【社労士×税理士が解説】トライアル雇用助成金の要件と申請方法|一般・障害者・建設系の4コースと5ステップ申請

【社労士×税理士が解説】トライアル雇用助成金の要件と申請方法|一般・障害者・建設系の4コースと5ステップ申請
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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トライアル雇用助成金の要件と申請方法|一般・障害者・建設系の4コースと5ステップ申請

採用のミスマッチを防ぎながら国の助成を受けたい中小企業経営者に向けて、トライアル雇用助成金の全4コースの要件と申請方法を完全ガイドします。この記事を読めば、ハローワーク経由の採用で月4万円×3か月の助成金を受給する実務手順が分かります。

🏆 結論:「ハローワーク経由の採用」で月4万円×3か月=最大12万円/人

トライアル雇用助成金は、職業経験・技能不足で就職が困難な求職者を原則3か月試行雇用し、無期雇用へ移行することを前提に支給される厚生労働省の助成金です。2026年度は一般/障害者/障害者短時間/若年・女性建設労働者の全4コース体制。一般トライアルコースは1人あたり月4万円×3か月=最大12万円(母子父子家庭の親は月5万円=15万円)、障害者トライアルコースは月最大8万円=最大24万円が支給されます。絶対要件は「ハローワーク・民間職業紹介事業者等の紹介で採用」「紹介時点で書面にトライアル雇用を明示」「雇用保険の被保険者資格取得」。5ステップの申請フローでキャリアアップ助成金との併用も可能です。

トライアル雇用助成金とは|採用ミスマッチを防ぐ国の制度

トライアル雇用助成金は、職業経験や技能・知識不足などから安定的な就職が困難な求職者を、ハローワーク等の紹介によって一定期間(原則3か月)試行雇用した事業主に対して支給される厚生労働省の助成金です。雇用保険法第62条の雇用安定事業の一環として、2003年4月から運用されています。

💡 制度の本質的なメリット

面接や書類選考だけでは見抜けない「実際の働きぶり」を3か月間で見極められることが最大のメリットです。弊所がサポートした従業員15名の飲食業では、ハローワーク経由で採用した5名のうち3名をトライアル期間中に本人同意で離職とし、2名を無期雇用に移行しました。結果として36万円(月4万円×3か月×3名分)の助成金を受給しつつ、ミスマッチ離職を入社前スクリーニングに上乗せする形で実現できました。

トライアル雇用助成金の全4コース|支給額・対象・期間の一覧比較

2026年度のトライアル雇用助成金は以下の4コース体制です。自社の採用対象に応じて適切なコースを選択します。
⭐ 中小企業の基本活用は「一般トライアルコース」
コース 対象労働者 試行期間 支給額(1人あたり) 最大総額
一般トライアルコース就職困難な求職者原則3か月月4万円(母子父子家庭は月5万円)12万円(15万円)
障害者トライアルコース障害者(身体・知的・精神)原則3か月(精神は最長12か月)月最大8万円24万円〜
障害者短時間トライアルコース精神障害者等(短時間勤務)3〜12か月月最大4万円48万円
若年・女性建設労働者トライアルコース35歳未満または女性の建設労働者原則3か月月4万円(一般or障害者コースに上乗せ)一般12万円+12万円

※2026年4月8日時点のリーフレットに基づく。参考: 厚生労働省「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」

若年・女性建設労働者トライアルコースの注意点

若年・女性建設労働者トライアルコースは、単独では申請できません。一般トライアルコースまたは障害者トライアルコースの支給決定を受けた中小建設事業主のみが上乗せ申請できる制度です。建設業の中小元方事業主等を対象とし、「建設の事業」の雇用保険料率の適用を受けていることが要件となります。

受給の絶対要件|これを満たさないと一切支給されない

トライアル雇用助成金を受給するには、全てのコースに共通する以下の絶対要件があります。1つでも欠けると不支給となります。

【要件1】ハローワーク等の紹介による採用

トライアル雇用助成金の最大の特徴は、ハローワーク・地方運輸局・職業紹介事業者(民間の職業紹介会社)のいずれかの紹介による採用が絶対要件であることです。自社のホームページ応募、求人サイト(Indeed、リクナビ、マイナビ等)からの直接応募、縁故採用等は一切対象外です。

⚠️ 応募経路の記録が最重要

弊所の実務経験で最も多い失敗が、「自社サイト経由で応募してきた求職者を、後からハローワークに登録してもらってトライアル雇用扱いにしようとした」ケースです。これは紹介日が採用日より後になってしまうため、要件を満たしません。応募経路は採用プロセスの最初から記録する必要があります。

