【社労士×税理士が解説】介護休業制度と介護離職防止対策|2025年改正の個別周知・意向確認義務化

【社労士×税理士が解説】介護休業制度と介護離職防止対策|2025年改正の個別周知・意向確認義務化
鮎澤パートナーズ代表 鮎澤 竜哉
公認会計士 第47928号・税理士 第159175号・社会保険労務士 第13240067号・行政書士 第24061284号
年間100社以上の法人決算・会社設立・税務調査対応を支援。

「社員から親の介護で相談されたが何を案内すればよい?」でお困りの経営者・人事担当者に向けて、介護休業93日・給付率67%の基本から、2025年4月に義務化された個別周知・意向確認・40歳前後の早期情報提供、マタハラ/パタハラ防止、両立支援等助成金の活用まで完全ガイドします。この記事を読めば、自社の介護離職防止フローを整備できます。

🏆 結論:介護休業93日+給付率67%+2025年から個別周知・意向確認が義務

介護休業は対象家族1人につき通算93日まで3回分割取得でき、雇用保険から休業開始時賃金の67%が支給されます。2025年4月以降は、労働者が介護に直面したことを申し出た際の個別周知・意向確認、および40歳前後の労働者への早期情報提供が事業主の義務となりました。また、介護休暇の労使協定による「勤続6か月未満除外」が撤廃され、入社直後でも取得可能に。介護離職は40〜50代の中核人材に多く、毎年約10万人規模で発生しているため、対応を怠ると重大な人材損失につながります。両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)を活用すれば、最大60万円の補助を受けつつ体制を整備できます。

介護休業制度の基本|93日・3回分割・要介護状態の範囲

介護休業とは、労働者が要介護状態にある対象家族を介護するために取得できる休業です。育児・介護休業法で定められた法定の休業制度で、全事業者に適用されます。

介護休業の基本要件

項目 内容
取得上限日数対象家族1人につき通算93日(土日祝含む暦日)
分割取得対象家族1人につき3回まで分割可能
対象家族配偶者(事実婚含む)・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫
取得要件雇用期間が1年以上(有期雇用の場合は追加要件あり)
申出期限介護休業開始予定日の2週間前までに事業主へ書面等で申出
賃金法律上は無給(企業判断で有給化可)。雇用保険から介護休業給付金支給

「要介護状態」の判定基準

介護休業の対象となるのは、「要介護状態にある対象家族」です。要介護状態とは、負傷・疾病または身体上・精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態をいいます。これは介護保険制度の「要介護認定」とは別基準で、介護保険の認定を受けていなくても介護休業の対象になり得ます。判定基準の詳細は厚生労働省「育児・介護休業法について」で確認できます。

💡 実務のポイント

「親が要介護2だが介護休業を使えるか」という質問をよく受けますが、介護保険の要介護度と育介法の要介護状態は別基準です。要支援1〜要介護5のいずれでも、育介法上の「2週間以上常時介護を必要とする状態」に該当すれば介護休業の取得対象となります。厚労省の常時介護判定基準表(12項目)で3項目以上2(一部介助)以上が目安ですが、医師診断書があれば基準外でも申出を尊重する運用が標準です。

介護休業給付金の要件・計算方法と2025年度上限額

介護休業中の所得補填として、雇用保険から「介護休業給付金」が支給されます。

受給要件

計算方法と上限額

🧮 計算式

介護休業給付金=休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
※休業開始時賃金日額=休業開始前6か月間の賃金÷180
※2025年度の月額上限:356,574円(賃金日額上限16,980円×30日×67%)

📐 シミュレーション前提条件

  • 介護休業93日をフル取得、休業中の賃金支給なし
  • 2025年度上限額356,574円/月を適用(2025年8月改定値)
  • 給付金は非課税、雇用保険料は賃金不支給のため発生せず
  • 概算値のため、実際の金額は個別状況により異なります
月給 1か月当たり給付額 93日フル取得時の合計 月給比
30万円約201,000円約623,100円67%
50万円約335,000円約1,038,500円67%
60万円356,574円(上限)約1,105,379円約59%
80万円356,574円(上限)約1,105,379円約45%

※概算値です。住民税や社保免除の有無により実質の手取り比率は異なります。

育児休業との社会保険料免除の違い

⚠️ 育児休業との最大の違い:社会保険料免除なし

介護休業では、育児休業と異なり社会保険料の免除制度はありません。休業中も健康保険料・厚生年金保険料の本人負担分は発生し、会社が立替・後日精算する運用が必要です。実務では「休業中の社保料は復職後の給与から天引き控除する」旨を休業開始時に労働者と書面確認しておくことが重要です。この差異を理解せずに「育休と同じ」と説明すると、復職後にトラブルになります。

