【税理士×公認会計士が解説】事業承継・資金調達を考え始めたときの税理士への相談ガイド

【税理士×公認会計士が解説】事業承継・資金調達を考え始めたときの税理士への相談ガイド
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

事業承継・資金調達を考え始めたときの税理士への相談ガイド

「会社を次の世代に引き継ぎたい」「事業拡大のための資金を調達したい」と考え始めた経営者に向けて、税理士に相談すべきタイミング・支援内容・費用相場を完全ガイドします。この記事を読めば、いつ・誰に・何を相談すべきかが明確になります。

🏆 結論:事業承継は「5年前」、資金調達は「必要になる3ヶ月前」に税理士へ相談を

事業承継は後継者の育成・自社株対策・事業承継税制の適用準備に5年程度かかるため、60歳前後から準備を始めるのが理想です。資金調達(融資)は、事業計画書の作成と金融機関との交渉に2〜3ヶ月かかるため、資金が必要になる3ヶ月前には税理士に相談しましょう。いずれも「認定経営革新等支援機関」に登録された税理士を選ぶと、融資優遇や補助金申請で有利です。

事業承継で税理士に相談すべきタイミング

「5年前」が理想、「3年前」が最低ライン

事業承継を税理士に相談するタイミングは、引退予定時期の5年前が目安です。事業承継は即座に実行できるものではなく、後継者の育成、自社株の評価と対策、取引先・金融機関への説明、許認可の引き継ぎなど、多くのプロセスに時間がかかります。

中小企業庁の事業承継ガイドラインでも、後継者への移行期間として3〜5年を見込むことが推奨されています。実務では、自社株の評価額を引き下げる対策だけでも2〜3年かかることがあり、「もっと早く相談しておけばよかった」という声を多く耳にします。

経営者の年齢×会社ステージ別の相談開始判定

経営者の年齢 会社の状況 推奨アクション
50代前半後継者候補がいる自社株評価の試算+事業承継税制の適用検討を開始
50代後半後継者候補が未定M&Aの可能性も含め事業承継の方向性を決定
60代前半業績安定・後継者あり具体的な株式移転スケジュールを策定+実行
60代後半〜まだ何も着手していない今すぐ税理士に相談(選択肢が急速に狭まる)

💡 実務のポイント

事業承継の相談先として最も多いのが顧問税理士です。中小企業庁の調査によれば、後継者が決定した企業の約73%が顧問の公認会計士・税理士に事業承継について相談しています。日頃から会社の財務状況を把握している顧問税理士であれば、自社株評価から節税対策、必要な場合のM&A専門家の紹介まで、ワンストップで対応できます。

事業承継の3パターン別|税理士が果たす役割

パターン別比較表

承継方法 税理士の主な役割 費用目安 期間
① 親族内承継自社株評価・贈与税/相続税対策・事業承継税制の適用申請・生前贈与スケジュール策定30万〜100万円3〜10年
② 親族外承継(役員・従業員)株式譲渡スキーム設計・MBO資金調達支援・種類株式の活用提案50万〜200万円2〜5年
③ M&A(第三者への譲渡)財務デューデリジェンス・企業価値算定・M&A仲介会社との連携・譲渡所得の税務申告100万〜500万円+成功報酬6ヶ月〜2年

※費用は会社規模・株式評価額・スキームの複雑さにより大きく変動します。

① 親族内承継の場合に税理士がやること

親族内承継では、自社株の評価額を算定し、贈与税・相続税の負担を最小化するための対策が中心になります。税理士は、類似業種比準方式や純資産価額方式など複数の評価方法を比較し、最も有利な方法を提案します。

実務では、株式の評価額が高いと贈与税が数千万円に達するケースもあるため、「評価額を引き下げてから承継する」戦略が極めて重要です。具体的には、含み損のある資産の処分、退職金の支給による純資産の圧縮、配当金の抑制などの手法があり、これらには2〜3年の準備期間が必要です。

② 親族外承継(MBO)の場合のポイント

従業員や役員が会社を引き継ぐ場合、最大の課題は「株式を買い取る資金をどう調達するか」です。税理士は、MBO(マネジメント・バイアウト)の資金スキームを設計し、日本政策金融公庫や地元金融機関からの融資申請を支援します。

