アメリカの相続税(連邦遺産税)申告ガイド|Form706-NA・日米租税条約・二重課税回避を完全解説

アメリカの相続税(連邦遺産税)申告ガイド|Form706-NA・日米租税条約・二重課税回避を完全解説
鮎澤パートナーズ|公認会計士・税理士・社会保険労務士・行政書士
公認会計士(第47928号)・税理士(第159175号)・社会保険労務士(第13240067号)・行政書士(第24061284号)が監修。年間100社以上の国際相続・米国資産関連の税務を支援。
📋 税理士監修 🌍 国際相続 🇺🇸 米国税務

「アメリカに不動産・株式を持つ親が亡くなった」「米国資産の相続税はどうなる?」とお悩みの相続人・国際資産保有者に向けて、米国連邦遺産税の仕組み・Form706-NAの提出期限・日米租税条約特例・外国税額控除・州税まで完全ガイドします。この記事を読めば、日米の相続税で二重課税を最小化できる方法がわかります。

🏆 結論:米国非居住者の日本人は基礎控除6万ドル・日米租税条約で大幅拡大可能

アメリカの相続税(連邦遺産税)は、米国市民・居住者には2025年1,399万ドル(2026年以降は1,500万ドル恒久化)の基礎控除がありますが、日本人(米国非居住者)は原則6万ドルのみと極めて低額です。ただし日米租税条約を適用すれば、全世界遺産に占める米国資産の割合分の基礎控除を受けられ、実質的に米国市民並みの控除が可能です。米国資産が6万ドル超(約900万円)の場合、死亡から9ヶ月以内にForm706-NAをIRS(米国内国歳入庁)に提出する義務があります。日米の二重課税は「日本側で外国税額控除」または「米国側で日米租税条約適用」のどちらかで回避できますが、ケースにより有利な方法が異なるため税理士のシミュレーション必須です。

アメリカの相続税(連邦遺産税)とは

アメリカの相続税は「連邦遺産税(Federal Estate Tax)」と呼ばれ、日本の相続税とは根本的に異なる仕組みです。最大の違いは、納税義務者が「被相続人(亡くなった人)の遺産」であって、相続人ではない点です。

年商10億円規模のIT企業オーナーがハワイにコンドミニアム(評価額150万ドル≈2.2億円)を所有していたケースを担当した経験では、相続発生時に連邦遺産税の存在を知らず、申告期限(9ヶ月)を過ぎてから慌てて対応した結果、延滞金・加算税で約3万ドル(450万円)の追加負担が発生しました。米国資産がある場合、日本の相続税だけでなく米国側の手続きも必須です。

日米の相続税の根本的違い

項目 日本の相続税 アメリカの連邦遺産税
納税義務者相続人(財産を受け取る人)被相続人の遺産(エステート)
課税方式遺産取得課税(法定相続分の取得財産)遺産税課税(遺産総額)
基礎控除(米市民/居住者)3,000万円+600万円×法定相続人数2025年:1,399万ドル(約2.1億円)
2026年〜:1,500万ドル(恒久化)
基礎控除(米非居住者)原則6万ドル(約900万円)
租税条約で拡大可
税率10〜55%(累進)18〜40%(累進)
申告期限死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内死亡日から9ヶ月以内
申告書類相続税申告書(税務署)Form 706(米市民) / Form 706-NA(非居住者)

米国非居住者の課税対象資産

日本居住者の日本国籍者(米国非居住者)が亡くなった場合、課税対象になるのは米国所在の財産のみです。何が「米国所在」と判定されるかが重要なポイントです。

米国所在資産とされるもの

資産 課税対象 注意点
米国内不動産ハワイ・カリフォルニア等のコンドミニアム
米国法人発行の株式物理的所在地でなく発行会社で判定
米国銀行の預金事業関連預金は課税、個人預金は非課税(IRC §2105)
米国国債・米国社債米国国債のうち登録債は非課税
米国信託受益権の評価で課税
米国法人への貸付債権債権の所在地は債務者所在地で判定
日本法人の株式(米国上場)×発行会社が日本法人なら非課税

⚠️ 注意:米国株は物理的所在地ではなく発行会社で判定

「日本の証券会社の口座で米国株(Apple・Microsoft等)を持っているから米国所在ではない」というのは誤解です。米国法人発行の株式は、保管場所に関わらず米国所在資産とされ、連邦遺産税の課税対象です。米国株式を多額保有している場合、確実に申告対象になります。

日米租税条約による基礎控除拡大

米国非居住者の基礎控除は原則6万ドル(約900万円)と極めて低額ですが、日米租税条約を適用すれば、米国市民・居住者と同等の基礎控除を全世界遺産に対する米国資産の割合で按分した金額まで拡大できます。

租税条約適用後の基礎控除計算式

💡 日米租税条約による基礎控除拡大

拡大基礎控除 = 米市民/居住者の基礎控除 × (米国資産 ÷ 全世界遺産)

2026年の米市民/居住者の基礎控除は1,500万ドル(恒久化)。

米国資産5,000万円・全世界遺産2億円の場合:
拡大基礎控除=1,500万ドル×(5,000万÷20,000万)
=1,500万ドル×25%=375万ドル(約5.6億円)

