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おしどり贈与(贈与税の配偶者控除)|2,000万円控除の適用要件と注意点
「長年連れ添った配偶者に自宅を非課税で渡せるって本当?」「2,000万円まで贈与税がゼロになるなら使いたい」とお考えの方に向けて、適用要件・対象となる居住用不動産の範囲・移転コスト・相続との比較を完全ガイドします。この記事を読めば、おしどり贈与を使うべきかどうかを判断できます。


おしどり贈与(贈与税の配偶者控除)|2,000万円控除の適用要件と注意点
「長年連れ添った配偶者に自宅を非課税で渡せるって本当?」「2,000万円まで贈与税がゼロになるなら使いたい」とお考えの方に向けて、適用要件・対象となる居住用不動産の範囲・移転コスト・相続との比較を完全ガイドします。この記事を読めば、おしどり贈与を使うべきかどうかを判断できます。
🏆 結論:多くのケースでは「使うと損」。ただし配偶者の居住権保護には有効
おしどり贈与(贈与税の配偶者控除)は、婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産を贈与する場合に最大2,000万円(基礎控除と合わせて2,110万円)まで贈与税がかからない制度です。一見お得に見えますが、相続で配偶者に自宅を渡す場合は配偶者税額軽減(1億6,000万円まで非課税)と小規模宅地等の特例(80%減額)が使えるため、トータルの税負担は相続のほうが軽くなるケースが大半です。おしどり贈与が真に有効なのは、前婚の子がいて配偶者の居住権を守りたい場合や、自宅売却時に3,000万円特別控除をダブルで適用したい場合に限られます。
おしどり贈与とは、相続税法第21条の6に規定される「贈与税の配偶者控除」の通称です。婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合に、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで贈与税の課税価格から控除できる特例です。
長年連れ添った夫婦間での居住用財産の移転を支援する制度であり、一生に一度(同じ配偶者からは1回のみ)しか適用を受けることができません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 控除額 | 最高2,000万円(基礎控除110万円と合わせて最大2,110万円) |
| 対象 | 居住用不動産またはその取得資金 |
| 婚姻期間 | 20年以上(戸籍上の期間。内縁は不可) |
| 利用回数 | 同一配偶者から一生に1回のみ |
| 居住要件 | 翌年3月15日までに居住し、その後も住み続ける見込み |
| 申告 | 贈与税がゼロでも申告が必須 |
| 相続財産への持ち戻し | なし(相続開始前7年以内でも加算されない) |
| 特別受益の持ち戻し | R1.7.1以降の贈与は持ち戻し免除の推定あり |
おしどり贈与の適用を受けるには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
要件①:婚姻期間20年以上 婚姻届を提出した日から贈与を受けた日までの期間で計算します。1年未満の端数は切り捨てるため、19年11か月の場合は適用できません。内縁関係や事実婚の期間は含まれません。
要件②:居住用不動産またはその取得資金の贈与 贈与の対象は、受贈者が住むための国内の居住用不動産、またはその取得のための金銭に限られます。
要件③:翌年3月15日までに居住 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その居住用不動産に実際に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであることが必要です。売却を前提とした贈与は適用が認められません。
贈与税の申告書に以下の書類を添付する必要があります。贈与税がゼロであっても申告は必須です。
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 戸籍謄本または抄本 | 贈与日から10日経過後に作成されたもの |
| 戸籍の附票の写し | 贈与日から10日経過後に作成されたもの |
