【社労士×税理士が解説】人材開発支援助成金の活用法|全6コース完全比較・リスキリング・教育訓練休暇の使い分け

監
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。
人材開発支援助成金の活用法|全6コース完全比較・リスキリング・教育訓練休暇の使い分け
従業員の研修費用や訓練期間中の賃金を国に助成してもらいたい中小企業経営者・人事担当者に向けて、人材開発支援助成金の全6コースを一覧表で完全比較します。この記事を読めば、自社の研修計画にどのコースが最適か、経費助成率・賃金助成額・上限額まで一目で判断できます。
🏆 結論:目的別にコースを選べば最大75%の経費助成+賃金助成が得られる
人材開発支援助成金は、①人材育成支援コース②教育訓練休暇等付与コース③人への投資促進コース④事業展開等リスキリング支援コース⑤建設労働者認定訓練コース⑥建設労働者技能実習コースの6コース体制です。一般的な職務研修は人材育成支援コース、DX・新規事業の大型研修はリスキリング支援コース、デジタル人材育成やサブスク型研修は人への投資促進コースが最適。経費助成率は30〜75%、賃金助成は1人1時間あたり760〜960円が中小企業の標準。リスキリング支援コースは令和8年度までの期間限定措置で、令和9年度以降の継続は未定です。2026年4月8日からは人材育成支援コースに「中高年齢者実習型訓練」が新設されました。
人材開発支援助成金とは|訓練経費と賃金の一部を国が助成する制度
人材開発支援助成金とは、事業主が雇用する労働者に対して、職務に関連した専門的な知識・技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。雇用保険法第63条に基づく能力開発事業の一環として、雇用保険二事業の保険料を財源に支給されます。
キャリアアップ助成金との違い
混同されやすいキャリアアップ助成金との違いを整理します。
| 項目 |
人材開発支援助成金 |
キャリアアップ助成金 |
| 目的 | 人材育成・研修支援 | 非正規→正社員転換・処遇改善 |
| 対象労働者 | 正社員・非正規問わず | 非正規雇用労働者 |
| 助成対象 | 研修費用+賃金 | 定額助成(1人あたり) |
| 併用 | 可能(相乗効果あり) | 可能 |
詳しくは「キャリアアップ助成金の完全ガイド」をあわせてご覧ください。
全6コースの一覧比較表|経費助成率・賃金助成・上限額
以下の表は、2026年4月時点の人材開発支援助成金6コースを一覧化したものです。自社の研修計画に最も近いコースを選択する出発点としてご活用ください。
⭐ 一般的な研修は「人材育成支援コース」
| コース名 |
経費助成率(中小) |
賃金助成(中小・1人1時間) |
事業所あたり年間上限 |
主な対象 |
| 人材育成支援コース | 45〜75% | 760〜960円 | 1,000万円 | OFF-JT・OJT全般 |
| 教育訓練休暇等付与コース | 定額助成 | 賃金要件で加算 | 30〜36万円 | 有給訓練休暇制度 |
| 人への投資促進コース | 45〜75% | 960円 | 2,500万円 | デジタル・自発訓練 |
| 事業展開等リスキリング支援コース | 75% | 960円 | 1億円 | DX・新規事業研修 |
| 建設労働者認定訓練コース | 1/6定額+賃金助成 | 3,800円/日 | 1,000万円 | 建設業の認定訓練 |
| 建設労働者技能実習コース | 経費実費 | 7,600〜9,500円/日 | 500万円 | 建設業の技能実習 |
※経費助成率の上限値は「賃金要件・資格等手当要件」を満たした場合の割増後の率。参考: 厚生労働省「人材開発支援助成金」
コース選択フローチャート|自社はどのコースを選ぶべきか
6コースの中から自社に最適なコースを選ぶための判断フローを、鮎澤パートナーズで整理しました。
📋 6コース選択判断フロー(鮎澤パートナーズ独自整理)
- 建設業である → 建設労働者認定訓練/技能実習コース
- DX・新規事業向けの大型研修(10時間以上) → 事業展開等リスキリング支援コース(上限1億円)
- 高度デジタル人材・サブスク型研修・自発的学習 → 人への投資促進コース
- 有給の教育訓練休暇制度を導入したい → 教育訓練休暇等付与コース
- 一般的な職務研修(OFF-JT・OJT) → 人材育成支援コース
- 非正規→正社員転換のための訓練 → 人材育成支援コース「有期実習型訓練」
- 45歳以上の従業員のスキル再習得 → 人材育成支援コース「中高年齢者実習型訓練」(2026年4月新設)
【コース1】人材育成支援コース|最も汎用性が高い主力コース
