食品表示法に基づく表示義務とネット販売に必要な許可

食品表示法に基づく表示義務とネット販売に必要な許可
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

容器包装された加工食品は食品表示法に基づき、原材料・アレルゲン・賞味期限・栄養成分等の表示が義務です。2020年4月完全義務化、2025年4月「くるみ」が特定原材料8品目目に追加。食品ネット販売では追加の広告表示とEC特有の景表法対応が必要です。表示事項と実務対応を行政書士が解説します。

🏆 結論:容器包装の加工食品には「ラベル9表示」、ネット販売は「追加情報」

容器包装された加工食品の販売には、名称・原材料名・添加物・内容量・賞味(消費)期限・保存方法・製造者・アレルゲン・栄養成分の9表示が食品表示法で義務付けられています。2025年4月からは「くるみ」が特定原材料に追加され、表示義務8品目(えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生)体制となりました。食品をネット販売する場合は、店舗用ラベル表示に加えて、ECサイト上での画像・テキスト表示が別途必要で、景表法の優良誤認・有利誤認にも注意が必要です。

食品表示法の基本

食品表示法は平成25年に制定され、2020年4月1日から完全施行となった、食品の表示ルールを定める法律です。従来は食品衛生法・JAS法・健康増進法の3法にまたがっていた表示ルールが食品表示法に一元化され、事業者・消費者双方にわかりやすい制度となりました。

📋 食品表示法の全体像
項目 内容
根拠法令食品表示法・食品表示基準(消費者庁告示)
完全義務化2020年4月1日
所管官庁消費者庁
対象容器包装された加工食品・添加物・生鮮食品
対象外外食・中食(レストラン提供・出前等)
違反時の罰則指示→命令→公表→1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金

加工食品の表示義務9項目

容器包装された加工食品には、以下の9項目を「一括表示」としてラベル表示する必要があります。

📋 加工食品の9表示義務
表示項目 内容
1. 名称商品の一般名称(商品名ではない)
2. 原材料名使用量の多い順に記載、原料原産地も必要
3. 添加物原材料と区分して、使用量の多い順に記載
4. 内容量g・ml・個数等の正味量
5. 賞味期限または消費期限長期保存は賞味期限、短期は消費期限
6. 保存方法常温・冷蔵・冷凍、温度条件
7. 製造者等氏名(名称)・住所・製造所所在地
8. アレルゲン特定原材料8品目を含む場合の表示
9. 栄養成分表示熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量

表示免除の例外

アレルゲン表示|2025年4月に「くるみ」追加

アレルギー症状を引き起こすリスクの高い食品として、特定原材料の表示が義務付けられています。2025年4月1日より、「くるみ」が特定原材料に追加され、表示義務対象は8品目となりました。

📢 2025年4月1日施行:くるみの追加

消費者庁の食品表示基準改正により、特定原材料に「くるみ」が追加され、2025年4月1日から表示義務が施行されています。猶予期間は2025年3月31日までで、それ以降に製造・加工される食品は表示必須です。改正の詳細は消費者庁 食品表示法等で確認できます。

特定原材料(表示義務)8品目

品目 含まれる食品の例
えび海老フライ・海老チリ・海老だし
かにかに風味かまぼこ・かにクリーム
くるみ(2025年4月追加)くるみパン・洋菓子・韓国調味料の一部
小麦パン・うどん・カレールー・醤油
そばそば・そば粉を使った菓子
マヨネーズ・カステラ・洋菓子
ヨーグルト・チーズ・バター・乳製品全般
落花生(ピーナッツ)ピーナッツバター・中華菓子・一部の菓子

特定原材料に準ずるもの(表示推奨)20品目

以下の20品目は表示推奨(努力義務)ですが、多くのメーカーでは自主的に表示しています。

アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マカダミアナッツ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン

💡 実務のポイント

「くるみ」追加の猶予期間は2025年3月31日で終了しており、現時点(2026年4月)で販売中の加工食品は全て「くるみ」のアレルゲン表示対応が必要です。弊所でサポートする菓子製造業者では、2025年3月に既存商品のラベル全差し替えを実施し、パッケージ印刷費用だけで約80万円の追加負担が発生したケースがあります。次回の特定原材料追加に備え、ラベル差し替えの予算を年1回は想定しておくことを推奨しています。

