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「うちの会社は留保金課税の対象になるのか?」と不安を感じている中小企業経営者に向けて、対象法人の判定方法・計算の仕組み・回避策を完全ガイドします。この記事を読めば、自社が課税対象かどうかを判断し、必要な対策を選べるようになります。


「うちの会社は留保金課税の対象になるのか?」と不安を感じている中小企業経営者に向けて、対象法人の判定方法・計算の仕組み・回避策を完全ガイドします。この記事を読めば、自社が課税対象かどうかを判断し、必要な対策を選べるようになります。
🏆 結論:資本金1億円以下なら原則として留保金課税の対象外
留保金課税は、「特定同族会社」のうち資本金1億円超の法人に適用される制度です。資本金1億円以下の中小法人は原則として対象外ですが、資本金5億円以上の大法人の完全子会社等に該当する場合は例外的に課税対象となります。対象法人は「留保金額」から「留保控除額」を差し引いた「課税留保金額」に10〜20%の特別税率が課されるため、配当政策や設備投資による対策が重要です。
留保金課税とは、特定同族会社が利益を配当せずに社内に留保した場合、通常の法人税に加えて特別税率で課税される制度です。法人税法第67条に規定されています。
制度の趣旨を理解するには、「なぜ配当しないと課税されるのか」を知る必要があります。同族会社のオーナー社長は、配当として受け取ると所得税の累進課税(最高45%+住民税10%)が適用されます。一方、法人に利益を留保しておけば法人税率(23.2%〜)で済むため、配当を控えて会社にお金を貯め込む「租税回避的な行動」が起きやすくなります。
💡 実務のポイント
実務では、留保金課税が問題になるのは「資本金1億円超の特定同族会社」に限られます。平成19年度税制改正で資本金1億円以下の法人が適用対象外となって以降、対象法人は大幅に減少しました。国税庁の会社標本調査によれば、対象となる特定同族会社は全法人のうち約4,500社程度です。ただし、中小法人でも大法人の完全子会社に該当する場合は対象となるため、グループ企業のオーナーは注意が必要です。
この制度により、特定同族会社が「許容額(留保控除額)」を超えて利益を留保すると、超過分に10〜20%の特別税率が通常の法人税に上乗せされます。つまり、法人税の二重課税が発生する構造です。
以下に該当する法人は、留保金課税の対象外です。
| 区分 | 対象外の理由 |
|---|---|
| 資本金1億円以下の法人 | 平成19年度改正で適用除外(ただし大法人の完全子会社等を除く) |
| 非同族会社 | 3人以下の株主グループで50%超を保有していない |
| 同族会社だが特定同族会社でない法人 | 1つの株主グループで50%超を保有していない |
| 清算中の法人 | 事業活動を行っていないため |
| 投資法人・特定目的会社 | 利益の大半を配当する義務がある |
「自社が留保金課税の対象になるかどうか」は、以下の3段階で判定します。最終的に「特定同族会社」に該当し、かつ資本金が1億円を超えている場合にのみ課税対象となります。
| 段階 | 判定項目 | Yes の場合 | No の場合 |
|---|---|---|---|
| ① | 3人以下の株主グループで発行済株式の50%超を保有しているか? | →「同族会社」に該当 → ②へ進む | 非同族会社 →対象外 |
| ② | 1つの株主グループだけで50%超を保有しているか?(被支配会社でない法人株主を除いて再判定) | →「特定同族会社」に該当 → ③へ進む | 同族会社だが特定同族会社ではない →対象外 |
| ③ | 期末の資本金が1億円を超えているか?(大法人の完全子会社等を含む) | →留保金課税の対象 | → 原則対象外(※大法人完全子会社を除く) |
⚠️ 注意:大法人の完全子会社は資本金1億円以下でも対象
資本金5億円以上の大法人による完全支配関係がある法人は、自社の資本金が1億円以下であっても留保金課税の対象となります。グループ会社のオーナーは、親会社との資本関係を必ず確認してください。また、100%子会社→孫会社の間接完全支配関係も対象に含まれます。
判定の際に見落としやすいのが、「株主グループ」の範囲です。株主本人だけでなく、以下の者が同一グループとして扱われます(法人税法施行令第4条)。
