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借地上の建物を相続した不動産オーナーに向けて、借地権の相続税評価額の計算方法を種類別・パターン別に解説します。この記事を読めば、自分の借地権がいくらで評価されるかを把握し、申告に必要な準備を進めることができます。


借地上の建物を相続した不動産オーナーに向けて、借地権の相続税評価額の計算方法を種類別・パターン別に解説します。この記事を読めば、自分の借地権がいくらで評価されるかを把握し、申告に必要な準備を進めることができます。
🏆 結論:借地権の評価は「種類」と「地代の水準」で決まる
普通借地権の計算式は「自用地評価額×借地権割合」とシンプルですが、権利金の有無や地代の水準によって評価方法が大きく変わります。定期借地権はさらに複雑な計算が必要です。まず自分の借地権がどの種類に該当するかを確認し、次に契約条件(権利金・地代・届出書の有無)を整理することが正しい評価の第一歩です。
借地権の相続税評価は、以下の5ステップで進めます。手続き系のテーマですので、全体の流れを先に把握してから各ステップの詳細を確認してください。
| ステップ | やること | 確認資料 |
|---|---|---|
| 1 | 借地権の種類を特定する | 土地賃貸借契約書 |
| 2 | 自用地としての評価額を計算する | 路線価図 or 評価倍率表 |
| 3 | 借地権割合を確認する | 路線価図のアルファベット(A〜G) |
| 4 | 地代の水準・権利金・届出書の有無を確認する | 契約書、税務署への届出書控え |
| 5 | 該当するパターンの計算式で評価額を算出する | 国税庁の評価明細書 |
借地権とは、建物を所有する目的で他人の土地を借りる権利です。借地借家法により5つの種類に分類され、それぞれ評価方法が異なります。
| 種類 | 根拠法 | 契約期間 | 更新 | 評価区分 |
|---|---|---|---|---|
| 普通借地権 | 旧借地法/借地借家法 | 30年以上(初回) | ○ | 「借地権」として評価 |
| 定期借地権 | 借地借家法第22条 | 50年以上 | × | 「定期借地権等」として評価 |
| 事業用定期借地権等 | 借地借家法第23条 | 10年以上50年未満 | × | |
| 建物譲渡特約付借地権 | 借地借家法第24条 | 30年以上 | × | |
| 一時使用目的の借地権 | 借地借家法第25条 | 短期 | × |
💡 実務のポイント
相続の現場で最も多いのは「普通借地権」です。旧借地法に基づく契約も、借地借家法の経過措置により普通借地権として扱われます。築40〜50年の建物が建つ借地の場合、契約書が見当たらないケースもありますが、その場合でも固定資産税の支払い履歴や周辺事情から借地権の存在を推定できることがあります。
普通借地権の相続税評価額は、最もシンプルな計算式で求められます。
普通借地権の評価額 = 自用地評価額 × 借地権割合
自用地評価額は、路線価方式なら「路線価×各種補正率×面積」、倍率方式なら「固定資産税評価額×倍率」で求めます。土地評価の全体像については「相続税の土地評価|路線価方式と倍率方式」で詳しく解説しています。
借地権割合は、国税庁の路線価図に記載されたアルファベット(A〜G)で確認します。路線価は千円単位で表示され、末尾のアルファベットが借地権割合を表します。たとえば「300D」なら路線価30万円/㎡・借地権割合60%です。
| 記号 | 借地権割合 | 主な地域 |
|---|---|---|
| A | 90% | 銀座・丸の内など都心一等地 |
| B | 80% | 都市部の商業地域 |
| C | 70% | 都市部の住宅地域 |
| D | 60% | 郊外の住宅地域 |
| E | 50% | 地方都市の住宅地域 |
| F | 40% | 地方の住宅地域 |
| G | 30% | 地方の農村部 |
なお、借地権の取引慣行がないと認められる地域では、借地権割合を20%として計算します。
📐 シミュレーション前提条件
ステップ1:自用地評価額 = 25万円 × 1.00 × 150㎡ = 3,750万円
ステップ2:借地権の評価額 = 3,750万円 × 60% = 2,250万円
📐 前提:路線価25万円/㎡・補正率1.00
| 借地権割合 | 100㎡の場合 | 200㎡の場合 | 300㎡の場合 |
|---|---|---|---|
| 90%(A) | 2,250万円 | 4,500万円 | 6,750万円 |
| 70%(C) | 1,750万円 | 3,500万円 | 5,250万円 |
