【税理士×行政書士が解説】滞納処分の流れ|督促から差押え・換価・配当までの手続き

【税理士×行政書士が解説】滞納処分の流れ|督促から差押え・換価・配当までの手続き
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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滞納処分の流れ|督促から差押え・換価・配当までの手続き

「督促状が届いたけど放置してしまった」「差押えはいつ行われるのか」とお悩みの法人経営者・個人事業主に向けて、滞納処分の全ステップと差押え対象・回避策を完全ガイドします。この記事を読めば、今の自分がどの段階にいるか把握し、最適な対処法を判断できます。

🏆 結論:督促状が届いた段階が最大のターニングポイント

滞納処分は「督促→財産調査→差押え→換価→配当」の順に進む法定手続きです。督促状を発した日から10日を経過すると、税務署は差押えを「しなければならない」義務を負います(国税徴収法47条1項)。最も重要なのは、督促状が届いた段階で速やかに猶予制度の申請や分納の相談を行うことです。差押え後の対処は選択肢が大幅に限られます。

滞納処分とは?基本的なしくみと法的位置づけ

滞納処分の定義

滞納処分とは、国税や地方税を納期限までに納付しない納税者に対して、税務署長や徴税吏員が強制的に財産を差し押さえ、換価(現金化)し、滞納税額に充てる一連の行政処分です。国税徴収法に基づく自力執行権(裁判所の許可なく徴収職員自らが執行できる権限)により行われます。

ここで重要なのは、滞納処分は「できる」ではなく「しなければならない」と規定されている点です。国税徴収法第47条第1項は「督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときは、財産を差し押えなければならない」と定めています。つまり、法的には督促後の差押えは税務署の裁量ではなく義務なのです。

💡 実務のポイント

実務では、督促状が届いた翌日にすぐ差押えが行われるわけではありません。通常は督促後に電話催告や文書催告が行われ、それでも対応がない場合に差押えが執行されます。ただし、「催告をしてから差押えをする」という法的義務はなく、督促から10日を過ぎればいつでも差押え可能です。催告がないまま差押えされても違法ではありません。

滞納処分の対象となる税金

滞納処分は国税だけでなく、地方税(住民税・事業税・固定資産税等)や社会保険料にも適用されます。地方税法や健康保険法が「国税徴収法の例による」と規定しているためです。

区分 対象となる税・保険料 根拠法令
国税法人税・所得税・消費税・相続税・贈与税・源泉所得税等国税徴収法
地方税住民税・事業税・固定資産税・不動産取得税・自動車税等地方税法331条等
社会保険料健康保険料・厚生年金保険料・労働保険料健康保険法180条等

滞納処分の全体の流れ【6ステップ】

滞納処分は、法令で定められた以下の6つのステップで進行します。各ステップの法的根拠と期限を整理しました。

ステップ 手続き 期限・タイミング 根拠条文 納税者の権利
①督促督促状の送付納期限から20日以内通則法37条猶予申請・分納相談
②財産調査金融機関・勤務先等への照会督促後〜差押え前徴収法141条〜147条質問には応答義務あり
③差押え財産の処分禁止督促から10日経過後徴収法47条換価の猶予申請・不服申立て
④換価(公売等)財産の現金化差押え後徴収法89条〜公売公告の閲覧・買戻し
⑤配当換価代金の分配換価後徴収法128条〜配当計算書の閲覧
⑥残余金交付/停止残余金の返還 or 処分停止配当後徴収法129条/153条停止申請

加算税・延滞税の全体像については「加算税の種類と税率を完全解説|過少申告・無申告・不納付・重加算税の全体像」で詳しく解説しています。

【ステップ1】督促|滞納処分の出発点

督促状の法的意味

督促状は単なる「支払いのお願い」ではありません。法的には、滞納処分を開始するための前提手続きであり、これを発しなければ原則として差押えができません(国税通則法37条)。督促状は納期限から20日以内に発送されます。

督促と催告の違い

督促状の後に届く「催告書」や「お知らせ」は、督促とは法的に異なります。催告書に法的な強制力はなく、届かなかったとしても差押えの妨げにはなりません。実務では税務署が催告を行ってから差押えをするケースが多いですが、催告なしでも差押えは合法です。

⚠️ 注意

「催告書が届いていないから差押えは違法」と主張しても認められません。法律上、差押えの前提条件は「督促状の発送」であり、催告は任意の行為です。実務で年間数十件の滞納相談を受けますが、「催告書がなかったから違法だ」と誤解されている方が少なくありません。

