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特定居住用宅地等の特例|同居要件・持ち家要件を具体例で解説
「親の自宅を相続したいけれど、同居していないと使えない特例があるらしい…」とお困りの方に向けて、特定居住用宅地等の適用要件を4パターン(配偶者・同居親族・家なき子・老人ホーム)に分けて、具体的な判定例・計算シミュレーション付きで解説します。


「親の自宅を相続したいけれど、同居していないと使えない特例があるらしい…」とお困りの方に向けて、特定居住用宅地等の適用要件を4パターン(配偶者・同居親族・家なき子・老人ホーム)に分けて、具体的な判定例・計算シミュレーション付きで解説します。
🏆 結論:取得者によって要件が大きく異なる
特定居住用宅地等の特例は、被相続人の自宅敷地330㎡まで評価額を80%減額できる制度です。配偶者は無条件で適用できますが、同居親族は「申告期限まで居住+保有継続」が必要です。別居の親族(家なき子)は「配偶者も同居相続人もいない」「3年以上持ち家なし」等の厳しい要件があります。老人ホーム入居の場合でも、要介護認定+自宅を賃貸に出していないことで適用可能です。
特定居住用宅地等とは、小規模宅地等の特例のうち、被相続人が住んでいた自宅の敷地(借地権を含む)に適用される類型です。330㎡までの部分について、相続税の課税価格を80%減額できます。
小規模宅地等の特例の全体像については「小規模宅地等の特例とは?適用要件・減額割合・限度面積を完全ガイド」で詳しく解説しています。本記事では、最も利用頻度の高い「特定居住用宅地等」に絞って、取得者パターン別の要件を深掘りします。
📐 基本スペック
特定居住用宅地等は、土地を取得する相続人の属性によって適用要件が大きく異なります。まずは全体像を比較表で把握しましょう。
| 取得者 | 保有継続 | 居住継続 | 同居要件 | 持ち家要件 | 特記事項 |
|---|---|---|---|---|---|
| 配偶者 | 不要 | 不要 | 不要 | 不要 | 無条件。取得後すぐ売却してもOK |
| 同居親族 | 必要 | 必要 | 必要 | 不要 | 申告期限まで居住+保有を継続 |
| 家なき子(別居親族) | 必要 | 不要 | 不要 | 必要 | 配偶者も同居相続人もいないことが前提 |
| 生計一親族 | 必要 | 必要 | 不要 | 不要 | 被相続人所有の家に生計一親族が居住していたケース |
参考: 国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
配偶者が被相続人の自宅敷地を取得する場合、保有継続も居住継続も一切不要で、無条件に特例が適用されます。極端に言えば、取得した翌日に売却しても特例は有効です。
この優遇は、配偶者が被相続人の生活基盤を最も密接に共有していた存在であることを考慮したものです。なお、配偶者は小規模宅地等の特例だけでなく、配偶者の税額軽減(1.6億円 or 法定相続分まで非課税)も併用できるため、配偶者が自宅を取得する場合は相続税がゼロになるケースが多いです。
💡 実務のポイント
「配偶者が全て相続すれば税金ゼロ」と考える方がいますが、二次相続(配偶者が亡くなった時の相続)では配偶者控除が使えません。一次相続で配偶者に全て集中させると、二次相続でかえって高額の相続税が発生するリスクがあります。配偶者の税額軽減について詳しくは「配偶者の税額軽減|1.6億円まで非課税の仕組みと二次相続リスク」をご覧ください。
同居親族が特定居住用宅地等の特例を適用するには、相続開始の直前から申告期限まで「居住を継続」し「土地を保有し続ける」ことが必要です。最も重要なのは、「同居」とは何を意味するか、という点です。
国税庁は「同居」を「被相続人と日常生活を共にしていたかどうか」で判断するとしています。住民票の住所ではなく、実態として生活の拠点がどこにあったかが判定基準です。
| ケース | 同居と認められる? | 理由 |
|---|---|---|
| 被相続人と同じ家に住み、日常生活を共にしていた | ○ | 典型的な同居パターン |
| 単身赴任で平日は別の場所に住んでいるが、家族は自宅に居住 | ○ | 生活の拠点は自宅と判断される |
| 被相続人が入院中だったが、退院後は自宅に戻る予定だった | ○ | 一時的な入院は同居の中断にならない |
| 二世帯住宅で被相続人と同一建物に居住(区分所有登記なし) | ○ | 区分所有登記がなければ同居と認められる |
| 二世帯住宅で被相続人と同一建物に居住(区分所有登記あり) | × | 区分所有登記があると別居扱い |
| 住民票だけ被相続人の住所に移したが、実際は別の場所に居住 | × | 実態が伴わない形式的な同居は不可 |
| 週末だけ被相続人の家に泊まりに行っていた | × | 日常生活の拠点が別にある |
| 特例適用のために相続直前に引っ越してきた | × | 特例適用目的の一時的入居は不可 |
⚠️ 注意:二世帯住宅の区分所有登記
二世帯住宅で区分所有登記がされている場合(たとえば1階を父名義、2階を子名義で別々に登記)、子は被相続人と「同居」と認められず、特定居住用宅地等の適用が受けられません。実務ではこのケースで特例が使えないことに気づくのが相続発生後という場合が多く、事前の登記確認が極めて重要です。
同居親族が特例を適用するには、相続開始から申告期限(10か月後)まで、その建物に住み続け、かつ土地を持ち続ける必要があります。
| ケース | 適用可? |
|---|---|
| 申告期限まで住み続け、土地も保有継続 | ○ |
| 申告期限前に別の場所に引っ越した | × |
| 申告期限前に土地を売却した | × |
| 建物を建て替え中のため一時的に仮住まい | ○(土地を保有し居住の意思あり) |