| 居住用不動産の登記事項証明書 | 取得したことを証する書類 |
| 固定資産評価証明書 | 不動産を贈与した場合 |
⚠️ 申告しないと適用されない
「贈与税がゼロだから申告は不要だろう」と誤解して申告しないケースが後を絶ちません。おしどり贈与は申告をしないと適用が認められず、2,000万円の不動産贈与に対して695万円もの贈与税が課税されます。さらに申告期限を過ぎると無申告加算税や延滞税も発生します。贈与税がゼロでも必ず翌年3月15日までに申告しましょう。
贈与の対象となる居住用不動産は、以下の4パターンがあります。必ずしも土地と建物の両方を贈与する必要はありません。
| 贈与パターン | 適用 | 条件 |
|---|---|---|
| 土地+建物をセットで贈与 | ○ | — |
| 建物のみを贈与 | ○ | — |
| 土地(敷地)のみを贈与 | ○ | 贈与者または同居親族が建物を所有していること |
| 居住用不動産の取得資金を贈与 | ○ | 翌年3月15日までにその資金で不動産を取得し居住すること |
💡 実務のポイント:「土地だけ贈与」が最も多い
実務でおしどり贈与を利用するケースの多くは「自宅の土地の持分だけを配偶者に贈与する」パターンです。建物は築年数が経つと評価額が下がりますが、土地は路線価ベースで一定の価値があるため、2,000万円の控除枠を土地に充てるのが効率的です。建物は評価額が低ければ基礎控除110万円の範囲内で贈与できる場合もあります。
贈与税の基本的な仕組みについては「贈与税の基礎知識と仕組み」で解説しています。
おしどり贈与を使うべきかどうかは、「贈与で渡した場合」と「相続で渡した場合」のトータル税額を比較して判断します。
📐 シミュレーション前提条件
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 贈与税 | 0円 |
| 登録免許税(相続:税率0.4%) | 約8万円 |
| 不動産取得税(相続は非課税) | 0円 |
| 相続税(配偶者税額軽減+小規模宅地等適用後) | 約330万円(家族合計) |
| 合計税負担 | 約338万円 |
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 贈与税(2,000万円−2,000万円−110万円=0) | 0円 |
| 登録免許税(贈与:税率2.0%) | 約40万円 |
| 不動産取得税(贈与は課税対象) | 約24万円 |
| 相続税(自宅を除いた遺産で計算。小規模宅地等は使えない) | 約305万円(家族合計) |
| 合計税負担 | 約369万円 |
このケースでは、おしどり贈与を使うことで登録免許税が5倍(0.4%→2.0%)、不動産取得税も追加発生し、さらに小規模宅地等の特例(80%減額)が使えなくなるため、トータルで約31万円税負担が増えています。
※概算値です。個別の状況により異なります。正確な計算は税理士にご相談ください。
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鮎澤パートナーズに相談する| 比較項目 | おしどり贈与 | 配偶者税額軽減 | 小規模宅地等の特例 |
|---|---|---|---|
| 適用時期 | 生前(贈与時) | 相続時 | 相続時 |
| 非課税枠 | 2,000万円 | 1億6,000万円 or 法定相続分 | 評価額80%減(330㎡まで) |
| 対象財産 | 居住用不動産のみ | 全ての相続財産 | 居住用の宅地 |
| 登録免許税率 | 2.0% | 0.4% | 0.4% |
| 不動産取得税 | 課税 | 非課税 | 非課税 |
| 併用 | — | 小規模宅地等と併用可 | 配偶者税額軽減と併用可 |
小規模宅地等の特例について詳しくは「小規模宅地等の特例の概要」をご覧ください。
| ケース | なぜ有効か |
|---|---|
| 前婚の子がいて配偶者の居住権を守りたい | 生前に自宅の持分を配偶者に移転しておけば、遺産分割で自宅を失うリスクを回避できる |
| 将来自宅を売却する予定がある | 夫婦共有にしておけば、譲渡所得の3,000万円特別控除を夫婦それぞれ(合計6,000万円)適用できる |