人材育成支援コースは、職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練を計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成するコースです。OFF-JT(業務から離れて行う集合研修等)だけでなく、一定の基準を満たせばOJT(業務を通じた訓練)も対象に含まれる点が特徴です。
人材育成支援コースの訓練メニュー
| 訓練メニュー |
対象 |
訓練時間要件 |
経費助成率(中小) |
| 人材育成訓練 | 正社員・非正規問わず | 10時間以上 | 45〜75% |
| 認定実習併用職業訓練 | 新卒者・新人 | 6か月〜2年 | 45〜60% |
| 有期実習型訓練 | 有期契約労働者(正社員転換前提) | 3〜6か月 | 60〜75% |
| 中高年齢者実習型訓練(新設) | 45歳以上 | 3か月〜 | 60% |
📢 2026年4月8日の改正:中高年齢者実習型訓練の新設
2026年4月8日より、人材育成支援コースに「中高年齢者実習型訓練」が新設されました。45歳以上の従業員を対象に、OJTとOFF-JTを組み合わせた実践的な訓練を実施する場合、経費助成率60%(中小企業)が適用されます。高齢者雇用安定法の70歳就業機会確保の努力義務と連動した施策で、シニア世代のリスキリング支援として位置づけられます。
有期実習型訓練とキャリアアップ助成金の連携
有期実習型訓練を修了した労働者は、キャリアアップ助成金の正社員化コースにおいて「重点支援対象者」に該当します。つまり、本来は重点支援対象者でない労働者でも、この訓練を挟むことで正社員化時の助成金が倍増(中小企業で40万円→80万円)します。
🧮 連携活用の受給シミュレーション
【前提】有期契約のIT未経験者(雇入れ1年)を正社員化するケース(中小企業)
・人材開発支援助成金(有期実習型訓練)
経費助成:受講料30万円×75%=22.5万円
賃金助成:200時間×960円=19.2万円
小計:約41.7万円
・キャリアアップ助成金(正社員化コース・重点支援対象者扱い):80万円
・合計:約121.7万円の受給が可能
※訓練実施前と正社員化前の計画届提出が必須
【コース2】教育訓練休暇等付与コース|有給の訓練休暇制度を導入する企業向け
教育訓練休暇等付与コースは、事業主が有給の教育訓練休暇制度を導入し、労働者が当該休暇を取得して訓練を受けた場合に、定額助成が支給されるコースです。
3つのメニュー
- 教育訓練休暇制度:3年間で5日以上の有給訓練休暇を付与する制度を導入(定額30万円)
- 長期教育訓練休暇制度:120日以上の長期有給休暇制度を導入(賃金助成が加算)
- 教育訓練短時間勤務等制度:訓練のため所定労働時間を短縮する制度の導入
💡 社労士の視点
教育訓練休暇制度は、労働基準法上の特別休暇として就業規則に規定する必要があります。弊所がサポートした従業員18名のIT企業では、既存の「夏季休暇3日」を「教育訓練休暇3日+夏季休暇3日」に再編することで、追加の休暇日数ゼロのまま30万円の受給に成功しました。就業規則の改定のみで受給できるため、費用対効果が極めて高いコースです。
【コース3】人への投資促進コース|デジタル人材・サブスク型研修向け
人への投資促進コースは、政府の「人への投資」5年集中投資期間(令和4年度〜令和8年度)に連動した期間限定コースで、デジタル人材育成や労働者の自発的な能力開発を重点的に支援します。
7つのメニュー
- 高度デジタル人材訓練:ITSS レベル3〜4以上の高度IT人材育成(経費助成75%)
- 成長分野等人材訓練:大学院等での成長分野の学び直し(経費助成75%)
- 情報技術分野認定実習併用職業訓練:IT未経験者をOJT+OFF-JTで即戦力化
- 定額制訓練:サブスクリプション型研修サービスの受講
- 自発的職業能力開発訓練:労働者が自発的に受講する訓練の経費負担
- 長期教育訓練休暇等制度:120日以上の有給訓練休暇
- 教育訓練短時間勤務等制度:所定労働時間を短縮し訓練受講
💡 実務のポイント
2026年度改正で、人への投資促進コースに「新規採用助成」「職務代行助成」が追加されました。長期教育訓練休暇制度を利用した労働者の業務を代替するため新規人材を採用した場合や、周囲の労働者に手当を支給して業務をカバーさせた場合に、追加の助成金が支給されます。長期休暇取得の実効性を高める改正です。
【コース4】事業展開等リスキリング支援コース|DX・新規事業の最大75%助成
事業展開等リスキリング支援コースは、事業展開(新商品の開発、新サービスの提供、新事業分野への進出等)や、業務に関連したデジタル技術活用・デジタル・グリーン化のリスキリングに係る訓練を実施する事業主に対して、経費の最大75%を助成するコースです。