個人株主の場合は、配偶者・6親等内の血族・3親等内の姻族・内縁関係者・生計を一にする者・生計を維持されている者が同族関係者に含まれます。実務では、オーナー社長の親族が分散して株式を持っていても、親族グループ全体で50%超を保有していれば同族会社に該当します。
法人株主の場合は、その株主が支配(50%超保有)している法人も同族関係者に含まれます。つまり、オーナーが別に持株会社を持っていて、その持株会社経由で株式を保有しているケースでも、同一グループとしてカウントされます。
留保金課税の計算は、「課税留保金額」を算出し、そこに特別税率を乗じるという流れです。計算式を順に見ていきましょう。
ステップ1:留保金額を計算する
留保金額 = 当期の課税所得 + 課税外収入項目(受取配当金の益金不算入額、繰越欠損金の損金算入額など)- 社外流出額(配当金・役員賞与など)- 法人税等(住民税・事業税を含む)
ステップ2:留保控除額を計算する
以下の3つのうち、最も大きい金額が留保控除額となります。
| 基準 | 計算式 |
|---|---|
| ①所得基準額 | 当期の所得金額 × 40% |
| ②定額基準額 | 2,000万円 ×(当期の月数 ÷ 12) |
| ③利益積立金基準額 | 期末資本金 × 25% - 期末利益積立金額 |
ステップ3:課税留保金額を計算する
課税留保金額 = 留保金額 - 留保控除額(マイナスの場合は課税なし)
ステップ4:特別税率を適用する
| 課税留保金額の区分 | 特別税率 |
|---|---|
| 3,000万円以下の部分 | 10% |
| 3,000万円超〜1億円以下の部分 | 15% |
| 1億円超の部分 | 20% |
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | A社(所得5,000万円) | B社(所得1億円) | C社(所得2億円) |
|---|---|---|---|
| 課税所得 | 5,000万円 | 1億円 | 2億円 |
| 法人税等(概算30%) | 1,500万円 | 3,000万円 | 6,000万円 |
| 留保金額(所得-法人税等) | 3,500万円 | 7,000万円 | 1億4,000万円 |
| 留保控除額(①所得×40%) | 2,000万円 | 4,000万円 | 8,000万円 |
| 留保控除額(②定額基準) | 2,000万円 | 2,000万円 | 2,000万円 |
| 留保控除額(③利益積立金基準) | 7,500万円 | 7,500万円 | 7,500万円 |
| 採用する留保控除額(最大値) | 7,500万円 | 7,500万円 | 8,000万円 |
| 課税留保金額 | 0円 | 0円 | 6,000万円 |
| 留保金課税額 | 0円 | 0円 | 750万円 |
※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。C社の計算:3,000万円×10%+3,000万円×15%=750万円
💡 実務のポイント
上記のA社・B社のように、利益積立金基準額が大きければ課税留保金額がゼロになるケースは珍しくありません。設立間もない会社や利益積立金が少ない会社ほど、③の基準額が大きくなるため有利に働きます。逆に、長年にわたって利益を蓄積してきた老舗企業は③の基準額が小さくなり、留保金課税の負担が重くなる傾向があります。
留保金課税の対象となる法人が取りうる対策は、大きく5つに分類できます。それぞれの効果・リスク・実行難易度を比較してみましょう。
| 対策 | 効果 | リスク | 難易度 | スピード |
|---|---|---|---|---|
| ①配当を実施する | ◎ | △ | 低 | 即効 |
| ②設備投資・研究開発で利益を圧縮 | ○ | ○ | 低 | 当期 |
| ③役員報酬を増額する | ○ | △ | 中 | 翌期〜 |
| ④減資で資本金を1億円以下にする | ◎ | △ | 高 | 数ヶ月 |
| ⑤株主構成を変更する | ◎ | × | 高 | 数ヶ月 |
最もシンプルな対策は、利益を配当として社外に流出させることです。配当金は留保金額の計算で「社外流出額」として控除されるため、留保金額そのものが減少します。