配偶者も同居相続人もいない場合に限り、別居の親族でも一定の要件を満たせば特定居住用宅地等の特例を適用できます。これが通称「家なき子特例」です。平成30年度改正でさらに要件が厳格化されています。
| 要件 | 内容 | H30改正の影響 |
|---|---|---|
| ① | 被相続人に配偶者がいないこと | — |
| ② | 被相続人と同居していた法定相続人がいないこと | — |
| ③ | 相続開始前3年以内に自己・配偶者・3親等内親族・特別関係法人の持ち家に住んでいないこと | H30改正で範囲拡大 |
| ④ | 相続開始時に居住している家屋を過去に所有していたことがないこと | H30改正で追加 |
| ⑤ | 申告期限までその宅地を保有していること | — |
| ⑥ | 被相続人の親族であること | — |
💡 実務のポイント:H30改正で封じられた「抜け道」
改正前は「自分の持ち家を親族の同族会社に売却し、そのまま社宅として住む」ことで家なき子要件を満たすスキームが横行していました。改正で③に「3親等内親族・特別関係法人の持ち家」が追加、④に「過去に所有していた家屋」が追加されたため、このスキームは封じられました。現場では改正前の情報を見て「使える」と誤解しているケースが今でもあります。
家なき子特例の詳細な解説は「家なき子特例とは?適用要件と平成30年改正後の注意点」をご覧ください。
被相続人が亡くなる前に老人ホームに入居していた場合でも、一定の要件を満たせば、空き家になった自宅の敷地に特定居住用宅地等の特例を適用できます。平成25年度改正で要件が明確化されました。
| 判定ポイント | 要件 |
|---|---|
| ①入居理由 | 要介護認定・要支援認定を受けている、または障害者支援施設等への入所 |
| ②施設の種類 | 都道府県に届出がされている老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅等 |
| ③入居後の自宅 | 他人に賃貸していないこと(空き家のまま or 生計一親族が居住はOK) |
| 入居後の自宅の状況 | 特定居住用 | 貸付事業用 |
|---|---|---|
| 空き家のまま | ○ 適用可 | — |
| 生計一親族が居住 | ○ 適用可 | — |
| 生計別の親族が居住 | × 適用不可 | — |
| 他人に賃貸 | × 適用不可 | ○ 適用可(50%減額) |
📊 公認会計士の視点
老人ホーム入居後に自宅を賃貸に出す場合は、特定居住用宅地等(80%減額)は使えなくなりますが、貸付事業用宅地等(50%減額)の適用可能性があります。ただし限度面積が200㎡に縮小し、減額割合も50%に下がるため、80%減額との差は大きいです。老人ホーム入居前に、賃貸に出すかどうかを慎重に検討しましょう。
自宅敷地が限度面積330㎡を超える場合、全面積ではなく330㎡までの部分に80%減額が適用されます。
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | 計算 |
|---|---|
| 特例適用対象部分の評価額 | 8,000万円 × 330㎡ ÷ 500㎡ = 5,280万円 |
| 減額金額 | 5,280万円 × 80% = 4,224万円 |
| 対象外部分の評価額 | 8,000万円 − 5,280万円 = 2,720万円(そのまま) |
| 課税価格に算入される金額 | 8,000万円 − 4,224万円 = 3,776万円 |
500㎡のうち330㎡分に80%減額が適用され、残り170㎡分はそのままの評価額です。結果として、8,000万円の土地が3,776万円の評価になり、約53%の減額効果があります。面積が330㎡以内に収まっていれば80%減額(8,000万円→1,600万円)でしたので、面積が大きい場合は減額率が下がる点に注意してください。
マンション(区分所有建物)の敷地に特例を適用する場合、土地全体の面積ではなく、敷地権の割合を掛けた面積が対象です。
🧮 具体例:マンションの特例計算
マンション敷地全体の面積:3,000㎡
被相続人の敷地権割合:1/100
対象面積:3,000㎡ × 1/100 = 30㎡
→ 330㎡以内なので全面積に80%減額が適用
相続税評価額2,000万円 × 80% = 1,600万円の減額
マンションの場合は敷地権割合が小さいため、限度面積330㎡を超えることはほとんどありません。相続税の計算方法については「相続税の計算方法|税率・基礎控除・シミュレーション付きで解説」をご覧ください。
取得者のパターンによって提出する書類が異なります。
| 書類 | 配偶者 | 同居親族 | 家なき子 | 老人ホーム |
|---|---|---|---|---|
| 戸籍謄本 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 遺産分割協議書の写し | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 小規模宅地等の計算明細書 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 3年以内の居住家屋が持ち家でないことの証明 | — | — | ○ | — |
| 介護保険被保険者証の写し | — | — | — | ○ |
相続税の基本的なしくみについては「相続税のしくみ|基礎控除・税率・計算の流れを初心者向けに解説」で詳しく解説しています。
📋 この記事のポイント
特定居住用宅地等の特例は、取得者のパターンによって要件が大きく異なるため、「自分は適用できるのか」の判断は早めに専門家に相談することをお勧めします。小規模宅地等の特例の全体像については「小規模宅地等の特例とは?適用要件・減額割合・限度面積を完全ガイド」もあわせてご覧ください。
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