キッチンカー・移動販売の営業許可取得ガイド|複数自治体対応の実務

キッチンカー・移動販売の営業許可取得ガイド|複数自治体対応の実務
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

キッチンカーでの飲食販売は、2021年改正食品衛生法で給水タンク40L/80L/200Lの3区分に統一され、全国どの都道府県でも同じ基準で営業できるようになりました。ただし許可は保健所ごとに取得が必要で、出店エリアが複数県にまたがる場合は実務判断が重要です。タンク容量別の調理制限・仕込み場所要否・必要書類を行政書士が解説します。

🏆 結論:タンク容量で「できる調理」が決まる、200L搭載なら車内仕込みも可

キッチンカーの営業許可は、給水タンクの容量(40L・80L・200L)で以下のように調理範囲が決まります。40L:温める・揚げる・盛り付けのいずれか1工程のみ、80L:簡易調理・複数品目の提供可、200L:車内仕込みまで可能で固定店舗と同等の営業が可能。自治体ごとに許可取得は必要ですが、2021年改正で設備基準が全国統一され、1台のキッチンカーで複数県を巡業するハードルが大きく下がりました。出店予定の全ての都道府県で保健所許可を取得することが基本です。

キッチンカー営業許可の基本

キッチンカー(移動販売車)での飲食提供は、食品衛生法第55条に基づく「飲食店営業」(自動車営業)の許可を、営業する都道府県ごとに保健所から取得する必要があります。

2021年6月1日施行の改正食品衛生法により、従来は自治体ごとにバラバラだった設備基準が全国統一され、給水タンクの容量で調理可能範囲が明確化されました。これによりキッチンカー事業者の設備投資判断が容易になり、複数県対応のコストも削減されています。改正の詳細は厚生労働省 営業規則で確認できます。

📋 キッチンカー営業許可の基本
項目 内容
根拠法令食品衛生法第55条・施行規則別表第20
許可区分飲食店営業(自動車営業)
申請先出店する都道府県の所管保健所
手数料約16,000〜22,000円(自治体により異なる)
有効期間5〜8年(自治体により異なる)
HACCP対応必須(2021年改正で義務化)
食品衛生責任者1名以上の配置必須

給水タンク容量別の調理可能範囲|全国統一基準

2021年改正で給水タンクが40L・80L・200Lの3区分に統一されました。タンク容量は提供できる料理の幅を直接決める最重要要素です。

💧 タンク容量別の営業範囲
タンク容量 調理工程 提供品目数 車内仕込み
40L程度温める・揚げる・盛り付けのいずれか1工程単品のみ不可
80L程度2工程以上の簡易調理(例:焼く+盛り付け)複数メニュー可(大量調理は不可)不可(別途仕込み場所要)
200L程度固定店舗と同等の複数工程制限なし可能(食材カット等)

💡 タンク選定の実務基準

メニュー設計からタンク容量を逆算するのが実務の鉄則です。「からあげ+ごはんで丼もの」を提供したい場合は揚げる+盛り付けの2工程のため80L、「パスタとサイドメニュー」では複数工程のため200L、「クレープ1種類のみ」なら40Lで十分など、営業スタイルに合わせて選びます。弊所で相談を受けたキッチンカー事業者は、当初40Lで許可を取得した後、営業ニーズに合わせて80Lへの変更を希望したものの、タンク交換で車体改修が必要となり40万円の追加投資が発生しました。開業時点で将来的なメニュー拡大を見越して80L以上を選ぶのが無難です。

タンク容量別のおすすめメニュー例

容量 おすすめメニュー
40Lクレープ、たこ焼き、からあげ単品、ジュース・ドリンク専門
80Lからあげ弁当、カレーライス、丼もの、サンドイッチ+ドリンク
200Lパスタ、ラーメン、定食、複数メニュー同時展開

仕込み場所の要否と選択肢

40L・80Lのキッチンカーでは、食材の下処理(野菜カット・肉の下ごしらえ等)を車内で行えないため、別途「仕込み場所」が必要です。仕込み場所は保健所の営業許可を受けた固定施設であることが条件です。

🏠 仕込み場所の4つの選択肢
選択肢 コスト目安 特徴
自宅キッチンの改装50〜200万円シンク2槽・手洗い・冷蔵庫等の設備基準要
既存飲食店の厨房レンタル月3〜10万円深夜帯や定休日の間借り、使用承諾書要
レンタルキッチン月1〜3万円(時間制も)シェアキッチン・保健所許可済み施設
専用仕込み場所を借りる月5〜15万円自社用スペースを賃貸
200Lキッチンカー(仕込み場所不要)車両改修+40〜80万円車内完結、投資負担大