米国資産5,000万円<拡大基礎控除5.6億円なので、連邦遺産税はゼロ。

租税条約適用の具体例

🧮 シミュレーション:ハワイ別荘+日本資産の相続

前提:日本在住の日本国籍者死亡
・日本所在資産:1億5,000万円(自宅・預金・株式)
・米国所在資産:5,000万円(ハワイ別荘=約33万ドル)
・全世界遺産:2億円

(A)租税条約適用なし:
米国資産33万ドル−基礎控除6万ドル=27万ドル
連邦遺産税=27万ドル×累進税率=約7万ドル(約1,050万円)

(B)租税条約適用あり(2026年):
拡大基礎控除=1,500万ドル×(5,000万÷2億)=375万ドル
米国資産33万ドル<375万ドル → 連邦遺産税ゼロ

節税効果:1,050万円

このように、米国に少額の資産しか持たない場合、租税条約適用で連邦遺産税をほぼゼロにできるケースが多くあります。ただし、Form 706-NAの申告自体は必要です。

Form 706-NAの提出

米国非居住者の連邦遺産税申告書は「Form 706-NA(United States Estate (and Generation-Skipping Transfer) Tax Return)」です。日本の相続税申告書とは別物です。

Form 706-NAの基本情報

項目 内容
提出期限死亡日から9ヶ月以内
提出義務米国資産6万ドル超(基礎控除超過)
提出先IRS(米国内国歳入庁)
使用言語英語(書類添付の和訳も推奨)
通貨米ドル(死亡日の為替レートで換算)
納付期限申告期限と同じ9ヶ月以内
期限延長Form 4768で6ヶ月延長可(申告のみ・納税は別)

Form 706-NAの記載内容

  • 被相続人の情報(氏名・国籍・死亡日・最終住所)
  • 米国所在資産の明細と評価額
  • 控除対象費用(弁護士費用・税理士費用・葬儀費用等)
  • 租税条約適用の有無と計算
  • 全世界遺産の概要(条約適用時)
  • 納税額の計算

AYUSAWA PARTNERS

国際相続・米国資産のご相談は鮎澤パートナーズへ

初回相談無料。税理士・公認会計士・社労士・行政書士がワンストップで対応します。Form 706-NA作成・日米租税条約適用・外国税額控除のシミュレーションまで一貫支援します。

鮎澤パートナーズに相談する

日米二重課税の回避方法

日本と米国の双方で相続税が発生する場合、二重課税となります。これを回避する2つの方法があり、ケースにより有利な方法が異なります。

2つのアプローチ

アプローチ 仕組み 適用ケース
①日本側の
外国税額控除
米国で納付した遺産税を、日本の相続税から控除日本側の相続税額が大きい場合
②米国側の
日米租税条約適用
米国側の基礎控除を拡大し、米国遺産税を圧縮米国資産が小さく、日本資産が大きい場合

①日本側の外国税額控除

💡 外国税額控除の計算式(相続税法第20条の2)

外国税額控除額は以下のいずれか少ない方:

(A) 米国で実際に納付した連邦遺産税額
(B) 日本の相続税額 × (米国所在財産÷全相続財産)

つまり、米国で多額の遺産税を払っていても、日本の相続税で控除できるのは「米国資産割合相当の日本相続税額」が上限です。

どちらが有利かの判定基準

ケース 有利な方法 理由
米国資産が遺産の50%超日本側の外国税額控除日本の控除上限が大きい
米国資産が遺産の30%以下米国側の租税条約適用租税条約で米国側がほぼゼロに
中間のケース両方のシミュレーションが必要税理士の精密計算で決定

州レベルの遺産税(ステートタックス)

アメリカの相続税は連邦レベルだけでなく、州によっては独自の遺産税を課しています。米国不動産がある州の遺産税も確認が必要です。

州税の有無

州遺産税 税率 日本人が持つ物件特徴
ハワイ州あり最大16%コンドミニアム多数
カリフォルニア州なし不動産投資多い
ニューヨーク州あり最大16%マンハッタンの物件等
フロリダ州なしマイアミ等
ワシントン州あり最大20%シアトル等
テキサス州なしテック企業株保有等

ハワイ州はForm M-6で州遺産税申告が必要です。9ヶ月の申告期限・6ヶ月の延長申請(Form 4768同様)など、連邦遺産税と類似の手続きとなります。

プロベート(検認手続き)の重要性

アメリカでは相続税以前に、「プロベート(Probate=遺言検認)」という裁判所の手続きが必要です。日本の相続にはない特殊な仕組みで、これを理解せずに進めると相続資産にアクセスできなくなります。

プロベートとは

💡 プロベートの概要

プロベートは、米国の州裁判所が被相続人の遺産を検認し、債権者への支払い・相続人への分配を監督する手続きです。州により異なりますが、通常6ヶ月〜2年かかり、弁護士費用も発生します。

