【税理士監修】納税が困難なときの対処法|納税の猶予・換価の猶予制度を完全解説

【税理士監修】納税が困難なときの対処法|納税の猶予・換価の猶予制度を完全解説
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

納税が困難なときの対処法|納税の猶予・換価の猶予制度を完全解説

「確定申告したが納税資金が足りない」「突然の売上減少で法人税が払えない」「差押えの通知が来てしまった」という法人経営者・個人事業主に向けて、納税の猶予・換価の猶予制度の要件・申請方法・延滞税の軽減効果を完全ガイドします。この記事を読めば、自分のケースでどの制度が使えるかを判断し、正しい申請手続きを進められます。

🏆 結論:「払えない」で放置が最悪。猶予制度の活用で延滞税が大幅軽減

税金が一時に払えない場合、「換価の猶予」(納期限から6ヶ月以内に申請)を使えば、延滞税が年1%程度に軽減され、差押えも猶予されます。災害・病気など特別な事情がある場合は「納税の猶予」が使え、延滞税が全額免除される場合もあります。最も避けるべきは「払えないから放置」。督促状の送付後も放置すると差押えに至り、事業継続が困難になります。

税金が払えないときに使える2つの猶予制度

国税には「納税の猶予」と「換価の猶予」の2つの猶予制度があります。いずれも税務署への申請に基づいて認められるもので、認められれば延滞税の軽減と差押えの猶予という大きなメリットがあります。

比較項目 換価の猶予(申請型) 納税の猶予
根拠法令国税徴収法151条の2国税通則法46条
原因要件特に限定なし(事業継続・生活維持が困難)災害・病気・事業の休廃業・著しい損失等
申請期限納期限から6ヶ月以内事由発生後、すみやかに
猶予期間最長1年(延長で最長2年)最長1年(延長で最長2年)
延滞税猶予期間中は年1%程度に軽減全部または一部が免除(災害等の場合は全額免除の可能性)
差押えへの影響差押済み財産の換価が猶予。事業維持に必要な財産は差押解除の可能性新たな差押え・換価が停止。既存の差押え解除の可能性
担保原則必要。ただし100万円以下 or 3ヶ月以内 or 担保提供が困難な場合は不要
他の滞納の有無申請対象以外の滞納がないこと特に制限なし

💡 実務のポイント:まず検討すべきは「換価の猶予」

資金繰りが厳しいクライアントから相談を受けた場合、まず検討するのは「換価の猶予(申請型)」です。理由は、原因要件が限定されていない(災害や病気でなくても「一時に納付すると事業継続が困難」であれば対象)ため、多くのケースで利用できるからです。納期限から6ヶ月以内に申請する必要があるため、「払えない」と気づいたら即座に動くことが重要です。

換価の猶予制度の詳細|申請型と職権型の違い

申請型と職権型の比較

換価の猶予には「申請型」(国税徴収法151条の2)と「職権型」(同151条)の2種類があります。

項目 申請型(151条の2) 職権型(151条)
誰が?納税者が自ら申請税務署長が職権で決定
申請期限納期限から6ヶ月以内期限の制限なし
既に滞納がある場合申請対象以外の滞納がないことが要件他の滞納があっても適用の可能性あり

申請期限(6ヶ月)を過ぎてしまった場合や、他の税目にも滞納がある場合は、税務署長の職権による換価の猶予が認められることがあります。いずれにしても、税務署の徴収担当に相談することが第一歩です。

換価の猶予の5つの申請要件

申請型の換価の猶予が認められるためには、以下の5つの要件をすべて満たす必要があります。

要件1:一時に納付すると事業継続・生活維持が困難であること。「納付可能金額(手元資金 − 当面の資金繰りに必要な額)」が納付すべき国税の額に満たないケースが該当します。損益が黒字でも、資金繰りの問題で要件を満たすことがあります。

要件2:納税について誠実な意思を有すること。申請書類を適切に記載して提出していれば、原則として認められます。

要件3:申請対象以外の国税に滞納がないこと。他の税目も滞納している場合は、それらもまとめて猶予申請するか、先に納付する必要があります。

要件4:納期限から6ヶ月以内に申請すること。納期限前の申請も受け付けてもらえるため、できるだけ早く申請しましょう。延滞税は納期限の翌日から発生するため、申請が早いほど軽減される延滞税の期間が長くなります。

要件5:原則として担保を提供すること。ただし、猶予税額が100万円以下、猶予期間が3ヶ月以内、または担保提供が困難な場合は不要です。

納税の猶予制度の詳細(国税通則法46条)