⚠️ 自宅キッチンでの仕込みは設備基準が厳しい

自宅のキッチンをそのまま仕込み場所に使うケースは、営業用シンクと家庭用シンクを明確に区分するなど、固定飲食店と同等の設備基準を満たす必要があります。多くの自治体で「居住スペースと完全に区画された別室の設置」「独立した手洗い設備」等が要求され、結果的に自宅キッチンの改装費用が想定以上に膨らむことが実務で頻発します。弊所の経験上、賃料を払ってレンタルキッチンを借りる方が、開業初期の資金繰りには有利なケースが多いです。

キッチンカー開業の5ステップ

  1. メニュー設計とタンク容量の決定(将来拡張を見越して選択)
  2. 車両購入または改造(新規300〜600万円、中古100〜400万円)
  3. 食品衛生責任者資格の取得(講習1日)
  4. 仕込み場所の確保(80L以下の場合)
  5. 保健所への営業許可申請・車両検査・許可証交付(1〜2週間)

車両の選択肢と費用

車両タイプ 費用目安 特徴
新規制作(キッチンカー業者)300〜600万円希望に合わせた完全カスタム
中古キッチンカー100〜400万円改装不要、即営業可だが制約あり
軽トラック改造(DIY)50〜200万円自由度高、設備基準クリアが課題
キッチンカーリース月3〜10万円初期費用抑制、試運用に最適

キッチンカーの設備基準

2021年改正以降、キッチンカーの設備基準は全国統一されました。主要な項目を整理します。

🔧 キッチンカー施設基準
項目 基準
給水・排水タンク40L・80L・200Lのいずれか、給排水同容量
手洗い設備自動・レバー・足踏み式水栓(手指の再汚染防止)
調理設備メニューに応じた必要設備(コンロ・フライヤー等)
冷蔵・冷凍設備必要温度(冷蔵10℃以下・冷凍-15℃以下)
換気設備調理による熱気・蒸気を車外へ排出
照明調理場は十分な明るさ
食品保管設備密閉できる容器・冷蔵庫
使い捨て容器40Lキッチンカーは使い捨て容器のみ
床・壁・天井耐水性で清掃しやすい材質

複数県での営業|保健所ごとの許可

2021年改正で設備基準は全国統一されましたが、許可自体は都道府県ごとに取得する必要がある点は変わりません。東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県を巡業するなら、原則として4つの保健所で許可を取ります。

複数県対応の実務ルール

項目 実務の対応
管轄保健所出店する都道府県の保健所ごとに許可が必要
車両検査各保健所で実車検査を受ける
手数料各都道府県で16,000〜22,000円を別々に納付
仕込み場所仕込み場所の管轄保健所の営業許可が必要
調理工程タンク容量に応じた内容は全国共通
政令指定都市・中核市都道府県ではなく市の保健所が管轄(例:横浜・大阪)

📊 行政書士の視点

東京で車両検査を受けたキッチンカーを、神奈川で営業するには改めて神奈川の保健所で許可を取ります。このとき、東京の許可証のコピーがあると審査がスムーズに進むことが多く、多くの保健所で提出を求められます。弊所で伴走した1都3県展開のキッチンカーは、4つの保健所での許可取得を並行して進めた結果、開業から1か月以内に全県で営業開始できました。逆に個別に順次取得すると、車両を各保健所に持ち込むたびに業務が止まり、2〜3か月かかるケースもあります。

申請の必要書類

書類 備考
営業許可申請書保健所様式(食品衛生申請等システムで電子申請可)
営業施設の大要・配置図車内の設備配置を記載
食品衛生責任者の資格証明調理師・栄養士等は免除
水質検査結果書給水タンクの水質証明
車検証の写し車両の登録情報
法人登記事項証明書法人の場合
仕込み場所の営業許可証40L・80Lの場合、仕込み場所の証明
メニュー表提供予定メニュー・調理工程の確認

出店場所の許可|飲食店営業許可だけでは足りない

キッチンカーは営業許可を取っても、出店する場所でその場所の管理者の許可が必要です。公道での出店は道路使用許可が、商業施設・オフィスビル等では管理者の承諾が必要です。

