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役員貸付金・役員借入金の税務リスク|認定利息・認定賞与・解消方法
「決算書に役員貸付金や役員借入金が膨らんでいるが、どんなリスクがあるのか?」とお悩みの経営者に向けて、認定利息・認定賞与・相続税の各リスクと5つの解消方法を完全ガイドします。この記事を読めば、税務調査で指摘されない管理方法がわかります。


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🏆 結論:役員貸付金も役員借入金も「放置」が最大のリスク
役員貸付金は、適正利率で利息を徴収し、返済計画どおりに回収していなければ「認定賞与」として法人税・所得税の追徴課税を受けます。役員借入金は、役員が亡くなった場合に貸付金債権として相続財産に含まれ、回収不能でも原則として額面どおりの相続税が課されます。いずれも「今すぐ問題がないから」と放置することが最大のリスクです。
まず、役員貸付金と役員借入金は方向が逆の取引であり、税務リスクの種類も異なります。混同しやすいため、1つの表で整理します。
| 項目 | 役員貸付金 | 役員借入金 |
|---|---|---|
| お金の流れ | 会社 → 役員に貸付 | 役員 → 会社に貸付 |
| BS上の表示 | 資産(貸付金) | 負債(借入金) |
| 利息の扱い | 適正利率で利息を徴収する義務あり | 無利息でもOK(税務上の問題なし) |
| 主な税務リスク | 認定利息・認定賞与(法人税+所得税) | 相続税(役員死亡時に貸付金債権が相続財産) |
| 融資への影響 | 金融機関から「資金の個人流用」と見られ評価低下 | 自己資本比率の計算上、実質的に資本とみなされる場合あり |
| 緊急度 | 高い(税務調査で毎年指摘されるリスク) | 高い(相続発生時に一気に問題化) |
以下では、それぞれの税務リスクと解消方法を詳しく解説します。役員報酬の全体設計については「役員報酬の基礎知識|3つの支給方法と決め方・税務上の注意点」をご覧ください。
役員貸付金が発生する主なパターンは以下の4つです。
①役員個人の生活費や住宅資金が不足し、会社から一時的に借りた。②会社の経費として処理できない支出を会社の口座から支払い、結果的に貸付金扱いになった。③仮払金として処理した経費精算が未完了のまま決算を迎え、役員貸付金に振り替わった。④税務調査で架空経費や使途不明金が否認され、役員貸付金として認定された。
💡 実務のポイント
中小企業では、社長個人と会社の財布が混同しやすく、「いつの間にか貸付金が膨らんでいた」というケースが非常に多いです。年間100社以上の決算を見てきた経験上、役員貸付金は一度発生すると返済が進まず雪だるま式に増える傾向があります。月次決算で残高を確認し、増加傾向にある場合は早期に対策を講じることが重要です。
会社が役員に金銭を貸し付けた場合、適正な利率で利息を徴収する必要があります。無利息または低利率で貸し付けた場合、適正利率との差額が「給与(経済的利益)」として課税されます。
適正利率は以下の優先順位で決定します。
| 優先順位 | ケース | 適用する利率 |
|---|---|---|
| ① | 会社が銀行等から借入れた資金を役員に貸した場合 | その借入金の利率 |
| ② | 会社の借入金の平均調達金利を合理的に算定できる場合 | 平均調達金利 |
| ③ | 上記以外(自己資金からの貸付等) | 利子税特例基準割合(年度ごとに変動) |
ただし、以下の3つのいずれかに該当する場合は、無利息でも給与課税されません。①災害や病気で臨時に多額の生活資金が必要となり、合理的な金額・返済期間で貸し付ける場合。②会社の借入金の平均調達金利で貸し付ける場合。③利息の差額が年間5,000円以下の場合。
役員貸付金が以下のいずれかに該当する場合、税務調査で「貸付金」ではなく「役員賞与」と認定されるリスクがあります。
| 否認されるパターン | 税務署の判断根拠 |
|---|---|
| 金銭消費貸借契約書がない | 貸付の実態がなく個人流用と判断 |
| 返済実績が全くない | 返済の意思なし=実質的に給与 |
| 利息の設定・徴収がない | 第三者間ではあり得ない条件 |
| 使途が私的消費(生活費・遊興費等) | 経済的利益の供与と判断 |
| 毎月の給与に加え追加で会社から出金 | 定期同額給与を超える役員報酬 |
⚠️ 認定賞与の課税インパクト
役員貸付金が「役員賞与」と認定された場合、①法人側は全額が損金不算入(法人税の増加)、②役員個人に給与所得として所得税・住民税が課税、③源泉徴収漏れとして不納付加算税・延滞税が課税、という三重の課税が発生します。悪質と判断された場合は重加算税の対象にもなり得ます。
最も一般的な方法は、毎月の役員報酬から一定額を天引きして返済に充てる方法です。例えば月額80万円の役員報酬のうち20万円を返済に充てれば、年間240万円を返済できます。ただし、役員報酬の手取りが減るため生活への影響を考慮する必要があります。また、返済額分の所得税・住民税・社会保険料は依然として課税されます。