| 60%(D) | 1,500万円 | 3,000万円 | 4,500万円 |
| 50%(E) | 1,250万円 | 2,500万円 | 3,750万円 |
| 30%(G) | 750万円 | 1,500万円 | 2,250万円 |
※概算値です。実際には各種補正率の適用により金額が変わります。正確な計算は税理士にご相談ください。
借地権の評価方法は、権利金の有無や地代の水準によって大きく変わります。特に個人間の取引と、個人と同族会社との取引では異なるルールが適用されるため注意が必要です。
| 権利金 | 地代の水準 | 借地権の評価方法 |
|---|---|---|
| あり | 通常の地代 | 自用地評価額×借地権割合(原則どおり) |
| なし | 相当の地代(自用地評価額の年6%程度) | 自用地評価額×借地権割合×調整計算※ |
| なし | 通常の地代(固定資産税の2〜3倍程度) | 自用地評価額×借地権割合(原則どおり) |
| なし | 固定資産税以下(無償に近い) | 使用貸借 → 借地権の評価額は0円 |
※相当の地代を支払っている場合の調整計算は複雑で、「実際の地代」「通常の地代」「相当の地代」の3段階の関係から借地権の割合を算出します。
⚠️ 注意:「使用貸借」の落とし穴
親の土地を子が無償で借りている場合は使用貸借にあたり、借地権は認められません。つまり借地権の評価額は0円で、代わりに土地は自用地として100%評価されます。親の相続時に土地の評価が下がらない(貸宅地にならない)ため、家族全体で見ると相続税が高くなるケースがあります。
個人が同族会社に土地を貸している場合(またはその逆)は、「土地の無償返還に関する届出書」の提出有無が評価に大きく影響します。
| 届出書 | 権利金 | 借地権の評価 | 底地(貸宅地)の評価 |
|---|---|---|---|
| 提出あり | なし | 0円(ただし同族会社の株式評価で自用地の20%を加算) | 自用地評価額×80% |
| 提出なし | あり | 自用地評価額×借地権割合 | 自用地評価額×(1−借地権割合) |
| 提出なし | なし | 自用地評価額×借地権割合×調整計算 | 自用地評価額−借地権の評価額 |
💡 実務のポイント
同族会社の社長が個人で所有する土地を会社に貸しているケースは非常に多いのですが、「無償返還届出書」の提出漏れが頻繁に見られます。届出書が出ていないと、会社側に借地権が認定されて予期しない課税が発生する可能性があります。相続が起きる前に届出書の提出状況を必ず確認しておいてください。
定期借地権等(定期借地権・事業用定期借地権等・建物譲渡特約付借地権)は、契約更新がなく契約期間の満了で土地を返還するため、普通借地権とは異なる評価方法を用います。
原則として、課税時期において借地権者に帰属する経済的利益とその存続期間を基に評価します。課税上弊害がない場合は、次の簡便法で計算できます。
定期借地権等の評価額 = 自用地評価額 × (A÷B) × (C÷D)
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| A | 設定時の借地権者の経済的利益の額(権利金+保証金の運用益等) |
| B | 設定時の土地の通常取引価額 |
| C | 課税時期の残存期間に応じた複利年金現価率 |
| D | 設定期間全体に応じた複利年金現価率 |
📊 公認会計士の視点
定期借地権等の計算には複利年金現価率の算出が必要で、基準年利率(国税庁が毎年公表)に基づいた専門的な計算が求められます。国税庁のウェブサイトで公開されている「定期借地権等の評価明細書」を活用するか、税理士に依頼するのが現実的です。普通借地権に比べて評価額は低くなる傾向があり、契約残存期間が短いほど評価額は小さくなります。
工事現場の事務所用地など、一時的な使用目的で設定された借地権は、雑種地の賃借権と同じ方法で評価します。計算式は「雑種地の自用地評価額 × 法定地上権割合と借地権割合のいずれか低い割合」です。残存期間が10年以下の場合、法定地上権割合は5%と低いため、一時使用目的の借地権の評価額は極めて小さくなります。
親が地主から借りている土地の上に、子が自分名義の建物を建てるケースは実務でしばしば見られます。この場合、借地権の「転貸」や「又貸し」に関する税務上のルールを正しく理解しておく必要があります。
| パターン | 子への対価 | 税務上の取扱い | 親の相続時の借地権 |
|---|---|---|---|
| 親が借地権を持ち、子に使用貸借 | 無償 | 使用貸借 → 贈与税は発生しない | 親の借地権として評価 |