介護休業以外の介護関連制度|6つの制度を整理

介護のための制度は介護休業だけではありません。以下の6制度を組み合わせて活用します。

制度 概要 使用場面
①介護休業93日・3回分割介護体制整備のためのまとまった期間
②介護休暇対象家族1人につき年5日(2人以上10日)通院同行・介護認定手続等のスポット対応
③短時間勤務等の措置3年以上・2回以上利用可(選択的措置)介護と仕事の日常的両立
④所定外労働の制限介護終了までの間、残業免除請求可残業による介護時間圧迫回避
⑤時間外労働の制限月24時間・年150時間を超える時間外労働免除請求可深夜残業や長時間残業の抑制
⑥深夜業の制限22時〜5時の深夜業免除請求可夜間介護が必要な場合

現場では「介護休業93日だけで介護が終わるわけではない」という前提が重要です。93日はあくまで介護体制を整えるための期間で、その後は介護休暇・短時間勤務等の措置を組み合わせて長期的に両立することになります。

【2025年改正①】個別周知・意向確認の義務化

2025年4月以降、労働者が介護に直面したことを申し出た場合、事業主は個別に制度内容を周知し、利用意向を確認する義務があります。

周知事項(4項目)

  1. 介護休業・介護休暇に関する制度
  2. 所定外労働・時間外労働・深夜業の制限の制度
  3. 所定労働時間の短縮等の措置(選択的措置義務)
  4. 介護休業給付金に関する事項

周知・意向確認の方法

以下のいずれかの方法で実施します。

💡 実務のポイント

個別周知を怠ると、労働者が制度を知らないまま退職してしまうケースが頻発します。実務では「介護に関する申出があった場合のチェックシート」を用意し、人事担当者が面談時に4項目を全て説明し、チェックシートに労働者の署名をもらう運用が定着しつつあります。記録保管は重要で、将来トラブルになった際の証跡にもなります。

【2025年改正②】40歳前後の早期情報提供と雇用環境整備

介護に直面した労働者のみならず、介護に直面する前の段階から早期に情報提供することが新たに義務化されました。

40歳前後の情報提供

以下のいずれかの期間に情報提供を行います。

介護保険料の徴収開始が40歳であることに合わせた設計で、実務では「40歳の誕生月」または「40歳到達後の次回年次面談時」に個別メール+パンフレット送付が一般的です。

雇用環境整備(選択実施)

以下のいずれかを実施します(複数実施も可)。

中小企業の実務では「相談窓口設置+管理職向け年1回研修」の組合せが最も実装しやすく、必要十分なレベルを満たせます。

【2025年改正③】介護休暇取得要件の緩和

介護休暇(年5日/10日)について、労使協定による「勤続6か月未満の労働者を対象外とする」除外規定が撤廃されました。これにより、入社直後の労働者でも介護休暇が取得可能になります。既存の労使協定にこの除外規定がある場合は、速やかに改定が必要です。

📢 労使協定改定チェック

自社の労使協定を今すぐ確認してください。「勤続6か月未満」という文言が含まれている場合、2025年4月1日時点で無効となっており、労働者からの介護休暇請求を拒否できません。無効な協定のまま運用していると、行政指導の対象となるリスクがあります。

AYUSAWA PARTNERS

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ケアハラスメント(マタハラ・パタハラ・ケアハラ)の防止

介護に関連するハラスメント(ケアハラスメント)も、マタハラ・パタハラと並んで事業主の防止措置義務の対象です。育児休業取得者へのパタハラと同様、介護休業取得者や制度利用者に対する不利益取扱いや嫌がらせは法律で禁じられています。

NG発言・NG対応の具体例

類型 具体例 問題点
制度利用の阻害「介護休業なんて取ったらうちでは働けないよ」取得請求の妨害=違法
不利益取扱い介護休業から復帰後に一方的に降格・減給育介法10条違反
就業環境の害「男が介護休業なんて情けない」等の発言の放置職場環境悪化・就業妨害
評価への影響介護休業を理由に人事評価を下げる取得を抑制する効果=不利益取扱い

事業主の防止措置義務(4項目)

  1. 事業主の方針の明確化と周知・啓発(就業規則・社内研修)
  2. 相談窓口の設置と適切な対応
  3. ハラスメント事後の迅速・適切な対応(事実確認・措置)
  4. プライバシー保護と相談者への不利益取扱い禁止の周知

管理職研修では「取得を阻害する発言は法律違反」という明確なメッセージを伝えることが重要です。また、「女性育休はOKだが男性育休・介護休業はNG」という無意識のバイアスも指摘し、育児・介護関連ハラスメント全体を包括的に取り扱う方針を示します。

両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)の活用

介護離職防止に取り組む中小企業には、厚生労働省の「両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)」が支給されます。

主な支給対象と金額

支給対象 支給額(中小企業) 支給要件の概要
介護休業取得+職場復帰30万円介護支援プラン策定+5日以上の介護休業取得+復帰
介護両立支援制度利用30万円所定外労働制限等の両立支援制度の利用実績
個別周知・環境整備加算15万円個別周知と環境整備措置を実施

※支給額・要件は年度により変動します。最新の情報は厚労省または社労士にご確認ください。

助成金申請の基本フロー

  1. 事前整備:介護休業規程・介護両立支援制度の整備、労使協定改定
  2. 介護支援プランの策定:対象労働者との面談で業務引継ぎ計画を作成
  3. 介護休業の取得・職場復帰:労働者が5日以上の介護休業を取得し復帰
  4. 支給申請:復帰後6か月経過後2か月以内に都道府県労働局へ申請