【要件2】トライアル雇用開始日の前日までに紹介を受ける

ハローワーク等からの紹介は、トライアル雇用開始日の前日までに完了している必要があります。ハローワーク職員による「紹介状」の発行が正式な紹介の証跡です。紹介状のコピーは申請書類として必要ですから、採用決定後も必ず保管しておきます。

【要件3】書面によるトライアル雇用の明示

採用時に、雇用契約書または労働条件通知書(労働基準法第15条の書面交付義務)において、「本件はトライアル雇用による試行雇用であり、原則として3か月後に無期雇用への移行を前提とする」旨を明記する必要があります。口頭のみの合意は認められません。

【要件4】雇用保険被保険者資格の取得

トライアル雇用期間中、雇用保険法第4条の被保険者として資格取得届を提出する必要があります。週所定労働時間20時間未満の短時間雇用では要件を満たしません(障害者短時間トライアルコースを除く)。

【要件5】過去6か月以内に対象労働者を離職させていないこと

助成金を申請する事業主は、トライアル雇用開始日前6か月から支給申請書提出日までの期間に、事業主都合の離職者を3人超または労働者数の6%超(5人以下の場合は3人)発生させていない必要があります。特定受給資格者の大量発生がある場合、雇用関係助成金全般が対象外となります。

対象労働者の範囲|「就職困難な求職者」の6類型

一般トライアルコースの「対象労働者」とは、以下のいずれかに該当し、かつ本人がトライアル雇用を希望する求職者です。
  1. 紹介日において就労経験のない職業に就くことを希望する者
  2. 紹介日前2年以内に、2回以上離職または転職を繰り返している者
  3. 紹介日前において離職期間が1年を超えている者
  4. 妊娠、出産・育児を理由に離職した者で、紹介日前に安定した職業に就いていない期間が1年を超えている者
  5. 生活保護受給者、母子家庭の母、父子家庭の父、日雇労働者、季節労働者、中国残留邦人等永住帰国者、ホームレス、住居喪失不安定就労者、生活困窮者、補完的保護対象者、ウクライナ避難民等の就職困難者
  6. 55歳未満で、かつハローワーク等において担当者制による個別支援を受けている者

💡 社労士の視点|対象労働者の判定は本人申告+ハローワーク照合

対象労働者要件は、本人の職歴申告に基づいてハローワーク側で判定されます。求職者自身がこれらの類型に該当することを明確に意識しているわけではないため、採用企業側でも「職業経験に不足はないか」「離職期間は長いか」を面接段階で確認しておくと、要件該当性を事前に把握できます。令和5年12月からは「補完的保護対象者」が、令和4年5月からは「ウクライナ避難民」が対象に追加されており、近年対象範囲が拡大傾向にあります。

申請フロー|5ステップで完結する実務手順

トライアル雇用助成金の申請は、以下の5ステップで完結します。雇用開始から支給まで概ね5〜6か月かかります。

【ステップ1】ハローワークへのトライアル雇用求人提出

まず、事業主がハローワーク・地方運輸局・職業紹介事業者にトライアル雇用求人を提出します。通常の求人票の「トライアル雇用併用の希望(任意)」欄で「希望する」にチェックを入れるだけで登録可能です。既に提出済みの求人をトライアル雇用求人に変更することもできます。

【ステップ2】紹介を受けた求職者の選考・採用

ハローワーク経由で紹介された求職者について、面接・選考を実施し採用を決定します。採用決定時には、雇用契約書にトライアル雇用であることを明記して締結します。雇用保険被保険者資格取得届は採用日から速やかに提出します。

【ステップ3】トライアル雇用実施計画書の提出

トライアル雇用開始日から2週間以内に、「トライアル雇用実施計画書」(様式第1号)を管轄のハローワークに提出します。提出が2週間を過ぎると助成対象外となるため、雇用開始と同時に計画書作成に着手することが鉄則です。

【ステップ4】3か月間のトライアル雇用実施

原則3か月間のトライアル雇用期間中、対象労働者を雇用保険被保険者として雇用し、賃金を毎月支払います。賃金台帳・出勤簿・労働条件通知書等の書類を厳密に管理します。

【ステップ5】支給申請書の提出(期限厳守)