📊 公認会計士の視点

親族外承継では「種類株式」の活用も有効です。たとえば、議決権のない配当優先株式を旧経営者に残し、議決権付きの普通株式のみを後継者に譲渡することで、株式取得費用を抑えつつ経営権を移転できます。この設計には会社法の知識が必要なため、税理士と公認会計士が連携して進めるのが理想です。

③ M&Aの場合の税理士の関わり方

M&A(第三者への売却)では、税理士は主に2つの場面で関わります。まずは売却前の「財務デューデリジェンス」で会社の財務状況を整理し、買い手候補に提示する資料を作成します。次に、売却完了後の「譲渡所得の税務申告」で、株式譲渡益にかかる税金(所得税・住民税あわせて約20%)を正しく計算します。

M&A仲介会社を利用する場合でも、顧問税理士に並行して相談しておくことが重要です。仲介会社の手数料体系や契約条件について、第三者の立場からアドバイスをもらえるためです。

事業承継税制の活用と逆算タイムライン

事業承継税制(特例措置)の概要

事業承継税制の特例措置は、後継者が先代経営者から株式を贈与・相続で取得した場合に、贈与税・相続税の全額が猶予(条件を満たせば免除)される制度です。適用要件を満たせば、自社株にかかる税負担がゼロになる可能性があります。

📢 期限に注意:特例承継計画の提出期限

事業承継税制の特例措置を利用するには、令和8年(2026年)3月31日までに「特例承継計画」を都道府県知事に提出し、確認を受ける必要があります。この期限を過ぎると特例措置は利用できず、一般措置(猶予割合が低い)しか使えなくなります。贈与・相続の実行期限は令和9年12月31日までです。

逆算タイムラインで見る事業承継の進め方

時期(目安) やるべきこと 相談先
5年前後継者候補の選定・自社株評価の試算・事業承継の方向性決定顧問税理士・公認会計士
4〜3年前株価引下げ対策の実行・後継者の育成開始・特例承継計画の策定税理士・中小企業診断士
2〜1年前株式の贈与・譲渡の実行・金融機関への説明・取引先への周知税理士・弁護士・金融機関
承継後継続届出書の提出(5年間毎年)・経営の安定化支援税理士・社会保険労務士

参考: 国税庁「事業承継税制(法人版)」

AYUSAWA PARTNERS

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初回相談無料。公認会計士・税理士・社労士・行政書士がワンストップで自社株評価から融資申請まで対応します。

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資金調達で税理士に相談すべきタイミングと支援内容

資金が必要になる3ヶ月前には相談を

融資の申請から実行までには、事業計画書の作成に2〜4週間、金融機関への申込みから審査完了まで2〜6週間、融資実行まで1〜2週間と、合計で2〜3ヶ月かかるのが一般的です。「来月にはお金が必要」という段階では選択肢が極めて限られるため、早めの相談が重要です。

税理士が支援できる資金調達の場面

税理士が資金調達で果たす役割は多岐にわたります。事業計画書の作成支援、資金繰り表・損益計画の策定、金融機関との面談の同席・模擬面接、融資制度・補助金の選定、融資審査に通りやすい決算書づくりのアドバイスなどです。

特に重要なのが「認定経営革新等支援機関」に登録された税理士の活用です。認定支援機関とは、経済産業省が専門知識と実務経験を認定した税理士・公認会計士・金融機関等のことで、この認定を持つ税理士に依頼すると複数の優遇が受けられます。

認定支援機関の税理士を活用するメリット

優遇内容 具体的な効果
信用保証協会の保証料引下げ保証料が0.2%減額(例:借入1,000万円なら年2万円の節約)
日本政策金融公庫の優遇融資「中小企業経営力強化資金」が利用可能(低金利・無担保・無保証人)
補助金申請の支援事業再構築補助金・ものづくり補助金・事業承継補助金の申請に認定支援機関の関与が要件
経営改善計画策定の費用補助専門家費用の2/3(上限200万円)が補助される

