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配偶者居住権の相続税評価がわからず困っている方に向けて、4つの権利への分解方法・計算式に必要な5つの数値の調べ方・配偶者の年齢別シミュレーション・二次相続での節税効果を完全ガイドします。この記事を読めば、配偶者居住権の評価額を自分で計算し、設定すべきかどうかを判断できます。


配偶者居住権の相続税評価がわからず困っている方に向けて、4つの権利への分解方法・計算式に必要な5つの数値の調べ方・配偶者の年齢別シミュレーション・二次相続での節税効果を完全ガイドします。この記事を読めば、配偶者居住権の評価額を自分で計算し、設定すべきかどうかを判断できます。
🏆 結論:配偶者居住権は「住まいの確保」と「二次相続の節税」を両立できる制度
配偶者居住権を設定すると、自宅不動産の評価額が「配偶者居住権(配偶者が取得)」と「所有権(子が取得)」に分かれます。配偶者は住まいを確保しつつ預貯金も相続でき、さらに配偶者居住権は配偶者の死亡で消滅するため二次相続の課税対象にならないという節税メリットがあります。評価には建物の時価・残存耐用年数・配偶者の平均余命・複利現価率(法定利率3%)の4要素が必要です。
配偶者居住権とは、亡くなった方の配偶者が、相続開始時に住んでいた自宅に終身または一定期間、無償で住み続けることができる権利です。令和2年(2020年)4月1日施行の民法改正で新設されました。
従来の民法では、配偶者が住み慣れた自宅に住み続けるためには自宅の所有権を相続する必要がありました。しかし、自宅の評価額が高い場合、配偶者が自宅を相続すると預貯金の取得分が減り、その後の生活資金が不足するという問題がありました。
たとえば、遺産総額5,000万円(自宅3,000万円+預貯金2,000万円)で配偶者と子1人が相続する場合、法定相続分どおりに分けると各自2,500万円です。配偶者が自宅3,000万円を取得すると、500万円の超過となり、子に代償金を支払うか自宅を売却する必要が生じます。
配偶者居住権を使えば、自宅を「住む権利」と「所有権」に分離して相続できるため、配偶者は住まいと生活資金の両方を確保できるようになります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 被相続人の法律上の配偶者(内縁は不可) |
| 居住実態 | 相続開始時に被相続人所有の建物に居住していたこと |
| 取得方法 | ①遺産分割協議、②遺贈(遺言に「遺贈する」と記載)、③家庭裁判所の審判 |
| 建物の共有 | 被相続人と配偶者の共有は可。第三者との共有は不可 |
| 登記 | 登記が必要(登録免許税:建物の固定資産税評価額×0.2%) |
⚠️ 遺言書の文言に注意
遺言で配偶者居住権を設定する場合、「配偶者居住権を遺贈する」と記載する必要があります。「相続させる」と書くと法的に有効にならない可能性があるため要注意です。自筆証書遺言ではこの点を見落としがちなので、公正証書遺言を推奨します。
配偶者居住権を設定すると、自宅不動産は以下の4つの権利に分かれて評価されます。これが配偶者居住権の評価を理解する最も重要なポイントです。
| 区分 | 権利の名称 | 取得者 | 評価方法 |
|---|---|---|---|
| 建物① | 配偶者居住権 | 配偶者 | 建物の時価 − 建物所有権の価額 |
| 建物② | 建物の所有権 | 子など | 建物の時価 ×(残存耐用年数−存続年数)÷ 残存耐用年数 × 複利現価率 |
| 土地③ | 敷地利用権 | 配偶者 | 土地の時価 − 土地所有権の価額 |
| 土地④ | 土地の所有権 | 子など | 土地の時価 × 複利現価率 |
配偶者が取得するのは①と③(住む権利+敷地の利用権)、子が取得するのは②と④(所有権)です。①+③の合計が配偶者居住権の評価額となり、配偶者の相続税の課税対象になります。
💡 実務のポイント
評価のコツは「先に所有権(②と④)を計算し、全体の時価から引き算する」ことです。所有権は将来の価値を複利現価率で現在価値に割り引いて計算するため、配偶者の存続年数(平均余命)が長いほど所有権の価額は小さくなり、結果として配偶者居住権の評価額は大きくなります。
配偶者居住権の評価計算に必要な5つの数値と、それぞれの入手方法を整理します。
| # | 必要な数値 | 内容 | 調べ方 |
|---|---|---|---|
| ① | 建物の時価 | 固定資産税評価額 | 固定資産税納税通知書の課税明細書の「価格」または「評価額」欄 |