督促状が届いたらすぐにすべきこと

督促状が届いた段階が最も重要なターニングポイントです。以下の対応を検討してください。

状況 推奨対応 効果
資金があるが忘れていた即時全額納付延滞税のみで終了
一時的に資金がない換価の猶予を申請差押え猶予+延滞税軽減
災害・病気で納付困難納税の猶予を申請差押え猶予+延滞税全額免除の可能性
金額が大きく分納したい税務署に分納の相談交渉次第で差押え回避

猶予制度の詳細は「納税が困難なときの対処法|納税の猶予・換価の猶予制度を完全解説」をご覧ください。

【ステップ2】財産調査|何が調べられるのか

徴収職員の調査権限

国税徴収法第141条〜第147条に基づき、徴収職員は滞納者の財産を広範に調査できます。この調査は事前通知なしに行われることがあり、納税者の同意も不要です。

調査先 調査内容 根拠条文
金融機関(銀行・信金・ゆうちょ等)口座残高・取引履歴(直近3ヶ月〜)徴収法141条
勤務先給与額・賞与・退職手当徴収法141条
生命保険会社契約の有無・解約返戻金額徴収法141条
法務局不動産の所有状況・抵当権設定徴収法141条
取引先・得意先売掛金の有無・金額徴収法141条
滞納者の住居・事務所捜索(動産の発見・差押え)徴収法142条

💡 実務のポイント

現場での経験上、金融機関への調査は全銀行・信金・ゆうちょ等に対して一斉に行われることが多く、「口座を分散すれば見つからない」という考えは通用しません。生命保険の解約返戻金も調査対象であり、30社以上の保険会社に一括照会されるケースが一般的です。

【ステップ3】差押え|何が差し押さえられるのか

差押え対象財産の種類と影響

差押えの対象は「換価したときに滞納国税への配当が得られる財産」(徴収法48条)であり、金銭的価値のあるものは原則として全て対象になります。

財産の種類 差押え方法 換価方法 生活への影響
預貯金金融機関への差押通知取立て(即時)★★★(口座凍結)
給与勤務先への差押通知取立て(毎月)★★★(手取り減少)
不動産登記嘱託公売★★★(競売リスク)
生命保険保険会社への差押通知解約→返戻金取立て★★(保障消失)
売掛金取引先への差押通知取立て★★★(取引先に知られる)
自動車タイヤロック・登録嘱託公売★★(事業に支障)
動産(貴金属・家電等)占有(搬出 or 封印)公売★(換価価値が低い)

差押えが禁止される財産

国税徴収法75条〜78条は、生活の維持に必要な最低限の財産を差押禁止財産として定めています。

差押禁止財産 具体例 根拠
生活に欠くことのできない衣服・寝具等衣類・布団・家具(高級品除く)75条1項1号
3ヶ月分の食料・燃料食料品・灯油・ガス75条1項2号
業務に欠くことのできない器具農具・漁具・職人の工具等75条1項4号
給与の一定額最低生活費相当額(本人10万円+扶養1人4.5万円等)76条

💡 実務のポイント

給与の差押えでは、手取り全額が取られるわけではありません。ただし、預貯金に振り込まれた給与は「預貯金」として扱われるため、差押禁止の保護が及ばない可能性があります。この点で実務上トラブルになるケースを多く見てきました。給与振込直後の口座差押えに異議がある場合は、「差押禁止財産の範囲変更の申立て」(徴収法153条の2準用)を検討してください。

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【ステップ4】換価(公売)|差押財産の現金化

換価の方法

差し押さえた財産を現金化する手続きが換価です。財産の種類によって方法が異なります。

換価方法 対象財産 手続きの流れ
取立て預貯金・給与・売掛金等の金銭債権第三債務者(銀行等)から直接取立て
公売(入札)不動産・自動車・動産・有価証券公売公告→入札→売却決定→代金納付
随意契約公売に適さない財産買受人との直接交渉

公売の具体的な流れ

不動産や自動車の公売は、以下のタイムラインで進行します。

時期 手続き 内容
公売日の10日前まで公売公告公売財産・日時・場所・見積価額等を公告
公売公告時関係者への通知滞納者・抵当権者等に通知
公売日入札・開札最高価入札者を決定
開札後売却決定最高価入札者に売却を決定(7日以内)
売却決定後代金納付買受人が代金を納付し所有権移転
代金納付後配当売却代金から滞納税額等に充当