納税の猶予は、換価の猶予よりも認められる原因が限定されていますが、延滞税の軽減効果はより大きいのが特徴です。

納税の猶予が認められる5つの事由

No 猶予該当事由 具体例
1財産が災害・盗難にあった地震・台風・火災・水害で事務所・在庫が被災した
2本人・親族が病気・負傷した代表者が入院し事業の指揮ができなくなった
3事業を廃止・休止した主要取引先の倒産で事業を休止せざるを得なくなった
4事業について著しい損失を受けた売上が前年比50%以上減少した
5上記に類する事実があった法定申告期限から1年以上経過後に修正申告で税額が確定した場合など

⚠️ 単なる資金繰り困難では納税の猶予は使えない

「売上が減って資金繰りが厳しい」だけでは、納税の猶予の要件は満たしません(上記5つの事由のいずれかに該当する必要があります)。単なる資金繰り困難の場合は「換価の猶予」の方が適切です。制度選択を誤ると申請が却下される原因になるため、どちらの制度を使うべきかを税理士と相談してから申請しましょう。

AYUSAWA PARTNERS

納税猶予の申請サポートは鮎澤パートナーズへ

初回相談無料。税理士・公認会計士が猶予制度の選択から申請書の作成、分割納付計画の策定までワンストップで対応します。

鮎澤パートナーズに相談する

猶予申請に必要な書類と記載のポイント

必要書類一覧(猶予金額で異なる)

書類 100万円以下 100万円超
猶予申請書
財産収支状況書—(下記2つに代える)
財産目録
収支の明細書
担保提供書不要(100万円以下)原則必要
災害等を証明する書類(納税の猶予のみ)り災証明書、診断書等

申請書記載のポイント

💡 実務のポイント:「納付可能金額」の算出が最重要

猶予申請で税務署が最も重視するのは「納付可能金額」の算出根拠です。納付可能金額=手元資金(預貯金等)−当面の資金繰りに必要な額(仕入代金、給与、家賃等)で計算します。この金額が納付すべき国税の額に満たないことが「一時に納付困難」の立証になります。3ヶ月分程度のキャッシュフロー予測を添付すると、審査がスムーズに進む傾向があります。

申請書の様式は国税庁ホームページからダウンロードできるほか、e-Taxでの電子申請も可能です。税理士が代理で申請することもできます。

参考: 国税庁「換価の猶予の申請手続」

猶予が認められた場合の効果と分割納付

3つの効果

効果1:延滞税の軽減。猶予期間中の延滞税は、延滞税特例基準割合の2分の1(令和8年は年0.9%程度)に軽減されます。通常の延滞税(2ヶ月超で年9.1%)に比べて約10分の1の負担です。納税の猶予の場合は全額免除となるケースもあります。

効果2:差押え・換価の猶予。既に差押えを受けている財産の換価(売却)が猶予されます。事業維持に必要な財産については差押えの解除が認められる場合もあります。

効果3:分割納付が可能。猶予許可通知書に記載された分割納付計画に従って、月次で分割して納付していきます。

延滞税の軽減効果シミュレーション

📐 シミュレーション前提条件

  • 滞納税額:300万円
  • 滞納期間:1年(12ヶ月で分割完済)
  • 令和8年の延滞税率で計算
ケース 延滞税率 延滞税額(概算) 軽減効果
猶予なし(放置)2.8%→9.1%約22.7万円
換価の猶予あり約0.9%約2.7万円▲約20万円

※概算値です。分割納付による本税の減少は考慮していません。正確な計算は税理士にご相談ください。

猶予が取り消されるケースと防止策

猶予が認められた後でも、以下のケースに該当すると猶予が取り消されます。取消しとなると、猶予されていた延滞税の軽減もなくなり、差押えが再開される可能性があります。

取消事由 防止策
分割納付計画どおりに納付しない毎月の納付日を自動引落しにするか、カレンダーで厳格に管理する
猶予対象以外の国税を新たに滞納した猶予期間中の新たな申告税額は必ず期限内に納付する
資力が回復したにもかかわらず納付しない資金に余裕ができた場合は繰上げ納付を検討する
申請内容に虚偽があった財産目録・収支明細を正確に記載する
担保の価値が著しく減少した担保に変動がある場合は早めに税務署に相談する

💡 実務のポイント:猶予期間中も期限内納付の税金は必ず払う

猶予を受けているクライアントで最も多い失敗が、「猶予期間中に新しい確定申告の税金を滞納してしまう」ケースです。猶予の対象はあくまで「すでに確定した税額」であり、新たに発生する税金は期限内に納付しなければなりません。これを怠ると猶予が取り消され、元の延滞税率に戻ってしまいます。猶予期間中の資金計画には、新たな税金の納付額も組み込んでおくことが不可欠です。

