【税理士×会計士が解説】会社の債務超過とは?解消方法と税務上の影響(DES・債務免除)

監
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
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会社の債務超過とは?解消方法と税務上の影響(DES・債務免除)
「決算書で純資産がマイナスになってしまった」「銀行から債務超過の解消を求められている」とお困りの経営者に向けて、債務超過の解消方法6パターンを税務インパクト・コスト・手続きの難易度別に完全ガイドします。この記事を読めば、自社に最適な解消方法を判断できます。
🏆 結論:債務超過の解消方法は「繰越欠損金の有無」で選択肢が変わる
債務超過とは、貸借対照表(B/S)の純資産がマイナスの状態、つまり負債の合計が資産の合計を上回っている状態です。解消方法は大きく6つあり、繰越欠損金が十分にある場合は「債務免除」、ない場合は「DES(デット・エクイティ・スワップ)」や「疑似DES」が有力な選択肢になります。いずれの方法も税務上の影響があるため、実行前に税理士への相談が不可欠です。
債務超過とは?基本的な定義としくみ
貸借対照表(B/S)でみる債務超過の状態
債務超過とは、貸借対照表において負債の総額が資産の総額を上回っている状態、すなわち純資産(自己資本)がマイナスの状態を指します。会社法上の「債務超過」は会社の解散事由にはなりませんが、実務上は融資の審査、取引先の信用判定、公共入札の参加資格などに大きな影響を及ぼします。
赤字と債務超過の違い
「赤字」と「債務超過」は混同されがちですが、まったく異なる概念です。赤字は損益計算書(P/L)上の当期純損失であり、1年間の経営成績がマイナスだったことを意味します。一方、債務超過はB/S上の純資産がマイナスであり、創業以来の累積損失が資本金等を食い尽くした状態です。単年度の赤字が即座に債務超過を意味するわけではありません。
💡 実務のポイント
中小企業の決算書で債務超過に見えるケースの多くは、実は役員借入金が原因です。オーナー社長が個人資金を会社に貸し付けており、その金額が負債に計上されているため、見かけ上の債務超過になっています。金融機関も役員借入金は実質的に自己資本と見なす場合が多いため、まずは決算書の内容を正確に分析することが第一歩です。
債務超過の解消方法6パターンの比較
債務超過を解消するための方法は主に6つあります。それぞれの税務インパクト・コスト・手続きの難易度を比較します。
| 方法 |
概要 |
税務上の影響 |
コスト |
難易度 |
| ①債務免除 | 債権者が借入金を免除 | 債務免除益に法人税課税(繰越欠損金で相殺可) | 低 | ★☆☆ |
| ②DES(債務の株式化) | 借入金を株式に転換 | 非適格DESは債務消滅益に課税 | 中 | ★★☆ |
| ③疑似DES | 借入金を返済し、同額を出資 | 債務消滅益は発生しない | 中 | ★★☆ |
| ④増資 | 新たに出資を受ける | 資本等取引のため課税なし | 高 | ★★★ |
| ⑤利益の蓄積 | 本業の利益で自然解消 | 通常の法人税のみ | 低 | ★☆☆ |
| ⑥資産の含み益実現 | 含み益のある資産を売却 | 譲渡益に法人税課税 | 低 | ★☆☆ |
方法①:債務免除による解消と税務上の影響
債務免除益とは
債務免除とは、債権者が債務者に対して「借入金の返済を免除する」意思表示を行うことです。中小企業で最も多いのは、オーナー社長が自身の会社に対する役員貸付金(会社側から見ると役員借入金)を免除するケースです。
債務免除を受けると、会社の負債が減少する一方で、同額の債務免除益が法人税法上の益金に算入されます(法人税法22条2項)。この債務免除益は繰越欠損金と相殺できるため、繰越欠損金が十分にある場合は法人税が発生しません。
【設例】役員借入金3,000万円を債務免除する場合
【会計仕訳】
(借方)役員借入金 30,000,000 /(貸方)債務免除益 30,000,000
繰越欠損金が3,000万円以上 → 法人税の追加負担なし
繰越欠損金が2,000万円 → 1,000万円に対して約340万円の法人税等が発生
債務免除で注意すべき3つのリスク
債務免除は手続きが簡単ですが、以下の3つのリスクに注意が必要です。
⚠️ 注意:債務免除の3大リスク