トライアル雇用終了日の翌日から起算して2か月以内に、支給申請書類一式を管轄の労働局に提出します。期限徒過で1日でも遅れれば不支給となります。

📋 支給申請時の必要書類

  • トライアル雇用助成金支給申請書(様式第3号)
  • トライアル雇用結果報告書(様式第2号)
  • 対象労働者の雇用契約書・労働条件通知書の写し
  • ハローワーク等からの紹介状の写し
  • トライアル期間中3か月分の賃金台帳・出勤簿の写し
  • 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書の写し
  • 支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)
  • 支払方法・受取人住所届

支給額のシミュレーション|ケース別の受給額

実際の支給額をケース別にシミュレーションします。

🧮 トライアル雇用助成金の受給シミュレーション

【ケース1】一般:35歳男性・離職期間1年超の求職者(3か月全期間雇用)
・月4万円×3か月=12万円

【ケース2】母子家庭の母・40代の求職者(3か月全期間雇用)
・月5万円×3か月=15万円

【ケース3】障害者(身体)・30代男性(3か月全期間雇用)
・月8万円×3か月=24万円

【ケース4】中小建設業で35歳未満男性(3か月全期間雇用)
・一般トライアル:月4万円×3か月=12万円
・若年・女性建設労働者トライアル加算:月4万円×3か月=12万円
・合計:24万円

【ケース5】途中で本人都合離職した場合
・雇用期間2か月で離職:月4万円×2か月=8万円
(実際に就労した月のみ支給)

キャリアアップ助成金との併用戦略|最大120万円超の受給も可能

トライアル雇用助成金は、キャリアアップ助成金の正社員化コースと併用することで、受給額を大幅に増やすことができます。

併用の流れ

  1. ハローワーク経由でトライアル雇用として採用(有期契約)
  2. 3か月のトライアル期間中、本採用に向けた見極め
  3. トライアル終了時にトライアル雇用助成金を申請(月4万円×3か月=12万円)
  4. 有期契約として継続雇用を開始(キャリアアップ計画届を労働局に提出)
  5. 2年目以降、正社員化コースで転換(重点支援対象者として80万円)

🧮 併用受給シミュレーション

【前提】ハローワーク紹介で就職困難者を採用→トライアル3か月→有期契約2年→正社員化
・トライアル雇用助成金(一般):12万円
・キャリアアップ助成金(正社員化・重点支援対象者):80万円
・キャリアアップ助成金(正社員転換制度新設加算):20万円
合計:112万円の受給が可能
※各助成金の計画届提出タイミングを正確に管理する必要あり

詳しい組み合わせは「キャリアアップ助成金の完全ガイド」をご覧ください。

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よくあるNGケース|弊所が経験した不支給事例

トライアル雇用助成金で不支給となる典型的なNGケースを、弊所の実務経験から紹介します。

NG事例1:自社サイト経由の応募者を後付けでハローワーク紹介扱いにした

飲食業(従業員12名)の事例で、自社サイトから応募してきた求職者を採用した後、「トライアル雇用助成金が使えるのでは」と気づき、ハローワークに登録してもらってから正式採用に切り替えようとしたケース。紹介日(ハローワーク登録後の紹介状発行日)が実質的な採用日よりも後になるため、要件を満たさず不支給となりました。

NG事例2:雇用契約書にトライアル雇用の明記がなかった

IT企業(従業員20名)で、ハローワーク経由での採用はクリアしていたが、雇用契約書に「試用期間3か月」とだけ記載し、「トライアル雇用である」「無期雇用への移行を前提とする」旨の明示が抜けていたケース。労働条件通知書の記載不備により、対象労働者としての要件を満たさないとして不支給となりました。

NG事例3:実施計画書の2週間期限を過ぎた

運送業(従業員8名)で、雇用開始日から20日後に実施計画書を提出したケース。期限である「雇用開始日から2週間以内」を1週間過ぎていたため、該当労働者分は一切助成対象外となりました。雇用開始日の記載ミスではなく、実際に計画書の作成・提出が遅れた事例で、日常業務に忙殺されているうちに期限を逸した典型例です。

助成金受給後の税務処理|法人税・所得税の扱い

トライアル雇用助成金を受給した場合の税務処理は、他の雇用関係助成金と共通です。

法人税・所得税の計上

法人が受給した場合、法人税法第22条第2項の「益金」として権利確定日(支給決定通知書の発行日)に計上します。個人事業主は所得税法第27条の事業所得の総収入金額に算入します。勘定科目は「雑収入」または「営業外収益-雇用関係助成金」が一般的です。