猶予制度の選び方|ケース別判断フロー

あなたの状況 おすすめの制度 理由
資金繰りが厳しいが災害等の特別な事情はない換価の猶予(申請型)原因要件が限定されないため最も利用しやすい
災害・病気・事業の著しい損失がある納税の猶予延滞税が全額免除される可能性がある
納期限から6ヶ月を過ぎてしまった換価の猶予(職権型)を相談申請期限を過ぎても職権で認められる可能性
既に複数の税目で滞納がある納税の猶予 or 職権型換価の猶予申請型換価の猶予は他の滞納がない要件がある
所得税の確定申告で税額の1/2以上は払える延納制度所得税の場合、5月31日まで残額を延納できる

加算税4種類の税率と計算方法の全体像については、「加算税の全体像|過少申告・無申告・重加算・不納付加算税の種類と計算方法」で詳しく解説しています。

滞納処分の流れ(督促→差押え→換価→配当)については、「滞納処分の流れ|督促から差押え・換価・配当までの手続き」もあわせてご覧ください。納税証明書の種類と取得方法については「納税証明書の種類と取得方法」で解説しています。

よくある質問(FAQ)

猶予制度は自動的に適用されますか?
自動的には適用されません。納税者の方からの申請に基づいて適用されます。税務署の徴収担当に相談のうえ、必要書類を揃えて申請書を提出してください。e-Taxでの電子申請も可能です。
猶予の申請をしたら必ず認められますか?
必ず認められるわけではありません。要件を満たしているかどうかが審査され、却下される場合もあります。ただし、却下された場合は不服申立てが可能です。申請書の記載内容と添付書類を充実させることが認容率を上げるポイントです。
猶予を受けている間、納税証明書にはどう記載されますか?
納税証明書の備考欄に、猶予を受けている旨が記載されます。金融機関の融資審査で納税証明書の提出を求められた場合、この記載が影響する可能性があるため、事前に金融機関に相談しておくことをおすすめします。
地方税(住民税・事業税)にも猶予制度はありますか?
はい、地方税にも同様の猶予制度(徴収猶予・換価の猶予)があります。国税と地方税は別々の申請が必要です。地方税の猶予は、都道府県税事務所または市区町村の税務課に申請します。
猶予期間内に完済できそうにない場合はどうなりますか?
やむを得ない理由がある場合は、当初の猶予期間が終了する前に申請することで、猶予期間の延長(当初の期間と合わせて最長2年以内)が認められることがあります。延長が認められない場合は、猶予が終了し、残額について通常の延滞税率が適用されます。
税理士に猶予の申請を代理してもらえますか?
はい、税理士が代理で猶予申請書を作成・提出することが可能です。e-Taxでの電子申請も税理士が代理で行えます。財産目録や収支明細の作成は専門的な知識が求められるため、税理士に依頼した方が認容される可能性が高まります。
猶予制度を使うと信用情報に影響しますか?
税金の猶予自体は信用情報機関(CIC、JICC等)に登録されることはありません。ただし、納税証明書の備考欄に猶予の記載があるため、融資審査で納税証明書を提出する場合は影響する可能性があります。また、差押えが登記された場合は不動産登記簿に記載されるため、その意味では信用に影響し得ます。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 税金が払えないときは「換価の猶予」(資金繰り困難)か「納税の猶予」(災害・病気等)を申請
  • 換価の猶予(申請型)は納期限から6ヶ月以内に申請。延滞税が年0.9%程度に軽減
  • 納税の猶予は災害等が原因の場合に利用可能。延滞税が全額免除される場合も
  • 担保は猶予税額100万円以下 or 3ヶ月以内なら不要
  • 猶予期間中も新たな税金は期限内に納付しないと猶予が取り消される
  • 「払えないから放置」が最悪のパターン。督促→差押え→換価と事態が悪化する
  • 困ったらまず税務署の徴収担当に相談。税理士の代理申請も可能

納税が困難なときに最もやってはいけないのは「何もしない」ことです。放置すれば延滞税は雪だるま式に増え、差押えによって事業継続が危うくなります。「払えない」と気づいた時点で猶予制度の申請を検討し、税務署に相談してください。早く動くほど、延滞税の軽減効果も大きくなります。

AYUSAWA PARTNERS

納税猶予・資金繰り対策は鮎澤パートナーズへ

初回相談無料。公認会計士・税理士が猶予制度の活用から分割納付計画の策定、資金繰り改善までトータルでサポートします。

鮎澤パートナーズに相談する