リスク1:繰越欠損金の不足。繰越欠損金で相殺しきれない場合、債務免除益に対して法人税(約34%)が課税されます。繰越欠損金の残高と期限切れ時期を必ず確認してから実行してください。
リスク2:みなし贈与の発生。オーナー社長以外にも同族株主がいる場合、債務免除により会社の株価が上昇し、他の株主に対して「みなし贈与」が生じる可能性があります。
リスク3:債権者側の課税。法人が他の法人に対して債務免除を行う場合、「経済合理性のある再建計画」に基づかなければ寄付金と認定されるリスクがあります(法基通9-4-2)。
法人決算の手順については「法人決算の流れと手順」で基本から解説しています。
方法②:DES(デット・エクイティ・スワップ)による解消
DESのしくみと手続き
DES(Debt Equity Swap)とは、会社に対する金銭債権を株式に転換する手法です。債権者が債権を現物出資し、会社は新株を発行することで、負債が減少し純資産が増加します。債務免除と異なり、繰越欠損金を使わずにB/Sを改善できる可能性があります。
会計処理と税務処理の違い(券面額説 vs 評価額説)
DESの会計処理と税務処理には重大な差異があります。
| 項目 |
会計上(券面額説) |
税務上(評価額説) |
| 資本金等の増加額 | 債権の帳簿価額(=券面額) | 債権の時価 |
| 債務消滅益 | 発生しない | 券面額と時価の差額が発生 |
| 別表調整 | — | 別表4で加算調整が必要 |
【設例】額面1,000万円・時価400万円の債権をDESする場合
【会計仕訳(券面額説)】
(借方)借入金 10,000,000 /(貸方)資本金等 10,000,000
【税務仕訳(評価額説)】
(借方)借入金 10,000,000 /(貸方)資本金等 4,000,000
(貸方)債務消滅益 6,000,000
📊 公認会計士の視点
平成18年度税制改正で、DESにおける資本金等の増加額は「債権の時価」で計算することが明確化されました。つまり、債務超過の会社でDESを行うと、ほぼ確実に債務消滅益が発生します。「DESなら繰越欠損金を温存できる」と単純に考えるのは危険で、債権の時価評価が税額を左右する最も重要なポイントです。
適格DESと非適格DESの違い
100%グループ内(完全支配関係がある法人間)で行われるDESは適格現物出資に該当する可能性があり、その場合は帳簿価額で移転するため債務消滅益は発生しません。一方、役員個人と法人間のDESや、完全支配関係のない法人間のDESは非適格現物出資となり、時価評価が必要です。
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方法③:疑似DESによる解消
疑似DESのしくみとメリット
疑似DESとは、DESの税務リスク(債務消滅益の発生)を回避するために考案された手法です。手順は2ステップで、①会社が借入金を現金で返済し、②同額を債権者(社長)から新たに出資を受ける、という形をとります。
資金の流れは「会社→社長→会社」と循環しますが、法的には返済と出資は別の取引であるため、DESのような債権の時価評価は不要です。債務消滅益も発生しません。
💡 実務のポイント
疑似DESは税務リスクが低い反面、返済と出資の間で実際に資金が移動する必要があります。返済と出資を同日に行う場合でも、通帳上に返済と入金の記録を残すことが重要です。形式的すぎると税務調査で「実態のない取引」と認定されるリスクがあるため、返済日と出資日をずらす(数日〜1週間程度)ことが安全策です。
役員借入金3,000万円の解消シミュレーション
中小企業で最も典型的な「オーナー社長からの役員借入金3,000万円」を前提に、4つの方法の税務インパクトを比較します。
📐 シミュレーション前提条件
- 役員借入金:3,000万円(社長の会社への貸付金)
- 会社の繰越欠損金:1,500万円
- DESにおける債権の時価:1,200万円(会社は債務超過のため額面より低い)
- 法人税等の実効税率:約34%
📢 令和8年度改正:防衛特別法人税の創設
令和8年(2026年)4月1日以後に開始する事業年度から、法人税額に対して4%の防衛特別法人税が課されます。ただし課税標準の計算上、基準法人税額から年500万円が控除されるため、法人税額がおおむね500万円以下の中小企業には実質的な負担は生じません。控除を超える法人では、本記事に記載の実効税率が約1%上昇します。
| 方法 |
債務免除益/消滅益 |
繰越欠損金で相殺 |
課税所得 |
法人税等の追加負担 |