アレルゲン表示の方法|個別表示と一括表示

アレルゲン表示には「個別表示」と「一括表示」の2つの方法があります。

個別表示(原則)

原材料や添加物の直後に、該当するアレルゲンを括弧書きで記載する方法です。消費者にとって最もわかりやすい表示です。

例:「小麦粉、砂糖、卵、牛乳、植物油脂(大豆を含む)、バター(乳成分を含む)」

一括表示(例外)

表示スペースが限られる場合に、原材料表示の末尾にまとめて記載する方法です。

例:「小麦粉、砂糖、卵、牛乳、植物油脂、バター/乳化剤、(一部に小麦・卵・乳・大豆を含む)」

⚠️ 一括表示では省略不可

個別表示では、同一アレルゲンが複数含まれる場合、1か所記載すれば他の記載を省略できます。しかし一括表示では、含まれる全てのアレルゲンを漏れなく列挙する必要があり、省略は一切認められません。弊所の実務経験では、一括表示で「大豆」の記載漏れがあった商品が保健所の指導対象となり、商品回収と謝罪広告で約300万円の損失が発生した事例があります。

栄養成分表示の義務化

2020年4月から、容器包装された加工食品のすべてに栄養成分表示が義務化されました。表示が必要な基本5項目は以下の順番で記載します。

順番 項目 単位
1熱量(エネルギー)kcal
2たんぱく質g
3脂質g
4炭水化物g
5食塩相当量(ナトリウム換算)g

栄養成分表示の表示単位

「1個あたり」「100gあたり」「1パックあたり」のいずれかの基準量で表示します。基準は商品の特性に合わせて選択します。

栄養成分表示の免除・省略

以下の場合は栄養成分表示を省略できます。

📊 行政書士の視点

栄養成分表示の計算には、食品成分表データベースの活用または外部機関での分析が必要です。小規模事業者向けには、消費者庁が無料で提供する「簡易栄養成分計算シート(食品表示基準別表第10に基づく計算用Excel)」を活用すると、原材料の栄養成分を入力することで概算値を算出できます。より正確な値が必要な場合は、食品分析機関(日本食品分析センター等)への依頼で1検体2〜5万円程度の分析費用が発生します。

食品のネット販売|追加の許可と表示

食品をインターネット販売する場合、店舗販売と同じ9表示に加えて、EC特有の表示と景表法対応が必要です。

食品EC販売に必要な許可

販売形態 必要な許可 届出先
自社製造品のEC販売食品製造業の営業許可保健所
他社製造品の小売EC食品等の販売(営業届出)保健所
酒類のEC販売通信販売酒類小売業免許税務署
輸入食品のEC販売食品等輸入届出・食品営業許可検疫所・保健所
健康食品のEC販売機能性表示食品の届出(該当時)消費者庁

ネット販売で必要な追加表示

食品表示法のラベル表示に加えて、ECサイト上に表示が必要な項目があります。

🌐 ECサイト追加表示
表示項目 根拠法令 内容
販売価格・送料特定商取引法税込価格・配送料・その他費用
事業者情報特定商取引法販売業者名・住所・電話番号
返品特約特定商取引法返品可否・期間・条件
ラベル写真または全表示事項食品表示法9表示項目の全て
アレルゲン情報食品表示法商品ページ内に明示
保存方法食品表示法常温・冷蔵・冷凍の別
賞味期限目安食品表示法到着時点での残存期限

景表法(景品表示法)への対応

ECサイトでは商品写真・キャッチコピーで「過度な期待を抱かせる表示」をすると、景表法(不当景品類及び不当表示防止法)違反のリスクがあります。

NG表示例 理由
「がんに効く」「病気が治る」医薬品的効能、薬機法違反
「業界No.1」「日本一」(根拠なし)優良誤認、合理的な根拠が必要
「今だけ半額」(常時実施)有利誤認、二重価格表示
「天然ミネラル含有」(実際は添加物)優良誤認、誤解を招く表示
他社比較の優位性表示(根拠薄弱)優良誤認、ステマ規制も関係

