タワーマンションの相続税評価|令和6年新通達・計算方法と節税への影響

タワーマンションの相続税評価|令和6年新通達・計算方法と節税への影響
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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タワーマンションを所有する不動産オーナーに向けて、令和6年1月1日から適用された新しい評価方法(区分所有補正率)の計算手順を解説します。この記事を読めば、自分のマンションの相続税評価額がどう変わるかを把握し、今後の対策を検討できます。

📢 令和6年1月1日以後の相続・贈与から適用

令和6年(2024年)1月1日以後に相続・遺贈・贈与により取得した居住用の区分所有マンションに、新たな評価方法が適用されます。すでにマンションを所有している方も対象です。これまでの相続税シミュレーションを再計算する必要がある場合があります。

🏆 結論:タワマン高層階ほど評価額が大幅に上がる

新通達では、築年数が浅い・総階数が高い・所在階が高い・敷地持分が狭いマンションほど評価額が引き上げられます。評価水準(従来の評価額÷市場価格理論値)が0.6未満の場合、市場価格理論値の60%まで補正されるため、特に都心のタワーマンション高層階では従来の2倍以上の評価になるケースもあります。一方、評価水準が0.6〜1.0の場合は補正なし、1.0超の場合は逆に評価が下がります。

新通達の全体像【計算手順5ステップ】

令和6年以降のマンション評価は、以下の5ステップで進めます。従来の評価額(土地+建物)を計算した後に、新たに「区分所有補正率」を乗じる二段階構造になっています。

ステップ やること 計算内容
1従来の土地評価額を計算敷地全体の路線価評価額×敷地権割合
2従来の建物評価額を計算固定資産税評価額(専有部分)
3評価乖離率を計算4要素(A+B+C+D+3.220)
4評価水準を確認し区分所有補正率を決定評価水準=1÷評価乖離率
5補正後の評価額を算出土地・建物それぞれに補正率を乗じて合算

新通達の適用対象と対象外のチェックリスト

新通達はタワーマンションに限らず、居住用の区分所有マンション全般が対象です。ただし、以下に該当する物件は対象外となります。

物件タイプ 新通達の適用 理由
区分所有の分譲マンション(3階建て以上)○ 適用通達の対象
タワーマンション(居住用)○ 適用通達の主な対象
2階建て以下のマンション・集合住宅× 対象外総階数が低い
二世帯住宅(3室以下で全室が親族居住)× 対象外実質的に自宅
事業用テナント・オフィスビル× 対象外居住用でない
一棟まるごと所有のマンション× 対象外区分所有でない
区分所有登記されていない物件× 対象外区分所有でない

参考: 国税庁「No.4667 居住用の区分所有財産の評価」

評価乖離率の計算方法【4つの要素】

評価乖離率は、マンションの市場価格と従来の相続税評価額の乖離を予測するための指標です。以下の算式で計算します。

評価乖離率 = A + B + C + D + 3.220

要素 内容 算式 評価への影響
A築年数築年数 × △0.033築浅→乖離大(評価UP)
B総階数指数(総階数÷33)× 0.239 ※上限1高層建物→乖離大(評価UP)
C所在階所在階 × 0.018高層階→乖離大(評価UP)
D敷地持分狭小度(敷地利用権面積÷専有面積)× △1.195持分小→乖離大(評価UP)

💡 実務のポイント

この算式のポイントは、AとDがマイナス方向(△記号)に作用し、BとCがプラス方向に作用することです。つまり「築年数が古い=評価乖離率が小さくなる(=補正が少ない)」「敷地持分が大きい=補正が少ない」一方、「総階数が高い」「所在階が高い」ほど乖離率が大きくなり評価が上がります。国税庁は計算用のExcelファイルを公開しており、必要事項を入力すれば自動で算出できます。

評価水準と区分所有補正率の決定

評価乖離率を求めたら、次に「評価水準」を計算し、その値に応じて区分所有補正率を決定します。

評価水準 = 1 ÷ 評価乖離率

評価水準 意味 区分所有補正率 結果
0.6未満従来評価が市場価格より著しく低い評価乖離率 × 0.6評価額が上がる
0.6以上〜1.0以下従来評価と市場価格が近い1.0(補正なし)変更なし
1.0超従来評価が市場価格を超えている評価乖離率評価額が下がる