| 親が借地権を子に転貸(地主承諾あり) | 権利金あり | 子に転借権が発生 | 親の借地権から転借権分を控除 |
| 親が借地権を子に無償で譲渡 | 無償 | 贈与税の対象 | 子の借地権として評価 |
💡 実務のポイント
最も多いのは「親が借りている土地の上に、子が対価を払わずに家を建てる」パターンです。この場合、親から子への借地権の贈与には該当せず、贈与税はかかりません。親の相続が発生した際には、親の借地権として相続財産に含まれます。ただし、地主の承諾なく子が建物を建てると借地契約の解除事由になる可能性があるため、必ず地主の承諾を得てください。
路線価が設定されていない道路にのみ面する土地は、そのままでは路線価方式で評価できません。このような場合、税務署に「特定路線価」の設定を申し出ることで、路線価方式による評価が可能になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 路線価が設定されていない道路にのみ面する土地 |
| 申出先 | 納税地の税務署 |
| 必要書類 | 特定路線価設定申出書、住宅地図、公図の写し |
| 回答までの期間 | 通常1か月程度 |
| 注意点 | 設定された路線価は取り消しや変更ができない。通常の路線価より高くなる場合もある |
⚠️ 注意
特定路線価の設定を申し出ると、その結果が通常の路線価より高くなったとしても取り消せません。事前に路線価の水準を推定し、特定路線価を設定した場合と旗竿地評価などの他の方法で評価した場合を比較した上で判断することをおすすめします。相続税申告の期限(10か月以内)を考慮すると、回答に1か月程度かかるため早めの申出が必要です。
借地権を相続した場合でも、一定の要件を満たせば小規模宅地等の特例を適用できます。借地上の建物に被相続人が居住していた場合は「特定居住用宅地等」、被相続人が借地上で事業を営んでいた場合は「特定事業用宅地等」として減額の対象になります。
| 借地権の利用目的 | 該当する特例 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|---|
| 被相続人の自宅 | 特定居住用宅地等 | 330㎡ | 80% |
| 被相続人の事業用 | 特定事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 借地上の建物を賃貸 | 貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% |
たとえば、借地権の評価額が2,250万円(自用地3,750万円×借地権割合60%)の自宅の場合、特定居住用宅地等の要件を満たせば80%減額され、評価額は450万円まで下がります。小規模宅地等の特例の全体像については「小規模宅地等の特例の概要」で詳しく解説しています。
古い借地の場合、契約書が見つからないことがあります。しかし、借地借家法上の借地権は口頭の契約でも成立するため、契約書がないことだけを理由に借地権が否定されるわけではありません。地代の支払い履歴(銀行振込の記録や領収書)、建物の登記簿、固定資産税の課税状況などから借地権の存在を証明できます。
借地権を相続した場合、地主に対する名義変更(建替えではなく相続による承継)については、原則として承諾料は不要です。借地借家法では、相続による借地権の承継は地主の承諾なく行えます。ただし、遺贈(相続人以外への譲渡)の場合は地主の承諾が必要となるため、遺言の内容によっては注意が必要です。
相続税評価額(路線価ベース)と実際の売却価格(実勢価格ベース)は異なります。借地権の実勢価格は地主との関係性や契約条件によって大きく変動するため、相続税評価額より低くなることも高くなることもあります。地主に借地権を買い取ってもらう場合や、第三者に売却する場合は、不動産鑑定士の評価を取得することを検討してください。
借地権と底地(貸宅地)は表裏一体の関係にあります。原則として、自用地評価額 = 借地権の評価額 + 底地の評価額 です。ただし、前述の「無償返還届出書」が提出されている場合など、この等式が成立しないパターンもあります。
底地(貸宅地)の評価方法については「貸宅地・貸家建付地の評価」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。相続税の計算方法の全体像は「相続税の計算方法」を参照してください。
📋 この記事のポイント
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