| ② | 残存耐用年数 | 法定耐用年数×1.5 − 経過年数 | 構造別の法定耐用年数から計算。木造=22年×1.5=33年。鉄骨=34年×1.5=51年。鉄筋コンクリート=47年×1.5=70年 |
| ③ | 存続年数 | 配偶者居住権の設定期間 | 終身の場合→厚生労働省の簡易生命表から配偶者の平均余命を使用。有期の場合→設定した年数 |
| ④ | 複利現価率 | 法定利率(現行3%)で存続年数に対応する率 | 国税庁の複利現価率表で存続年数に対応する率を参照 |
| ⑤ | 土地の時価 | 相続税評価額(路線価方式 or 倍率方式) | 国税庁の路線価図 or 評価倍率表で計算 |
💡 実務のポイント
経過年数の計算では、6ヶ月未満の端数は切り捨て、6ヶ月以上は1年に切り上げます。また、残存耐用年数がゼロ以下(すでに耐用年数を超えている建物)の場合は、建物所有権の価額がゼロになるため、建物の時価がそのまま配偶者居住権の評価額になります。築年数の古い木造住宅ではこのケースがよく起こります。
📐 シミュレーション前提条件
木造の法定耐用年数22年 × 1.5 = 33年
残存耐用年数 = 33年 − 10年(経過年数) = 23年
75歳女性の平均余命 = 16年(簡易生命表より)
法定利率3%、存続年数16年に対応する複利現価率 = 0.623
800万円 ×(23年 − 16年)÷ 23年 × 0.623
= 800万円 × 7/23 × 0.623
= 800万円 × 0.3043 × 0.623
= 約152万円
800万円 − 152万円 = 約648万円
3,000万円 × 0.623 = 1,869万円
3,000万円 − 1,869万円 = 1,131万円
| 権利 | 取得者 | 評価額 |
|---|---|---|
| 配偶者居住権(建物) | 妻 | 648万円 |
| 建物所有権 | 子 | 152万円 |
| 敷地利用権 | 妻 | 1,131万円 |
| 土地所有権 | 子 | 1,869万円 |
| 妻の取得分合計(①+③) | 妻 | 1,779万円 |
| 子の取得分合計(②+④) | 子 | 2,021万円 |
自宅の評価額3,800万円のうち、配偶者居住権として1,779万円が妻に、所有権として2,021万円が子に分かれます。
土地の相続税評価の基本については、「土地の相続税評価|路線価方式・倍率方式の計算方法」をご覧ください。
配偶者居住権の評価額は、配偶者の年齢(=平均余命=存続年数)によって大きく変わります。同じ自宅でも、配偶者が若いほど居住権の評価額は高く、高齢ほど低くなります。
📐 シミュレーション前提条件
| 配偶者の年齢 | 平均余命 (女性) |
複利 現価率 |
配偶者居住権 (建物+敷地利用権) |
所有権 (建物+土地) |
|---|---|---|---|---|
| 65歳 | 25年 | 0.478 | 2,688万円 | 1,912万円 |
| 75歳 | 16年 | 0.623 | 1,955万円 | 2,645万円 |
| 85歳 | 8年 | 0.789 | 1,177万円 | 3,423万円 |
※概算値です。残存耐用年数が存続年数を下回る場合(85歳:存続8年<残存18年なので問題なし)は建物所有権の計算が変わります。
65歳の場合、自宅4,600万円のうち配偶者居住権が2,688万円(約58%)を占めます。85歳では1,177万円(約26%)にとどまります。配偶者が若いほど居住権の評価額が大きくなり、配偶者の相続分に占める自宅の割合が実質的に低くなるため、預貯金をより多く相続できます。
配偶者居住権の最大のメリットは、二次相続(配偶者が亡くなったとき)での節税効果です。
配偶者居住権は、配偶者の死亡により自動的に消滅します。消滅した配偶者居住権は、二次相続の課税対象になりません。つまり、一次相続で配偶者が取得した1,779万円の配偶者居住権は、配偶者の死亡時に課税されることなく消えてしまうのです。
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | 居住権なし (自宅を妻が相続) |
居住権あり |
|---|---|---|
| 一次相続:妻の取得分 | 自宅3,800万+預貯金200万 =4,000万円 | 居住権1,779万+預貯金2,221万 =4,000万円 |
| 一次相続税(合計) | 約235万円 | 約235万円 |
| 二次相続時の妻の遺産 | 自宅3,800万+預貯金200万 =4,000万円 | 預貯金2,221万円 (居住権は消滅、課税対象外) |