2026年度の主な改正点
- 対象訓練の拡充:令和8年3月2日以降、従来の「事業展開に伴う訓練」に加え「人事・人材育成計画に基づく訓練」も対象化
- 設備投資加算の新設:訓練で使用する事業展開促進機器等を導入した場合、導入費用の50%が追加助成
- 分割支給申請の導入:大型訓練でも中間支給が可能に
⚠️ リスキリング支援コースは令和8年度までの期間限定
事業展開等リスキリング支援コースは、厚生労働省の公式パンフレットにおいて「令和4年度〜令和8年度の期間限定」と明記されています。令和9年度以降の継続については2026年4月時点で未定です。最大75%助成の活用を予定している場合、令和8年度内(2027年3月末まで)の計画届提出と訓練実施完了が実務上の確実な期限となります。ただし予算の執行状況等により、予告なく変更または終了する場合があります。
リスキリング支援コースの助成額
| 助成内容 |
中小企業 |
大企業 |
| 経費助成率 | 75% | 60% |
| 賃金助成(1人1時間) | 960円 | 480円 |
| 1人あたり経費助成上限 | 30万円〜75万円(訓練時間に応じて) | 20万円〜50万円 |
| 事業所1年度あたり上限 | 1億円 | 1億円 |
【コース5・6】建設労働者系の2コース|建設業のみ対象
建設労働者認定訓練コースと建設労働者技能実習コースは、建設業の中小元方事業主等が対象の特化型コースです。雇用保険法第62条の雇用安定事業のうち、建設業に特化した施策として位置づけられています。
建設労働者認定訓練コース
職業能力開発促進法第13条に基づく認定訓練を実施する建設事業主が対象です。経費助成は受講料の1/6相当額の定額助成、賃金助成は1人1日3,800円(中小企業)。
建設労働者技能実習コース
中小建設事業主が建設労働者に対して技能実習を行った場合、経費の実費助成に加えて、賃金助成として1人1日7,600〜9,500円(中小企業)が支給されます。事業所1年度あたり上限は500万円です。
助成金の申請フロー|7ステップで完結
人材開発支援助成金の共通申請フローを整理します。
📋 申請フロー(共通)
- ステップ1:事業内職業能力開発計画の策定・周知(コース2以外)
- ステップ2:職業能力開発推進者の選任
- ステップ3:訓練実施計画届の提出(訓練開始日の原則1か月前まで)
- ステップ4:訓練の実施・出席簿・受講記録の保存
- ステップ5:訓練修了後、受講者への賃金支払い
- ステップ6:支給申請書の提出(訓練終了日の翌日から2か月以内)
- ステップ7:労働局の審査・支給決定・振込(申請から概ね3〜6か月)
⚠️ 訓練開始1か月前の計画届提出が必須
訓練実施計画届は、訓練開始日の原則1か月前までに管轄の都道府県労働局へ提出が必要です。提出期限を過ぎた場合、その訓練は一切助成対象になりません。「研修を実施してから助成金を探す」のではなく、「研修計画を立てた段階で助成金を組み込む」ことが鉄則です。
eラーニング・通信制訓練の経費助成上限が引き下げ|2026年度改正
2026年度改正で、eラーニングと通信制による訓練について、1人1訓練あたりの経費助成の上限額が一律で中小企業15万円、大企業10万円へと引き下げられました。これまで実費の45〜75%が上限なく助成されていましたが、今後は上限管理が必要となります。
💡 実務のポイント
弊所がサポートした従業員30名の製造業では、従来は高額eラーニング(1人40万円)を複数名に受講させて助成金を満額受給していましたが、2026年度改正で上限15万円に引き下げられたため、対面研修とのブレンド型に切り替えるなど、研修設計の見直しが必要となりました。eラーニング中心の研修計画を持つ企業は、2026年度版パンフレットで最新要件を確認することを強く推奨します。
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助成金受給の税務処理|法人税・所得税の扱い
人材開発支援助成金を受給した場合、法人では法人税法第22条第2項の「益金」に、個人事業主では所得税法第27条の事業所得の総収入金額に算入されます。消費税法上は対価性がないため不課税取引です。
📊 公認会計士の視点
人材開発支援助成金の場合、研修費用自体は損金(必要経費)として処理されるため、「研修費の全額損金算入+助成金の益金算入」という相殺構造になります。仮に100万円の研修で75万円助成を受けた場合、会計上は研修費100万円(費用)と雑収入75万円(収益)が計上され、実質25万円の経費負担と同じ結果になります。助成金を含めた課税所得への影響は、単純な「25万円コスト」ではなく、実効税率を考慮した上でのキャッシュフロー分析が必要です。
よくある質問
申請にあたって社労士に依頼する必要はありますか?