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通信販売酒類小売業免許|酒類ECの必須許可

酒類をECで販売するには、税務署への「通信販売酒類小売業免許」が必要です。通常の小売店舗とは別免許のため、酒類の実店舗を持っていても別途申請が必要です。

項目 内容
扱える酒類国内品:年間販売数量3,000kl未満の酒類製造者の商品/輸入酒:制限なし
申請先本店所在地の税務署
登録免許税30,000円
審査期間約2〜3か月
人的要件過去3年の経験・適正な納税状況
表示義務「20歳以上の方のみ販売」等の明記

違反時の対応フロー

食品表示法違反が発覚した場合の行政対応は、原則として段階的に進みます。

段階 内容
1. 指示行政指導による改善指示(警告レベル)
2. 命令表示の是正・商品回収等を命ずる行政処分
3. 公表違反事業者名・違反内容の公表
4. 罰則1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(食品表示法第17条)
5. 法人罰法人に対する1億円以下の罰金(原産地虚偽等の重大違反)

⚠️ 公表によるレピュテーション毀損

違反による「公表」は消費者庁ホームページおよび所管自治体で実施され、マスコミ報道や取引先への連絡も発生することがあります。弊所が立会った食品会社の原材料表示違反事案では、違反発覚から公表までの3か月間で、主要取引先3社から取引停止を通告され、年商約8,000万円の売上減となりました。表示ミスは意図的でなくても行政処分対象となるため、出荷前のダブルチェック体制が不可欠です。

よくある質問

手作り菓子を販売する場合も食品表示は必要ですか?
容器包装された状態で販売するなら必要です。マルシェ等で対面で量り売りする場合は対象外ですが、袋詰めして販売する場合は9表示が必要となります。
飲食店の出前・デリバリーにも食品表示は必要ですか?
原則として不要です。飲食店の調理品は「外食」扱いとなり、食品表示法の対象外です。ただし、アレルゲン情報の口頭・紙面での提供は推奨されています。また、テイクアウト弁当でも同じ扱いです。
くるみのアレルゲン表示を忘れて出荷してしまいました。どうすれば良いですか?
直ちに商品回収・表示修正・消費者への周知が必要です。消費者庁および所管自治体へ自主的に報告することで、指導レベルでの対応が期待できます。弁護士・行政書士に早めに相談することをお勧めします。
ECサイトに「がんに効く」と書いてはダメですか?
ダメです。食品に対する医薬品的効能表示は、薬機法違反および食品表示法違反の対象です。「健康維持に役立つ成分を含む」等の一般的表現にとどめ、具体的な病名治癒表現は避けてください。
小規模事業者は栄養成分表示を省略できますか?
資本金5,000万円以下かつ従業員20人以下(飲食業は20人以下)で、販売数量が少ない事業者は省略可能です。ただし、2020年4月以降の新規事業者には省略規定の適用条件が厳しくなっているため、消費者庁の最新ガイドラインで自社該当性を確認してください。
酒類をECで販売するには、実店舗の酒類免許があれば足りますか?
足りません。実店舗の「一般酒類小売業免許」とは別に、「通信販売酒類小売業免許」を税務署に申請する必要があります。両方取得することで、店舗とECの両方で販売可能となります。
原料原産地表示は全ての食品に必要ですか?
2022年4月から、国内製造の全ての加工食品に原料原産地表示が義務化されています。輸入加工食品は対象外ですが、原産国表示が必要です。最も重量を占める原材料の原産地を明記します。
食品表示のラベルを自社でデザインできますか?
できますが、専門知識が必要です。表示事項・文字サイズ・順序・余白等の厳格な基準があり、自社作成は誤表示のリスクがあります。実務では食品表示サポート業者(5,000〜2万円/商品)を活用するか、行政書士・食品衛生コンサルに依頼するのが安全です。

📋 この記事のポイント

  • 食品表示法は2020年4月完全義務化、消費者庁が所管
  • 加工食品には9表示(名称・原材料・添加物・内容量・期限・保存・製造者・アレルゲン・栄養成分)
  • 2025年4月「くるみ」が特定原材料8品目目に追加
  • アレルゲンは個別表示と一括表示があり、一括表示では省略不可
  • EC販売は食品表示+特商法+景表法の3本立て
  • 酒類EC販売は通信販売酒類小売業免許が別途必要(税務署)
  • 違反時は指示→命令→公表→1年以下の拘禁刑・100万円以下罰金

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