ただし、オーナー社長が配当を受け取ると所得税の累進課税が適用されます。上場株式の配当は申告分離課税(20.315%)を選択できますが、非上場株式の配当は総合課税が原則です。高額所得者の場合、留保金課税の特別税率(10〜20%)より所得税率が高くなるケースもあるため、トータルの税負担を比較して判断する必要があります。
📊 公認会計士の視点
配当のタイミングも重要です。留保金課税は事業年度ごとに計算されますが、期末日の翌日から確定申告期限までに決議した配当は、基準日が属する事業年度の社外流出として扱われます(法人税法第67条第4項)。つまり、決算確定後の配当決議でも当期の留保金額を減らす効果があります。
正当な事業目的で利益を使うことは、留保金課税の回避というよりも「課税所得の圧縮」による対策です。特に即時償却が認められる設備投資は効果的です。中小企業経営強化税制による即時償却や、研究開発税制の税額控除を活用すれば、課税所得そのものが減少し、結果として留保金額も減少します。
役員報酬を増額すれば法人の課税所得が減少しますが、定期同額給与のルール上、期首から3ヶ月以内に改定する必要があります。また、不相当に高額な部分は損金算入が認められません(法人税法第34条第2項)。役員報酬の最適化については「役員報酬の基礎知識と決め方の完全ガイド」で詳しく解説しています。
資本金を1億円以下にすれば、留保金課税の対象外となります。無償減資(資本の払い戻しを伴わない減資)であれば株主への影響は少なく、比較的実行しやすい方法です。
ただし、資本金を1億円以下にすると、外形標準課税の対象外となる代わりに、均等割の区分が変わるなど、留保金課税以外の税制にも影響します。また、取引先や金融機関からの信用面で影響が出る可能性もあるため、総合的な判断が求められます。
筆頭株主グループの持株比率を50%以下にすれば、特定同族会社に該当しなくなります。従業員持株会の設立や、信頼できる第三者への一部譲渡が方法として考えられます。ただし、経営権の分散リスクが最大のデメリットであり、事業承継計画との整合性も必要です。安易な株式移動は相続税・贈与税の問題も生じるため、慎重な検討が必要です。
同族会社には、留保金課税とは別に「行為計算の否認規定」という制度があります。法人税法第132条は、同族会社の行為または計算が法人税の負担を不当に減少させるものと認められる場合に、税務署がこれを否認できると定めています。
留保金課税の回避策を講じる際にも、この規定に抵触しないよう注意が必要です。たとえば、留保金課税だけを目的とした不自然な株式移動や、実態のない配当は否認されるリスクがあります。
| 行為の内容 | 否認リスク | 対策 |
|---|---|---|
| 形式的な株式分散(名義株) | 高い — 実質的な支配関係で判定される | 実質的な議決権移転を伴う譲渡にする |
| 決算直前の一時的な配当 | 中程度 — 継続性がないと指摘される可能性 | 毎期の配当方針として決議記録を残す |
| 不相当に高額な役員報酬 | 高い — 同業・同規模法人との比較で判定 | 職務内容に見合った金額にする |
| 事業目的のない設備投資 | 中程度 — 事業計画との整合性で判定 | 取締役会で事業目的を明確に決議する |
💡 実務のポイント
行為計算否認規定はあくまで「不当に」税負担を減少させる場合に適用されるものであり、合理的な事業目的に基づく経営判断まで否認されるわけではありません。税務調査で問われるのは「その行為に経済的合理性があるかどうか」です。留保金課税の対策を講じる際は、必ず事業上の合理的な理由を明確にし、取締役会議事録や事業計画書に記録を残しておくことが重要です。
同族会社のオーナー社長が個人所有の土地を自社に貸すケース、または逆に会社所有の土地を社長個人に貸すケースは非常に多く見られます。このとき注意すべきなのが「借地権の認定課税」です。
権利金の授受が慣行となっている地域で、権利金を収受せずに土地を貸した場合、借地人に対して「権利金相当額の経済的利益を受けた」として認定課税が行われます(法人税法第22条、所得税法第36条)。同族会社間の取引は経済合理性が欠如しやすいため、特に税務調査で注目されるポイントです。
| 方法 | 内容 | メリット・デメリット |
|---|---|---|
| ①権利金を収受する | 通常の取引と同じ条件で契約 | 最も確実だが、多額の資金移動が必要 |
| ②相当の地代を支払う | 更地価額の年6%程度の地代を支払う | 権利金不要だが、地代負担が重い。3年以内ごとに改訂が必要 |