| 債務免除 | 3,000万円 | △1,500万円 | 1,500万円 | 約510万円 |
| DES(非適格) | 1,800万円 | △1,500万円 | 300万円 | 約102万円 |
| 疑似DES | 0円 | — | 0円 | 0円 |
| 段階的返済 | 0円 | — | 0円 | 0円 |
※DESの債務消滅益=借入金3,000万円−債権時価1,200万円=1,800万円。概算値です。正確な計算は税理士にご相談ください。
🧮 シミュレーションのポイント
疑似DESは税負担ゼロですが、3,000万円の返済資金を一時的に用意する必要があります。資金がない場合は、債務免除の金額を繰越欠損金の範囲内に留めて段階的に実行する方法が現実的です。複数年にわたって繰越欠損金の範囲内で少しずつ免除すれば、法人税の追加負担を最小限に抑えられます。
「どの方法を選ぶべき?」判断基準マトリクス
繰越欠損金の有無と債務超過の深刻度の2軸で、最適な解消方法を判断できます。
| 状況 |
繰越欠損金が十分ある |
繰越欠損金が不足 |
| 軽度の債務超過(数百万円) | 債務免除が最もシンプル | 利益の蓄積で自然解消を目指す |
| 中度の債務超過(数千万円) | 段階的な債務免除(繰越欠損金の範囲内で分割実行) | 疑似DES or 増資を検討 |
| 重度の債務超過(億単位) | 債務免除+DESの組み合わせ | 法的整理(民事再生等)を含めて検討。期限切れ欠損金の特例利用 |
債務免除時のみなし贈与リスク
同族株主が複数いる場合の注意点
オーナー社長が会社に対する貸付金を免除すると、会社の純資産が増加し、株式の評価額が上昇します。オーナー社長以外にも同族株主(家族など)がいる場合、その株主の所有する株式の価値が上がることになり、オーナー社長から他の株主への「みなし贈与」が発生する可能性があります(相続税法9条)。
みなし贈与が発生するかどうかは、債務免除前後の株式評価額の差額と、その株主の持分割合で決まります。特に、後継者に株式を移転している最中の会社は要注意です。
💡 実務のポイント
みなし贈与のリスクを回避するには、①債務免除の前に株式を社長に集約する、②段階的に免除して1回あたりの株価変動を抑える、③贈与税の基礎控除110万円以内に収める、などの方法があります。事前に税理士に相談して株価のシミュレーションを行うことが重要です。
相続税の基本的な考え方については「会社設立の流れ」でも法人と個人の資産分離について解説しています。
債権者側の税務処理(貸倒れ・寄付金の問題)
第三者への債務免除は貸倒損失として損金算入
法人が第三者に対して債務免除を行った場合、法人税基本通達9-6-1(4)に基づき、一定の要件を満たせば貸倒損失として損金算入できます。要件は「債務者の債務超過の状態が相当期間継続」していることと「書面による債務免除」が行われていることです。
関係会社間の債務免除は寄付金認定リスク
同族関係にある法人間で債務免除を行う場合は、「合理的な再建計画」に基づくものでなければ、寄付金として認定されるリスクがあります(法基通9-4-2)。寄付金に認定されると、損金算入限度額を超える部分は損金不算入となります。
法人成りを検討している方は「法人成りのタイミング判断」も参考にしてください。
企業再生局面での特例(期限切れ欠損金の利用)
法的整理における特例
会社更生法・民事再生法・特別清算・破産手続が開始された場合は、通常の繰越欠損金に加えて期限切れ欠損金も損金算入できます(法人税法59条)。この特例により、債務免除益やDESの債務消滅益を全額相殺できる可能性が高まります。
対象となる手続きには、法的整理のほか、私的整理ガイドライン・中小企業再生支援協議会の支援・事業再生ADR手続などの一定の私的整理も含まれます。
役員借入金の解消と相続税対策
社長の相続を見据えた計画的な解消
オーナー社長が多額の役員貸付金(会社側は役員借入金)を持ったまま亡くなると、その貸付金は相続財産として相続税の課税対象になります。会社が債務超過で返済の見込みがない場合でも、原則として額面金額で評価されます(相続税法基本通達205の例外あり)。
相続発生前に計画的に役員借入金を解消しておくことが、相続税の節税対策として重要です。解消の方法は、役員報酬の減額と借入金の返済の組み合わせ、DES、疑似DES、段階的な債務免除などがあります。
役員報酬の設定方法については「役員報酬の基本」で詳しく解説しています。
よくある質問(FAQ)
債務超過の会社は倒産するのですか?