返済原資が不足する場合は、定期同額給与のルールに従い、事業年度開始から3ヶ月以内に役員報酬を増額し、増額分を返済に充てる方法もあります。ただし、報酬増額分には所得税・住民税・社会保険料がかかるため、トータルの負担を試算したうえで判断してください。
法人契約の生命保険に加入している場合、解約返戻金を退職金として支給し、その退職金で貸付金を精算する方法があります。退職所得は税負担が軽いため、トータルの税負担を抑えられる可能性があります。
役員借入金は、会社から見れば負債ですが、貸し付けている役員個人から見れば「貸付金債権」という資産です。役員が亡くなった場合、この貸付金債権は相続財産に含まれ、原則として額面(帳簿価額)どおりの金額で相続税が課税されます。
会社が債務超過で返済の見込みがなくても、法的な破産手続き開始等の限られたケースを除き、貸付金債権の評価額を引き下げることは困難です。つまり、回収できる見込みがない貸付金に対しても相続税を払わなければならないという、極めて不利な状況が生じます。
🧮 シミュレーション:役員借入金5,000万円の相続税インパクト
役員借入金5,000万円がある経営者(法定相続人2人)が亡くなった場合、その5,000万円は他の相続財産に上乗せされます。仮に他の相続財産が1億円なら、合計1.5億円が課税対象です。相続税の税率は30%(控除700万円)の区分に入り、貸付金5,000万円の存在で相続税が約780万円増加する計算になります。実際には回収不能の「貸付金」に対してこの税額を支払わなければなりません。
①会社の資金繰りが悪化し、銀行融資ではカバーできない部分を社長個人のお金で補てんした。②社長が個人のポケットマネーで会社の経費を立替払いし、精算が行われないまま放置された。③役員報酬の未払いが積み上がった。いずれも中小企業では日常的に起こる現象ですが、放置すると相続時に大きな問題になります。
| 解消方法 | 法人税への影響 | 相続税への効果 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ①現金返済 | なし | △(現金が増えるだけで財産総額は不変) | 資金繰りに余裕がある場合のみ |
| ②報酬減額+返済充当 | 法人税やや増加 | △(同上) | 返済額に所得税・社保がかからない点がメリット |
| ③債権放棄(債務免除) | 債務免除益に法人税課税 | ◎(貸付金債権が消滅) | 繰越欠損金がある場合に有効。みなし贈与に注意 |
| ④DES(債務の株式化) | 債務消滅益が生じる場合あり | ◎(貸付金が株式に変わる) | 資本金増加で均等割増。手続きが複雑 |
| ⑤暦年贈与 | なし | ○(年間110万円ずつ圧縮) | 時間がかかる。生前贈与加算に注意 |
債権放棄やDESにより役員借入金が消滅すると、会社の純資産が増加し株価が上がります。役員以外にも株主がいる場合、株価上昇分が他の株主への「みなし贈与」とみなされ、贈与税が課税される可能性があります。同族会社で親族が株主になっている場合は特に注意が必要です。
📊 公認会計士の視点
解消方法の選択は「法人税への影響」「相続税への効果」「みなし贈与リスク」「資金繰りへの影響」の4つの観点から総合的に判断する必要があります。繰越欠損金がある会社なら債権放棄が有効、資金力がある会社なら現金返済が最もシンプルです。DESは財務改善効果が大きい反面、手続きが複雑で専門家の関与が必須です。
①金銭消費貸借契約書を作成し、貸付金額・利率・返済期限・返済方法を明記しているか。②適正利率(借入金の平均調達金利または利子税特例基準割合)で利息を設定しているか。③利息を実際に徴収(現金受領または役員報酬から天引き)しているか。④返済計画に基づき、実際に返済が行われているか。⑤月次で残高を確認し、増加傾向にないか。
金融機関は、決算書に多額の役員貸付金がある会社を「融資した資金が個人流用される可能性がある」と評価します。また、金融機関の自己査定では、役員貸付金は資産として評価されない(不良資産として差し引かれる)ため、実質的な純資産が目減りします。今後の融資を見据えるなら、役員貸付金は早急に解消すべきです。
法人決算の全体像については「法人決算の流れ完全ガイド」を、会社設立時の資金管理については「会社設立の流れ完全ガイド」をご覧ください。
退職した元役員に対して会社が資金を貸し付けている場合、その元役員が退任後も会社経営に関与していると、税務調査で「みなし役員」と認定されるリスクがあります。みなし役員に認定されると、貸付金に対する認定利息の差額が「役員賞与」として損金不算入となり、さらに個人の所得税も追徴されます。
退任後は経営判断に関与しないことを明確にし、貸付金の返済も計画的に進めることが重要です。分掌変更と退職金の関係については「役員退職金の適正額と税務」で詳しく解説しています。
📋 この記事のポイント
役員貸付金も役員借入金も、「今すぐ税務上の問題がないから」と放置するのが最大のリスクです。税務調査で認定賞与として追徴されるか、相続発生時に多額の相続税が課されるか、いずれかのタイミングで必ず問題が顕在化します。決算書に残高がある場合は、できるだけ早く解消に向けた計画を立てましょう。
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