| 二次相続税 | 約160万円 | 0円(基礎控除3,600万以下) |
| 一次+二次の合計相続税 | 約395万円 | 約235万円 |
※概算値です。小規模宅地等の特例の適用は省略。実際の金額は個別の状況により異なります。
配偶者居住権を活用することで、一次+二次の合計で約160万円の節税になっています。これは、一次相続で配偶者居住権として取得した1,779万円分が二次相続で課税されなくなるためです。
相続税の計算方法の全体像については、「相続税の計算方法|基礎控除・税率・申告の流れ」で詳しく解説しています。
配偶者居住権がどのように消滅するかによって、課税の取扱いが異なります。
| 消滅の原因 | 課税の取扱い | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 配偶者の死亡 | 課税なし。配偶者居住権は消滅し、建物所有者の所有権が完全な所有権に戻る | 二次相続で節税効果が発生するメインケース |
| 合意による解除(無償) | 建物所有者に対して贈与税が課税される可能性あり | 配偶者が存命中に無償で放棄すると、所有者が経済的利益を受けたとみなされる |
| 合意による解除(有償) | 配偶者に対して譲渡所得税が課税される。対価が時価より著しく低い場合は贈与税も問題に | 売却と同様の取扱い。譲渡所得の取得費は取得時の評価額 |
| 存続期間の満了(有期の場合) | 課税なし | 設定時に有期とした場合に限る |
| 建物の滅失 | 課税なし。配偶者居住権は消滅 | 火災等で建物が滅失した場合 |
⚠️ 合意解除は慎重に
配偶者が施設に入所するなどの理由で配偶者居住権を合意解除するケースがあります。無償で放棄すると、建物所有者(多くは子)に贈与税が課税される可能性があります。このような場合は事前に税理士に相談し、適切な対価の設定や課税関係の整理を行ってください。
| 判断基準 | 設定すべきケース | 不要なケース |
|---|---|---|
| 遺産に占める自宅の割合 | 自宅の評価額が遺産の50%以上を占め、配偶者が住まいと生活資金の両方を確保したい | 預貯金が十分あり、自宅を相続しても生活資金に困らない |
| 相続人間の関係 | 前妻の子がいるなど、配偶者の居住を確保する必要がある | 配偶者と子の関係が良好で、自宅を配偶者が相続しても揉めない |
| 二次相続の対策 | 配偶者の固有資産が多く、二次相続の税負担を減らしたい | 配偶者の固有資産が少なく、二次相続税がかからない見込み |
| 自宅の売却予定 | 配偶者が終身住み続ける意思がある | 近い将来に自宅を売却する予定がある(居住権があると売却が困難) |
小規模宅地等の特例の詳しい要件については、「小規模宅地等の特例の要件と計算方法」をご覧ください。
配偶者居住権が設定された場合、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)は敷地利用権(配偶者が取得する部分)に対して適用できます。配偶者が取得する敷地利用権部分について、330㎡まで80%の減額が適用されるため、配偶者の相続税はさらに軽減されます。
一方、子が取得する土地所有権部分についても、子が同居親族の要件を満たしていれば別途特例の適用が可能です。ただし、配偶者と子で適用面積の調整が必要な場合があるため、実務では税理士と一緒にシミュレーションすることをおすすめします。
配偶者居住権を相続税申告に反映するためには、以下の書類が必要です。
| # | 書類名 | 備考 |
|---|---|---|
| 1 | 配偶者居住権等の評価明細書 | 国税庁の様式。評価額の算出根拠として提出必須 |
| 2 | 相続税がかかる財産の明細書(第11表) | 配偶者居住権・建物所有権・敷地利用権・土地所有権を個別に記載 |
| 3 | 遺産分割協議書 or 遺言書の写し | 配偶者居住権の設定が記載されていること |
| 4 | 配偶者居住権の登記事項証明書 | 登記済みであることの証明 |
| 5 | 建物の固定資産税課税明細書 | 建物の時価(固定資産税評価額)の確認用 |
📋 この記事のポイント
配偶者居住権は、住まいの確保と相続税の節税を両立できる有力な制度です。ただし、設定すべきかどうかは遺産の内容・家族関係・二次相続の見通しによって異なります。評価額の計算も含めて、相続税に詳しい税理士に事前のシミュレーションを依頼されることをおすすめします。
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