| ③無償返還届出書を提出する | 土地を将来無償で返還する届出を税務署に提出 | 権利金の認定課税は回避できるが、相当の地代未満の場合は地代の認定課税が残る |
参考: 国税庁「No.5732 相当の地代及び相当の地代の改訂」
💡 実務のポイント
実務で最も多いのは③の「土地の無償返還に関する届出書」の提出です。この届出書を提出したうえで、固定資産税の2〜3倍程度の地代(通常の地代以上・相当の地代未満)を設定するケースが一般的です。この場合、権利金の認定課税は回避できますが、相当の地代との差額について地代の認定課税が問題になりえます。ただし、個人地主→法人借地人のケースでは、法人側に受贈益が計上されるものの支払地代との相殺で実質的な課税は生じないことが多いです。個別の状況によるため、土地の貸借契約を結ぶ際は必ず税理士にご相談ください。
借地権の認定課税は同族会社特有のリスクであり、特に相続税の評価にも影響します。無償返還届出書を提出した場合、同族会社の株式評価で借地権価額(自用地評価額の20%相当)を純資産価額に算入する必要がある点にも留意してください。相続税・贈与税に関する詳しい解説は「法人成りのタイミングと判断基準」もあわせてご覧ください。
2022年4月以降のグループ通算制度では、留保金課税は通算法人ごとに個別計算されます。旧連結納税制度ではグループ全体で計算されていたため、この変更はグループ企業に大きな影響を与えています。
| 項目 | 旧連結納税制度 | グループ通算制度 |
|---|---|---|
| 計算単位 | 連結グループ全体 | 通算法人ごと |
| 留保控除額 | グループ合算で計算 | 各法人単独で計算 |
| グループ内配当 | 連結消去により影響なし | 社外流出として留保金額から控除可能 |
グループ通算制度下では、各通算法人の利益が偏在している場合に留保金課税の負担が増える可能性があります。グループ内での利益配分や配当政策の見直しが重要です。法人決算全体の流れについては「法人決算の流れと手続きの完全ガイド」で解説しています。
留保金課税は事業承継の局面でも重要な論点です。特に、長年利益を蓄積してきた特定同族会社では、内部留保の増加が株式評価額の上昇につながり、承継時の相続税・贈与税負担が重くなります。
留保金課税の対象となる企業は、利益を社内に蓄積しやすい体質であることが多く、結果として自社株の評価額が高くなりがちです。純資産価額方式で評価する場合、利益積立金の増加は直接的に株価の上昇要因となります。
事業承継を見据えた対策としては、計画的な配当による利益還元、役員退職金の支給による純資産の圧縮、持株会社の活用による株式評価額の引下げなどが考えられます。これらの対策は留保金課税の軽減にもつながるため、両方の観点から総合的に検討することが効果的です。
会社設立時の株主構成の設計については「会社設立の流れと手続きの完全ガイド」を、役員退職金を活用した対策は「役員退職金の適正額と損金算入の要件」を参照してください。
留保金課税の計算結果は、法人税の確定申告書の別表三(一)「特定同族会社の留保金額に対する税額の計算に関する明細書」に記載します。
別表三(一)の記載で特に注意が必要なのは以下の点です。
まず、留保金額の計算において「法人税額等」に含める範囲です。法人税のほか、地方法人税、住民税(法人税割)、事業税が含まれます。事業税は翌期の損金算入額を当期の法人税額等に含める処理が必要です。
次に、「社外流出額」の範囲です。配当金のほか、寄附金の損金不算入額、交際費の損金不算入額なども社外流出として扱われます。これらを正確に把握しないと、留保金額の計算を誤る原因になります。
⚠️ 注意:別表三(一)の添付漏れに注意
特定同族会社に該当する場合、課税留保金額がゼロであっても別表三(一)の添付が必要です。留保金課税が発生しないからといって別表三(一)を省略すると、税務署から特定同族会社の判定根拠の提示を求められることがあります。
📋 この記事のポイント
留保金課税は計算が複雑で、対策を講じる際も複数の税目への影響を考慮する必要があります。自社の状況に合った最適な対策を検討する際は、法人税だけでなく所得税・相続税まで見据えた総合的な判断が求められます。
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