可能です。ただし、青色申告承認申請書の提出や消費税の届出など、期限のある手続きは見落としがちなので、「年1回のスポット相談」だけでも税理士を活用することをお勧めします。
法人化のベストタイミングはいつですか?
一般的な目安は事業所得が年間500万円を超えたタイミングですが、家族構成や業種によって大きく異なります。税負担だけでなく、社会保険料の増加・法人設立費用・税理士への顧問料などのコスト増も考慮して総合的に判断する必要があります。必ず税理士にシミュレーションを依頼してから判断してください。
税務調査の通知が来てから税理士を探しても間に合いますか?
通常、事前通知から調査日まで2〜3週間の猶予があるため、物理的には間に合います。ただし、顧問税理士がいない状態で調査を受けると、会社の状況を十分に把握していない税理士が対応することになり、万全の体制とは言えません。日頃から顧問契約を結んでおくことが最善の税務調査対策です。
相続が発生してから税理士を探すのは遅いですか?
相続発生から申告期限(10ヶ月)までに税理士を見つければ間に合いますが、四十九日を過ぎたら早めに探し始めることをお勧めします。相続税に強い税理士は特に繁忙期(1〜3月)に依頼が集中するため、その時期に相続が発生した場合は特に早めの対応が必要です。
税理士への依頼費用を抑えるコツはありますか?
最も効果的なのは「自分でできることは自分でやる」ことです。具体的には、記帳(会計ソフトへの入力)を自分で行い、月次チェックと決算・申告だけを税理士に依頼すると、記帳代行料(月1〜3万円)を節約できます。また、面談の頻度を減らす(毎月→四半期)ことで顧問料が下がるケースもあります。
複数の税理士を比較する際、何を基準にすればいいですか?
「業種の経験」「レスポンスの速さ」「料金の透明性」の3つを最優先で比較してください。面談は最低2〜3社と行い、同じ質問をして回答の質を比較するのが効果的です。初回面談が無料の事務所も多いので、費用を気にせず複数社に相談できます。
確定申告だけ依頼するスポット契約はできますか?
はい、多くの税理士事務所でスポット契約に対応しています。ただし、確定申告期(2〜3月)の直前に依頼すると断られたり、割増料金になったりすることがあります。スポット依頼でも年内(12月まで)に相談を開始するのが理想です。詳しくは「
確定申告だけ税理士に依頼するケース」をご覧ください。
まとめ
📋 この記事のポイント
- 税理士に依頼すべき8つのタイミング:会社設立・売上1,000万円超・法人化・初決算・従業員採用・税務調査・相続・事業承継
- 相談の遅れは年間数十万〜数百万円の損失につながる(特に届出書の期限切れ)
- 会社設立は「設立前」、法人化は「所得500万円超から検討」、相続は「四十九日後から」が理想
- 顧問契約は法人・年商1,000万円超に最適、スポット依頼は年商500万円未満に適している
- 税理士を探すベスト時期は6〜10月(閑散期でじっくり相談できる)
- 従業員を採用したら税務だけでなく社保・労務の手続きも発生する
まずは、この記事の8つのタイミングに自分が今当てはまっているかを確認してください。1つでも当てはまっていれば、今日中に税理士への初回相談を予約することをお勧めします。
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