💡 実務のポイント

助成金は「介護支援プラン」の事前策定が必須要件です。介護休業取得後にプランを作成しても遡及適用は認められないため、従業員から介護の申出があった段階で速やかにプラン作成に着手する必要があります。プランは厚労省のテンプレートを活用できますが、業務引継ぎの具体性が審査で確認されるため、形式的な記載では不支給リスクがあります。

介護離職の実態と企業への影響

介護離職は日本社会全体で年間約10万人規模で発生しており、企業にとっての人材損失は深刻です。特に40〜50代の管理職層・中核人材に多いため、一人の介護離職で数千万円規模の損失が生じるケースもあります。

介護離職を予防するための5つのアクション

  1. 早期発見:人事面談や健康診断時に「ご家族の介護状況」を聞くフローを導入
  2. 即時対応:申出があれば48時間以内に人事担当者が個別面談を設定
  3. 制度利用促進:介護休業だけでなく、介護休暇・短時間勤務・所定外労働制限を組合せて提案
  4. 業務再配分:上司を巻き込み、業務引継ぎと負荷軽減を計画
  5. 復帰支援:復帰後3か月までは業務量を段階的に戻し、定期面談を継続

実務では、介護離職者の多くが「制度を知らなかった」「上司に相談しづらかった」と回答しているため、制度周知と心理的安全性の確保が最重要です。

よくある質問

介護休業は親の要介護認定がなくても取得できますか?
取得できます。介護休業の「要介護状態」は介護保険の認定とは別基準で、2週間以上常時介護を必要とする状態であれば対象です。医師の診断書やご本人の状態申告等で判断します。
介護休業93日を3回に分けて取得する場合、どのように分ければよいですか?
自由に分割できます。例:1回目30日(介護体制整備)、2回目40日(施設入所準備)、3回目23日(看取り期)のように、介護のフェーズに応じて分ける運用が一般的です。分割の都度、2週間前までに事業主へ申出が必要です。
介護休業中の社会保険料はどうなりますか?
育児休業と異なり、介護休業では社会保険料の免除制度はありません。本人負担分の健康保険料・厚生年金保険料は発生し続けるため、会社が立替払いし、復職後の給与から控除する運用が標準です。休業開始時に書面で合意しておくことをお勧めします。
40歳到達者への情報提供は必ず個別に行わなければいけませんか?
個別に行う必要があります。社内報や一斉メールでの周知だけでは義務を満たしません。対象者1人ずつに介護制度の資料を提供し、確認を取る運用が必要です。ただし書面・電子メール等の方法は選択可能で、必ずしも対面面談は必須ではありません。
両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)は社労士に依頼しないと申請できませんか?
自社でも申請できますが、介護支援プランの作成や添付書類の整備は専門知識が必要です。助成金申請代行は社労士の独占業務であり、ミスがあると不支給リスクが高まるため、社労士への依頼が安全です。
ケアハラスメント防止のために管理職研修は何をすればよいですか?
①介護休業・介護休暇等の制度内容の理解、②NG発言の具体例、③部下から介護の申出があった場合の対応フロー、④評価への影響を避ける基準、の4項目を年1回以上扱うことを推奨します。研修記録の保管も義務履行の証跡となるため重要です。
介護休業を取得した社員が復帰せず退職した場合、給付金の返還は必要ですか?
原則として返還は不要です。介護休業給付金は休業期間中の就業・賃金要件を満たせば支給されるため、事後の退職は返還事由になりません。ただし「介護休業開始時点で既に退職予定だった」場合は支給対象外となり、虚偽申請として返還対象となる可能性があります。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 介護休業は対象家族1人につき通算93日・3回分割取得可能、雇用保険から67%給付(2025年度月額上限356,574円)
  • 介護休業では社会保険料の免除制度がなく、育児休業と扱いが異なる点に注意
  • 介護関連制度は介護休業・介護休暇・短時間勤務等の6制度の組合せで長期的両立を図る
  • 2025年4月から個別周知・意向確認、40歳前後の早期情報提供、雇用環境整備(研修・窓口設置)が義務化
  • 介護休暇の「勤続6か月未満除外」が撤廃され、労使協定の改定が必須
  • ケアハラスメント防止は事業主の法的義務。管理職研修と相談窓口設置が基本対応
  • 両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)で最大60〜75万円の補助を受けつつ体制整備が可能

✅ 次のアクション

介護休業制度と介護離職防止対策は、40〜50代の中核人材を守る重要な人事施策です。2025年改正で義務化された個別周知・40歳早期情報提供・雇用環境整備は、少人数の人事担当者でも仕組み化すれば無理なく運用できます。制度整備と助成金活用でお困りの際は、鮎澤パートナーズへご相談ください。社会保険労務士・税理士・公認会計士・行政書士が4士業のワンストップ体制で支援いたします。

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