参考: 中小企業庁「認定経営革新等支援機関」

資金調達の費用シミュレーション|税理士なし vs 税理士あり

📐 シミュレーション前提条件

  • 日本政策金融公庫から1,000万円の融資を申請
  • 返済期間5年(据置期間なし)
  • 税理士報酬は成功報酬型(融資額の3%)
項目 税理士なし 税理士あり(認定支援機関)
適用金利(年利)2.5%1.8%(低金利融資制度適用)
5年間の利息合計約65万円約47万円
税理士報酬0円30万円(成功報酬3%)
保証料差額(5年間)▲10万円(0.2%減額)
実質コスト合計約65万円約67万円
審査通過率の目安50〜60%80〜90%

※概算値です。金利は借入条件により異なります。審査通過率は一般的な傾向であり個別の結果を保証するものではありません。

💡 実務のポイント

上の表では実質コストがほぼ同額に見えますが、最大の差は「審査通過率」です。事業計画書の完成度が融資審査の結果を大きく左右するため、融資に慣れていない経営者が自力で申請すると、希望額の減額や融資不承認になるリスクがあります。税理士に依頼する費用は「融資を確実に受けるための保険料」と考えるのが合理的です。

事業承継と資金調達を同時に進める場合の注意点

「承継資金」の調達は通常の融資とは別の視点が必要

事業承継に伴って資金調達が必要になるケースは意外と多いです。後継者が自社株を買い取る資金、相続税の納税資金、先代経営者への退職金の原資、承継後の設備投資資金などが典型例です。

これらの資金調達では、通常の運転資金融資とは異なるスキームが必要になります。たとえば、日本政策金融公庫の「事業承継・集約・活性化支援資金」や、都道府県の制度融資(事業承継枠)など、事業承継に特化した融資制度を活用できます。

事業承継補助金の活用

事業承継をきっかけに新たな取り組みを行う場合、「事業承継・引継ぎ補助金」を活用できる可能性があります。経営革新事業では補助上限600万円(補助率2/3)が支給されます。申請には認定支援機関の関与が必要なため、認定支援機関に登録された税理士に相談するのが効率的です。

📝 行政書士の視点

事業承継では、許認可の引き継ぎが必要になるケースがあります。たとえば建設業許可、飲食店営業許可、宅地建物取引業免許などは、経営者や法人の変更に伴い新たな申請や届出が必要です。許認可の手続きを怠ると、承継後に営業ができなくなるリスクがあるため、行政書士への相談も並行して進めましょう。税理士と行政書士の両方に対応できるワンストップ事務所であれば、手続きの抜け漏れを防げます。

事業承継・資金調達に強い税理士の選び方【5つのチェックポイント】

チェック① 認定経営革新等支援機関に登録されているか

資金調達の支援を受けるなら、認定支援機関の登録は必須条件です。中小企業庁のWebサイトで登録の有無を確認できます。

チェック② 事業承継の支援実績があるか

税理士のすべてが事業承継に精通しているわけではありません。自社株評価、事業承継税制の申請、M&Aの実務経験など、具体的な実績を確認しましょう。

チェック③ 他士業や金融機関とのネットワークがあるか

事業承継では、弁護士(契約書・遺言書)、司法書士(登記)、社会保険労務士(従業員の雇用条件引継ぎ)、M&A仲介会社など、複数の専門家との連携が必要です。ワンストップで対応できる事務所か、信頼できる専門家を紹介してくれるネットワークがあるかを確認しましょう。

チェック④ 融資面談の同席・模擬面接に対応しているか

融資審査の結果を左右するのは、書類の質と面談での説明力です。面談の同席や模擬面接に対応している税理士であれば、審査通過率が大きく向上します。

チェック⑤ 報酬体系が明確か

事業承継や資金調達の支援は、通常の顧問料とは別料金になることが一般的です。着手金・成功報酬の有無、追加費用の発生条件などを事前に確認し、見積書をもらいましょう。

税理士の費用相場や選び方の全体像については「税理士顧問料の費用相場と選び方」で詳しく解説しています。また、税理士に相談すべきタイミングの一覧は「税理士に依頼すべきタイミング」もご参照ください。

