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マンション(区分所有建物)の小規模宅地特例|敷地権割合の計算方法
「親が住んでいたマンションを相続するが、小規模宅地等の特例は使えるのか?」とお考えの方に向けて、敷地権割合の計算・居住用と賃貸用の比較・区分所有補正率(タワマン評価)との関係・所有者が異なる場合の判定まで、税理士が実務経験をもとに解説します。


「親が住んでいたマンションを相続するが、小規模宅地等の特例は使えるのか?」とお考えの方に向けて、敷地権割合の計算・居住用と賃貸用の比較・区分所有補正率(タワマン評価)との関係・所有者が異なる場合の判定まで、税理士が実務経験をもとに解説します。
🏆 結論:マンションでも敷地利用権に対して小規模宅地等の特例を適用できる
マンション(区分所有建物)を相続した場合、建物部分ではなく「敷地利用権(敷地権)」に対して小規模宅地等の特例を適用できます。居住用なら330㎡まで80%減額、賃貸用なら200㎡まで50%減額です。マンションは敷地権割合で按分した面積が対象となるため、330㎡を超えることはほぼありません。計算は①マンション全体の土地評価→②敷地権割合で按分→③特例適用の3ステップです。
小規模宅地等の特例とは、被相続人が居住や事業に使用していた土地を相続した場合に、一定の要件を満たすと土地の評価額を最大80%減額できる制度です。マンション(区分所有建物)の場合、特例の対象となるのは建物の専有部分(部屋)ではなく、その建物が建っている土地に対する権利、すなわち「敷地利用権」です。
分譲マンションでは、区分所有者は建物の区分所有権とともに、土地の敷地利用権(共有持分)を持っています。この敷地利用権は専有部分と一体のものとして扱われ、原則として分離して処分することはできません(区分所有法第22条)。マンション1室を相続すると、自動的にその敷地利用権も相続することになります。小規模宅地等の特例の全体像は「小規模宅地等の特例の全体像と4つの類型」をご覧ください。
| 項目 | 居住用マンション | 賃貸用マンション |
|---|---|---|
| 適用類型 | 特定居住用宅地等 | 貸付事業用宅地等 |
| 限度面積 | 330㎡ | 200㎡ |
| 減額割合 | 80% | 50% |
| 主な取得者要件 | 配偶者/同居親族/家なき子 | 事業継続+保有継続 |
| 3年縛り | なし | あり(H30改正) |
| 面積超過の可能性 | ほぼなし(敷地権割合で按分後は小さい) | ほぼなし |
マンションの場合、敷地全体の面積が数千㎡あっても、敷地権割合で按分した後の面積は通常数十㎡〜100㎡程度です。330㎡や200㎡の上限を超えることはほぼないため、敷地権全体に対して特例を適用できるケースがほとんどです。
マンションに小規模宅地等の特例を適用する際の計算は、以下の3ステップで行います。
まず、マンションの敷地全体の相続税評価額を計算します。路線価方式の場合、正面路線価(千円/㎡)×マンション敷地全体の面積(㎡)で算出します。不整形地補正や奥行価格補正などの各種補正率がある場合は、それらも考慮します。
📐 計算例の前提条件
マンション全体の土地評価額=50万円×2,000㎡=10億円(補正率は考慮しない簡易計算)
次に、マンション全体の土地評価額に敷地権割合を乗じて、自分の持分に対応する評価額を算出します。
持分の土地評価額=10億円×5,000/1,000,000=500万円
持分に対応する面積=2,000㎡×5,000/1,000,000=10㎡
💡 実務のポイント
敷地権割合は、マンションの登記事項証明書(登記簿謄本)の「専有部分の建物の表示」欄に記載されています。「敷地権の割合」という項目で、「○○○○分の○○」のような形式で表示されます。売買契約書にも記載されていることが多いです。この割合を正確に読み取ることが計算の第一歩です。
持分面積(10㎡)は特定居住用宅地等の限度面積330㎡以内ですので、全面積に対して80%の減額が適用されます。
特例適用後の評価額=500万円×(1−80%)=100万円
特例を適用しない場合の500万円と比べて、400万円の評価減(節税効果)が得られます。
| ステップ | 計算内容 | 金額・面積 |
|---|---|---|
| ①マンション敷地全体の評価 | 50万円/㎡×2,000㎡ | 10億円 |
| ②持分の評価額(敷地権割合按分) | 10億円×5,000/1,000,000 | 500万円(10㎡) |
| ③特例適用後の評価額 | 500万円×(1−80%) | 100万円 |
| 評価減の金額 | ▲400万円 | |
※概算値です。実際の計算では各種補正率(奥行価格補正率、不整形地補正率等)が適用されます。参考: 国税庁「相続税の申告要否判定コーナー 敷地権(土地)の価額」
令和6年1月1日以降に相続が発生した区分所有マンションについては、「居住用の区分所有財産の評価」として区分所有補正率が適用される場合があります。これは、マンション(特にタワーマンション高層階)の相続税評価額と市場価格の乖離を是正するために導入された制度です。
区分所有補正率は、築年数・総階数・所在階・敷地持分狭小度の4要素から算出される「評価乖離率」に基づいて計算されます。評価乖離率が一定水準(1.67)を超える場合に補正が行われ、評価額が引き上げられます。
区分所有補正率と小規模宅地等の特例の両方が適用される場合、計算の順序は以下の通りです。
| 計算順序 | 内容 | 影響 |
|---|---|---|
| 1. 土地の評価 | 路線価方式等で土地全体を評価→敷地権割合で按分 | 土地の基本評価額が確定 |
| 2. 区分所有補正率の適用 | 評価乖離率に基づく補正(評価額が上がることが多い) | 補正後の評価額が課税価格のベースに |
| 3. 小規模宅地等の特例の適用 | 補正後の評価額に対して80%(又は50%)減額 | 最終的な課税価格が確定 |