多くのタワーマンション高層階は評価水準が0.6未満になるため、補正率=「評価乖離率×0.6」が適用され、評価額が大幅に上がります。

改正前後の評価額比較シミュレーション

ここからは、物件のタイプ別に改正前後の評価額がどう変わるかを具体的に比較してみましょう。

パターンA:都心タワマン高層階(影響大)

📐 シミュレーション前提条件

  • 物件:東京都心・築5年・35階建ての25階・専有面積80㎡
  • 市場価格(想定):1億2,000万円
  • 従来の土地評価額:1,200万円、建物評価額:1,000万円(合計2,200万円)
  • 評価乖離率(計算結果):3.50
項目 改正前 改正後
評価水準0.286(0.6未満)
区分所有補正率3.50×0.6=2.10
土地の評価額1,200万円1,200万円×2.10=2,520万円
建物の評価額1,000万円1,000万円×2.10=2,100万円
合計評価額2,200万円4,620万円
市場価格との乖離約5.5倍約2.6倍

パターンB:郊外の中層マンション(影響中)

📐 前提:郊外・築15年・10階建ての5階・専有面積70㎡・市場価格3,500万円

従来評価:土地800万円+建物600万円=1,400万円。評価乖離率(計算結果):1.50

評価水準=1÷1.50=0.667(0.6以上1.0以下)→ 補正なし。改正後も評価額は1,400万円のまま変わりません。

パターンC:築古の低層マンション(影響なし or プラス)

📐 前提:地方都市・築35年・5階建ての3階・専有面積60㎡・市場価格1,200万円

従来評価:土地600万円+建物400万円=1,000万円。評価乖離率(計算結果):0.90

評価水準=1÷0.90=1.11(1.0超)→ 補正率=評価乖離率=0.90。評価額は土地540万円+建物360万円=900万円に下がります。築古・低層の物件では評価が下がるケースもあります。

※上記はいずれも概算値です。実際の評価乖離率は物件ごとに異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。

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小規模宅地等の特例との併用

区分所有補正率を乗じた後の評価額に対して、さらに小規模宅地等の特例を適用できます。被相続人が居住していたマンションの場合、土地部分(敷地利用権)について特定居住用宅地等として330㎡まで80%減額が可能です。

計算の順序は「①従来の土地評価額 → ②区分所有補正率を乗じる → ③小規模宅地等の特例を適用」です。補正率で評価が上がった分だけ、特例による減額の絶対額も大きくなる点は覚えておいてください。

小規模宅地等の特例の詳細は「小規模宅地等の特例の概要」をご覧ください。また、マンションの敷地権割合を使った計算については「相続税の土地評価|路線価方式と倍率方式」で解説しています。

最高裁令和4年4月19日判決と新通達の関係

新通達が導入された背景には、令和4年4月19日の最高裁判決があります。この判決では、約13億8,700万円で購入したマンション2棟を路線価に基づき約3億3,000万円と評価して申告した納税者に対し、税務署が財産評価基本通達の総則6項を適用して不動産鑑定評価額(約12億7,300万円)で更正処分を行い、最高裁が税務署の処分を支持しました。

📊 公認会計士の視点

この判決のポイントは、通達どおりに評価しても、それが「実質的な租税負担の公平に反する」場合は、通達によらない評価が許容されるという判断が最高裁で示されたことです。新通達の導入により、多くのケースでは通達どおりの評価で問題なくなりましたが、相続直前に購入した超高額物件など、明らかに節税目的と認められるケースでは、新通達の評価額で申告しても総則6項が適用される可能性が残されています。

総則6項の詳しい解説は「総則6項(財産評価通達の否認)とは?タワマン判決から学ぶリスク」をご覧ください。

新通達適用後の節税対策の選択肢

新通達で封じられた部分

従来の「タワマン節税」の核心は、市場価格と相続税評価額の乖離が大きいことを利用するものでした。新通達により、評価水準が0.6未満の物件は市場価格の60%まで引き上げられるため、この乖離を利用した節税効果は大幅に縮小します。

それでも残る評価減の効果

新通達適用後も、以下の評価減の効果は残ります。

評価減の手法 内容 新通達との関係
小規模宅地等の特例330㎡まで80%減額(居住用)補正率適用後に適用可能
貸家建付地の評価減借地権割合×借家権割合×賃貸割合を減額補正率適用後に適用可能
配偶者の税額軽減法定相続分or 1億6,000万円まで非課税従来どおり適用可能