📝 行政書士の視点|公売に参加したい場合

公売は一般の方でも参加できます。国税庁や自治体のインターネット公売(KSI官公庁オークション等)では、不動産・自動車・動産等が市場価格より安く出品されることがあります。参加には公売保証金(見積価額の10%以上)の納付が必要です。ただし、公売財産には瑕疵担保責任がなく、現状有姿での引渡しとなるため、不動産の場合は事前の物件調査が不可欠です。

【ステップ5】配当|換価代金の分配ルール

配当の優先順位

換価代金(公売代金や取立て金)は、法令で定められた優先順位に従って分配されます(国税徴収法128条以下)。

優先順位 対象 具体例
第1位滞納処分費鑑定費用・保管費用・公売費用
第2位差押えに係る国税差押えの原因となった滞納税額
第3位交付要求に係る国税・地方税等他の税務署・自治体からの交付要求
第4位担保権者抵当権者(法定納期限等との前後関係による)
第5位残余金滞納者に交付

実務上、不動産に抵当権が設定されている場合は、国税の法定納期限等と抵当権の設定時期の前後関係により優先順位が変わります(国税徴収法16条)。法定納期限等の前に設定された抵当権が優先し、後に設定された抵当権は国税に劣後します。

第二次納税義務|滞納者以外に納税義務が及ぶ場合

第二次納税義務の概要

第二次納税義務とは、本来の納税者(滞納者)の財産に滞納処分を執行してもなお不足する場合に、一定の関係者に補充的に納税義務を負わせる制度です(国税徴収法33条〜41条)。経営者が法人を廃業して個人で同じ事業を続けるようなケースで適用されることがあります。

第二次納税義務の7類型

類型 対象者 責任限度 中小企業での典型例
①無限責任社員(33条)合名会社等の社員無限合名・合資会社の社員
②清算人等(34条)清算人・残余財産受配者分配・受配財産の限度法人解散時の残余財産分配
③同族会社(35条)滞納者が出資する同族会社株式・出資の限度オーナー社長の個人税滞納→法人の株式
④実質課税(36条)所得の実質帰属者収益が生じた財産の限度名義貸しの実質的事業者
⑤共同事業者等(37条)同族会社の株主で重要財産保有者重要財産の限度社長個人名義の事業用不動産
⑥事業譲受(38条)特殊関係者への事業譲受人譲受財産の限度親族に事業を安く譲渡
⑦無償譲受等(39条)無償・低額の譲受人受けた利益の現存額法定納期限1年前以降の贈与

⚠️ 中小企業経営者への警告

実務で特に多いのは⑥事業譲受と⑦無償譲受のケースです。「法人が税金を滞納したまま廃業し、社長の配偶者名義で同じ事業を再開する」というパターンでは、ほぼ確実に第二次納税義務が課されます。法定納期限の1年前以降に行われた無償・低額の財産移転も対象です。事業承継や法人の清算を検討する際は、必ず事前に税理士に相談してください。

滞納処分の停止|納税義務が消滅するケース

停止の3要件

滞納処分の停止(国税徴収法153条)は、以下の3つの場合に認められます。いずれか1つに該当すれば適用の可能性があります。

要件 内容 具体例 効果
①財産がない滞納処分をできる財産がない差押可能財産が見つからない即時停止→3年で消滅
②生活の著しい窮迫生活を著しく窮迫させるおそれ差押えにより生活保護水準以下に停止→3年で消滅
③所在・財産が不明滞納者の所在・財産が不明行方不明・海外移住等停止→3年で消滅

停止後3年で納税義務が消滅

滞納処分の停止が3年間継続すると、納税義務が消滅します(徴収法153条4項)。これは「納税の免除」と同様の効果を持つ非常に強力な制度です。ただし、停止期間中に資力が回復したと認められた場合は、停止が取り消されて滞納処分が再開されます。

💡 実務のポイント

滞納処分の停止は納税者が申請するものではなく、税務署長が職権で行う処分です。ただし、現場では「停止に該当する事情がある」ことを税務署に伝えることで、停止の検討を促すことが可能です。法人が事業を廃止し、差押可能財産がない場合に適用されるケースを数件経験しています。停止の適用を受けるには、資力がないことを客観的に証明する資料(預金残高証明・収支明細等)の提出が有効です。