🔷 社労士の視点

事業承継で見落としがちなのが「従業員の雇用条件の引き継ぎ」です。経営者が変わっても、従業員の労働条件(給与・退職金・就業規則)は原則として引き継がれます。ただし、M&Aの場合は雇用契約の承継方法(事業譲渡 vs 株式譲渡)によって扱いが異なるため、社会保険労務士にも事前に相談しておくことをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

事業承継の相談は顧問税理士にすべきですか、それとも専門の税理士を探すべきですか?
まずは顧問税理士に相談するのが基本です。会社の財務状況を最もよく知っている専門家だからです。ただし、顧問税理士が事業承継の実務経験に乏しい場合は、事業承継に特化した税理士やM&A専門のアドバイザーを紹介してもらうか、セカンドオピニオンとして別の専門家にも相談することをおすすめします。
事業承継税制の特例措置はまだ間に合いますか?
特例承継計画の提出期限は令和8年(2026年)3月31日です。すでに期限を過ぎている場合は特例措置の適用はできません。ただし、一般措置(猶予割合が低い)は期限なく利用できますので、税理士に一般措置の活用可能性を相談してください。今後の税制改正で期限が延長される可能性もあるため、最新情報は税理士に確認しましょう。
融資の申請で税理士に払う報酬の相場はいくらですか?
融資サポートの報酬体系は税理士事務所によって異なりますが、一般的には着手金3万〜5万円+成功報酬(融資額の2〜5%)か、成功報酬のみ(融資額の3〜5%)が相場です。顧問契約を結んでいる場合は、着手金・成功報酬が無料または大幅に割引されるケースも多いです。
事業承継の相談は無料でできますか?
初回相談を無料としている税理士事務所は多いです。また、事業承継・引継ぎ支援センター(各都道府県に設置)では無料で事業承継の相談ができます。ただし、具体的な自社株評価や税務対策の提案には有料の契約が必要になります。
後継者がいない場合、税理士に何を相談すればよいですか?
後継者不在の場合は、M&A(第三者への売却)が主な選択肢になります。税理士には、まず会社の企業価値を算定してもらい、売却の可能性と想定価格の目安を確認しましょう。その上で、M&A仲介会社の紹介や、売却までの財務体質改善のアドバイスを受けられます。
スポット依頼で確定申告だけ頼んでいる税理士に事業承継の相談はできますか?
スポット依頼の税理士に相談すること自体は可能ですが、事業承継は長期的かつ継続的なサポートが必要なため、顧問契約への切り替えを検討するのが現実的です。事業承継の準備段階で顧問契約に移行し、年間を通じた財務管理と承継対策を並行して進めるのが最も効率的です。スポット依頼と顧問契約の違いについては「確定申告のスポット依頼ガイド」もご参照ください。
資金調達の際、税理士と銀行のどちらに先に相談すべきですか?
税理士に先に相談するのがおすすめです。税理士に事業計画書や資金繰り表を整備してもらってから銀行に持ち込む方が、審査の印象が良くなります。また、税理士が認定支援機関であれば、どの金融機関・融資制度が自社に最適かのアドバイスも受けられるため、二度手間を避けられます。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 事業承継は引退予定の5年前に税理士へ相談開始。3年前でもギリギリ、それ以降は選択肢が急速に狭まる
  • 承継方法(親族内/親族外/M&A)によって税理士の役割と費用が大きく異なる
  • 事業承継税制の特例措置は期限付き。適用検討は今すぐ税理士に確認を
  • 資金調達は必要時期の3ヶ月前に相談。認定支援機関の税理士なら低金利・保証料減額の優遇あり
  • 事業承継と資金調達を同時に進める場合は、事業承継補助金や特化型融資制度も活用
  • 税理士選びでは認定支援機関の登録・承継実績・他士業ネットワーク・報酬体系の4点を確認

事業承継も資金調達も、「まだ先の話」と思っているうちに準備期間がなくなるケースが多く見られます。特に事業承継は、早く動き始めるほど選択肢が広がり、税負担を抑えられます。「そろそろ考えないといけないかな」と思った時点が、税理士に相談する最適なタイミングです。

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