💡 実務のポイント

新通達により「タワマン節税」の効果は縮小しましたが、不動産を活用した相続税対策がすべて無効になったわけではありません。ポイントは「評価水準が0.6以上」になるような物件を選ぶことです。たとえば築年数の経った中低層マンションや、敷地持分が比較的大きな物件は、補正の影響を受けにくい傾向があります。相続税の計算方法の全体像は「相続税の計算方法」で確認してください。

賃貸マンションの場合の計算順序

所有するマンションを賃貸に出している場合、区分所有補正率の適用と貸家建付地・貸家の評価減の順序が重要です。正しい順序は以下のとおりです。

① 従来の評価額 → ② 区分所有補正率を乗じる → ③ 貸家建付地の評価減を適用 → ④ 小規模宅地等の特例を適用

つまり、区分所有補正率を乗じた後の評価額が「自用地としての価額」となり、そこから貸家建付地の減額計算(借地権割合×借家権割合×賃貸割合)を行います。貸宅地・貸家建付地の評価方法については「貸宅地・貸家建付地の評価」で詳しく解説しています。

よくある質問(FAQ)

新通達はいつから適用されますか?
令和6年(2024年)1月1日以後に相続・遺贈・贈与により取得した居住用の区分所有マンションから適用されます。すでに所有しているマンションでも、相続が令和6年以降に発生すれば新通達の対象になります。
タワーマンションだけが対象ですか?
いいえ、タワーマンションに限定されません。3階建て以上の居住用区分所有マンションが広く対象です。ただし、2階建て以下のもの、二世帯住宅(3室以下で全室が親族居住)、事業用テナント、一棟丸ごと所有するマンションなどは対象外です。
評価乖離率の計算は自分でできますか?
国税庁のウェブサイトで「区分所有補正率の計算明細書」(Excelファイル)が公開されています。築年数・総階数・所在階・専有面積・敷地利用権面積を入力すれば自動で計算されます。ただし、入力に必要な情報(敷地利用権の面積など)は登記事項証明書で確認する必要があるため、不安な場合は税理士に依頼するのが確実です。
改正後もマンションの相続税評価額は市場価格より低いですか?
多くの場合、改正後も市場価格より低い評価になります。新通達は市場価格の60%になるよう補正するものであり、40%の評価減が残ります。さらに小規模宅地等の特例を適用すれば、追加の減額も可能です。ただし、一部の築古・低層マンションでは評価水準が1.0を超え、補正により評価が下がるケースもあります。
新通達で評価しても総則6項が適用される可能性はありますか?
はい、残されています。新通達は画一的な基準で補正するものであるため、相続直前に購入した超高額物件など、節税目的が明らかなケースでは、新通達の評価額でも「実質的な租税負担の公平に反する」と判断されれば、不動産鑑定評価額等で更正処分を受ける可能性があります。
賃貸用マンションの場合、補正率はどのタイミングで適用しますか?
区分所有補正率を乗じた後の評価額を「自用地としての価額」として、そこから貸家建付地の評価減と小規模宅地等の特例を適用します。つまり、まず補正率で引き上げた上で、各種評価減を適用する順序です。
相続税評価と法人税の評価に関連はありますか?
相続税評価通達は原則として相続税・贈与税の計算に適用されるものですが、法人税の実務にも影響する場面があります。たとえば、同族会社が所有するマンションの時価を判定する際や、非上場株式の純資産価額方式で不動産を評価する際に、相続税評価額が参照されることがあります。新通達により評価額が変わると、これらの計算にも波及する可能性があるため、法人オーナーは注意が必要です。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 令和6年1月1日以後の相続・贈与から、居住用区分所有マンションに新しい評価方法が適用
  • 評価乖離率は築年数・総階数・所在階・敷地持分狭小度の4要素で計算される
  • 評価水準が0.6未満の場合、市場価格理論値の60%まで評価が引き上げられる
  • 都心タワマン高層階は従来の2倍以上の評価になるケースもある
  • 築古・低層マンションは補正なし or 評価が下がる場合もある
  • 区分所有補正率を適用した後に、小規模宅地等の特例や貸家建付地の評価減を適用する
  • 新通達でも総則6項のリスクは残るため、節税目的での購入は慎重に検討すべき

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