滞納処分を回避するための対処法チェックリスト

「あなたの状況はどれ?」を以下のチェックリストで確認してください。

あなたの状況 推奨する対処法 対処の期限 成功確率の目安
督促状が届いたばかり全額納付 or 猶予申請督促から10日以内◎ 高い
催告書が届いた換価の猶予申請+分納相談可能な限り早く○ やや高い
差押えを受けた不服申立て or 全額納付 or 分納交渉差押え後3ヶ月以内(審査請求)△ 状況次第
公売公告が出された全額納付 or 抵当権者との交渉公売日前まで▲ 低い
財産がなく支払えない滞納処分の停止を税務署に相談○ 要件該当なら

延滞税の計算方法と免除制度については「延滞税の計算方法と免除・軽減制度|令和8年の最新税率と加算税の減免措置」も参考にしてください。

不服申立て|違法な滞納処分に対する救済手続き

不服申立ての3段階

滞納処分が違法・不当だと考える場合、以下の3段階で争うことができます。

段階 申立先 期限 費用
①再調査の請求処分を行った税務署長処分を知った日の翌日から3ヶ月以内無料
②審査請求国税不服審判所再調査決定から1ヶ月以内(直接請求は3ヶ月以内)無料
③取消訴訟裁判所裁決から6ヶ月以内訴訟費用(弁護士費用含む)

💡 実務のポイント

不服申立ては「差押え自体の違法性」を争うもので、「税金の計算が間違っている」という場合は更正の請求が別途必要です。差押えの適法性に問題がある典型例としては、差押禁止財産の差押え、超過差押え(滞納額を大幅に超える財産の差押え)、繰上差押えの要件不備などがあります。

よくある質問(FAQ)

督促状を無視し続けるとどうなりますか?
法的には督促状の発送から10日を経過した日以降、いつでも差押えが行われる可能性があります。実務では催告書の送付や電話連絡が行われることもありますが、対応しなければ予告なく預貯金や給与が差し押さえられるリスクがあります。督促状が届いたら、必ず税務署に連絡してください。
差押えは事前に連絡がありますか?
法律上、差押えの事前連絡や納税者の同意は不要です(国税徴収法47条)。預貯金の差押えは金融機関への通知で完了するため、納税者が知るのは口座残高がゼロになった後ということもあります。
差押えを受けると信用情報に載りますか?
税金の滞納や差押え自体は、CICやJICCなどの信用情報機関には登録されません。ただし、差押えにより銀行口座が凍結されると、クレジットカードや住宅ローンの返済が滞り、結果として信用情報に傷がつく可能性があります。また、不動産の差押え登記は登記簿で誰でも確認できます。
法人が廃業した後も滞納処分は行われますか?
法人が解散・清算した後でも、清算結了の登記が完了するまでは法人としての存在が続くため、滞納処分の対象です。清算結了後も、清算人や残余財産の受配者に対して第二次納税義務が課される場合があります(徴収法34条)。
個人事業主の場合、自宅も差し押さえられますか?
自宅も差押えの対象になり得ます。ただし、住宅ローンの抵当権が設定されている場合、公売しても抵当権者への配当が優先されるため、滞納税額への配当が見込めなければ実際には差し押さえないことが多いです。これを「無益な差押えの禁止」(徴収法48条2項)と言います。
第二次納税義務は相続税にも適用されますか?
はい。第二次納税義務は国税全般に適用されるため、相続税の滞納についても同様です。例えば、相続人が相続財産を相続後に低額で親族に譲渡し、相続税を滞納した場合、譲受人に第二次納税義務が課される可能性があります(徴収法39条)。
滞納処分の時効は何年ですか?
国税の徴収権の消滅時効は原則5年です(国税通則法72条)。ただし、督促状の発送や差押えにより時効は更新(リセット)されるため、実質的に5年で消滅することはほとんどありません。滞納処分の停止が3年間継続した場合は、納税義務自体が消滅します(徴収法153条4項)。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 滞納処分は「督促→財産調査→差押え→換価→配当」の法定手続き
  • 督促状の発送から10日経過後、差押えは税務署の「義務」(徴収法47条)
  • 預貯金・給与・不動産・売掛金・生命保険等、金銭的価値のある財産はほぼ全て差押え対象
  • 第二次納税義務により、滞納者の親族・同族会社・事業譲受人にも納税義務が及ぶ場合がある
  • 督促状が届いた段階で猶予制度の申請や分納相談を行うことが最善の対処
  • 財産がない場合は滞納処分の停止→3年で納税義務消滅の可能性がある
  • 納税証明書が必要な場合に滞納があると発行できないため、融資・入札にも影響が出る

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