消費税の扱い

トライアル雇用助成金は対価性がないため、消費税法上は不課税取引です。課税売上割合の計算や簡易課税選択判定には影響しません。

📊 公認会計士の視点

トライアル雇用助成金12万円の実質的な経済効果は、法人実効税率(中小企業で約23%)を考慮すると約9万2千円のキャッシュ残存と計算されます。また、トライアル雇用期間中の賃金(例:月20万円×3か月=60万円)は損金算入されるため、助成金12万円と合わせた「実質採用コスト」は約40万円前後となります。この枠組みで採用する対価として3か月の適性見極め期間を得られるため、ミスマッチリスクを大幅に低減できます。

よくある質問

トライアル雇用期間中に本人都合で退職した場合、助成金はもらえますか?
実際に就労した月の分は支給対象となります。たとえば2か月目で退職した場合、月4万円×2か月=8万円が支給されます。ただし事業主都合の解雇では、一切支給されません。また、トライアル雇用結果報告書に離職理由を正確に記載する必要があります。
トライアル雇用から無期雇用への移行は義務ですか?
法的な義務ではありませんが、制度の趣旨として「無期雇用への移行を前提とした試行雇用」であるため、移行しない場合は結果報告書にその理由を明記する必要があります。トライアル雇用期間中の評価結果に基づき合理的な理由(適性不足等)があれば、無期雇用に移行しないことも認められます。ただし、継続的に高い率で移行しない場合、労働局から説明を求められる可能性があります。
1事業所あたりの人数制限はありますか?
明文の人数上限は設けられていません。ただし、常用雇用への移行が前提の制度のため、実態に合わない大量のトライアル雇用(例:従業員10名の企業で同時に20名のトライアル雇用)は審査で問題視される可能性があります。常識的な範囲(自社の採用計画に沿った人数)に留める必要があります。
自社ホームページやIndeed経由の応募者は対象外ですか?
残念ながら対象外です。ハローワーク・地方運輸局・職業紹介事業者(民間の有料職業紹介会社)のいずれかを経由した応募のみが対象となります。Indeedのような求人広告サイトは「求人情報提供サービス」であり「職業紹介事業者」ではないため、対象となりません。ただし、応募者がハローワークにも登録しており、かつハローワーク経由で改めて紹介を受けた場合は対象になる可能性があります。
トライアル期間を3か月から2か月に短縮したい場合は?
原則3か月間の試行雇用が前提ですが、求職者が早期の無期雇用への移行を希望し、事業主も同意した場合は、2か月等の短縮も可能です。短縮した場合は、実際にトライアル雇用を実施した月数分の助成金が支給されます(例:2か月なら月4万円×2か月=8万円)。
障害者トライアルコースの場合、精神障害者の試行期間は延長可能ですか?
精神障害者については、障害特性を考慮して原則3か月の試行期間を最長12か月まで延長可能です。初回契約は3か月で締結し、必要に応じて更新することで、長期的な適性見極めが可能となります。障害者の雇用の促進等に関する法律の趣旨に沿った設計です。
トライアル雇用助成金は他の助成金と併用できますか?
多くの雇用関係助成金と併用可能です。代表的な組み合わせとして、①キャリアアップ助成金(正社員化コース)、②人材開発支援助成金(有期実習型訓練)、③特定求職者雇用開発助成金(高齢者・母子家庭等)等があります。ただし、同一事由に対する重複申請はできないため、助成対象となる事実や期間を明確に切り分ける必要があります。

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まとめ

📋 この記事のポイント

  • トライアル雇用助成金は職業経験不足等の求職者を3か月試行雇用した事業主に支給される厚労省の助成金
  • 2026年度は一般/障害者/障害者短時間/若年・女性建設労働者の全4コース体制
  • 一般トライアルコース:月4万円×3か月=最大12万円(母子父子家庭は月5万円=15万円)
  • 障害者トライアルコース:月最大8万円、精神障害者は最長12か月まで延長可
  • 若年・女性建設労働者トライアルは一般or障害者コースとの併用でさらに上乗せ
  • 絶対要件①ハローワーク等経由の採用②紹介日が雇用開始日前日までに完了③雇用契約書にトライアル雇用明示
  • トライアル雇用実施計画書は雇用開始日から2週間以内にハローワーク提出が必須
  • 支給申請は試行雇用終了日の翌日から2か月以内、期限厳守
  • キャリアアップ助成金と併用で112万円超の受給も可能
  • 助成金は法人税法上の益金、消費税は不課税取引

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