プロベートを回避する方法:
・生前信託(Living Trust)の設定
・共有名義(Joint Tenancy)での所有
・受取人指定(Beneficiary Designation)の活用
・少額遺産簡易手続き(Small Estate Affidavit)の利用

米国資産を持つ日本人の生前対策

米国に資産を持つ日本人は、相続発生前に対策を講じることで、連邦遺産税・州税・プロベート費用を大幅に削減できます。

主な生前対策

対策 効果
米国法人を通じた所有日本法人株式となり米国遺産税の対象外に
生前信託(リビングトラスト)プロベート回避・継続管理可能
夫婦共有名義片方死亡時に自動相続でプロベート回避
米国生命保険の活用死亡時の納税原資確保
資産売却・本国送金米国資産そのものを減らす

よくある質問

日本の証券会社で買った米国株は連邦遺産税の対象ですか?
対象です。米国法人発行の株式は、物理的所在地(保管場所)に関わらず、米国所在資産とされます。例えばApple、Microsoft、Tesla等の株式は、日本のSBI証券・楽天証券で保有していても、米国所在資産扱いです。米国株を1,000万円分以上保有している場合は、相続時に連邦遺産税申告(Form 706-NA)が必要になる可能性があります。
ハワイのコンドミニアムを相続したらどう対応すれば?
①死亡から9ヶ月以内にForm 706-NA(連邦)とハワイ州のForm M-6を提出、②現地の不動産プロベート手続きを進める、③日本でも10ヶ月以内に相続税申告。日米租税条約の特例適用判定、外国税額控除の比較計算を税理士が行います。手続きの複雑性から、米国側のCPA(公認会計士)と日本側の税理士の連携が必須です。
日米租税条約は自動的に適用されますか?
いいえ、Form 706-NA上で適用を選択する必要があります。租税条約適用を選ぶと、全世界遺産の開示が必要になり、米国側に日本の遺産情報まで提出することになります。プライバシーを重視するなら適用しない選択もありますが、節税効果は大きいため、通常は適用を選びます。シミュレーションで有利な方を選択することが重要です。
米国に銀行預金だけ持っている場合も申告が必要?
原則として個人の米国銀行預金は連邦遺産税の課税対象外です(IRC §2105(b))。ただし、預金口座が米国事業に関連している場合や、CD(譲渡性預金)等の証券化された金融商品の場合は課税対象になります。判断が複雑なため、米国に金融資産を持つ場合は税理士に相談してください。
米国弁護士・税理士費用は控除できますか?
できます。Form 706-NAの計算上、相続手続きにかかった弁護士費用・税理士費用・コンサルタント費用は控除対象となります。米国相続手続きは複雑で、合計10万ドル(約1,500万円)以上の費用がかかるケースもありますが、これらは全額控除可能です。領収書を保存し、Form 706-NAに記載してください。
期限内にForm 706-NAを提出できない場合は?
Form 4768で6ヶ月の申告期限延長申請が可能です。ただし、納税自体の延長ではないため、9ヶ月以内に予定納税(概算)が必要です。延長申請なしで期限を過ぎると、申告漏延ペナルティ(月5%、最大25%)が課されます。納付遅延の場合は別に納税遅延ペナルティ(月0.5%)+延滞利息(年7%程度)が発生します。
プロベートにはどのくらいの費用がかかりますか?
州により異なりますが、遺産額の3〜10%程度が一般的です。100万ドルの不動産なら3〜10万ドル(450〜1,500万円)の弁護士費用・裁判所費用がかかります。期間も6ヶ月〜2年と長いため、生前にリビングトラスト(費用2,000〜5,000ドル)を設定してプロベート回避することが、コスト効果の高い対策です。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 米国連邦遺産税は被相続人課税(遺産税方式)で、日本の相続税(相続人課税)と根本的に違う
  • 米国非居住者の基礎控除は原則6万ドルだが、日米租税条約で米市民並みに拡大可能
  • 日米租税条約適用後の基礎控除=1,500万ドル×(米国資産÷全世界遺産)
  • 米国法人発行の株式は保管場所に関係なく米国所在資産(米国株注意)
  • Form 706-NAをIRS(米国内国歳入庁)に死亡から9ヶ月以内に提出
  • 二重課税回避は「外国税額控除」または「租税条約適用」の2アプローチ
  • ハワイ・NY・ワシントン州は州遺産税あり(連邦税に加算)
  • プロベート回避にはリビングトラスト・共有名義・受取人指定が有効

📝 次のアクション

  1. 米国所在資産(不動産・米国株・米国銀行口座)を把握する
  2. 米国資産が6万ドル超なら申告義務発生を確認
  3. 日米租税条約適用と外国税額控除の有利比較を税理士に依頼
  4. 9ヶ月以内のForm 706-NA提出スケジュールを管理
  5. 生前対策(リビングトラスト・共有名義等)を検討する

AYUSAWA PARTNERS

国際相続・米国資産のご相談は鮎澤パートナーズへ

初回相談無料。税理士・公認会計士・社労士・行政書士がワンストップで対応します。Form 706-NA作成・日米租税条約適用・外国税額控除のシミュレーション・国際相続まで一貫支援します。

鮎澤パートナーズに相談する