| 遺産総額が非常に高額(数億円超) | 配偶者税額軽減だけでは不足し、生前に課税財産を減らす必要がある場合 |
| 小規模宅地等の特例を他の不動産に使いたい | 事業用宅地や貸付用宅地が複数あり、自宅以外に特例を適用したい場合 |
| ケース | なぜ使うべきでないか |
|---|---|
| 遺産総額が1億6,000万円以下 | 配偶者税額軽減で配偶者の相続税はゼロ。移転コストが増えるだけ |
| 相続人が配偶者と子のみで関係良好 | 遺産分割でトラブルになるリスクが低く、居住権保護の必要がない |
| 小規模宅地等の特例の対象不動産が自宅だけ | 相続で小規模宅地等を使えば80%減。贈与では使えない |
| 贈与後に自宅を売却する予定 | 居住継続要件を満たさず、控除が認められない可能性がある |
| 住宅ローンが残っている | 金融機関の承諾が必要で、拒否される場合がある |
2019年(令和元年)7月1日施行の民法改正により、婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産の贈与がなされた場合、「持ち戻しの対象としないことを前提として贈与されたもの」と推定されるようになりました(民法第903条第4項)。
改正前は、おしどり贈与で贈与された不動産も特別受益として遺産分割の際に持ち戻しの対象になっていました。そのため、生前に贈与した意味がなくなる可能性がありました。
📝 行政書士の視点:持ち戻し免除は「居住用不動産」に限定
持ち戻し免除の推定が適用されるのは「居住用不動産の贈与」に限られます。取得資金の贈与の場合、持ち戻し免除の推定が適用されるかどうかは解釈が分かれるところです。確実に持ち戻しを免除したい場合は、遺言書に「持ち戻しの対象としない」旨を明記しておくことをお勧めします。
相続時精算課税制度との違いについては「相続時精算課税制度の基礎知識」をご覧ください。
ステップ1:婚姻期間の確認 戸籍謄本で婚姻届の提出日を確認し、贈与日までに20年以上経過しているかを確認します。
ステップ2:不動産の評価 土地は路線価(または倍率方式)、建物は固定資産税評価額で評価します。2,000万円の控除枠に収まるよう、持分の割合を決めます。
ステップ3:贈与契約書の作成 贈与者と受贈者の間で贈与契約書を作成します。不動産の表示・持分の割合を明記します。
ステップ4:所有権移転登記 法務局で所有権移転登記を行います。登録免許税は評価額×2.0%です。
ステップ5:贈与税の申告 翌年2月1日から3月15日までに、必要書類を添付して贈与税の申告書を提出します。贈与税がゼロであっても申告は必須です。
💡 実務のポイント:持分の計算を間違えやすい
自宅の土地の路線価評価額が3,000万円の場合、2,000万円の控除枠に収めるには持分を「3分の2」として贈与します。この持分の計算を間違えて2,000万円を超える贈与をしてしまうと、超過分に贈与税がかかります。登記前に必ず税理士に評価額と持分を確認してもらいましょう。
夫婦間で自宅(評価額2,000万円)を贈与したが、「贈与税がゼロになるなら申告は不要だろう」と思い込み、申告期限(翌年3月15日)を過ぎた。税務署から連絡があり、おしどり贈与の適用が認められず、通常の贈与税695万円+無申告加算税が課された。
教訓:贈与税がゼロでも申告は必須です。申告しないと控除が適用されません。
婚姻届を提出した日が平成18年5月15日で、贈与を令和8年4月1日に行った。婚姻期間は19年10か月16日。1年未満の端数を切り捨てると19年であり、20年に達していなかった。
教訓:婚姻期間は1年未満の端数を切り捨てます。「もうすぐ20年」ではダメです。必ず戸籍で正確な婚姻届の提出日を確認しましょう。
夫が妻に自宅の持分を贈与し、おしどり贈与の申告をした。しかし、贈与の数か月後に自宅を売却した。税務署は「贈与時点で引き続き居住する見込みがなかった」と判断し、おしどり贈与の適用を否認した。
教訓:適用要件には「その後も引き続き住む見込みであること」が含まれます。売却を前提とした贈与は認められません。
相続税の計算方法について詳しくは「相続税の計算方法」をご覧ください。
📋 この記事のポイント
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