🏙️ 出店場所別の許可
出店場所 必要な許可 届出先
公園公園占用許可管理者(自治体)
公道道路使用許可・道路占用許可警察署・道路管理者
商業施設の駐車場施設管理者の契約・承諾施設運営会社
オフィスビル・工場管理者の契約・承諾ビル管理会社
イベント会場イベント主催者の出店許可主催者
私有地(駐車場)所有者の承諾所有者

AYUSAWA PARTNERS

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飲食業に強い税理士へ

キッチンカー事業の税務・会計のポイント

📊 税理士・公認会計士の視点

キッチンカー本体は「車両運搬具」として6年(貨物自動車)または5年(普通車)で減価償却、調理設備は「器具備品」として耐用年数で償却します。新規制作で400万円の場合、初年度に少額減価償却資産の特例(2026年4月以降は40万円未満)を複数に分けて活用できるケースもあり、節税効果は小さくありません。また、複数県を巡業するため日当・交通費の経費処理、売上計上の現金管理体制も重要です。弊所ではクラウド会計導入による日次売上管理を推奨しており、POSレジ連動で会計ソフトに自動転記する仕組みを標準化しています。

キッチンカー開業で使える補助金・融資

制度 上限額 対象
日本政策金融公庫 新規開業資金最大7,200万円(実績ベース)車両購入費・仕込み場所契約・運転資金
小規模事業者持続化補助金200万円(特例250万)車両改装費・広告宣伝・HP制作
自治体の創業支援補助金50〜300万円自治体により対象範囲・上限が異なる
信用保証協会の制度融資数百万〜数千万円各自治体の制度融資メニュー

よくある質問

キッチンカーは乗用車でも改造すれば営業できますか?
可能ですが、営業用自動車として構造変更する必要があります。最大給水タンク200Lを搭載するには軽自動車では容量的に厳しく、1.5t以上の商用バンや軽トラックをベースに改装するのが現実的です。
1台で東京と神奈川で営業する場合、許可は1つで済みますか?
済みません。都道府県ごとに保健所の許可が必要です。東京・神奈川・千葉・埼玉で営業するなら4つの許可を取得する必要があります。
中古のキッチンカーを購入した場合、前オーナーの営業許可は引き継げますか?
原則として引き継げません。新規に営業許可を取り直す必要があります。ただし、車両の設備構造が変わらない場合、2021年改正基準に適合しているか再確認することが重要です。
軽トラックDIY改造でもタンク容量40Lなら営業許可は取れますか?
取れます。ただし施設基準(水栓構造・排水・冷蔵設備等)を全て満たしていることが条件です。自作で基準不適合となるリスクがあるため、設計段階で所管保健所への事前相談が必須です。
複数県での営業許可を同時申請することは可能ですか?
可能です。それぞれの保健所で車両検査を受ける必要がありますが、1台のキッチンカーを順次持ち込むことで2〜3週間以内に複数県の許可を取得できます。
営業許可を取ったら、どこでも自由に出店できますか?
出店できません。公園は公園管理者、公道は警察署、商業施設は施設管理者の許可・承諾が別途必要です。営業許可は食品衛生面の許可のみで、場所の使用権は別途確保する必要があります。
キッチンカーで使う水は水道水でなければダメですか?
水道水または水道水と同等の水質検査をクリアした水が必須です。市販のミネラルウォーターをタンクに入れることは基本的に認められません。水質検査結果書の提出が申請時に必要です。
HACCP対応は具体的に何をすれば良いですか?
業界団体が作成した「キッチンカー向けHACCP手引書」に基づき、①衛生管理計画書の作成、②毎日の温度管理・清掃記録、③食材仕入れの記録、④従業員の健康管理を実施します。記録は1年間以上保管が推奨されます。

📋 この記事のポイント

  • キッチンカーは食品衛生法に基づく飲食店営業許可(自動車営業)が必要
  • 2021年改正で給水タンク40L・80L・200Lの3区分に全国統一
  • 40Lは1工程のみ、80Lは複数メニュー、200Lは車内仕込みも可能
  • 40L・80Lは別途仕込み場所(保健所許可済み施設)が必要
  • 許可は都道府県ごとに必要、東京〜神奈川〜千葉〜埼玉なら4つ
  • 出店場所ごとの使用許可(公園・公道・商業施設等)が別途必要
  • 全国統一基準により多県展開のハードルが下がった

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