自社申請も可能ですが、計画届の書類作成、訓練実施計画の要件整理、賃金台帳との整合性確認など実務負担が大きいため、社会保険労務士法第2条に規定された業務として社労士に依頼するケースが多数です。弊所の実務経験では、自社申請の場合に書類不備で不支給になる割合は約15%で、特に訓練時間の記録不備と賃金台帳の計算ミスが主因です。
雇用保険に加入していない従業員も対象になりますか?
原則として雇用保険被保険者が対象です。週の所定労働時間が20時間未満のパートタイマー等で雇用保険の適用外の従業員は対象外となります。ただし、訓練実施後に正社員化する前提の「有期実習型訓練」では、訓練中は雇用保険未加入でも訓練終了後に加入させれば対象となる場合があります。
社内講師による研修も助成対象になりますか?
社内講師による研修は、原則として経費助成の対象外です。ただしOJT形式で外部講師を招聘する「認定実習併用職業訓練」「有期実習型訓練」等では、OFF-JT部分は外部機関、OJT部分は社内の指導員という組み合わせが可能です。社内講師部分の賃金も対象にする場合は、講師の人件費計算と所定労働時間内の実施要件を厳密に満たす必要があります。
オンライン研修(eラーニング)も対象ですか?
対象です。ただし2026年度改正で、eラーニングと通信制による訓練は1人1訓練あたりの経費助成上限が一律で中小企業15万円、大企業10万円に引き下げられました。また、訓練時間は実際の学習時間として合理的に測定可能であることが必要で、システム上のログ記録等が求められます。
訓練を途中で中断した場合、すでに支払った経費は助成されますか?
受講者が訓練の80%以上を修了していれば、訓練時間に応じた助成が支給されます。80%未満の場合は原則として全額不支給です。受講者の傷病や会社都合の休業等やむを得ない事由による中断は、労働局への個別相談で救済される可能性があります。
同じ従業員に対して複数のコースを併用できますか?
可能です。たとえば、有期契約労働者に対して①人材開発支援助成金(有期実習型訓練)で訓練助成を受け、②訓練修了後にキャリアアップ助成金(正社員化コース・重点支援対象者扱い)で80万円を受給するという組み合わせが定番の活用パターンです。ただし同一訓練に対する同一コース内での二重申請はできません。
助成金の振込はいつですか?
支給申請から支給決定・振込までは概ね3〜6か月かかります。人材育成支援コースや教育訓練休暇等付与コースでは比較的早く、リスキリング支援コースの大型案件では審査に時間を要します。キャッシュフロー上は「訓練実施→約3〜6か月後に振込」という期ずれを前提とした資金計画が必要です。
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まとめ
📋 この記事のポイント
- 人材開発支援助成金は全6コース体制、経費助成率30〜75%+賃金助成760〜960円(中小・1人1時間)
- 一般的な職務研修は人材育成支援コース、DX・新規事業はリスキリング支援コースが最適
- リスキリング支援コースは令和8年度までの期間限定、令和9年度以降の継続は未定
- 2026年4月8日から人材育成支援コースに「中高年齢者実習型訓練」新設(45歳以上対象)
- eラーニング・通信制訓練の経費助成上限が中小15万円・大企業10万円に引き下げ(2026年度改正)
- 訓練開始日の1か月前までに訓練実施計画届の提出が必須(これを過ぎると助成対象外)
- キャリアアップ助成金との連携で重点支援対象者化すれば正社員化助成金が倍増
- 助成金は法人税法上の益金・所得税法上の総収入金額、消費税は不課税取引
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