債務超過は会社法上の解散事由ではないため、債務超過だからといって直ちに倒産するわけではありません。資金繰りが回っている限り事業は継続できます。ただし、金融機関からの融資が困難になる、取引先の信用が低下する、公共入札に参加できないなどの実務上の影響は大きいため、早期の解消が望ましいです。
役員借入金を債務免除したら法人税はいくらかかりますか?
繰越欠損金で債務免除益を相殺できれば法人税は発生しません。繰越欠損金が不足する場合は、不足分に対して約34%の法人税等が課税されます。例えば、3,000万円を免除して繰越欠損金が2,000万円の場合、1,000万円×34%≒340万円の追加税負担が生じます。
DESと疑似DESはどちらが有利ですか?
税務面では疑似DESの方が有利です。DESは非適格現物出資の場合に債務消滅益が発生しますが、疑似DESは返済と出資を別取引で行うため債務消滅益は発生しません。ただし、疑似DESは返済資金を一時的に用意する必要があるため、資金繰りの制約がある場合はDESが現実的な選択肢になることもあります。
DESを行うと資本金が増えますが、デメリットはありますか?
あります。資本金が1,000万円を超えると消費税の免税事業者でなくなる可能性があり、1億円を超えると中小企業の特例が使えなくなります。また、法人住民税の均等割は資本金等の額に応じて増加します。DESで資本金が増える場合は、これらの影響を事前にシミュレーションしてください。なお、資本金ではなく資本準備金に計上することで資本金の増加を抑えることも可能です。
繰越欠損金が期限切れになる前に債務免除すべきですか?
はい、繰越欠損金には10年の期限(2018年4月1日以後開始事業年度に発生したもの)があるため、期限切れになる前に債務免除を実行して相殺することが税務上有利です。毎年の決算時に繰越欠損金の残高と期限切れ時期を確認し、計画的に実行してください。
社長が会社に貸付金を持ったまま亡くなった場合、相続税はかかりますか?
原則として、貸付金は額面金額で相続財産に含まれ、相続税の課税対象になります。ただし、会社が破産・更生手続中で回収が不可能と認められる場合は評価額がゼロになります。通常の債務超過では額面評価のままとなるケースが多いため、生前に計画的に解消しておくことが重要です。
債務免除は書面が必要ですか?
はい、税務上は「書面により明らかにされた債務免除額」が要件です(法基通9-6-1(4))。必ずしも公正証書である必要はありませんが、債務免除通知書を内容証明郵便で送付するか、受領書を受け取ることが望ましいとされています。口頭の合意だけでは税務調査で否認されるリスクがあります。
債務超過の状態で融資は受けられますか?
一般的には困難ですが、不可能ではありません。日本政策金融公庫のセーフティネット貸付や、信用保証協会の保証付き融資であれば、事業計画の内容次第で融資が実行されるケースもあります。金融機関に対しては、役員借入金を実質自己資本として説明するとともに、債務超過の解消計画を提示することが重要です。
債務免除をすると決算書の見栄えは良くなりますか?
B/S(貸借対照表)上は負債が減少し純資産が増加するため、見栄えは良くなります。ただし、P/L(損益計算書)上に特別利益として「債務免除益」が計上されるため、本業の収益力とは無関係の利益が含まれることになります。金融機関の審査では債務免除益を除いた実質的な収益力で判断されることが多いです。
まとめ
📋 この記事のポイント
- 債務超過とは純資産がマイナスの状態。中小企業では役員借入金が原因であることが多い
- 解消方法は6パターン:債務免除・DES・疑似DES・増資・利益蓄積・含み益実現
- 債務免除は繰越欠損金の範囲内なら法人税ゼロ。超過分には約34%の課税
- DESは税務上「時価」で評価されるため、債務超過の会社では債務消滅益が発生する
- 疑似DESは返済と出資を分けることで債務消滅益を回避できるが、一時的な資金が必要
- 同族株主が複数いる場合、債務免除によるみなし贈与のリスクに注意
- 社長の相続を見据えて、役員借入金は計画的に解消しておくことが重要
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