📊 公認会計士の視点
区分所有補正率で評価額が引き上げられても、小規模宅地等の特例の80%減額は補正後の金額に適用されます。つまり、補正で評価額が2倍になったとしても、特例で80%減額すれば最終的な課税価格は補正前の40%程度(2倍×20%)です。タワマン評価見直しの影響は、小規模宅地等の特例が使える場合はかなり緩和されます。
マンションに限らず、建物と土地の所有者が異なるケースがあります。このような場合に小規模宅地等の特例が適用できるかは、土地と建物の利用関係(使用貸借か賃貸借か)によって判断が分かれます。
| ケース | 具体例 | 特例適用 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 親の土地に親の建物 | 通常のケース | ○ | 土地・建物とも被相続人所有 |
| 親の土地に子の建物(使用貸借) | 子が親の土地を無償で借りて家を建築 | ○ | 使用貸借の場合、土地の自用地評価で特例適用可 |
| 親の土地に子の建物(賃貸借) | 子が親に地代を支払って家を建築 | △ | 貸付事業用宅地等(50%減額)として適用の可能性 |
| 子の土地に親の建物 | 親が子の土地を借りて居住 | × | 土地は子の所有→被相続人の宅地等に該当しない |
| 親子の共有土地に親の建物 | 土地を親子で共有 | ○ | 親の持分部分のみ特例の対象 |
💡 実務のポイント
親の土地に子が家を建てて住んでいるケースは非常に多く、実務でもよく相談を受けます。地代を支払わずに無償で借りている(使用貸借)場合は、土地は自用地として評価され、特定居住用宅地等(80%減額)の対象になります。一方、相当の地代を支払っている場合は、貸付事業用宅地等(50%減額)の対象となるため、結果的に減額割合が下がることがあります。意図せず地代を支払うことで不利になるケースに注意してください。
親名義のマンションや一戸建てに子が資金を出して増築(リフォーム含む)を行った場合、増築部分の所有権の帰属によって小規模宅地等の特例の適用が変わります。
増築部分を登記変更せず親名義のままにした場合、建物全体が親の所有として扱われます。この場合、子が資金を出した部分は親への贈与(みなし贈与)の問題が生じる可能性があります。ただし、特例の適用上は建物が親の所有であるため、敷地への小規模宅地等の特例は通常通り適用できます。
増築部分を子の名義で区分登記した場合は要注意です。区分登記されている二世帯住宅の場合、被相続人(親)の区分所有部分に対応する敷地のみが特例の対象となり、子の区分所有部分に対応する敷地は対象外です。これは平成26年改正で区分所有建物(区分所有法第1条に該当する建物)とそれ以外で取扱いが分かれたことに起因します。
⚠️ 注意
二世帯住宅の小規模宅地等の特例は、区分登記されているかどうかで結論が大きく変わります。区分登記されていない二世帯住宅(内部で行き来できなくても)は、建物全体を「一棟の建物」として扱い、被相続人の親族が居住している部分を含めて特例の対象にできます。しかし、区分登記されていると別の建物として扱われ、被相続人の居住部分に対応する敷地のみが対象です。相続税の計算方法について詳しくは「相続税の計算方法|基礎控除から税額の算出まで完全ガイド」もご参照ください。
被相続人が賃貸マンション(投資用マンション)を所有し、第三者に貸し付けていた場合は、貸付事業用宅地等として200㎡まで50%の評価減が可能です。この場合も、対象となるのはマンションの敷地利用権です。
賃貸マンションの敷地は、まず「貸家建付地」として評価減を受け、さらに小規模宅地等の特例を適用できます。計算の流れは以下の通りです。
| ステップ | 計算内容 | 金額(例) |
|---|---|---|
| ①自用地評価 | 路線価×面積×敷地権割合 | 2,000万円 |
| ②貸家建付地評価 | 自用地評価×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合) | 1,580万円 |
| ③小規模宅地等の特例 | 貸家建付地評価×(1−50%) | 790万円 |
※借地権割合70%、借家権割合30%、賃貸割合100%の場合。2,000万円×(1−0.7×0.3×1.0)=1,580万円
自用地評価2,000万円が最終的に790万円まで圧縮され、約60%の評価減となります。貸付事業用宅地等の要件については「特定事業用宅地等・貸付事業用宅地等の特例|適用要件と3年縛り」で詳しく解説しています。
小規模宅地等の特例は「相続または遺贈により取得した」宅地等が対象です。生前に贈与(相続時精算課税制度を含む)で取得したマンションの敷地には、原則として特例を適用できません。
小規模宅地等の特例を適用した結果、相続税額が0円になるケースでも、相続税の申告書の提出は必須です。申告をしなければ特例は適用されず、本来の評価額で相続税が計算されてしまいます。
被相続人が自宅用マンションと投資用マンションの両方を所有していた場合、居住用(330㎡・80%)と貸付用(200㎡・50%)を併用できますが、限定併用の調整計算が必要になります。マンションの場合は面積が小さいため、両方とも全面積に特例を適用できるケースが多いですが、確認は必要です。相続税の基礎知識は「相続税のしくみと基礎知識」をご覧ください。
小規模宅地等の特例は、原則として相続税の申告期限までに遺産分割が完了していることが条件です。マンションの相続で遺産分割が間に合わない場合は、「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書に添付することで、分割が確定した後に特例の適用を受けることが可能です。
📋 この記事のポイント
マンションの小規模宅地等の特例は、敷地権割合の計算や区分所有補正率との関係など、一戸建てとは異なる特有の論点があります。特にタワーマンションの相続では令和6年以降の新ルールも絡むため、相続専門の税理士への相談をおすすめします。